Priceless(前篇)

 

 

 

よく晴れた青い空から注ぐ眩しい光は、数多の窓から長い廊下の先までをも明るく照らす。

その光に導かれるように、書類の束を抱えたアスランは、光の示す先の部屋に向っていた。

 

書類…わざわざ自分が軍令部から、彼女のいる内閣府の執務室まで出向かなくても、一言頼めば彼女の秘書か、若しくは自分の部下が間違いなく運んでくれるはずだ。

だが、アスランは彼女の元に届ける物は、あえて誰にも頼まず、自分で行く事に決めていた。

 



―――『ロゴス』…そして『ディスティニープラン』を巡った戦争は終わった。

   その後、『オーブ』の意志の元に賛同した戦士達は、またそれぞれの道へと歩みだした。

   その中で、『彼女』の大切な姉弟――『キラ』は、ラクスのいる『プラント』に向かい、ラクス達と共に歩む道を選んだ。

 当然、自分自身も『生きる道』を模索しなければならない。

 

   その時、ふと思った。

   『大切な仲間』が宇宙へと向う中、一人、この大地で戦おうとしている『彼女』の事を…。

   

   最初から自分は『彼女』の元にいようと、心に決めていた。

   今度こそ道を違えず、彼女を護ろうと。

 

   だからこそ、こうして『彼女』の様子を見に行く口実としては、書類を届けるといったことはうってつけだ。

   もし、悩んだり、苦しかったり…辛そうなときには、傍にいて支えてやりたい。

 




そんな思いを胸に抱きながら、アスランは真っ直ぐ執務室に向かい、そのドアをノックしようとした

 

その時―――

 

「待てって!!それは大事なものなんだから!! 勝手に持っていくな!!」

 

ドアの向こうから、ハスキーな声がけたたましく怒鳴り声をあげる。

 

(『大事なもの』って…まさか機密事項に関するものか!?)

 

「カガリッ!!」

慌ててドアを開けるアスラン。

だが―――そこには『彼女』――カガリの姿しか見えず、大声をあげた当の本人は、ディスクのモニターに向って更に声をあげる。

「だから言っただろう!?それがないと、『オーブ』の街の様子とか、私の知りたい情報を集めるのが大変なんだ! その為に必要なのは、それしかないんだから!!」

 

だが、モニターの向こうの声は、諌めるようにしてカガリに冷たく、キッパリと言い放った。

<何を仰います!!一国の代表たる『姫様』が、このような姿でお出かけになどなられたら…それこそ『アスハ家』の恥です!!…こんな姿をウズミ様がご覧になったら…>

 

最後の方は涙声になって、悲壮に訴えている。

アスランもその聞き慣れた声に、カガリの傍に行き、後ろからそのモニターを眺めると

「…? マーナさん…?」

間違いなくモニターの向こう――『アスハ邸』からマーナが回線を繋いで、カガリに言う。

<とにかく!このような物は、誇りある『アスハ』に置いておくことなど出来ません!!間違いなく、このマーナが処分させて戴きます!!>

カッチリ言い放つとマーナはそのままモニターを<ブチン!>と切った。

「おい!ちょっと待てって!!マーナ!!」

暗くなったモニターを掴みながらカガリが声をあげると、直ぐに上着を掴んで、猛然と外に向って走り出した。

「おい!待て!カガリ!! 何処へ――」

「書類だったらそこに置いておいてくれ!こっちはそれどころじゃないんだ!!」

 

状況もよく判らないまま、アスランは書類を持ったまま、唖然とカガリの後姿を見送った。

 

 





*        *        *

 

 





夕焼けが海に溶け、辺りが暗闇を呈しはじめた頃、アスランは軍令部の書類を整理し、立ち上がった。

いつもだったら真っ直ぐ自室に帰ってもいいところだが、今日はそんな訳には行かない。

 

カガリがあんなにこだわった、『オーブ』の情報を知る為に『必要な物』。

そして国政とは関係ないマーナが、何故か『それ』に関しては、強い権限を持っている…らしい…

 

―――いずれにせよ、カガリに辛い思いをさせる事は、この俺が許さない!

 

胸の中の誓いを確かめつつ、アスランは内閣府に向った。

 

 

 

夕闇の中、内閣府の一室の窓から零れる明り。

間違いなくそこは、カガリの執務室。

 

昼間と同様、アスランは真っ直ぐに執務室に向った。

そしてそのドアをノックしようとしたとき―――部屋の中から、カガリの小さな声が聴こえてくる。

 

「…やっぱり、私にはまだこの国を治めるには、力があまりにも小さすぎるのでしょうか…? 無論、貴方の様に行く事はないと思っておりますが。…いけないな…つい一人になると、気が緩んで、愚痴を零してしまうなんて…」

 

ポツポツと聴こえるのは、カガリが誰かに思いを打ち明けている様な声。

こうして一人、苦しんでいる時にこそ、俺が助けてやりたいのに。…自分以外の誰かに、そんな素直に自分の弱みを曝け出すなんて―――!!

 

<ガチャッ!>

 

ノックするのも忘れて、アスランはそのままドアを開け、部屋に押し入る。

 

「―――!? アスラン!?ちょっ、ちょっと待って―――あっ!」

アスランの姿を見たカガリが、慌てて引き出しの中に何かを仕舞う。

だが慌てて閉めた為か、引き出しの中の『何か』は、はみ出たままになってしまい、それをアスランは目ざとく見つけ、取り出してみる。

 

「…これは…」

 

   それはガラスで出来た『フォトスタンド』―――

そこには4・5歳…といったところだろうか…金の髪の幼い女の子が、大きな金の瞳を輝かせ、満面の笑みで笑っている。

そして、その小さな女の子を、嬉しそうに抱いているのは…アスランが以前垣間見た時と比べ、当然若いが、かもし出す人格者の雰囲気と、
   だがそれに勝るような『親』の微笑みをカガリに向ける、壮年の男。

 

「…ウズミ様…?」

 

夕焼け空の下の2人が、幾分色褪せた写真の中で笑っている。

 

「カガリ…今話してた相手は―――」

「全く…誰にも知られたくなかったのにな。」

小さな溜息を零しながら、カガリが話し始める。

「…そう、お父様だ。…どうにも上手くいかないことがあると…どうしていいか判らない事があると…こうしてお父様に告白していたんだ。…少しづつでも、こうして『オーブ』はまた嘗ての力を取り戻しつつある。…しかしそれ以上に問題も山積みだ。だが、私の力では、まだまだ至らぬ事ばかりだ。そんなことをお父様に報告していたんだ…。何だか…お父様が助けてくれるような気がして…」

 

アスランからそっとフォトスタンドを取り上げると、カガリは愛しそうにそれを撫で、そっと引き出しの中に仕舞った。

 

「今日の『報告』は、もう終わったのか?」

アスランがそっとカガリに尋ねると、カガリは<コクン>と頷いた。

「私はお父様のように、内閣府にいても国民の声が聴こえてこない。それはまだ私に力が無い為だと思う。でも、私なりに考えたんだ。だったら「実際に街に出て、『オーブ』に溢れる人の声――嬉しいとか…楽しいとか…辛いとか…それを聞けばいい」…それが今の私に出来る唯一の方法だった…んだけど…」

カガリの表情が少し暗くなる。

「実際に街に行って様子を見守りたかったんだ。でも『オーブ代表のカガリ』がそのままの姿で国民の前に出たら…普段の様子なんて判らないだろ!? だからその為に、街の人と同じような格好で溶け込めば、街の人達の様子が、本音が聞けるんじゃないかと思って。それに――」

一息ついて、カガリはアスランを見つめ、続ける。

「自分が『ただの人』になってみたら、もしかしたら『オーブのカガリ・ユラ・アスハ』がどんな人物に見えるか…。外からの自分も見られるんじゃないかと思ってな。」

相変わらず、真っ直ぐで澱みのない金の瞳―――

「その為の『変装グッズ』、部屋に隠してたんだ。でも、今日になっていきなりマーナが見つけて「こんな格好みっともないから処分する!」って言ってきたから、慌てちゃってさ…。でもどうしよう…アレがないと、外に出るの大変なんだよな…。」

椅子に腰掛け、ディスクに顔を伏せるカガリ。

 

―――もし、悩んだり、苦しかったり…辛そうなときには、傍にいて支えてやりたい。

 

アスランはそっとたった今、頭に浮んだ提案を持ちかける。

「だったら…今度休みの日に、一緒に買い物に行くか?」

「え?」

カガリが顔をあげると、慣れない『デートの誘い』に頬を染めたアスランが、オズオズとカガリに話し出す。

「俺も、欲しいものがあるから…よかったら…」

相変わらずどこかぎこちない、それでも精一杯の言葉。

「うん!」

カガリはその言葉に、満面の笑みで頷いた。

 

 





*        *        *

 

 





「うわぁー!今日は晴れてよかったな!」

車を運転するアスランの横で、カガリが嬉しそうに声をあげる。

「カガリ…その『変装グッズ』って、何処にいけば売ってるんだ?」

ハンドルを握るアスランが声をかける。

今日カガリを誘い出した際、アスランは『私用で出掛けるカガリの護衛』という名目でアスハ邸に連絡した。

当然本当のことを言えば、その場で取り押さえられるに違いない。

だからだろう、カガリも『淡いベージュのスーツパンツ』に『ややアイボリーのシャツ』、『シックなパンプス』という、ややカジュアルな中にも洗練された女性の雰囲気を壊さない姿で現れた。

これだったら、マーナをはじめとする『アスハ邸』の使用人たちは、出掛ける理由はさて置き納得するだろう。

 

それにしても…マーナに棄てられたカガリの大事な『変装グッズ』というのは、どんな物かも聞いていない。

一体、マーナが呆れるほどの『変装グッズ』とは、何処で売られているものなのか?

 

バックミラーにチラリと映るカガリに視線を向けると、カガリは何処となく嬉しそうな表情で答えた。

「大丈夫!このままオノゴロの市街地に行ってくれ!」

 

カガリの言葉に頷き、アスランはそのまま車を走らせた。

 

 

 

 

 




オノゴロの市街地―――とりわけ人が集まるショッピングモールの駐車場に、アスランは車を滑らせた。

「よし!」

一声気合を入れると、カガリは出掛けにアスランに「貸してくれ!」と言ってあった『キャップ』を目深に被ると、車から降り、両腕をブンブン回した。

「今日は買うぞ!!」

 

(そんなに気合入れて…一体どんな物買うんだ!?)

 

アスランは黙ってカガリの後に続いた。

 

 

 




「いらっしゃいませ。宜しかったら覗いていきませんか?」

「いらっしゃいませ。どうぞ、是非お試しくださいませ。」

 

デパートの1階。ここは女性用のコスメやアクセサリー等の高価なものばかりが並んでいる。

女性店員の誘いの声を振り切って、カガリは迷うことなく、真っ直ぐにどんどん進んでいく。

「はぁ〜。ようやくエレベーターについた。」

カガリが溜息を上げる。

「普段からあの売り場って、あんなに声かけられるのか?」

自分は女性じゃないから、全く知らない世界だ。

「ううん。アレは女でも、いい格好してる人しか声かけない。お金持ってそうに見える人だけ声かけるんだ。」

   

なるほど。

今日のカガリはスーツパンツに、それと合わせたシックなシャツ。

そして足元は有名ブランドのパンプス。

目深に被ったキャップが唯一TPOに合っていないが、それでも一つでもブランド物を見に付けていれば、目の肥えた女性店員だったら
   放っておかないだろう。

 



「はぁ…。」

今までこうして女性とデパートなど来たことがないアスランには、全くわからない世界だ。

「そんなところで感心してるなよ。さぁ、目的地の階に着いたぞ!」

そう言いながら、まだ呆気にとられているアスランの腕をとり、カガリは笑顔で目的の場所に向った。

 

 

 





着いたところは、高そうな婦人服が所狭しと並ぶブティック。

「よし、行くぞ〜!!アスラン、こっちだ!!」

不慣れが暴露されているアスランの腕を引き摺るようにして、カガリが真っ直ぐお目当ての場所に向っていく。

(こんな高そうな服なら、マーナさんだってそんなに怒らなくてもいいだろうに…)

マネキンに着せられた高級な服の数々―――

だが、カガリはそんなものには目もくれず。

「着いたぞ!アスラン。」

そういってカガリが手を伸ばしたのは…

「…『ジーパン』?」

他の高そうなスーツやドレスに目もくれず、カガリは目を輝かせて「ど・れ・が・い・い・か・な?」と早速夢中で探している。

 

(…確かに『ジーンズ姿』の代表が堂々と街中を歩いたら…若い人はともかく、TPOにこだわる年寄りや威厳ある首長家の者達は泡を吹くだろう…)

 

マーナの気持ちが何となく読めてきたところで、試着室で履き替えていたカガリが、アスランに声をかけた。

「どうだ!?コレなんか動きやすくていいんだが。」

「どれ…」

アスランがカガリの声にその姿を見た瞬間 

「―――っ!?」

声も出ないほど、アスランは驚愕し、そのまま耳まで真っ赤になる。

カガリが試着したのは―――『ローライズジーンズ』―――しかも腰骨どころかその下まで見えそうなくらい短くなっている。

「っ!!ちょ、ちょっと待て!カガリ!」

慌ててカガリを試着室に押し込むと、なるべくカガリの下半身を見ないようにしながら、真っ赤になってアスランが訴える。

「こ、こんな服着て歩く気か!?君は!!」

「あぁ。結構動きやすいし、何か流行ってるみたいだぞ。」

サラリと答えるカガリに、アスランは大きく首を振る。

「ダメだ! こんなものを着て街を歩いたら…その…周りの…男に、どんな風に見られるか///」

「はぁ? そんな事言ったって、結構はいてる女の子達、ここに来るまでに何人かいたぞ?」

アスランの気持ちなど皆目見当がつかないようにキョトンとしていうカガリに、アスランは溜息をついた。

「と、とにかく、そんな格好はダメだ! だったら他の種類のジーンズを探して///」

「…まぁ、お前がそう言うんなら、そうするが…。なぁ、コレ似合わないか?」

そう言って軽くフワリと一回転するカガリ。

 


―――『可愛い』…

   

   こういうのもなんだが、カガリ自身は全く気がついてないようだが、スタイルは抜群だ。

   初めて出会った頃は少年と見間違うところだったが、最近のカガリは大人びて、女性らしいプロポーションになっている。

  

   だからこそ、だ!

   こんなカガリを他の男の目になんて触れさせたくない!

 



「…確かに似合いはするが、こんな格好で人前に出るのだけは止めてくれ。」

「…でも、人前に出るからこそ、こういうの着て『変装』するんだけど…」

溜息混じりのアスランに、屈託なく答えるカガリ。そのとき何か閃いたように、カガリが<ポン!>と手を叩く。

「そうだ!だったらこれ入れて、あとお前が認めるような他の種類のジーンズ買えば文句ないだろう?」

活き活きと目を輝かせてアスランを見詰めるカガリ。

「ハァ〜…わかった。君の好きな通りにしろ。」

「うん!」

アスランが額に手をあてるのとは裏腹に、カガリは笑顔でジーンズを選びにかかった。

 

 

 

 






「じゃぁ、次は上着の方だな!」

カガリの買ったジーンズの入った紙袋を持ちながら、アスランはカガリの後に続く。

(…今度は、変なのじゃないだろうな?)

そんなアスランの悩み(?)に気付くことなく、カガリは足取りも軽やかに目的の場所に行く。

「じゃぁ、今度はアスランの気に入ったもの、探してくれよ。そうしたら文句ないだろう?」

いきなり振られてアスランはビックリする。でも確かにカガリに任せていたらまたとんでもないものを持ってくるに違いない。

「…わかった。」

そう言いながらアスランは、慣れない婦人用の上着を探す。

(カガリをイメージして…)

数分視線を泳がしたアスランは、とある一角で足を止める。

「…これなんか、どうだ?」

「どれどれ。」

カガリが検分する。

難しい顔をして、さながら試験官にテストを見られているようで、アスランは何故か心持ち緊張する。

「ん〜〜…お前…紺色のジーンズに『まっ黄色のメルローズTシャツ』って…本当に合うと思うか!?」

眉間に皺まで寄せて詰問され、まるで赤点を取った生徒のような気分になる。

   

   いや…赤点なんて取ったことないからわからないが…

 

「じゃ、じゃあ今度はこれなら…」

慌てて掴んだ一枚をカガリに差し出す。

「〜〜〜…お前、本っ当に服を選ぶセンス『0』だな!…やっぱりお前に頼らないで、自分で探す!」

そう言いながら、カガリは『ルシフォン袖のカットソー』と数枚の『Tシャツ』を探し、試着する。

 

  (…だったら、今度自分が服を買いに行く時は、カガリに同行してもらうか。)

 



歴戦のエースにも泣き所はあるようだ。

 

 

 

 






「次は『靴』だ!」

またカガリがアスランを引っ張って靴売り場に行く。

「まさかジーンズはいて、『パンプス』はないからな。」

そういって数足のスニーカーを選び出すカガリ。

「う〜ん…どっちがいいと思う?」

 

(これなら自分も選べるな。)

 

「だったら一度履いて、馴染みやすい方がいいだろうな。今の時間帯なら少し余裕があるくらいがいいだろう。夕方になれば若干だが重力で足先に血液がたまりやすくなって、少し浮腫が出るからな。」

 

2人並んで靴を選ぶ。

こんな些細なやり取りが出来る今が続く事を、何処となく祈った。

 

 

 







カガリ曰く『一般人に成りすませる変装グッズ』が揃ったところで、カガリはスニーカーを履き、Tシャツとジーンズに着替えた。

「確かに、まさか自分の国の代表首長様が、こんな姿で街中歩いているとは思わないだろうな。」

「だろう!? だから街中にいても不自然じゃなく、気にも留められないからいいんだ!」

アスランの言葉に答えると、カガリはアスランの腕を掴みながら走り出した。

「おい、今度は何処へ――」

慌てるアスランが声をかけると、とある場所でカガリは「そこで見てればわかる!」と一人で歩き出す。

そこは――先ほど通った、1階の『コスメ&アクセサリー』売り場。

 

―――(アレは女でも、いい格好してる人しか声かけない。お金持ってそうに見える人だけ声かけるんだ。)

 

カガリがそう言っていた店員の中を、堂々と通ってみせる。

案の定、カガリの言葉どおり、店員はうって変わって、まったくカガリに声をかけない。

 

売り場を歩ききると、カガリは「どうだ!」と言わんばかりに、笑顔で振り向く。

   

   大した『変装グッズ』だな…

 

アスランは思わず笑顔のカガリに、心の中で小さく拍手を送った。

 

 

 

 






「さて!最後は『アソコ』に行かないとな。」

カガリの『変装グッズ』とやらは、もう揃えたと思うのだが…。

「何かまだ必要なの、あるのか?」

アスランの言葉に、カガリは補足する。

「うん。一応揃ってはいるけど、必要になっちゃったから…」

そういうカガリが辿りついた先は―――

 

「―――っ!?///」

 

思わずアスランは声を挙げそうになるのを、必死に口に手を当て耐えた。

そこはどう見ても、『男性厳禁』の―――『ランジェリーショップ』

「カ、カガリ!!何でこんなところに――!!///」

赤面しながらも、カガリの腕を掴んで引き寄せる。だがカガリは全く意に帰さず、アスランに説明する。

「だって、さっき『ジーンズ』で『ローライズ』買っちゃっただろ? そうしたらショーツも『ローレグ』の買わないと、履いた時、下着が見えちゃうから。…あ、お前居難かったら、そっちで待ってていいぞ。」

 

罪の意識も皆目つかないまま、カガリはカラフルな下着を手に取る。

 

アスランはこの買い物で、十年分疲労した思いだった。




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