Its the only truth thought.(後編)

 

 

 

2年前、必死の思いでヤキンデゥーエ戦を乗り越え、ようやく扱ぎ付けた停戦は、次第に偽りのものと化していた。

 

―――「アーモリーワンでデュランダル議長と会見したい」

 

そうして極秘でアスランを伴ってやってきたカガリだったが、途中MSの強奪事件に巻き込まれ、そしてユニウスセブンの地球落下へのテロに巻き込まれた。

だがその首謀者がアスランの父の信望者と知り、カガリはアスランに声を掛けることが出来なかった。

 

―――「何にも知らないくせに。・・・あの人が可哀想だよ。」

 

そういい放った少年。

 

そしてアスランもまた、父の残した幻影が、プラントと地球の間に更なる開戦の危機を招いている事に悩んでいた。

 

 

 

 

無事オノゴロに下りたったミネルバ―――

そしてこれ見よがしに出迎えたユウナ・ロマ・セイラン。

内閣府へ赴くカガリの肩を抱くと、カガリは切なげにアスランを振り替えったが、まるでついでのようにユウナはアスランに言った。

「君もご苦労だったね。アレックス。ありがとうカガリを護ってくれて。」

「・・・いいえ・・・」

「報告書はあとでいいから、君も休みたまえ。あとで彼らとのパイプ役になってもらうかもしれないし。」

必死にふりかえりながらアスランに視線を送るカガリを、強引に車に同乗させるユウナ。

 

―――此処がもし公の場でなければ、走ってその手を振り解いてやりたい。

   それが出来ない自分の立場のはがゆさに、目を逸らすしかなかった。

 

自分も後部の車に乗り込むと、見たくなかった光景と、ユニウスセブンの出来事を思い出し、アスランは沈痛な表情で目を閉じた。

 

 

*        *        *

 

 

軍令部に戻り、シャワーを浴びながら、気持ちを落ち着けようとする。

部屋に戻り、メールをチェックすると、マルキオ邸もあの被害にあい、オノゴロに避難していると、ラクスからメールが届いていた。

(カガリだったらきっと直ぐにでも会いたがっただろう…)

だが今の状況では、彼女は行政府から手を離せないだろう。

 

そう思い、アスランは一人車を飛ばし、マルキオ導師の避難先へと向かった。

 

 

海岸沿いを走る途中、

「キラ?」

懐かしい友の後姿を見つけてクラクションを鳴らす。

気がついた子どもたちが、一斉に駆け上がってきた。

「あ、アスランだ!」

「アレックスだよ!」

「アスランだよー。」

 

無邪気な子どもの声の中で、ひときわ際立った声

「カガリは?」

「一緒じゃないの?」

その声に一瞬の寂しさを覚える―――いつも一緒だったから…

 

「あらあら…これではお話も出来ませんわね。」

そういってラクスが子どもたちを連れ出す。

「カガリは?」

キラにまで質問された。

「行政府だ…今頃仕事が山ずみだろう…」

寂しさが込み上げる。キラもそれ以上察したのか、何も聞いては来なかった。

 

キラを乗せた車の中でアスランは今回の惨劇の首謀者の話をした。

「俺…あの時このオーブで聞いたよな…何と戦えばいいんだって。…そうしたらお前答えたよな…それも一緒に探せばいいって…」

アスランは車をとめると、沈痛な面持ちでハンドルに顔を埋めた。

 

「俺はまだ…その答えが見つからない。」

 

 

―――『答え』は何処にあるのだろう・・・

 

*        *        *

 

 

おれは、プラントに行ってくる。」

朝の会話のあと、アスランはカガリに突然自分の意思を告げた。

「え?」


「オーブがこんなときにすまないが、俺も一人ここでのうのうとしている訳にはいかない。」


「アスラン、けど、お前それは・・・」


「プラントの情勢が気になる」


「・・・」

「デュランダル議長なら、よもや最悪な道は進んだりしないと思うが、だがああやって未だに父に・・・父の言葉に踊らされている人もいるんだ。議長と話して、俺が・・・俺でも何か手伝える事があるなら・・・アスラン・ザラとしてでも・・・アレックスとしてでも・・・」

「・・・」


「このままプラントと地球がいがみ合うようなことになってしまったら、俺たちは一体今まで何をしてきたのか、それすら判らなくなってしまう。」

 

2年前、必死に停戦まで扱ぎ付けた―――数多の犠牲を出して

そして今回の悲劇の引き金は、自分の父の信望者―――この責任は自分でとりたい。

 

カガリにはアスランの気持ちが良く判っていた。

「…わかった…じゃあそのように手配するから…」

振り返り、ダイニングルームを後にするカガリ。

 

これがどれだけの時間離れ離れになることか、想像もつかない。

(でも、ここでアスランのことを引き止めたら…アスランの心は…もっと傷ついて…苦しんでいくに違いない…私にはそれを止める事は…)

カガリは肩を落とし、アスランがプラントに向かう手はずを整えた。

 

 

 

 

 

早々にアスランはプラントに向かう準備を整えた。

自分に何が出来るかわからない。でも何もしないでいるわけには行かない。

 

只一つ、心残りなのは―――カガリ

たった一人、あの小さな肩にオーブを託され、誰が支えになってやれるだろう?

 

思い出すのは―――ユウナ・ロマ

アイツにだけはカガリを渡したくない。

ましてやセイラン家は大西洋連邦寄りだ。カガリはこれから苦悩するに違いない。

 

自分が崩れ落ちそうになったとき、あきらめない強さをくれた彼女

自分も支えになってやりたい―――そう願った。

でも自分がいない間、どうやって支えになってやれるだろう…

 

―――その時

 

机の奥にしまっておいた、小さな包み―――

 

いつか平穏が訪れ、「その時」がきたら、と思っていた。

でも今、自分が傍にいられない今―――

 

アスランは包みを開けると、開いたケースの中からそっと取り出し、願うようにポケットにしまいこんだ。

 

「俺の代わりに…彼女を頼む。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迎えのヘリが到着する。

カガリは不安げにアスランの背中を見送っていた。

 

ふと、アスランが足を止め、鞄を置いた。

 

 

(―――今しかない。)

 

 

「ユウナ・ロマとのことは判っているけど…」

「え?」

「やっぱり…面白くはないから…」

そういってカガリの左手をとると、ポケットからあるものを取り出し、カガリの薬指にそっとはめた。

 

護り石と―――同じ色の赤い石のついた『指輪』。

 

気恥ずかしさに、はめて直ぐに視線を逸らす。

 

どんな風に渡そうか、幾度となく考えた。

世界が安定した平和な時で、

もっとロマンチックな時なら良かったかもしれない、

カガリもそれとなく雰囲気を察してくれた時に…と…

 

あまりにも早急すぎたかもしれない。

こんなとき、自分の不器用さが憎らしい。

いま自分でも、どんな顔をしているのか―――赤くなっている事だけは判る。

 

「え、えぇ!?」カガリの声

 

カガリはどんな風に受け止めただろうか?

今の自分がどんな顔をしているか、それ以上にカガリの反応が気になって、横目でチラリと翡翠の視線を向けた。

 

 

「ま…いや…あの…」

案の定、カガリは真っ赤になって固まっている。

「こういう指輪の渡し方ってないんじゃないか!?」

大きな金の瞳を見開いて彼女は訴える。

その答え方がいかにも彼女らしくて、その様子にようやくアスランも自分を取り戻しかける。

 

「…悪かったな。」

自分でも判る…どう答えていいかわからず、思わずぶっきらぼうになる不器用な答え方。

だが、カガリは急に嬉しそうにクスクスと笑い出した。

 

それが彼女の「答え」―――

思わず安心して、自分も微笑み返す。

 

―――嬉しかった

 

カガリに思いが伝わって―――

 

思わずカガリを抱きしめるとカガリも甘えたように、擦り寄ってきた。

「気をつけて…連絡よこせよ。」

「…カガリも…がんばれ。」

 

思いは同じ―――視線が重なると、互いの思いを誓い合うように唇を重ねた。

 

ほんの一瞬

でもそれは永遠にも取れる『誓い』

 

   

自分がプラントでどんな『答え』を見つけられるか判らない

   でもこれだけは『真実の答え』

 

   

 

 

 

―――『誰にも君を渡さない

           

たとえ遠くはなれていても

                    

誰よりも君を、愛しているから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜Etude〜

 

濃紺の髪の後姿を、金髪の少女はまるで、彼が先程まで残したぬくもりを手放さないかの様に、右手でしっかりと左手の薬指の指輪を包みこみ、見送った。

 

   

―――なぁアスラン…

   

   たとえ遠く離れても

   お前は、私の傍にいる。

 

   この指輪に込めたお前の想い…

   確かに受け止めたから。

 

   どんなに辛い事があっても

   お前が「近くにいる」って感じられるから

 

   時々切なく、胸を刺すような思いが私を打ちのめすかもしれないけど

   それはお前と私が描いた平和への願いの為―――

   その夢の欠片の為―――

 

   だから私…乗り越えてみせる

   寂しさも…苦しい事も

   きっと『強さ』に変えて

 

   お前だって一人じゃない。

   ハウメアの護り石がきっとお前を護ってくれる。

 

   お前の指輪が私を護ってくれるように。

 

   

 

   

待っている

        

   今このときの、ありのままの私で

 

   そして、お前が戻ってきたら

 

 

   その時は、私は―――

 

 

 



金の髪が靡く。

青空を―――自分のなすべきことの為に旅立った彼を、金髪の少女は何時までも見上げていた。

 

      

                        …to be next DESTINY.

 

 

8話の妄想―――じゃないですけれど、どうしても自分の中で書きとめて置きたくて、思わず

 書いてしまいました(汗

 本当は言葉に出来ない思いがいっぱいあるんですが、書ききれなかったのはひとえに文才のなさ故です(涙)

 溜まったフラストレーションが爆発した文章だと思って、忘れてくださいm(__)m

 TVシリーズもこれからが盛り上がり!

 アスカガの二人にどんな試練が待ち受けているかわかりませんが、最後はHappy End

 で絶対終わって欲しいです!(切実)