Bursted Men』の3人は、まるで珍しい生き物でも見るかのような表情でそれを見ていた。

彼らの前には、両手をズボンのポケットに突っ込み、ウロウロと歩き回っては、思い出したようにロッキングチェアを蹴飛ばすアズラエルがいた。

どんな時もスマートな無駄のない動き、そして余裕綽綽の微笑みを浮かべている彼が、今はまるで自分たちを鏡で見ているような悪態をついている。

「―――っ!あのバカ女がっ!」

蹴り倒した椅子が倒れる音より響く声でアズラエルが怒鳴った。

歌う以外ではこちらの言うことだけしか聞けない、頭の働かない女だと思って油断していた。

事もあろうに、あんなことをしでかしてくれるとは…

「なぁなぁ、おっさん。」

「何ですか!?クロト君、騒々しい。」

「警察まで出てきたけど、どうすんのさ、これから。」

「俺らメンドイのに巻き込まれんの、ごめんだからな。」

クロトに続いてオルガも文句をつける。

(全く…拾ってやった主に向かって、生意気な態度ですね!)

口の端をゆがませて、アズラエルは3人をひと睨みすると、いささか乱暴にソファーに腰を落ち着けた。

 

完全に誤算だった。

ミーアを一瞬手放しても、あそこまで世間に追い詰められ、事務所すら裏切った彼女が、何か余計なことを考える余裕など無いはずと、高をくくっていたのが間違いだった。

 

アズラエルは、テーブルに置かれたままのブランデーグラスを乱暴に煽った。

最悪、ミーアがこのまま戻らなくても、ミーアの音源は既に手に入れている。

寧ろ問題なのは、「二匹目のどじょう」の方だ。

この隙に手に入れるはずだった「アレ」…弱り切ったところなら、赤子の手を捻るよりも簡単に手に入れられると思ったが、ミーアの犯した失態で、また作戦を練り直さなければならなくなるとは。

(少々危険な手ですが…穏便に済まないのは元々承知の上です。そのリスクを冒してでも手に入れる価値があるのですからね…)

 

そう―――「アレ」が手に入れば、警察はおろか、国家さえ手中にできるのだから!

 

「おい、おっさん。話、聞いてんのかよ。俺ら警察は―――」

「大丈夫です。そっちに関しては貴方方ごときが心配せずとも、簡単に抑えられます。そのために「アレックス・ディノ」…いいえ、「アスラン・ザラ」を手に入れようとしたのですから。」

アズラエルはグラスをテーブルに置く。

アルコールが適度に脳を興奮させ、苛立ちを高揚へと変えていく。

Bursted Men』の3人は、またいつもの面白くなさそうな表情に戻った。

アズラエルの表情が、元通りの自信みなぎるそれに戻ってしまったからだ。

先ほどまで歪んでいた口角を上げ、アズラエルが立ち上がった。

「では皆さん、次のステージに行きますよ。」

 

 

***

 

 

深夜の病院と同じくらい、あまり立ち入りたくない場所に選ばれるであろう「警察署」。

ミーアに付き添うというアイシャを除いたアスラン、バルトフェルド、ダコスタがディアッカに先導され、やってきた先は会議室だった。

ダコスタがオドオドと質問した。

「あの…取調室、とかじゃないんですか?」

「それはもう容疑が固まった人の行くところ。アンタらはそうじゃないだろ? 関係者全員の話を整理しないと、こっちも捜査にならないんでね。それに、男4人+筆記官も入ったら、あんな場所狭いし暑苦しくて話もできないぜ。」

ディアッカが笑ってドアを開ける。すると

「アレックス君!」

「アレックス・ディノ、一体今までどこへ行っていたんだ!?」

「ラミアス社長!ナタルさんまで…」

アスランの姿を見て、既に呼び出されていたらしい事務所社長のマリューとナタルが立ち上がった。

そして、もう一人―――

「全く…久しぶりにお前の名前を見たと思えば「事件の参考人」とはな。人気商売なんぞ、慣れないことをするからこんな目に遭うんだ。」

「イザーク…」

アスランが目を見張る。

ディアッカが出てきた時点で、彼のことも当然思い出してはいたが、警視正御自ら登場とは。

驚くアスランに、ディアッカがこっそりと耳打ちする。

「いーや、お前の心配は御無用。」

「ディアッカ…?」

「尋問とかじゃなく、ただ、お前に会いたくて、理由付けてきただけだから、アイツ。」

「何だディアッカ。何か今アレックス・ディノに告げ口していなかったか!?」

「いーや、別に…」

こんな時にもかかわらず、アスランは思わず苦笑する。

子どもの時からプライドが高く、それでいて案外仲間思いのイザークの根本はちっとも変っていない。

ディアッカの皮肉も変わらない。イザークもいちいちそれに引っかっていくうちに、ちょっとした囁きさえ鋭敏に聞き取る地獄耳になって以来、相変わらず耳ざといらしい。

今度は反対側の耳から、ダコスタがアスランに囁いた。

「…さっきも言ってましたけど、アレックスさんって、この警察官の方々とお知り合いなんですか?」

「あぁ…」

「フン!ガキの頃、クラスメイトだっただけだ。」

アスランに代わって、ここの囁きまで聞き取れた地獄耳のイザークが答えるが

「そう。テストは愚か、体育でも音楽でも、コイツ全然アレックスに勝てなかったんだぜ。」

「ディアッカ!余計な情報は漏らすな!!」

三白眼のイザークとおちょくるディアッカに、苦笑するアスラン。

傍らで見ていたバルトフェルドが、ようやく腑に落ちた、というように、アスランを見る表情が緩む。

(芸能界には珍しい眉目秀麗だと思ってはいたが、警察上層部が同期、とは…)

素性は知らないが、これだけ官僚の知り合いがいる、ということは、元々上流階級の人間、あるいはエリート学校に通っていたのだろう。約束された人生だったに違いない。

そんな人生を棒に振ってまで、カガリ・ユラの陰を選ぶとは。

(どうやらミーアじゃなくとも、興味を持てる人間、というわけか…)

もっと早く目をつけておけば、自分の事務所に入れられたのに、と苦笑しつつ薄ら悔やむ。

そんな警察署にあまり似つかわしくない和やかな空気を、<パンパン>という手拍子が遮った。

「ま、同窓会はまたそのうちに、てな。今はこっちのほうが優先だ。どうぞ座ってくれ。」

ディアッカの声に、ようやく会議室が緊張を取り戻す。各々長机を挟んで自然と所属事務所に別れて座りだした。

上座に堂々と座ったイザークが司会だ。

「今日来てもらったのはほかでもない。エルスマンから成り行きは聞いていると思うが、目的は2つの事件の情報提供を願いたい、ということだ。一つは『連続暴動事件』そしてもう一つは今日発生した『ミーア・キャンベル傷害事件』。これを時系列で整理したいのだが、エルスマン。続けてくれ。」

イザークの隣に立って、ディアッカが手帳を取り出し話を進める。

「そちらの女性陣には、既にジュール警視正から事の詳細は説明済みと聞いて話を進める。まず『暴動事件』の方だが、さっき話した通り、キャンベル氏が歌謡番組に出た時、いくつか暴動が発生している。これについて事務所側では今まで何か気づいた点は?」

ダコスタが首を大きく横に振って答える。

「いえいえ!そんな話は今まで一つもありませんでした。」

「それに、だ。」

バルトフェルドが続ける。

「大体キャンベルの歌を聞いただけで暴れる、っていうのがあり得ないだろう。もしそうだとしたら、今まで数多くこなしてきたコンサート、イベント、果てはPVCD、全ての音源でそういった騒ぎが起きているはずだ。だが今までそういった現場は一度もない。これに関して、警察はどう言い分を付ける気だ?」

場合によっては名誉棄損にも訴えかねない、と言わんばかりの眼力だ。流石は社長業をこなしてくるだけの度量がある。

イザークはその真っ向から挑んでくる視線に受けて立った。

「無論、曲を聞いた全員が暴動を起こしているようなら、直ぐにそれは問題になっているはずだ。俺たちは現在、キャンベル氏の歌の歌詞や音波、何かイントネーションで特異な部分に達すると、人間の精神に何か影響を及ぼすのではないか、と推理している。…そこで出たのが、お前だ。アレックス・ディノ。」

イザークの視線により、一同がアスランに集中する。

「何でアレックス君がそこに出てくるのでしょうか?」

マリューが不安そうにイザークに訴える。が、イザークは

「今日の午後、突如流れたPVで大規模暴動が発生した。そのPVに映っていた映像と同じものがキャンベル氏の携帯に入っていた。映っていたのはキャンベル氏ともう一人、アレックス・ディノだった。」

「何だって!?どういうことだ、アレックス!」

ナタルが椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がり、アスランを凝視する。マリューも驚きを隠せない。

イザークは横目でチラリとアスランを見ると、二人に向かって更に説明を加えた。

「今までの暴動は単発なものが多かったが、今日の新曲に限って、大勢の暴動者が発生した。男優でもないアレックスがPVに出るというのは、その曲の作り手として彼が関わっていると考えるのが自然だ。そのアレックスの曲が、キャンベル氏の何らかの力を大きく引き出したのでは、とも考えている。」

「……」

アスランがチラリと視線をディアッカに向けると、彼が頷いた。

なるほど…あのミーアと抱き合う男の写真は、今日流れたというPVのものだったのか。だから警察はミーアとアレックスがあの新曲の関係者とみて、ここに呼んだという訳か。

「…俺はまだそのPVとやらを見ていないので、ここで返答はできないが、まずはその写真は俺じゃない。多分合成で作り出したんだろう。そこは科捜研で調べてもらえばわかるはずだ。ただ、その新曲は俺が作った曲に間違いないと思う。…ともかく社長にもマネージャーにも連絡を取る術がなかった、ということは事実だ。そして先ほどできなかったバルトフェルド社長の質問にも、ここで回答したい。」

その声はずいぶんと落ち着いていた。

これなら真実が判ると、ようやくバルトフェルドがアスランに頷いた。

そして、アスランは話し始めた。

 

 

カガリが倒れ、I.F.がオフになった途端、急にレコード会社社長、ムルタ・アズラエル氏より単独で呼び出しを
   受けたこと。

そこにはミーア・キャンベルもおり、彼女もアズラエル氏に呼び出されていたこと。

アズラエル氏は二人を新ユニットとして、自分の事務所『ブルーコスモス』からデビューさせたがっていたこと。

ミーアは乗り気だったが、自分は事務所を通すよう話を付け断ったところ、携帯もPCもネットや電波環境から隔絶
   されたスタジオに一人軟禁され、曲作りを強要されたこと。

一曲作れば開放される約束だったが、今日のPVによる大衆の反応を見たというアズラエル氏の命で、このまま続ける
   ことを強要されたため、隙を見て逃げてきたこと。

そして、スタジオに忘れてきたはずの自分の携帯から、カガリの携帯宛に呼び出しが入っており、てっきりアズラエル
   が彼女を人質にして脅迫されると思い、向かったところ―――

 

 

「なるほど…合点がいった。それでキャンベルの部屋に行ったわけだったか…」

バルトフェルドが大きく息を吐いた。

「じゃぁ、この写真に載っていた、お前たちの熱愛報道、というのは…」

ナタルがずっと握りしめていたらしく、グシャグシャになった週刊誌を見せると、そこにはアスランに背後から抱き着くミーアの写真がデカデカと掲載されていた。

これがディアッカの言っていた「自分のニュース」と初めて知り、アスランは深いため息をついた。

「違います。…多分それはドミニオンレコード本社に着いたとき、彼女が冗談でしがみついてきたところを偶然居合わせたか、それとも彼女を追ってきたパパラッチにでも撮られたのではないでしょうか。丁度何かが光ったのを思い出しました。」

「そうか…いや、お前はそんなふしだらを犯すやつではないと、私は信じていたぞ。」

「ありがとうございます。ナタルさん。」

真っすぐ感謝を伝えられることに慣れていないナタルは、思わず赤くなってようやく席に座り直す。

イザークがアスランの話をまとめた。

「ともかく、今日流れたPVの配給元はドミニオンレコード。流した時間や局の指示もアズラエル社長の一任ということだったんだな。」

「なるほど、それでお宅に電話しても答えられなかったわけだ。」

「そうですよ〜。もう、大変だったんですから〜」

警察側はディアッカが問合せ、それを聞いて事務所の回答担当だったダコスタが対応したのだろう。

二人は「互いが電話攻勢の相手」と分かって、顔を見合わせた途端、力尽きたと言わんばかりに机に俯せる。

「…それはそうと、一体何故、アズラエル社長は、そんな要求をしてきたのかしら…」

「しかも暴力的です。十分に訴えられるかと。」

マリューの疑問にナタルも同意する。

「アズラエルという男、何か今まで不審な点はなかったのか?」

イザークの問いにマリューが答える。

「はい。私の知る限りでは、非常に社交的で暴力に訴えるようなことはしない好青年だと思いました。ただ…」

「『ただ』?」

「若くしてあれだけの会社を経営している以上、頭はいいと思います。ビジネスライクにも。それもあってか、かなりの自信家ではあると思います。」

「人の事務所のアイドルに手を出すなんて奴が、まともとは思えないけどな。」

バルトフェルドが尊大に毒づく。

ナタルも憤慨している。

「しかしわかりません…確かにユニットを組ませることは企画として大いにあり得るかと思いますが、両事務所に通してしかるべき事案です。それを勝手に引き抜きのようにして…」

「『いいとこどり』したかったんですかね…?」

ダコスタも肩を落とす。

 

「……」

今のやり取りと、自分が監禁されていた間の出来事を反芻して、アスランは黙って思考する。

確かに最初は、強引だがユニットを成功させたく、無茶を通したかと思ったが…

(…おかしい…)

あまりにも不自然な点がありすぎる。

先ず最初の疑問は「何故、ミーアに目星をつけたか」、ということだ。

単純に彼女は歌が上手い。それは認める。だが、レコード会社や事務所を超越してまで手に入れようとしたのか。ただの企画であれば、事務所に相談してもよいはず。企画がよければ事務所も乗り気になるはずだ。確かにレセップスレコード側としては受け入れがたいだろうが、交互にCD販売するなど考えようはある。事務所に相談しないというのは、不利益を被ると知っているが故に、相談しなかった、というのが一番考えられる理由だ。

そして第2の疑問は「今日流れたというPV」だ。

明らかに今日流したのはアズラエルの指示だろう。

しかし、本当にユニットとして売りたいのであれば、販売元のレーベルも堂々と名乗ればいいところ、警察が問合せ先に困る程、全く名を明かしていないようだった。これではまるで売ることより、暴動を起こすことが目的のように…

 

(…まてよ、)

 

―――『暴動』が…『目的』―――!?

 

アスランの眼が見開く。

(まさか…最初から売り出すことが目的ではなく、ミーアの声で事件が起きていることを察して、ミーアを選んだ…?)

普通では考えられない。だがそう考えるとすんなり話が通る。

(だが、一体何のために…)

それさえ判ればいいのだが、情報が足りなさすぎる。

一般的に暴動を起こす目的としては、例えば政府などの権力に対し、何らかの訴えを聞いてほしく、実力行使に出た場合、が一つ。

また別の目的としては、警察などの眼を欺くために施行するものだ。暴動の鎮圧に警察が躍起になっている間に本来の目的を達成する、という場合。

だが、前者の場合、権力に訴え出るなら公官庁などを目標に選ぶのがセオリーで、今日の現場となった繁華街では殆ど意味はない。

そう考えると後者の方が考えられるが、ここにも一つ疑問が生じる―――暴動で警察の眼をそらすにしては、時間が短すぎるのだ。たった4分少々の間で何ができるというだろう。

混乱も、長時間あったようには見えなかった気がするが、実際の現場は続いたのか…?

「すまない、一つ聞かせてもらえないだろうか。」

「どうした、アレックス。」

「今日の暴動事件が起きた時間と原因らしきものは分かった。…しかし、それにしては大きな混乱はなかったように思える。俺は今日外に出たが、影響が一つも見えなかった。」

するとイザークに代わってディアッカが得意気に言った。

「そりゃそうだろ。事前の情報提供のおかげで俺たちが先手を打って暴動が大きくならないように抑えたんだから。」

「…『事前の情報提供のおかげ』で『抑えられた』…?」

「ディアッカ!一般人に重要な情報を漏らすな!」

イザークが怒鳴り、慌ててディアッカが口を押える。

だが、アスランはこれで微かな手ごたえを得た。

『情報』とは、もしかしたら警察に先んじて情報を与えていた者が居る、ということだ。

カガリのために、あれだけ犯罪情報を集めようとしていたのに、一向に情報が集まらないどころか、一課があっという間に解決、もしくは未然に抑えていたのは、先んじて情報を流していた者が居たからに他ならない。

(だが…それは何のために…?)

そう考えると警察の眼を逸らす、という先ほどの仮説は否定される。

何しろ情報を与えているくらいだ。眼を逸らすつもりはさらさらない。

(『暴動』が『目的』じゃないとしたら…その前段階…むしろ『情報提供』が『目的』…?)

警察の注目が情報提供者に及ぶことぐらい、アズラエルも考えるであろう。そのリスクを冒してでも、『情報提供』することに意味がある、ということだ。

(よく考えろ…ヤツの与えた『情報提供』の利害を…)

 

情報提供があって助かったのは―――『警察』。

 

情報提供があって困ったのは―――

 

(―――「「どこまで知っているんですか?」でしょうか? そうですねー。あえて言えば「貴方の正体」あーんど、今貴方が必死に隠している「彼女の正体」について、くらいですかね〜」)

 

 

―――まさか…『Vamp』!?

 

 

いや、考えられなくはない。

カガリの正体を知っているというアズラエル。

理由は分からないが、もし『Vamp』…いや、「カガリを捕らえること」が彼の『本当の目的』だったとしたら―――

 

普通の人間では、彼女を捕まえることなどできない。

捕まえる方法は一つ―――「弱らせる」こと。

つまり、血液の入手がなければ、カガリは弱っていく。

もしアズラエルが自分たちを『Vamp』と知っていたとしたら…

血液を入手させないためには、『Vamp』に犯罪情報を与えないようにする、つまりは犯罪を起こさない、あるいは直ぐに解決できればいい。

更に情報収集を担当する俺が、カガリと物理的にも連絡が取れない状況下にあれば、彼女はますます弱っていく。

俺が逃げたことで、合流してしまうとカガリを奪取しにくくなると判断し、あえてミーアを使って弱ったカガリを呼び出させた、というのか。

 

俺を脅迫するだけなら、前回のように「彼女の正体」について物証でもチラつかせれば、それで十分事足りる。

それをここまで回りくどい方法で、俺を彼女から引き離し、しかも大衆をも巻き込み、あまつさえミーアまで利用した。

 

最初から確実に「カガリを手に入れる」ために…

 

 

「アレックス君…?」

マリューがアスランの異変に気付く。

怒りに肩が震え、そしてまるで獲物を狩るような鋭い視線。

普段穏やかな彼が怒りに震える姿など見たことがなかっただけに、マリューの背筋に走るものがあった。

 

その時、

<コンコン>

会議室をノックする音にディアッカが応対すると、ドアの向こうにいた女性警官が何かを伝えていった。

途端、ディアッカが慌てて振り返り叫ぶ。

「おい、眠り姫さんの意識が戻ったらしいぜ!」

 

 

・・・to be Continued.