Dragon Queen 〜第8話〜
腕の中にいる少女は、安心しきった表情で、甘えるように寄り添って眠りに落ちている―――
アスランはその寝顔を優しく見つめながら、後れ毛をそっと直してやったり、柔らかな頬に、その肌の温もりを、感触を、愛しそうな表情で見つめながら、篝に触れていた。
―――ずっとこのまま…一緒にいられるんだ…俺は…俺が想いつづけた『大事な宝物』と・・・
想い焦がれた篝を胸に抱き、その喜びに浸りながら、アスランもまどろみ始めた。
その瞬間―――
「―――――っ!!」
背筋に感じる、氷のような、『ゾクッ』とした戦慄を覚えるような感覚。
アスランは目を覚ました。
「・・・アスラン・・・」
腕の中の篝を見ると、篝も目を覚まし、アスランの顔を、身を震わせながら、こわばった表情で見つめている。
『真の巫女』になった篝にも、この冷たい恐ろしいような感覚を感じ取れたらしい。
「・・・俺が行って来る・・・篝は此処に―――」
アスランの言葉に篝は首を振る。
「ダメだ。私はこの国を預かっている以上、何かあれば民を放っては置けない。それに・・・私はお前の『巫女』なんだろ? ・・・何か役に立てば・・・」
篝の真剣な眼差し―――
正直、今さっき『真の巫女』になった篝に、『巫女』の力を使わせるのは無理だろう。
でも彼女は『巫女』であると同時に、『大府』の国王なのだ。
アスランは、国を思うカガリの気持ちを察し、頷いた。
二人は急いで衣を身に付けると、神宮から飛び出し、『蒼竜』となったアスランの背に篝が乗り、空へと舞い上がった。
* * *
『この感覚・・・何処から・・・』
『蒼竜』の言葉に、篝が答える。
「『蒼竜』。『小野頃』に向かってくれ。・・・なんか王都の方に、得体の知れない感覚を感じるんだ。」
篝の言葉に、『蒼竜』は頷き、『小野頃』に向かった。
その『小野頃』についたとたん、篝も『蒼竜』も息を飲む。
「―――っ!!」
『小野頃』の街全体が、そこだけ『真っ黒な霧』に包まれている。
「あれは・・・何だ!? 民は皆・・・」
篝の震える言葉に、『蒼竜』は答えた。
『まだ強くはないが、結界が張ってある・・・そこだけ『黒い霧』がかかっているみたいだ。・・・今の内に突入するから、篝、しっかり掴まっていろよ。』
「うん!」
篝は『蒼竜』にしがみつくと、そのまま結界の内部へと突入した。
「何だ!? あれは!?」
篝と『蒼竜』が見つめた先には、体中を『黒い炎』で包まれたような、巨大な竜が、街を暴れながら、人を食らおうとしている。
『グォォォーーーーッ(させるかっ!)』
『蒼竜』とそっくりの白い竜が、懸命に『黒い竜』に強風を吐きかけ、その身体を取り巻いている炎を消し飛ばそうとしている。
だが、『黒い竜』は攻撃を受けるが、まるで何も感じないように、そのまま暴れつづける。
『『白竜』!!』
『蒼竜』が呼びかけると、『白竜』は悔しげに言い放つ。
『さっきから何度もヤツに攻撃を繰り返しているが・・・ヤツにはちっとも効いていない!』
『だったら俺が!』
南の空から現れた『赤い竜』が、黒い竜に向かって、紅蓮の炎を浴びせ掛ける。
だが、黒い竜は炎を受け、一瞬動きを止めるが、その揺らめく黒い炎のような中に見える、赤い目を3頭の竜たちに向けると、まるで小馬鹿にしたように、目を細め、黒い炎を竜たちに放つ
『―――っ!!』
竜達がひるんだ一瞬、その目の前に、高い土の壁が出来、炎の直撃を抑える。
『『紫竜』!』
『皆、この『黒い霧』は、あの『黒い竜』の身体から出ている『霧』の所為なんだ!だから視界が効くうちに倒さないと!』
『わかった。』
『羅玖簾!』
『紫竜』の声に羅玖簾が頷く。
「わかりましたわ。『紫竜』。」
羅玖簾が念じると、羅玖簾の額に紫の勾玉が現れ、羅玖簾の髪がたなびくように広がり、強い結界を作り出した。
「皆様を『北』へ! 結界の中にお連れしてください!」
羅玖簾の声に皆が頷いた。
『蒼竜』は篝を降ろし、空へ飛び立とうとする。
「あ、『蒼竜』!」
『蒼竜』は篝を振り返り見る。
「・・・気をつけてな・・・」
『あぁ・・・篝も気をつけて。』
『蒼竜』が目を細め、優しい視線を送ると、『蒼竜』は再び『黒い竜』に向かって飛び去った。
* * *
篝は瓦礫の山と化した王宮に向かうと、残っていた官吏や兵士を集める。
「篝様っ!」
「よくぞご無事で――」
篝はねぎらいの言葉を遮り、皆に声を掛ける。
「王宮の兵達は、全員松明を持ち、民を先導し、街の『北』へ向かえ!」
「はっ!」
兵士達が動き出すと、篝は主だった重鎮達を集め、街の対策にあたった。
「・・・しかし・・・何で急にあんな『黒い竜』が、我が国を・・・」
「それが・・・篝様・・・」
いいにくそうに、官吏の一人が言い出した。
「実は・・・宇奈都様と由宇奈様が・・・」
「何!? 王宮の『封印』を解いた、だと!?」
篝は悔しげに拳を握り締めた。
* * *
上空では四頭の竜達が、黒い竜と戦いつづけていた。
『こんのぉぉぉーーーっ』
『紅竜』が炎の渦を吐き出す。
『いい加減にしろぉーーー』
『白竜』が「かまいたち」のように空を切り裂く風を放つも、『黒い竜』はびくともしない。
『・・・やれやれ・・・落ち着いて食事もできんとは・・・どうやら君達は、礼儀を知らんらしいな・・・』
やけに落ち着いた大人びた声をあげると、『黒い竜』は更に黒い霧を噴出し、闇の中に隠れた尾で、『紅竜』と『白竜』を払い飛ばす。
『うわぁぁぁぁー―っ』
『くっ!!このぉぉぉーーーっ』
『落ち着け! 『白竜』! 『紅竜』!』
『蒼竜』の声に、四頭の竜は一時静まる。
『紅竜』――お前はこの中で、唯一炎でともし火を持てる竜だ。戦いたい気持ちはわかるが、出来る限り取り残された人々を、炎の明かりで北へ導いてくれ。『白竜』――君はこの霧を少しでも風で払ってくれ。その間に『紫竜』と『蒼竜』で、アイツの弱点を探す。』
『え〜っ!』
不満気な『紅竜』に、『さっさと行け!』と『白竜』が発破を掛け、神竜達は攻撃に出た。
『行くぞ!』
『白竜』が竜巻のような風を『黒い竜』に向けると、『黒い竜』の身体の一部の鱗が見える。
『今だ!行くぞ『紫竜』!』
『うん! 『蒼竜』!』
『蒼竜』は氷の刃を。『紫竜』は土を金属並に硬くした土の刃を、一斉に黒い竜に放つ。
『っ!!』
『黒い竜』に僅かに痛手を与えたようだが、まだまるで擦り傷をつけた程度でしかない。
『……うるさい子どもには、お仕置きが必要なようだな・・・』
『黒い竜』は一声『ガァォォォォーーッ!』と声をあげると、『蒼竜』達に向かって、黒い波動を起こす。
『うわぁぁぁぁ!』
『くっ!』
『あぁぁぁぁぁっ!』
波動に頭が割れそうな痛みが起きると、3頭の竜の動きが止まったと同時に、『黒い竜』は、一気にその身体ごと、『蒼竜』達を地面に叩きつけた。
『『白竜』! もう一度、風を起こしてくれ!』
よろめきながらも這い上がる『蒼竜』の声に、『白竜』は声をあげる。
『何する気だ! お前!』
『鱗が見えたら、そこに俺が巻きつく! それを目印に皆は攻撃してくれ!』
『何を言う! そんなことをしたらお前――』
『無茶だよ!?『蒼竜』!!』
『白竜』と『紫竜』が声をあげると、『蒼竜』は答えた。
『俺たちは、この『大府』を護る守護竜だ。その役目を果たさなければ、俺たちは何の為に今まで孤独に耐え、生きてきたんだ!?』
その声に2頭の竜は頷く。
『行くぞ!』
『白竜』が風を起こし、『蒼竜』が僅かにみせた『黒い竜』の鱗に、自らの身体を巻きつける。
『今だ!!』
『紫竜』は四神竜の中でも最も強い力を持つ――『大きな楔』を作り出すと、一気に『黒い竜』に向かって突き刺した。
(―――やったか!?)
3頭に僅かに浮かぶ希望――
だが、
『えぇい! このうるさい蝿どもがぁ!!』
『黒い竜』は、先程の波動を更に強くあげ、苦しむ3頭を一頭ずつ、その牙を身体に食らいつき、地面に向かって叩きつけた。
『ぐゎぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
地面に叩きつけられた3頭の鱗は傷つき、血が溢れる。
(・・・四神竜の力を合わせて、やっと『この程度』か・・・)
『蒼竜』は息を切らせながら、徐々に焦りを感じていた。
・・・to be Continued.
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>ついに始りました!『デストロイ・ガンダ…』ではなく、『ラスボス』――『黒竜』との戦い!
イラストの『白竜』と『紫竜』!カッコイイ!! 流石はかずりん様です!!発注どおりの美しさ!! 「ははぁ〜っ(頭を下げる)」
四神竜の力でもってみても、苦戦を強いられる状況に、四神竜は、『蒼竜』はどうするのか!?
・・・それは次回に♪(…何時まで引き伸ばせば、気が済むんですか…? Namiさん…(--;)
(オマケ)
『白竜』:『グルルルル…(くそぉぉっ!)』
シホ:「ハク! ハク!…じゃなくて『ジュール隊長』!」
『白竜』:『グォォォォォォーーーッ!(「痛いっ、痛いっ、痛いいっ!!(←種無印11話より想像してください))
シホ:「ハク!?いえ、『ジュール隊長!』苦しいのですか!? ――これ『川の神様』から貰った『ドロの団子』!これ食べて!」
『白竜』:(バタンバタン!)『グォォォォ――(何をするっ!?離せ!)』
シホ:(無理やり『白竜』の口を開けて突っ込む)
『白竜』:『グワァァァァァーーーッ!!(不味いぃぃぃーーーーっ!!)』
―――『白竜』復活
(BGM)呼んでいる〜胸の〜どぉこか、お〜くで〜♪
・ ・・以上『千と○尋の神隠し』より (…やってみたかった「小ネタ」(笑))