『5日遅れのHAPPY BIRTHDAY』
<ピンポーン♪…>
「?…なんだ、こんな時間に…」
時間は11月3日午後11時を過ぎている。
寝入りばなだった俺は、深夜の来訪者に少し機嫌を損ねてドアを開けた。
だが、そこにいたのは―――
「!?か、カガリ!?」
「ハァ…ハァ…すまない。遅くに…」
全速力で走ってきたのだろうか。息を切らした首長服に身を包んだままのカガリがそこに立っていた。
「どうしたんだ!? って、君、今戻って来たのか!? 俺のところには何の連絡も入らなかったのに―――」
カガリは先週から太平洋連邦を初め、スカンジナビア王国などを訪問していた。
その帰国は今日のはずだった。
そしてオーブ軍准将として俺も代表で空港に出向えるはずだった。
しかし連邦地域を訪問し、いざ帰途につこうとしたところ、急に天候が悪くなりフライトの中止になり、帰国は明日に延びる、という報が行政府、そして俺のところにも届いていた。
何時管制官から天候回復の方が来るか判らない為、早朝から直ぐに出迎えの準備が出来るよう、早めに眠りに着こうとしたところだった。
帰途に着いたのなら、直ぐに俺に連絡が入ってくるはずだ・・・いや、でなきゃ困る。
軍事部門の代表として、常にカガリの身を案じて護らなくてはならないのだから。
そう―――それがこのオーブに残っている理由・・・いや、それは表向きの理性を保っただけの理由だ。
心の内では誰よりも愛する人を、この自分自身の手で護りたい。誰の手も触れさせない。大事にしたい・・・。
そうすれば―――いつも君の隣にいられるだろう?
夜中の突然の訪問は驚きと同時に、連絡をよこさなかった事への僅かな苛立ちもあったが、暫く会うことが出来なくなった愛しい姿を見ることが出来て、俺の気持ちは急に明るくなった。
「ごめん!どうしても、早く帰ってきたかったんだ…。一日でも遅れたら、何か嫌でさ。少し天気が持ち直した、って言ったから、我儘言って飛行機飛ばしてもらったんだ。」
まだ、汗に濡れた額に柔らかな金の前髪を貼り付けたまま、笑顔でカガリが言った。
確かに自分が留守の間の国が心配なのはわかるが、それでも留守は俺がしっかりオーブを護り、預っているつもりだ。
(…そんなに信用がないのだろうか…?)
少し複雑な気持ちの俺の表情を読み取ったのか、カガリが懸命に首を振りながら言い訳した。
「違う違う! その…どうしても訪問が『大切な日』にぶつかっちゃって…ちゃんとその日に言えなかったから…少しでも早く言いたかったんだ…。」
カガリは慌てた表情を一変させ、笑顔で俺を見上げた。
「5日遅れちゃったけど…『誕生日、おめでとう』…アスラン。」
―――『俺の誕生日』…?
それだけの為に…?
「だって、カガリ、行く前に送ってくれたんだろう?『バースディカード』。それだけでも充分嬉しかったのに――」
だがカガリは
「でも、やっぱり自分の言葉で伝えたかったんだ。訪問先からっていうのも考えたんだけど、時差が合ったから…アスラン起こすのも悪いしと思って…だから直接顔見て言いたかったんだ!」
屈託のない満面の笑顔。
俺の為に少しでも早く戻って…必死に走ってきて…そんな顔で言われたら、こうしたくなるじゃないか。
「ちょ、ちょっとアスラン、いきなりこんな所で―――!」
「…カガリが悪い。いきなり嬉しい事言うから…」
久しぶりに抱すくめた華奢な体…
甘い香り…
真っ赤な顔しながら腕の中でもがいているカガリが愛しくって、そっと頬に唇を落とした。
「〜〜っ!!/// 誰も見てないからいいようなものを――っ!!」
「ごめんごめん。でも『誕生日プレゼント』としてもらってもいいだろ?」
苦笑していう俺に、カガリは「そうだ!」と真剣な面持ちに変わる。
「そうそう!誕生日プレゼント用意してなかった!何が欲しい!?」
キラキラ目を輝かせていうカガリ。
「そうだな…今もらったキスでもいいけど…もっともらえるなら…」
「うんうん!」
「…俺の『一番大切なもの』が欲しい…」
「…『大切なもの』…?」
―――そう、『大切なもの』…
もし、俺の手に入るときは
『真っ白なレースのヴェール』と
その細い腰には『大きなリボン』
『チュール』に膨らんだドレスを身にまとって
手には『カサブランカ』の『ブーケ』を持って
その大きな金の瞳に、嬉しそうな涙を湛えながら俺を見上げる
『暁の…女神』―――
「『白い』…『レース』…『リボン』…『カサブランカ』…!! わかった!!アスラン!!」
「え!?」
(わかった、って…まさか―――!?)
「お前の欲しかったのって、『白い大きなレースのリボンで巻いた、カサブランカの花束』だったんだな!!だったら、来年にしなくっても、明日でっかいの届けてやるからな!!」
「ちょっ、ちょっと待てって――カガリ――!!」
「明日、楽しみにしてろよーーーっ!!」
金の髪を翻し、俺の女神は嬉しそうに全速力で走っていった。
…コレじゃぁきっと、明日には部屋中に大きなリボンで結ばれた、カサブランカの花束が届くに違いない…。
「やれやれ…。」
苦笑して部屋に戻る。
「今年は手には入れられそうにない…な?」
―――――でも来年にはきっとこの手に入れてみせる。
俺の大事な
たった一つの『大切な――君』を――
・・・Fin.
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>本来ならば『アスランBD記念』として、期間限定でサイトにSSをUPするつもりだったのですが、何を間違えたのか入院してしまったので、
今年の『アスランBD企画』は無し!―――と病院のベッド上で考えていました。
でも、やっぱり「お祝いしてやりたい!(←の割にはいつも可哀想な目に合わされるザラ…)」気持ちでいっぱいだったので、チョロ書きしたのをブログにUPしてました。
このSS、かずりん様から素敵なイラストを見せて戴き、それも萌えとなっていたので、折角のコラボ&入院中でもアスカガ熱が冷めなかった記念(?)として小説置き場にUPすることにしました。
これ見たら「健康に気をつけよう。」と戒めることにします。