| SHALLOW SLEEＰ ～PHASE―Ⅰ～ 一面真っ白だ・・・目の前には・・・何も見えない。 ―――『死んだ』のか・・・『俺』は・・・。 だとすると・・・これは・・・俺の『魂』？ 蘇るのは、黒い機体の最後に見せた閃光――― ―――『アスラン、逃げ――』 最後まで聞き取れなかった・・・あの時撃たれるはずだったのは俺だったのに・・・。 同じ場所にいるなら・・・声を聴かせてくれないか・・・。 無理か・・・俺はきっと地獄に行く・・・『君』とは・・・同じところにはいけないだ ろうな・・・。 目の前に迫る、青と白の鮮やかな機体―――それが自分を本気で倒そうと迫ってきた―――。 あんなに一緒だったのに・・・どうして俺のところに来なかったんだ？ 一緒にきていれば、こんな思いをしなくてもよかったのに―――！！ 『殺すこと』も『殺される』ことも考えもしなかっただろう・・・『大切な友達』・・・ 俺はこの手で・・・『殺した』んだ・・・。 ―――俗に云う『走馬灯』ってやつか・・・こんなことばかり、思い出させるなんて・・・ 『神』も酷なことをする・・・いや・・・俺の・・・『罪』か・・・。 ゆっくり目の前が溶けていくようだ―――もう直ぐ―――消えるのか・・・。 ・・・いっそ、その方が楽だ。・・・どんなしがらみからも、苦しみから解き放たれて・・・。 そう考えると、なぜか可笑しくさえ思える。 ―――『可笑しい？』 最後に『笑った』のは・・・『あの時』か・・・。 不思議なヤツだった―――怒ったり、泣いたり、かと思えば真っ赤になって恥ずかしがったり ぎこちなくだが・・・笑ってみたり・・・ 何の虚飾もなく―――『姫』だというのに―――『ナチュラル』も『コーディネーター』も あまつさえ『身分』も―――何の関係もないようにコロコロと飾り気なく表情を変えて・・・。 自分でも『不思議』だった――― そんな『お前』に出会って、この戦いに身を投じて、初めて心から―――『笑った』・・・ 『笑うこと』が出来た。 『あの日』に出会った・・・『無邪気』な『お前』・・・まるで『夢』のように・・・ 「―――アスラン？」 聞こえる・・・未だ『声』まで覚えている・・・不思議なくらい・・・気配も感じて・・・ 『―――あれはまた、地球を攻撃するんだろ！？』 そうだよ・・・そうして・・・俺は・・・ 『―――あれは、あのモビルスーツは、地球の人たちをたくさん殺すんだろ！？』 『お前』の『望み』は叶ったよ・・・『大切な友達』の命を道ずれに・・・。 何故だろうな・・・今、とてつもなく『安息』を感じる・・・ 『あの時』・・・『お前』と共に過ごした『一夜』と同じ・・・。 また、『お前』に会える気がしてたんだよ・・・ きっと、最後に『お前』に云いたかったんだ・・・ もう『イージス』―人を殺す道具も―『俺』もいなくなるから・・・ 『安心しろ』って・・・ ・・・もう一度『お前』の・・・そばに・・・そっと手をのばして――― （・・・？） ―――白がかっていた目の前が急に明るくなる。 目に入るのは真っ白なシーツと…腕に巻かれたギブス…刺されたままの輸液の注射針…。 （・・・何処だ？・・・ここは？） 窓に目を向けると、眩しすぎる西日に、思わず目をそらす・・・。 「・・・気がついたか・・・。」 横には凛とした、金の瞳を真っ直ぐに向け――その手には銃を携えた――『お前』が立っていた。 ―――生きていた？ 夢の中で、何か見た気がする・・・よく思い出せないまま、言葉を紡ぐ―――。 「中立の“オーブ”が・・・俺に何の用だ・・・？」 ・・・ｔｏ ｂｅ ｏｒｉｇｉｎａｌ ｓｔｏｒｙ． ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ～PHASE－Ⅱ～ 「・・・皆が・・・泣いているみたいだ・・・。」 そう言った俺に『お前』は何も言わず・・・只・・・俺の肩にもたれかかった・・・。 皆が何かを抱えている・・・ 『キラ』・・・自分自身に何かを閉じ込めて・・・誰にも言わずに・・・ 『ラクス』・・・父を失い・・・プラントに平和を問い続けて・・・ 『アークエンジェル』も、『エターナル』も、『クサナギ』も・・・皆、自分たちが信じて きたものを失って・・・ ＊ ＊ ＊ 俺も・・・父を・・・止めることが出来なかった・・・ それなのに、『お前』は必死に俺を励まそうとした・・・ 『―――大丈夫。お父さんとだって、いつかきっとちゃんと話が出来るさ。だから―――』 『家族』も『国』も・・・失ったばかりなのに・・・ そう思ったら、衝動的に・・・身体が・・・動いた・・・ 「えっ？？」 「・・・ごめん・・・」 失ったばかりの『お前』に比べて・・・俺にはまだ話せる『機会』も・・・『プラント』も 残っているのに・・・ もっと聴きたいことあったんだろう？・・・あの優しい国を残したかっただろう？・・・ 「ちょっ、ちょっと・・・」 抱きしめてしまった温もり・・・ ごめんな・・・俺は何も『お前』に言葉をかけてやれない・・・ 『慰めること』も・・・『励ますこと』も・・・ こんな不器用な自分が・・・情けなくなるよ・・・ 「・・・だから・・・その・・・ごめん・・・」 でも、何故なんだろうな・・・ こうしていたら・・・とても・・・『安らいだ』んだ・・・。 ＊ ＊ ＊ ―――『あの時』と同じだ・・・ キラに聴きたいことが、あったんだろう？ 無理に連れ出したのに・・・俺には『お前』の話を聴いてやることが出来ない・・・ いや、例え聴くことが出来たとして・・・何を話せばいいんだ・・・？ 黙って写真を見つめる『お前』を見守ることしか出来ない・・・。 『お前』だけじゃない・・・ 『キラ』にも、『ラクス』にも・・・『俺自身』にも・・・ そうしたら、ふと、『お前』は肩を寄せて、触れた――― いつも『お前』に教えてもらってばかりだな・・・ こんなとき、何の『言葉』も『要らない』・・・ 無理な『励まし』の言葉も『慰め』も・・・『何も役に立たない』と・・・ 只、感じる温もりが、伝えてくれる・・・ 『魂』の安らぎ――― 手を伸ばして触れてやりたい・・・だけど・・・ ごめん・・・今は・・・『お前』を支えてやる『力』がないんだ・・・ だけど、今は・・・こうしていたい・・・ 例え『言葉』なくても・・・触れ合うことで伝わる・・・『想い』を・・ ただ、感じていたいから・・・ ・・・ｔｏ ｂｅ ｏｒｉｇｉｎａｌ ｓｔｏｒｙ． ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ～PHASE―Ⅲ～ 「・・・お前、死なせないから・・・。」 真っ直ぐ見据えた金の瞳――― 『お前』はちゃんと気づいていたんだ・・・ 俺の『本当の気持ち』を・・・ 「・・・『君』は、『俺』が護る。」 覚悟は出来ている。 父が行おうとしている事・・・ 『ナチュラル』を・・・『地球――『お前の故郷』を滅ぼそうとしていること・・・。 それだけは、阻止してみせる・・・ ―――俺の『命』に換えても――― 本当に『お前』に会えてよかった・・・ でなければ、俺はまだ、この愚かな『戦い』を続けていたと思う。 心の整理は付いている・・・只・・・思い残したくない・・・ だから・・・伝えたかった・・・ 『―――愛しているから―――』 言葉に出来ない『想い』、記憶に残しておきたい『温もり』・・・ それを、今は・・・ただ、感じたい・・・ いつもの『お前』みたいに、『素直』になったら 自然と、唇を重ねることが出来た・・・。 ＊ ＊ ＊ 「・・・こんなことをしても、何にもならないのに・・・」 「・・・アスラン・・・。」 父にとっては最期の『願い』だったのか・・・？ 『ナチュラル』を、『地球』を滅ぼすことが、本当に『コーディネーター』の為と信じて・・・ 『ヤキン＝ドゥーエ』と連動した、『ジェネシス』の攻撃目標は―??『地球』 「アスラン！！」 「お前は来るな！」 迷いはない―――決めていたことだ・・・ 『ジャスティス』のリフタ―を外し、『ルージュ』を外へ追いやる――― 残された時間は・・・1分を切っている・・・。 自爆スイッチを起動する――― これで、俺は『お前』と『お前の故郷―帰る場所』を護れる。 多くの『お前の同胞―ナチュラル―』を、死に至らしめた・・・只、軍の命令として・・・。 多くの『仲間―コーディネーター―』を失った・・・自らの迷いで・・・ これで“死ぬ”のか・・・思い残すことはない・・・ もう、悩むことも、苦悩も、憂いることもなく―――ただ、『安息』だけを手に入れて。 その時・・・ 「アスランっ！！」 一番聴きたい声―――こんなときに・・・いつも俺を導いてくれた声・・・。 「逃げるな！！ ・・・『生きること』の方が・・・『戦い』だ！！」 ―――『迷い』が消える・・・ 『ルージュ』のコクピットを開け、ハッチから懸命に手を伸ばす――― その手に、しっかりと握り合う『感触』――― 『死ぬ』ことで何もかも・・・『罪』からも・・・開放されると思っていた。 只、泣きじゃくる『お前』を見ていたら、自然と溢れてくる『想い』――― 抱きしめあって、初めてわかったんだ・・・ 『―――『生きる』って事の『喜び』が・・・』 『生きている』から・・・ 『泣いたり』『怒ったり』『笑ったり』『喜んだり』できる・・・ 『ナチュラル』も『コーディネーター』も何もない―――同じ『人間』――― そんな簡単なこと、初めて出会ったときから、『お前』は教え続けてくれていたんだな・・・。 死んでしまったら―――そこにあるものは―――『安息』なんかじゃない・・・ 只の―――『無』――― 本当に得られる『安息』は・・・ 生きて―――『大切な人』の―――傍にいること・・・ ＊ ＊ ＊ 緑の草叢が靡く大地―――『護ったもの』――― その大地で、金の髪の少女の膝の上に頭をあずけ、濃紺の髪の少年が穏やかな寝顔を見せている。 と、そこに、２つの影が歩み寄る 「アスラン、カガリ。 そろそろ帰ろうか？」 茶色の髪の少年が声を掛けようとすると、金の髪を靡かせた少女が（シーっ）と人差し指を立てて、唇にあてた。 「あらあら、すっかりお休みになってしまわれたのですね。」 ピンクの髪の少女が、珍しいとでもいう様に、その寝顔を覗き込む・・・。 「いろいろあったからな・・・。疲れてるんだろ・・・。」 金髪の少女――カガリが見守る中、濃紺の髪の少年――アスランは殆ど無防備というように、静かな寝息をたてていた・・・。 「じゃあ、僕たち、先にいってるから・・・。」茶色の髪の少年――キラが言う。 「あぁ、少ししたら起こしていくから・・・。」 カガリの答えにピンクの長い髪の少女――ラクスが微笑み、踵を返す・・・。 「・・・私、あんなアスラン、見たことありませんわ。」 「・・・僕も。いつも他の人には、絶対『寝顔』なんて見せるような、隙なんて見せたことないもの・・・。 僕ばっかり泣いてて・・・アスランの泣いたところなんて、見たことないよ。自分もつらいのに、いつも我慢 していてさ・・・。」 「そうですわね。私の前でも同じでしたわ・・・でもきっと今度は皆に『本当の自分』を見せてくださいますわよ。きっと・・・。」 「そうだね。」 ２人の影が遠ざかった頃、ようやく翡翠色の瞳が開く・・・最初に目にしたものは・・・いつも『真っ直ぐ』な 金の瞳・・・。 「・・・寝てたのか？ 俺・・・。」 「～～ったく、何今になって気づいてるんだよ～。お陰で足痺れたじゃないか！」 「・・・ごめん。」 謝りかけるアスランに、カガリが急に笑い出す―――。 「何が可笑しいんだよ・・・。」 「いや、お前、寝てるときの方が、表情豊かで可笑しかったからさ。」 「はぁ？」 「何か『怒って』いるようだったり、『泣いている』ようだったり、難しい顔したりしてさ。」 「・・・ずっと見てたのかよ・・・。」 気恥ずかしさに、思わず視線をそらすと、カガリが立ち上がり、手を差し伸べる――― 「キラ達、先行っちゃったぞ。ほら。」 ―――その手を、今度はゆっくりととり、握り合う。 二人が並んで歩き始めると、カガリが急に覗き込むようにアスランの顔を見上げる。 「・・・なんだよ？」 「・・・いや、お前、起きる前、すごく『嬉しそう』っていうか、『安心してる』っていうか・・・そんな顔してたからさ・・・。いい『夢』見てたのかな・・・と思って。」 ふと立ち止まって、真っ直ぐ金の瞳を見返す――― 何もない、『無垢』な瞳―― その瞳に答えるように話しながら、歩き出す・・・。 「あぁ、『いい夢』だったよ・・・。」 「何？ どんな『夢』だった？」 「・・・内緒。」 「～～ケチー。教えろよー！」 「秘密。」 「何だよ～！！ 教えろ～！！」 腕を引っ張りながら、尚聴き出そうとする『お前』――― 笑ったかと思えば、怒ってみたり、こんな風にふくれてみたり・・・。その表情が俺を安心させる・・・。 『生きていた』から安らげる場所・・・見つけられたんだ。 だから、見たんだ・・・。 ―――浅い眠り淡く揺られ あの日のように無邪気な君が 両手にあふれる安息を優しく奏で そばにいる夢をみた――― ――『君』の夢を見た。 from．“SHALLOW SLEEP”～written by HYDE ・・・ｆｉｎ． （What do you think about “ANOTHER STORY”・・・？） 私的なアスラン考察（オンリーカガリ(笑)です。 人によりけり、解釈は違って当然と思っておりますが、私の思うがままにこの２人を書いてみました。 いろんな『想い』があると思います。 是非、他の方のアスランの『想い』も聴かせて欲しいです。 長い駄文読んでいただき、感謝いたします。 リクエストしてくださった、まお様に「愛をこめて」ｖ ＞Nami
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