Sky GRASPER 朝日が昇り始めた海岸…水面に反射する光を掻き分け、『青と白』の鮮やかな機体が海岸に近づく―――。 「…『ストライク』! キラー!!」 金色に輝く髪を靡かせ、カガリが嬉しそうに機体に手を振りながら、走り出す―――。 小さな島だった…辺りには人の気配すらない。 (こんな島で、女の子が“たった一人”で…) カガリの姿を確認すると、とる物も問わず、キラは『ストライク』のコクピットから海岸に駆け上がった。 「カガリ! 大丈夫? 何処も怪我とかしてない!?」 カガリの両肩をつかみ、殆ど泣き出しそうな顔をしながらキラが言う…。 「だーい丈夫だって!! 心配するな! サバイバルは慣れてるんだ!…それより、お前!…本当に涙腺ゆるいよな〜。」 キラの顔を覗き込みながら、いつもと変わらない‘ツッコミ’を入れると、負けじとキラも応戦する…。 「カガリだって…人のこと…言えないじゃないか。」 指摘され気が付くと、カガリの両目にも、薄っすらと涙――― 「ばっ、馬鹿! 『嬉し涙』はいいんだ!」 「僕のだってそうだよ…。」 一通りの言い合い―――でも、それが何故だか安心できる…。 2人はやがてお互いを見やると、小さな笑いをもらした。 その2人をとらえ、安心したかのように、武装パックを積んだ青い戦闘機が上空を旋回した――― * * * 「あ〜ぁ、こりゃ無理だな〜。」 カガリの乗っていた『スカイグラスパー 2号機』は満潮により、操縦席までどっぷりと海水に浸っていた。 (これじゃぁ、あのオッサン…すんごい文句言うだろうな〜〜) 怒り顔の整備士――マードック曹長の姿が、否応なく想像できる。 地球大気圏内用戦闘機だから、精密機器の海水侵食への対応くらい考えてあるのだろうが、いかにせよエンジンまで海水に浸っては、十分なメンテナンスが済むまでは、当分飛ぶことも出来ないだろう…。 「しょうがない…キラ! 『ストライク』乗せてってよ!」 「えっ!?…狭くなるよ?」 「じゃあ、こっから私はどう帰れって言うんだよ!? また『水浸し』のコクピットの中で、『アークエンジェル』まで、運ばれるのか?」 後ろに立てば、2人分位の空間はあるが…非常時とはいえ、女の子と2人きりで狭いコクピットの中にいることを考えると… (まぁ、以前ラミアス少佐とも、一度乗っている訳だし…) 自分に『言い訳』をしながら、キラはカガリを『ストライク』へ連れて行った。 「ほんと、狭いよな〜。」 「だから、言ったじゃない…。」 カガリはキラと顔を並べるようにして、目の前の画面を覗き込む。 と…。 (グゥ〜…) 安心したのか、急にカガリの腹の虫が鳴きだした。 「ぷっ…。」 「悪かったな!! 何にも食べてないんだから!! …早く帰るぞ!!」 真っ赤な顔をしながら、カガリが文句を言うと、それまで笑っていたキラも、流石に悪いと思ったのか、真顔に戻る。 「ごめんね。そうだよね。昨日から何も食べてないんでしょ?」 「あぁ、今朝はな! 昨日は…。」 言いかけてカガリが急に言葉に詰まる――― (昨日は…食べ物分けてくれたっけ…アイツ…) 自分でさえ、何時救援に来るか判らない状態で、食料は貴重である。その貴重な食料を分けてくれた… ―――静かな、優しい翠色の目をした少年――― 「…こんな所で、戦闘になりたくはないからな…。」 (まだ、この島にアイツはいる…今なら『ストライク』と『スカイグラスパー 1号機』がいる… 『今』なら…アイツを…) よぎる思いをかき消そうと、カガリがキラを促す。 「昨日は、非常用パックの食料食べたから大丈夫! そんなことより、お前だって寝てないんだろう? 目の下“くま”出来てるぞ!」 「えっ!? そんなことないよ!」 「いいから、早く出す!」 キラを急き立たせる一方で、カガリの胸に小さな思いが過ぎる。 (…どうか、『お前』も…無事に、逃げてくれ…) * * * 帰り先の反応は、カガリの想像通りだった。 ラミアス艦長は無事を労ってくれたが、その横の――バジルール中尉は冷たい視線で一瞥した。 うるさい“曹長”は案の定、ガミガミ怒鳴り散らし、その横を昨日、自分の出撃を許可した――フラガ少佐が、曹長の背を「まぁまぁ」とばかりに叩き、カガリの頭に“ポン”と手を乗せると、いつもの飄々とした様子でロッカールームへ向かった…。 しかし、何より恐かったのは…いつもカガリの傍で見守る――キサカ――の圧倒的な威圧感だった。 「…カガリ。 本当にあなたはご自分の『立場』を判っているのですか?」 「判っている! でもあの時はどうしようもなかったじゃないか!!」 キサカはカガリを見下ろすと、 「ご自分の行動を『冷静に』判断する…それも学ぶべきです。」 それだけ言うと、ゆっくりと立ち去った。 * * * 『ストライク』のコクピットへ通じるキャットウォークの横で、メンテナンスが続く『スカイグラスパー』をカガリは見守っていた。 そこへ、『ストライク』の整備に訪れたらしい、キラの姿が目に入る――― 「ちゃんと休めたのか? お前?」 「お陰様で。…カガリは大丈夫?」 「私は平気さ!」 キャットウォークの柵にもたれながら、カガリが言う。 「その…ありがとな。」 「えっ?」 「助けに来てくれて…。」 不意に礼を言われ、戸惑うキラも慌てて声を掛ける。 「当たり前じゃないか!『仲間』なんだから…。」 ―――『仲間』? 『仲間』って、何だろう…同じ力を持つ『同胞』のこと? …それとも共に戦っている『人達』のこと・・・? 急にあの時が蘇る… (あの人は『同胞』だった…でも『敵』なんだ…) 『―――どうやって、勝ち負けを決める? 『敵』であるものを全て『滅ぼして』かね?』 (…殺したくなんてなかった…『あの人』は『敵』…でも…) 『―――お前も、一緒に来い!』 思い出すのは、いつも一緒だった…静かで、優しい翠色の瞳の少年――― 『―――お前が地球軍にいる、理由がどこにある!?』 (…どうして…『理由』って…何なんだろう…? …『戦う理由』…) 黙り込むキラに、カガリが声を掛ける。 「おい、大丈夫か?」 声を掛けられ、ハッとする。 「うん。大丈夫だよ…。」 (…大丈夫?…本当は…どうなのかな…?) カガリの顔を一度見やると、キラは不意に―――あの時フレイに割って入られ、話せなかったが――― カガリに話したい衝動に駆られた…。 (僕は…『戦い』たくなんてないんだ…。カガリと地球で会う前にね…僕は『友達』と戦わなければならなくなったんだ…今は『宇宙』にいると思うけど…また『彼』と出会ってしまったら…やっぱり『戦わなければ』ならないのかな…) ―――“大丈夫”といったキラの顔から視線を外すと、カガリも黙り込む…。 (私さ…本当はあの島で『一人』じゃなかったんだ…本当は『敵』と一緒だったんだ…倒さなきゃならないはずだったのに…どうしても…倒すことができなかったんだ…『敵』のはずなのに…『憎む』べき相手だったはずなのに…どうしても『憎む』ことも…出来なかったんだ…) 思い出すのは静かな翠色の瞳――― 「あのっ…」 「あのさ!…」 同時に声を挙げ、顔を見つめ合う――― 「キラから言えよ。」 「いいよ。カガリからで…。」 「いや、私はいいから。お前こそ何だよ…。」 ―――2人が話を切り出そうとした、その時、艦内をけたたましくアラートが鳴り響く。 「オレンジ20、マークαに敵影4、接近!」 ブリッジにミリアリアの声が響く。 それに引き続く、サイの声。 「敵、照合確認―――『デュエル』『バスター』…それに『ブリッツ』『イージス』と確認!」 2人の中で何かが弾ける… ―――優しい翠色の瞳の少年を覆い隠すように映る…『戦う』意志に満ちた…燃えるような『紅の機体』――― アラートに導かれるように、同時に2人は走り出す。 ((…今は…『戦う』しか…ないんだ…)) ・・・to be “ORIJINAI STORY”.
>初書!「SEED小説」!(多分5,6月頃…) あのアスカガファンにとっては『伝説の24話!』(笑)の後、25話の間の事を…書きたかったらしい…。 この時点で、14話と2ndOPと“ネットのネタバレ”から、この2人が双子ということは知っており、 (この頃、私は双子ファンでしたv…いや、今でも…)何か2人が『共有』しているものを書きたかったらしい… が、今読むと、何を言わんとしているのか…全く判りません!(大笑!) でも、このままの形で、あえて出させていただきますネ(^^ゞ(ちなみに、この奥付は10月現在です) よろしければ、お目汚しに・・・ >Nami
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