二度の大戦が終わって、「真の平和」が何とか手に届くところまで来たと思う…

この身を犠牲にしても、プラントと地球を守っていきたい。

お父様がそうしたように、私も真の為政者になることを目指して、無我夢中で今まで頑張ってきた。

プラントには今はラクスがいてくれる。傍にはキラもいる。

これ以上の信頼できる相手はいない。

だから大丈夫!この大地は私が守っていく。

オーブも立ち直り、国民の笑顔が戻ってきて、あちこちで楽しそうな笑顔が溢れている。

そんなオーブを好きでいてくれる国民を…ううん、鳥や動物や植物、みんなが安心して暮らせていることが、私の何よりの至福だ。

 

 

だけど―――

 

 

「オーブが嫌いだ!」と言い切った『彼』

 

 

同じオーブの出身なのに、解り合えなかった『彼』

 

 

今も『彼』はオーブが嫌いなままなのだろうか…

 

 

 

「はぁ…」

通信中についたため息が、こんなことになっていくとは

 

 

 

〜こんなカゾクのカタチ〜

 

 

 

「はぁ?「自分が」で、ありますか?」

「そうなんですの。是非『シン・アスカ』、あなたにこの「重要機密書類」をカガリさんの元へ直接届けてほしいのです。」

議長席でにこやかにラクスが一つの封書を差し出す。しかも『厳封印』が施されているから、うっかり開けることもできない。

「書類じゃなくたって、今はデータで伝送すれば済むことじゃないですか。なんで俺がアスハなんか―――あ、いえ、『アスハ代表』に直に持っていかなきゃならないんですかぁ〜?」

「「だからこそ」なんだ。」

ラクス・クライン議長の隣に立っているキラ・ヤマトZAFT准将が、これまたラクス様に負けじと言わんばかりの笑顔で言った。

「データだと、『どうしても見せたくない者』にまで見つかってしまう危険もあるし。だからMSでの戦闘能力も高い君なら途中で襲われても絶対守ってくれるだろうし。」

「そうですわ。『どうしても関わらせたくない人』も、とても身体運動能力も高いですし、ZAFTレッドの貴方ですから、私も安心してお任せできるのですわ。」

 

―――いったい何なんだ、この二人は…ニッコリ笑顔で極秘情報とやらを渡すなんて…本当だったらもっと厳しい表情とかしないのかよ…

 

だがシンもこの数年で知った。

この二人が揃って笑顔の時、逆らったりすると、とてつもなく恐ろしいことが起きることを―――

 

「わかりました。じゃぁ行ってきます。」

敬礼し、振り返ってドアに進めば、後ろから「「いってらっしゃ〜いv」」と二人がにこやかに手を振っていた。

 

 

***

 

 

「カガリ様、プラントから特使の方がお見えです。」

秘書官がカガリの傍で一礼する。

「そうか、なんかラクスが「お届け物がありますの。受け取ってくださいな♪」って笑顔で言ってたから、それが届いたのかな?でも一体なんだろう…?」

ブツブツ呟くカガリの前に現れたのは―――

「シン!シンじゃないか!!」

「失礼しまーす。プラントからの機密書類を預かってまいりました、シン・アスカであります…」

笑顔のカガリとは真逆に、慇懃無礼なシン。あの頃と全く二人の関係は変わっていない。カガリが笑顔で応じたが、シンのそっけない態度に、やはり気持ちがやや下降気味になる。

「すまんな、シン。遠路ご苦労だった。そこに座ってくれ。今お茶を―――」

「別にいいっすよ、そんなもん。」

「あ…でも、書類確認したいから、それまで待っていてくれないか?」

「…。」

応接用のソファーにドカッと座って目も合わせない。

(やっぱり…シンはまだ私のこと、アスハのこと、許してはくれていないのかな…)

少し寂しい表情で、カガリが厳封印を解く。するとそこには―――

「――??ラクス?」

 

―――「大丈夫ですわ、カガリさん。シンはオーブのこと、本当は大好きなのです。でもあれだけカガリさんに言ってしまった手前、どういう態度をとったらいいのか、わからないだけですの。

その証拠に、こちらの書類を見てくださいな♪」

 

書類を持つカガリの手がプルプルと震えだす。

「…アスハ…?」

書類に遮られて表情が見えないが、シンの目には明らかにカガリはショックを受けているように映った。

「おい、アスハ、どうし―――」

「シン…お前…」

カガリの声が震えている。すると目の前に突き合わせていた書類を話したと思ったら、カガリの金の目はキラキラと大粒の涙で溢れていた。

「え?あ、アスハ??」

「シン!」

カガリが真の目の前に走りよると、呆然としているシンの両肩を力強くガシッと掴み、感極まった声で叫んだ。

「シン、お前、私の弟にならないかっ!?」

「…はぁ!?」

驚きのあまり、開いた口が塞がらないシンにカガリは尚も嬉しそうに言った。

「だって、この書類のお前のサイン。『シン・アス』って書いてあるじゃないか!!」

「はぁ!?」

シンがカガリから書類をふんだくって見てみれば

 

<証拠物件>

 

 

 

「――っ!!」

書類を持つ手がワナワナと震える。

 

―――「やられた!」

この書類のサインは間違いなく自分の筆跡だ。しかもどこが『重要機密』なんだ!?ただ「MSメンテナンス終了のサイン」じゃないか!!

動転した頭の回転を直しながら考えてみれば、あの二人の妙な笑顔。

最初っからアスハにこれを見せんがために、画策されたんだ!!(←しかも非常に個人的な理由でプラントの一兵卒をオーブの代表首長に会わせようとする、
    どんだけ護衛やらシャトル用意やらスケジュールやら、金と時間を使いまくったんだ!? あの二人は!!)

 

「ほら!やっぱり『Asuha』って書いてあるだろ!!」

「違うーーーーーっ!!『Asuka』だ!俺の字が汚いから「hがk」に見えただけだっ!!誰がアスハなんかと兄弟になるかっ!俺の家族は死んだ父さんと母さんとマユだけだ!」

「じゃぁ、私が代わりに妹になるってのはどうだ!?」

「アンタのほうが年上だろ!!お前と家族なんてとんでもな―――」

「そうか…そうだよな…」

必死に全否定してカガリに噛みついたが、ふとカガリのテンションが急に下がったのを見て、シンも流石に落ち着く。

「私はお母様という人は物心ついた時からいなかったし、お父様とも本当に血のつながった親子じゃない。弟…はまぁいきなり降って湧いたようにいたことが分かったけど…血がつながっていなくっても、こうやって親子兄弟、家族になれるんだな、って思ってさ。私にとってオーブの国民は私の家族みたいなものだから、お前にも家族になって欲しかった、って…」

「アスハ…」

ウズミとアスハ(カガリ)が血がつながらない親子、というのは初めて聞いた。それでもあんな風に親のあとを継いで、頑張っているんだ。たった一人で…血のつながりだけじゃなくって、そんな風な家族のカタチってのも、有りでもいいのかな…

 

真っ赤になって、視線をそっぽに向けつつ、シンが呟く

「いいよ。そこまで言うんだったら、アスハの家族になってやるよ。」

「え?シン、今なんて言った?声が小さくって―――」

カガリがシンを見やると、「あーもう!」と頭をかきむしりながらまっすぐカガリを見て言い放つ。

「だから、俺がアスハの家族になってや―――」

<バタンッ!!>

とてつもない大きな音がシンの後ろで鳴った。

そこには黒いオーラを纏った男が、ドアを開け放ちながらプルプルと震えている。

そうだ、オーブには「こいつ」がいたんだった!!

「シ〜〜ン〜〜ア〜〜ス〜〜カァァーーーーーーーッ!!##」(←※前述の『どうしても見せたくない、あるいは関わらせたくない人』)

 

「あ、アスラン。」

キョトンと無邪気な表情のカガリとは全く真逆の、怒りのオーラを炸裂させて、アスランがシンに詰め寄った。

「『カガリと家族』とはどういうことだ!? カガリの家族になるのは俺に決まっているだろうが!(注:あくまでアスランだけの認識と予定) それをお前、いきなり戻ってきたと思ったら、カガリに迫るとはいい度胸だな!!」

「ご、ご、誤解ですよ!ただ『アスハ』と『アスカ』が似てるってだけで―――!」

「それで「シン・アスハ」になるつもりか!俺なんか「アスラン・ザラ・アスハ」になればゴロが丁度いい(※「ウズミ・ナ・アスハ」「カガリ・ユ・アスハ」んで「アスラン・ザ・アスハ」)だろうが!」

「別に名前なんて関係な―――」

「黙れシン!今日という今日は、今までの無礼も含めて説教してやる!」

 

 

カガリ「おおーい、二人とも落ち着いて戻ってこーい。」

 

 

***

 

 

そのころのプラントas神様ルーム。

キラ「…平和だね〜」

ラクス「平和ですわね〜♪」

 

 

・・・fin.

 

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>先日外国人のお客様が来たとき、氏名を筆記体で書かれていたのですが、かもした「『サハリ』様ですか?」お客様「ノー!『サカリ』ネ! Sorry, My character is dirty!」と言われて「me too!と二人で「「アハハハv」」と笑ったのが元ネタ(実話)ですよ。思わぬSSネタにできました。外人さん、ありがとうございます<(_ _)>

 そういえば、この冬コミで『シンカガ・友情アンソロジー』が発行予定(’13.11.16現在)ですが、こんなネタじゃなく、きっといい作品がいっぱいありそうなので、楽しみにしています♪