計画は断念せざるを得ない。そう思っていました。

   ですが、クルーゼは面白いものを残していってくれました。

   数日後に私宛に郵送されてきたマイクロチップ。その中には、ある廃棄された施設に保管してある物―――
   そこまでの道順と、生体研究に関したものが記録されていました。

   データは全てこのチップ以外消去していたらしく、警察もこの施設まで手が届いていませんでした。

(これなら、まだ計画は続けられる…)

そう思った私は、指定されてあった道順通りに、その場所に向かいました。

そして、重い扉を開いた瞬間、またも驚かされました。

   ―――「…何です?ここは…」

   最新式のコンピューターに、実験施設、用意されていた薬品や機材…素人目にしてもわかるほど、すべてが完璧に
   揃えられ、
そのスイッチを押される瞬間を待ち望んでいるかのようでした。

   そう、決して廃棄されてなどいない、その施設はまだ「生きて」いたんです!

私が歩みを進めると、一番奥に、プラント、というのでしょうか。いくつもの液体の入った2階まで届くようなガラスの
   円柱体。

   そして、その円柱の液体が満たされた中で、眠っていたのが―――

 

 

「改めてご紹介しましょう。「彼ら」です。」

アズラエルは顎をしゃくってアスランの背後へ視線を促した。そこに立っていたのは、先ほどアスランの目隠しとガムテープを乱暴に取り外した彼ら…

「…『Bursted Men』…」

つまらなそうに耳の穴に指を突っ込んでいるオルガ、携帯ゲームに興じるクロト、音楽を聴きながら欠伸をするシャニ。

アスランは判りかけてきた。自分をマンションの地下駐車場で拉致したのは彼らだ。成人男性が本気で暴れたら、普通の男性数人程度では抑えきれない。動きを封じられた瞬間、素人の仕業ではないと思ったが…まさか!クルーゼが作っていたもの、ということは、彼らの正体は―――

「『吸血鬼』の成れの果て、とでも思いましたか?ざんねーん☆ ここで君の点数は100点からまず-5点ひかれていたんです。」

「吸血鬼じゃない?だとしたら…」

あのアスラン・ザラが、解答できず、動揺を隠せていない。アズラエルは「勝った!」とでも言わんばかりに、揚々と説明する。

「彼らの正体はですね〜『人狼』です。」

「『じん…ろう』…?」

アスランが驚き、その言葉を繰り返す。

「ま、正確には「遺伝子培養されたコピー」に過ぎないんですが…」

『人狼』…『狼男』と呼ばれる彼らも、また『吸血鬼』同様、事実存在していたのだ。

アズラエルがアスランの様子を伺いながら、続きを語る。

 

 

   クルーゼの研究は『吸血鬼』には留まりませんでした。

   「永遠の命」を作り出すためなら、もう種族なんてどうでもよかったんでしょうね。

   

   私はクルーゼの研究をバックアップしていた企業に連絡しました。

   えぇ、半分「脅し」みたいなものでしたけど…

   ―――「貴方たちの研究員が、貴方たちの施設で研究していた内容を私は知っています。いかがでしょうか? 
       このまま研究を
続けてはみませんか? いや、この研究成果を非常に欲しがっているものがおりま
       してね…」

 

 

---

 

 

「イザーク、お待たっ♪ ようやく出たぜ!」

「間違いなかったのか?ディアッカ。」

「そりゃもうバッチリ! 老舗の駄菓子製造会社の親父からの伝手で、ようやく裏が取れたぜ!これ見ろよ。」

ディアッカがイザークの机の上に、まるでトランプのように写真をサッと流して見せた。

「こいつは…」

「そう、アスランが言っていた通り、裏に銀の箔のある包装紙はかなり高価らしくって。個別で取り扱うってことは滅多にないらしいから、購入者の足が付きやすかった。そして町工場にその包装作業を依頼してきたのも、同じくこいつらだ。」

「…『トライン製作所』。子会社か?」

「正解!そして、その親会社っていうのが―――」

 

 

---

 

 

「『ジェネシス製薬』か…電話の相手は、会長のギルバート・デュランダル。」

アスランが苦々しくその名を口にする。

あの時、イザークも煮え湯を飲まされ、手が出せなかったが、ヤツを押さえておけばこんなことにはならなかったかもしれない。

アズラエルはその苦悶の表情に<フフン♪>を鼻歌を交える。

「正解です♪ ま、この問題は簡単すぎですね。クルーゼを知っている君なら、簡単に結びつく導線です。なので君への加点はなし。…ということで、彼との会談は結構早く結論が出ました。彼らも実際、研究の中断は惜しんでいたようでしてね。幾人か研究員を派遣してくださったんです。無論、これはちゃんと「好意」でですよ。」

 

 

   クルーゼの残した記述通りの工程を行うと、プラントの中の液体が流れだし、続いて彼らは目覚めました。

   そして、この施設で彼らの身体能力や戦闘能力を調べた結果、とても素晴らしい結果が出ました!

   人間では到底考えられない結果ですよ!100kgのバーベルは片手で放り投げてくれるわ、3階程度の高さの壁も、簡単に

乗り越えてくれるわ、ますます気に入るばかりでした!

   これで、人間の言うことに従順に従えるようにすれば、まさしく「理想的な最終兵器」の完成です!

   

…ま、でもこいつらを見ればわかる通り、そんないい子ちゃんたちではありません。

   一応「快・不快」の感情はあるみたいで、なかなか指示に従わないんですよ。

   それでもこいつらが私を裏切れない理由の一つは、「肉体の維持」のために、定期的に薬物を必要としていまして、
   この投与を
やめると、とてつもなく苦しいらしいんです。その『命綱』は私しか持っていない。

   私を裏切ったり、あるいは命を奪うことは、
こいつらにとって文字通り「命とり」なんです。

   なので、これをチラつかせることで、従わせることまでは、何とかできたんです。

 

   でも、君もお分かりの通り、兵器は足並みが揃わないと、勝手に攻撃しちゃったのでは作戦になりません。

   どんなに強力な力
があっても、それでは商品にならない。

   当面のこいつらの課題であり、一番の難点はそこでした。指示の通りには動いても自分勝手。てんでバラバラ。

「協力」なんて文字、こいつらの辞書にはないんです。

 

   さて、困った…と思っていた、そんな時でした…ここにもう一つ、素晴らしい能力を見つけたんです!

   最初は単なる「オマケ」の能力かと思って、重視していなかったんですがね。

   

それはある日、実験の途中で、オルガ君がキレちゃった時でした。

   ―――「ヴァアアアアア―――!」

   まさに狼のごとき吠声を発した時です。なんと

   ―――「ウガァァァアアアア!」

   ―――「グォォォオオオオオ!」

   急に別室にいた、クロト君とシャニ君まで変貌し始めたんですよ。

   ―――「何が起きたんです!?」

   ―――「わ、わかりません!ただ、どうも声にオルガ・サブナックの声に反応して力が目覚めたようで…」

   ―――「『力』!?何です、それは?」

   ―――「『どうちょう』の力です」

   ―――「『どうちょう』…?何です、それは?」

   聴き慣れぬ言葉に、私が質問すると、研究員はこう答えました。

   ―――「『同調』つまり、シンクロみたいなものです。要は狼の遠吠えで、仲間を集めたり行動を起こしたりする
       のですが、
彼らの耳と声には、その独特の波長がありました。」

   研究員が語ると話が堅苦しくなるんですが、簡単に言うと、ある一定の声で従わせることができる、というのです。

   この力があれば、敵に情報が漏れることもなく、しかも一斉に命令に従わせることができる!

 

   それに、この『同調』は更なる力を発揮させました。

オルガ君が切れた時、次第に容貌が変化していったんです。

歯が伸びて鋭く尖り、爪が伸びて、そして目は血走って、耳も伸びて…そう、まさに映画の『狼男』に登場した通りの姿
   ですよ。

―――「これが…これが真の『人狼』の姿なのですね…」

しかも、元々人間離れしている身体能力でしたが、本来の『人狼』と化した時、更に大きな力を発揮したんです。

   予測では、新幹線並みのスピードで走り、大型トラックを軽々と持ち上げるくらいのね。

   (…これなら…これならどんな兵器よりも圧倒的な力じゃないですか!)

   私は打ち震えました。

   そして、彼らと同じ『コピー人狼』を量産すべく、彼らの細胞から幾つも培養したのです。が…

   ―――「一体何時になったら完成品ができるのですか?」

   ―――「断言できません。が、早くて十数年。あるいはそれ以上―――」

   ―――「何をふざけたことを言っているのです!早々に量産して売りに出さねば、ジブリールの次回選挙まで間に合い
       ませんよっ!」

   研究員はそれでもブンブンと首を横に振りました。

   ―――「無理です!大体人間も生まれてから成人に至るまで、20年はかかるんですよ!それに、このサンプルたちも、

どうやら元々は人間の子供だったらしいのですが、遺伝子交換に加え、部分培養したらしく、それでこの力

を持ったらしくて…」

   ―――「…人間を…『人狼に変えた』…ということですか?…―――っ、それなら!」

   私は思いつきました。

   そうです、人間を『人狼並みの能力』に変えていけばいいのです。そのほうがよほど時間も短縮、コストも低く
   済みます。

   こうして、ある『試作品』ができました…

 

 

---

 

 

「イザーク!ようやく判明しましたよ!これを見てください!」

息を切らせて1課に駆け込んできたニコルが、一抱えもあるファイルを<ドン!>とイザークの目の前に置いた。

「ご苦労。…で、俺がこれを見てもさっぱりわからんのだが…」

中には、あまりお目にかかりたくない『亀の甲』、要は『ベンゼン環』が幾つもくっついた化学式の山ばかり。

「すまん…俺にもさっぱりだ。ニコル、解説してくれない?」

ディアッカが拝むようなポーズをとると、ニコルは「じゃぁ掻い摘んで…」と説明を始めた。

「ルナマリアさんの残していたガムの成分には、とんでもない成分が含まれていました。しかも、そのもの現物を直接調べても、何一つ問題となる成分は出てこなかったんです。」

「「とんでもない」のに…「問題がない」…? どういうことだ?」

イザークがとんちの回答をひねり出すように、こめかみで指を回す。ニコルはページをめくりながら続けた。

「問題ないので見落とされるんですが、この成分が実は「人体に吸収されてから変化する」んです。しかも成分は直接脳神経に影響するように。それもMDMA(幻覚剤)の4倍の濃度です。」

「ちょっと待てっ!それって要は「麻薬の4倍の濃度」ってことか?」

ディアッカも頭を捻る。ニコルは「詳細はちょっと違うんですが…ま、そう思ってください」と言いつつも、更に続けた。

「ですから、とんでもないからくりでした。吸収されて人間の脳に到達して成分が変わるなんて。で、これが、吸収されたあと、脳に及ぼす影響です。」

イザークがファイルのページをめくる。

「「過剰筋反応」…アスランが言っていた、筋肉の自制が利かなくなるってやつか。それに「幻視」「幻聴」の幻覚関係。「痛覚のマヒ」…」

「凄いな…」

ディアッカも言葉にならない。だが、ふとイザークが顔を上げた。

「待て。今の話なら、これを口にした全員がおかしくなるはずだ。だが、ディアッカが持ってきた報告書のキャンディーやガムの包装個数と、発症した人間の数が一致していない。つまり「暴れなかった人間もいる」ということだ。」

「はぁ!?だってこんな危険極まりない成分が入っているんだろ!?誰だって無事でいられるわけが―――」

「そこがこの成分の最大の謎、だったんです。」

ニコルが二人をこの一言で黙らせた。

「…まだからくりがあるのか?」

「そうなんです。それこそ「この事件の最大のからくり」でしょう。」

ニコルはファイルを数十ページめくる。

イザークとディアッカが覗き込んだそこにあったのは―――

「人間の頭の解剖図…?」

「というか、耳の奥の構造じゃね?これがどうした?」

二人の疑問に、ニコルの興奮は最高潮に達した。

「そう!耳が問題だったんです!」

「「耳?」」

「はい。この成分、ただ吸収されただけじゃ、毒性を発揮しないんです!ある「振動」を受けるとそこでようやく変異するんです!ただ、ご存知の通り、ルナマリアさんのように発症した人と、しなかった人がいますが、それには個人差があったんです。脳の近くで、最も振動を受けるのが「鼓膜」。この「鼓膜」は人によって個人差があって、受ける振動の幅が違います。音は振動ですから、ある特殊な音を聞くことで、感受性のある人の鼓膜が振動。そして―――」

「この麻薬の何倍という毒物が脳内に広がる…」

「その特殊な音ってのが、つまり―――」

 

 

---

 

 

「キャンベルさんの声だったのか…」

アスランは呟いた。

「はい。ですが、今のアスラン君の答えだと、マイナス2点減点ですかね。最初は彼らの声で試していたんですよ。」

 

   私は彼らの声を簡単に広める方法を得ていました。

   何より、今の私の仕事がその最たるものです!

   彼らをデビューさせ、その音楽という名の声の振動を響かせたらどうなるか…

 

   そこでまず、私は事務所を作り、彼らをデビューさせ、あちこちの局に売り込みました。

   彼らの出演が決まった後、その番組の始まる前に、『試作品』…つまり『人狼化の薬』を混ぜ込んだガムを
   不特定多数に配布。

あ、念のため大事にならないように、配布場所付近に警察官を用意するよう、匿名でメールを送りました。

あんまり騒ぎが大きくなると、いくらジブリールの後ろ盾があろうと、計画の進行が進みにくくなりますからね。

   そして、効果は―――…まぁまぁのところでしたね。配布数に対して2,30%というところでしょうか。

   改良の余地がある
かと、そう考えていたその時です!

 

   ♪貴方の声は 微笑み残して〜

 

   同じステージの後に登場したアイドル。そう、彼女です!『ミーア・キャンベル』の歌が始まったとき、人狼化した
   人間の報告が
急激に上がってきたのです!

 

 

「……」

アスランは警察署で、ディアッカが何気なく見せてくれた報告書を反芻する。

…確かあの時、飲食店で起きた暴行事件の発生時間は、ミーアの出番より前だった。対応した女性巡査が事件後、

(―――「あ、『ミーア・キャンベル』ね。…そういえば今日歌謡祭あったんだよね。待機中もずっと流れてたけど、さっきまで男3に組の凄いヘビメタロックだったのよ。聴いていたらなんか頭痛くなりそうだったけど、こっちのほうがまだマシね。」)

と所感を述べていた記録があった。

そうだったのか、ミーアはほんの偶然で、アズラエルの毒牙にかかってしまったのか。

そして、彼女の自尊心を煽り、巧妙に近づいて…

「…俺を出汁に使ってでも、キャンベルさんを手に入れようとしたのは、それか。」

「もうここまでお話すれば、あとは貴方も体験した通り。お判りでしょう?」

「いや、まだだ。」

「はい?」

「何故カガリを必要とする!? その研究に彼女は全く関係がないじゃないか!」

怒りを含んだアスランの叫び。アズラエルはもろ手を挙げ、「やれやれ…」と肩を透かして見せる。

「それで君の点数は100点から95点になり、先ほどマイナス2点で…幾つ減点しましたっけ? ま、いいです。最大の減点はそこなんですよ。」

アズラエルは今度は椅子をクルリと反転させ、アスランに向き直すと、足を組みなおし語り始めた。

「人狼には、ちょっと困った問題がありましてね…」

「『困った問題』?」

アズラエルは、我関せず、というようにダラダラと時間をもてあそんでいるBursted Men3人を呆れるように見まわしていった。

「貴方もこれくらいはご存知でしょう? 狼男は「満月になると変身する」というのを。」

「あぁ…」

一般によく知られる「狼男」の伝承だ。伝承の場所によっては新月からクリスマスまで、などまちまちだが。だが、それとこれとがどうカガリと結びつくのか。

苛立つアスランを前に、いかにも実験に失敗した科学者のごとく、がっかりと言わんばかりにアズラエルが続けた。

「こいつ等も同じだったわけです。人狼化の薬はある程度形を成したのですが、なにせ狼男…月が満月にならないと、本当の力を発揮しない。 戦闘能力は人為的に上がりましたが、身体の回復だけはまだできないんですよ。つまり―――」

「「過剰筋反応」で骨折や筋肉の断裂がおきても、満月が来ないと回復できない…」

「はぁ〜…まさに、それだけが難点だったんですよ。」

悔しそうに肩を落として見せるアズラエル。

アスランは「ハッ!」と目を見開く。

(そうか…そこでカガリの持つ力が必要になったのか!)

「吸血鬼の回復力が…」

「ようやく満点の回答ですね♪その通りです!」

アズラエルは機嫌を戻して立ち上がった。そしてまるで天に向かって叫ぶ舞台俳優のように歌い上げた。

「貴方は本当にいい仕事をしてくれたものです!ラウ・ル・クルーゼ! 「人狼」の兵器化に、「吸血鬼の超回復力」、それも王家の強力な血筋を持つ彼女が、まさに私の手の中にあったんですから!」

 

それでアズラエルは欲した。

 

ミーアを

 

そしてカガリを

 

勝手な欲のために、周囲を全部巻き込んでまで―――!

 

「・・・るさない…」

「はぁ?何か言いましたか、アスラン君。」

アスランは歯を食いしばりながら、全身のありったけの怒りを込めてアズラエルに叫んだ。

「俺はお前を許さないっ!! 身勝手な欲望のためにカガリを、キャンベルさんを追い詰めたお前を!」

「何を言うのです!君だって今のこの国の惨状を知らないわけはないでしょう! 確かに国際化はあらゆる科学や文化の発展を生みました。しかしです、危険な薬物、この国にはなかったような極悪な犯罪件数が増え、国民は道徳を失い、まるで欲に流されるだけの人間に成り下がっている!これを放置してはいけない!誰かが止めなければ!君はそう思わないのですか!?」

「思わない!もはや鎖国できる時代じゃないんだ。人の移動がたとえなくなっても、それこそ科学の生み出した電子や通信で、いくらでも外の世界を覗くことができる。物理的に人間性を無視した止め方をしても、それが人のためにあるとは思えない!」

双方にらみ合い、ぶつけ合い、息が上がる。

だが、アズラエルは一つ深呼吸すると、クルリと背中を向けた。

「ま、いいでしょう。君はもっと賢く話の分かる人間かと思いましたが、とんだ見込み違いですね。…見込み違いどころか、とんでもなく邪魔をしてくれる、これ以上君に居てもらっては困ります。が―――」

顔だけ振り返って、アズラエルはアスランを見やると、口角を上げた。

「まだ君にはやってもらうことがあります。大物を釣り上げるには、やはり食いつきのいい餌がないといけませんからね。」

「―――っ!」

アスランの全身が緊張する。

まさか―――!

「まさか…お前、カガリを…」

「もうそろそろですかね。先ほど君がお目覚めになる前に、モーニングコールをさせていただきました♪ とぉってもお元気そうで、今すぐこちらに向かっているそうですよv」

「やめろっ!カガリに手を出すなぁぁぁーーーーーっ!」

「そう言われても、這いつくばっているだけの君に何ができるんですか? せいぜい彼女の同情をそそる、良い演技をしてくださいよ♪」

そういってアズラエルは高笑いした。

アスランは悔しさに唇をかむ。鉄の味が舌に滲んだ。

自分の不甲斐なさに目を瞑り、ただひたすらに祈った。

(カガリ、来るな―――来ちゃだめだ!)

 

 

 

・・・to be Continued.