「1週間」 イザーク夢 フィギュアスケートもの 鴨志田様「銀板に踊る恋」スピンオフ
鋭く氷を削る靴音だけが、広いリンクに響く。その静寂を破って静かだが厳しい言葉が飛んだ。
「タイミングが早すぎる。動作が小さい。もう一度だ。」
「はい。」
荒い呼吸をしながらコーチの声に返事をしたのは、イザーク・ジュール。悔しげに一連の動きを繰り返す。
「くそ・・・、こんなんじゃ、あいつに、アスランに勝てないっ!!」
「もう一度。」
「はい。」
このままじゃ、俺は・・・。そのとき、彼の視界の隅に人影がよぎった。
なんだ? 貸切に出来る時間が長いからこんな辺鄙な田舎町のスケートリンクまで来てるんだぞ。気が散る、誰だ?!
女・・・、俺よりも少し下くらい。どこからリンクに入り込みやがった。
「10分休憩。」
イザークはそいつにどなってやろうとして振り向いた。だが、そこには誰の人影もなかった。
イザークはシングルのフィギュア選手だ。「氷の皇帝」の異名を持ち、トップを走ってきた。−アスラン・ザラが台頭するまでは。
2歳下の彼の登場により、イザークは2位の座に転落した。さらにイザークを激怒させたのは、そのアスランがいきなり所属するクラブを変えて
ペアに転向してしまったことだった。
イザークにはそれが”勝ち逃げ”に映った。
いったい奴は何を考えているんだ、と苦虫を噛み潰しながら見に行ったペアの競技で、さらにイザークは衝撃を受けることとなる。
アスランは確実に上手くなっていた。シングルの時以上に。それでいながら今までさほどの実力でないと低評価だった相手のカガリ・ユラ・アスハの魅力を
全面的に引き出し、見るものを圧倒する演技を見せていた。
・・・どこまで底が深いんだ。
また一歩アスランに引き離されたと感じた。今まで以上に熱心に練習に取り組んだ。だが、何かが足りない・・・。
焦りは、演技の小ささに、些細なミスに繋がり、より集中できる場所を求めてこんな場所にまで1週間の泊り込みでの練習にやってきた。
それでも、目に見えるような成果はまだイザークに表れていなかった。
しかしおかしい。・・・そもそも、クルーゼコーチが貸しきり中のリンクへの侵入者の存在を許すはずがないな。あれは、練習の疲れが見せた幻覚だったのか?
1時間後、リンク付属の食堂で体力強化のためのまずい昼食をとりながらイザークはさっきの人影について考えていた。
「あのぉ、ジュール選手ですよね? ファンなんです、サインください!!!」
見上げると二人組の少女が手帳を持って立っている。さっきの幻影の女と同じ年頃だ。午後から2時間だけこの町の住民にリンクを開放しているから
売店のあるここに来たのだろう。田舎じみた少女たちは素朴な尊敬の目でイザークを見ていた。
「悪いが、サインはしないことにしている。一人するときりがないから。」
「えー、そうなんですかぁ、残念ー! ・・・ここで練習してるんですか?」
こんな辺鄙な場所にそれ以外の用事があるはずないだろう、そう思いながらイザークはあいまいに頷いた。はっきりいって「ファン」と称する女たちの相手が
彼は苦手だった。適当な理由をつけて彼女らを追い払おうとした時、イザークの目がいましも食堂のドアを開けて出て行こうとする少女の姿を捉えた。
あの女、さっきの!!
「すまない、用がある。」
「え、あ、あのっ!」
驚く少女たちにかまわずに、イザークは食堂を飛び出していた。
一言文句を言ってやらなければ気がすまない。
どこだ? どこへ行った。・・・いた!!
公園の木立を抜けていくところだった。イザークは少女のあとを追いかけた。
「おい待て、お前!!」
だが、距離がありなかなか追いつけない。とうとうイザークは公園のはずれにある海が見える展望台のあたりまで来てしまった。
「おい!! 待てと言っているだろう、聞こえないのか貴様。」
やっと少女は振り向いた。
海からの潮風に栗色の髪と、瞳の色に合わせたような深緑のカーディガンが揺れていた。
「何ですか?」
じっと見返されてイザークはつまった。
「・・・お前・・・、さっきスケートリンクにいただろう?」
「スケートリンク? いいえ行っていないわ。」
「嘘を付け!! 俺はこの眼で確かに見た。あのリンクは俺が貸切にしているんだ。素人は開放時間に来い!」
「確かにリンクの入り口には行ったけど、貸しきり中の札があったから帰ったわ。私が入ったら係員さんに怒られちゃうもの。」
・・・その通りだ。入り口の係員にもコーチにも見咎められずにリンクに入ることは難しい。しかし、イザークは彼女をリンク内で目撃しているのだ。
カーディガンにスカート、バッグから覗く白のスケート靴にも見覚えがある。
「用事はそれだけ?」
無言で仁王立ちするイザークに彼女は言った。
「・・・来ていないなら別にいい。」
証拠がない以上、彼女を問い詰めることは出来なかった。
イザークはきびすを返して元の食堂に戻って行った。食欲はないが、厳しい練習を乗り切るためには規定の量を食べなければならない。
冷めた食事はさらに不味かった。
午後、珍しくイザークはリンクの観客席にいた。
あの少女がリンクで滑っている。少しはスケートをかじったことがあるらしく、彼女の滑りは滑らかだった。人のいない空間を見つけては、彼女は
ダブルループジャンプの練習をしていた。
「・・・下手だな。」
イザークの口元に笑みが浮かぶ。ループはそんなに難しくはないが脚力など基本的なスケーティング能力が問われるジャンプだ。
彼は、個室に行くと自分の靴を取ってきた。
・・・何故そんなことをしたのか、自分でもわからない。素人にかまっている余裕などないはずだった。
もしかしたらそれは、今の苦しみと焦燥からのしばしの逃避なのかもしれない、とイザークは思った。
「速度が足りない。こうだ。」
少女の目の前で、イザークはジャンプをして見せた。突然のスター選手の登場に、数は少ないがリンク内にいた客の注目が集まった。
少女はイザークを真似てジャンプした。
「違う、タイミングをよく見ろ!」
数度二人でジャンプを繰り返すうちに、周りの客たちはみなギャラリーと化し、滑っているのはイザークと少女だけになった。
やっと少女のジャンプが独楽のような美しい回転を見せるようになった。
「よし、それだ。忘れるな。」
見届けたイザークが出口に向かうと、拍手が沸き起こった。
・・・こんなもので、拍手をされてもな。心のうちに苦笑いをしながら、イザークはリンクを後にした。個室に向かう通路にクルーゼコーチがいた。
何か言われるかと思ったが、彼は何も言わずにじっとたたずんでいた。
住民へのリンク開放が終わり、整備が済むとまたイザークの練習が始まる。練習が始まってすぐに、イザークは自分の不思議な変化に気がついた。
なんとなく体が午前中よりも軽く動く。あんなにアスランの演技に固執していた気持ちが、さっきの少女の出来事で削がれていた。
・・・そういえば、あいつに教えていた時は、まったくアスランのことを忘れていたな。
少しだけイザークに客観的な自分が戻ってきた。調子が上がり始めたと感じて、イザークはさらに練習に集中した。
4時間ほど練習した後で、クルーゼコーチが少し口を歪めて皮肉な調子で言った。
「良くなったな。程々ならば遊びも有効だということかな?」
昼間のあのジャンプのことを言われているのだとすぐに覚って、イザークは頬を高潮させた。
「あれは、別に!」
「結果が出るなら構わんよ。」
言い訳をしようとするイザークを遮ってコーチは片づけを始めた。これ以上何を言っても彼は聞かないだろう。クルーゼは技術面では
最高のコーチだが、精神面をフォローしてもらうことは出来ないことをイザークは知っていた。
しかし、出来ればこのもやもやした心についてイザークは誰かに話してすっきりしたかった。同じクラブの友人ディアッカが今、側にいないことが残念だ。
ディアッカが笑い飛ばしてくれれば、ただの軽い出来事に出来そうなのに。
温水プールで筋肉のクールダウンのための軽い水泳をしながら、昼間の女のことをぼんやりと思い出す。明日もここへ来るだろうか?
この近くにはリンクはここにしかないから、ここいらの田舎者なら来るだろうな・・・。
来ればいいな。
そう思っている自分に気がついて、イザークは泳ぎを止めて立ち上がった。
・・・今の自分には女などに気を取られている時間はない。アスランじゃあるまいし。
あの大会の後、会場でカガリにプロポーズしたアスランの姿が脳裏に浮かんだ。いままで見たこともないほど幸せそうに、アスランは笑っていた。
俺は奴とは違う! 奴が女に気を取られている隙に少しでも追いつかなければ。
イザークは再び泳ぎだした。
次の日も調子はよかった。午後、見学席の同じ場所でちらりちらりと入り口を見る。
来た。
緑のカーディガン、今日はパンツスタイルだ。・・・細いな、もうちょっと筋肉をつけたほうがジャンプ力が付く。自分もいつもコーチに細すぎると
言われていることを思い出して、おかしな気分になった。まるで、俺が彼女のコーチになったようだな。
リンクに降り、彼女に近づくと少女は笑った。
「昨日はジャンプを教えてくれてありがとう。」
「ちゃんと覚えたか?」
「たぶん・・・、すべるから見ていてくれる?」
「ああ。」
彼女は昨日習ったとおりに、ぶれない回転をしてループを決めた。
「よし、覚えたな。」
「ええ。」
「お前はどこのクラブだ? このへんか?」
「いいえ、遠くなの。でも、今仕事でこっちに来ていて、それでも少しでも練習したかったから。」
「・・・悪いな、俺が大半の時間を貸しきっているから。」
「いいの。ここはよくそういう風に貸切してるし。私も合宿で来たことがあるの。」
「そうか・・・。」
1時間ほど細かいフォームを直してやってから、イザークは切り出した。
「休憩して食堂で何か食べないか? お前ももう少し筋肉をつけないと良くないだろう、コーチに食えと言われないか?」
「しょっちゅう!! ・・・もしかして、ジュールさんも言われてる? すごく細身だから。」
「イザークでいい。まあな、食うのもトレーニングの一部のようなものだ。・・・そうだ、聞くのを忘れていた。お前、名前は?」
「・・・、・。」
聞いたことのない名前だった。仕事をしながらスケートをしているくらいだ。きっと無名の選手なのだろう。
「いただきます!!」
目の前のチーズケーキセットを本当においしそうに口に運ぶに、イザークは微笑を誘われた。
「・・・なあに?」
「いや、美味そうに食うと思って。俺はそんな顔をして食事をしていないから。」
「イザークは食事・・・、嫌い?」
「いや、好きとか嫌いじゃない、義務だと思っているから。」
「食事は義務じゃないよ。食事は楽しいものだよ。」
「・・・楽しい・・・か。」
「そうだよ、ねえ。もし良かったら明日からお昼一緒に食べてあげる。ジャンプを教えてくれたお礼。絶対一人より二人のほうがおいしいよ。」
どうしようか、一瞬イザークは躊躇した。クルーゼコーチの顔が浮かぶ。だが、彼は練習以外にはイザークが何をしようと無関心だろう。
決められたカロリーと栄養素を取っていれば文句は言われない。
次の日、待ち合わせをして食堂で二人で昼食を食べた。
「やっぱり冬のほうれん草は甘いね。旬の食べ物はおいしい。」
「ほうれん草の旬は冬なのか?」
「そうよ、やだ、イザーク知らなかったの?」
今まで食べ物のことになど関心はなかった。栄養さえ取れれば十分だと思っていた。
「ほうれん草はね、寒い時期に沢山葉に糖分を蓄えるのよ。そうやって冬を乗り切るの。大根も同じ。」
「まるでスケートの選手のようだな。」
「そういえば、そうね。でも、野菜と同じだなんて、イザーク面白いことを言うのね。」
「そ、そうか?」
「うん、とてもユニークな考えだと思うわ。そんな風に考えると楽しいわ。よけいにほうれん草がおいしくなっちゃう。」
はほうれん草を口に運んだ。つられてイザークもほうれん草をかみ締める。
・・・ほうれん草ってこんな味だったか? 他のメニューもいつもよりうまかった。食欲が湧いていつもよりも多く食べられた。
「ああ、お腹いっぱい。沢山練習しないと太っちゃう。」
食事が終わって外に出ると、は胃をなでおろした。
「もうちょっと太れよ。特に太もも。」
「やだ! どこ見てるの?」
イザークは赤くなった。
「・・・そういう意味じゃない。より良いジャンプをするための筋肉をつけろといっているんだ。俺は、そ、そんなところに興味はない。」
「・・・まあ、私は細すぎて女の子としての魅力もないものねー。」
「そういうことを言っているのでもない。・・・とにかく早く練習するぞ!!」
急に女性としての彼女の体つきが意識されて、イザークはどぎまぎした。昨日までは平気で触れていた体に触ってフォームを直すことも躊躇してしまう。
イザークはなるべく彼女から離れて、見学席からアドバイスをした。
それでも、休憩に買ってきたココアをに手渡す時に少しだけ手が触れて、イザークの体に電気が走った。
白い小さな手、オフタートルのカットソーが余計に強調する細い首筋、その下の胸のふくらみ、伸縮性のあるパンツが写し出している腰のライン。
「・・・いつまでここにいるの?」
「え?」
彼女に気をとられて、イザークはの話を聞いていなかった。
「練習に来たんでしょ、いつまで?」
「あ、・・・1週間の予定だから、あと4日だな。」
「そっか・・・。まあ、残念だけど、テレビをつければ大会で顔は見られるものね。」
「・・・・・・。」
しょせん、自分はにとって練習を見てくれた親切なスター選手、ということか。いや、自分だってそのつもりでいたはずだ。女など・・・、スケートの
邪魔になるだけだ。
あっという間に一般開放の時間は終わって、イザークは自分の練習に戻った。なんとなくにアドバイスした言葉の数々が自分にも蘇ってくる。
手はもっとしなやかに、ジャンプは集中して、情感を込めて・・・。
「変わったな、イザーク。気負いが抜けた。テクニックだけではなく人に訴えかける演技になっている。」
短くクルーゼコーチが感想を述べた。
イザークは自覚していた。・・・のおかげだ。演技中、いつも彼女のことを考えている。技術的にはそう上手くないが、非常に楽しんでスケートしている
彼女をイメージすると、手が以前よりも伸びた、体が柔らかくしなって、スピードに乗れた。小技のジャンプでも跳ぶのが楽しいと思う。
練習が終わって、いつもなら水泳をする時間なのだが、イザークは公園に来ていた。
に初めて会った場所に行きたかった。
「・・・?」
海の見える展望台にがいた。
「イザーク、どうしたの、こんなに遅くに。」
イザークの声に初めて出合ったときと同じように彼女は振り向いた。
「お前こそ何してる、女性がこんな時間に公園にいるなんて危ないぞ。」
「大丈夫よ、ここまでの道は街灯で明るいし、・・・それに、この状態だもの。」
が苦笑いをしながらあたりを見回した、展望台のまわりはカップルの名所らしくて、3m置きくらいに男女が海を見つめている。
「・・・確かにな・・・。でも、どうしてお前はここにいる?」
は少し口ごもった後言った。
「・・・初めてイザークに会った場所だったから・・・。あと少しでイザークは帰ってしまうんだなと思ったら、なんとなく寂しくなって、それでここに来たの。」
「・・・。」
俺をただの親切な男として見ていたのではなく、俺と同じように別れが寂しいと思ってくれたのだ。
「・・・俺も、お前のことを考えていて・・・練習中もだ。それで・・・、ここへ。」
「本当?」
「本当だ。」
「うれしい。イザークはすごい選手だから、親切で練習に付き合ってくれていただけだと思ってた。そんな風に私のことを思ってくれてたなんて信じられない!」
ああ、この笑顔だ。この笑顔が見たいとずっと思い続けていた。
これが・・・、人を好きになるということなのか? 俺も今、あの日のアスランのように幸せそうに笑っているのだろうか?
「海、見るか?」
「うん。」
夜の海に灯台の明かりが時折光る。岬のほうの道に時たま車が通る以外は静かで暗い海だ。
「・・・海は好きか?」
「ううん、あんまり好きじゃない。海は塩っぱいし、水が冷たいし。溺れると苦しい。」
イザークは笑った。
「なんだ、かなづちか? 大会が終わったらプールで泳ぎを教えてやろうか?」
「いいよー。だってイザーク厳しそうだもん。」
「当たり前だ。厳しくしなければ覚えないだろう。」
「うー、考えとく。」
だが、イザークはそうしようともう既に決心していた。少しでもに会いたい。一緒にいたい。
「・・・そろそろ戻らないとな、水泳をサボってしまったからその分柔軟をやっておかないと。」
気がつくとだいぶ時間が経っていた。
「私も家に帰らなきゃ。会社でアパートを借りてくれているの。」
「そうか、送っていく。夜道は危ないからな。」
「ありがとう。」
のアパートは公園から程近い、海の見える高台にあった。
「おやすみ、また明日。」
「送ってくれてありがとう、明日も一緒にお昼食べようね。」
「ああ。」
と離れがたかった。別れ際にキスしたいとも思った。だが、それをしてしまったら、ここから帰れなくなる気がしてイザークはに手を振って宿舎に戻った。
寝るまでにやらなければならないことが沢山ある。
だが、不思議とそれが苦ではなかった。自分をスケート選手として尊敬してくれているのためにも、自分の納得する努力をしたいと思った。
心は甘い感傷に満たされながらも、それが活力に変わっていくのを感じていた。
−明日はもっといい滑りが出来る。
そうイザークは確信した。
次の日、イザークはを夕食に誘おうと考えていた。コーチに外出を告げると午前中の演技を見ていた彼は、唇の端を歪めながら許可を出した。
今日のイザークは非常にいい出来だった。
昼食の時、イザークはに夕食を一緒に食べないかと誘った。
「どうだ?」
「ありがとう、・・・うれしいけど、でも、この町は夜はほとんど店が閉まってしまうわよ。」
「あ・・・、そうか。」
ここが辺鄙な田舎町であることを忘れていた。
「仕事の帰りに買い物をしていくから、うちで食べない? あんまり上手じゃないけど何か作るわ。」
イザークの心拍数が上がった。おとなしそうなの意外な大胆さに驚いた。
「・・・いいのか、行っても。」
確認の意味をこめて、イザークは聞く。
「いいよ。そのほうが安く済むし。何が食べたい?」
は屈託のない声でいい、その真意は計りかねた。だが、昨夜まっすぐ家に帰らずに海を見ながら自分のことを思っていてくれたのだ。少しは期待していいよな?
「そうだな・・・、少しカロリーのあるものの方がいい。練習すればすぐに消費してしまうから。」
「わかった、じゃあ、奮発してお肉を沢山買っておくわ。」
「金は俺が出すから・・・。もともと俺が食事を奢るつもりだった。」
「じゃあ、お肉代はよろしく。他は私が出すわ。」
「全部俺でいいんだぞ。お前には作ってもらうわけだし。」
「いいのいいの、そのくらい出させてよ。」
思っても見ない展開になった・・・、いや、食事に誘った後のことは考えていたから、少し予定が縮まったということになるか。
滑るを見つめて思う。自分が教えた効果もあるのだが、とても美しい滑りになったとイザークは思った。技術的にはまだまだだが、その滑りの中には、
生きる喜びや、うぬぼれかも知れないがイザークへの想いがあふれるように見えた。
アスランがカガリとのペアに転向した訳が少し判ったような気がした。
二人でこの思いを共有したい。それは誰も体験できない二人だけの世界なのだろう。
少し恥ずかしげにイザークを出迎えたの部屋は、かなり質素な感じだった。会社の都合でこの町に来ているといっていたから、仮住まいなのだろう。
それでも、窓際には浜に咲く花が飾られ、小さなテーブルには、沢山の肉と料理が用意されていた。赤ワインもちゃんと買ってあった。
窓から吹き込む潮風が寒かったのでは窓を閉めたが、それでも磯の香りが部屋に残っていた。
肉は少し焼きすぎているものの、おおむねの料理はうまかった。なによりもワインを傾けながらたわいもない話をすることが楽しくて仕方ない。
イザークはクルーゼコーチの話をした。いつも決してサングラスを外さないことや、口を歪めて笑う笑い方を真似すると、はおかしそうにころころと笑った。
ワインを飲むピッチがいつもより早くなってしまって、あっという間に1本が空いた。台所へもう一本ワインを取りに行こうと立ち上がったの手を
イザークは掴んだ。
「ワインはもういい。」
そして、そのまま強く自分のほうへ引き寄せた。
「好きだ。」
「私も好−」
皆まで言わせなかった。強く唇を吸った。が呼吸困難を起こして、口を離して息を吸い込む。それが済むとまたその唇を覆った。
「泊めてくれるか?」
「・・・うん。」
を抱き上げて、安っぽいパイプベッドにそっと横たえた。時折苦痛に喘ぐの声が聞こえたが、それでも狭いベッドの中で二人は自分たちだけの世界に
酔いしれていた。
「・・・クラブに戻っても、また時間を作ってお前を訪ねてくる。車なら2時間かからないだろう? だから安心しろ。」
「私も試合見に行くわ。1位にふさわしい大きな花束を持っていくから。」
イザークはの髪をくしゃっと撫でた。
「頑張るからな。」
「うん、応援してる、いつでも、どこにいても。」
誰かの為に頑張ろうと思うのは、イザークにとって初めての経験だった。
「私の夢をあなたが叶えてくれたから、・・・だからあなたの夢も、叶えてあげたいの。」
「お前の夢?」
「うん、いつか・・・ね、素敵な彼氏が出来て、こんな風に一緒にいられたらなあ、って。」
「小さい夢だな。もっと大会で入賞するとか、ちゃんと野心を持てよ。そうしないとスケート上手くならないぞ。」
「・・・そうね。」
「帰ってもまた時々二人で滑ろう。お前もここでの仕事は一時的なものなんだろ?」
「うん、もうすぐ終わり・・・。」
「なら、ちょうどいい。あと水泳も教えないとな。」
が渋い顔をしたので、イザークは抱きしめた。
「決めたからな。嫌、は言わせないぞ。」
「強引ね。」
が大げさにため息をついて、またイザークは笑った。
海に面した部屋は朝日が綺麗だった。
「イザークと見たこのお日様の光を絶対に忘れない。」
が言った。イザークもそうだと思った。
次の日からは、さすがに毎食強化食である夕食をキャンセルするわけにはいかず、夕食と練習後のトレーニングが終わった深夜、イザークはのアパートを
訪れ、早朝に宿泊所に帰った。体は疲れたが、と過ごし、彼女の側で眠りに付く時間は何者にも変えがたいものであった。
朝、幸福に包まれながら彼女の髪を漉き、そっと寝ぼけまなこの恋人に「そろそろ行くな」と言って軽く唇をついばんでから服を着て、凍てつく朝の浜風の中を
帰る。途中から軽いランニングを兼ねれば、心が総てスケートに向かうのが分かる。
いや、いままでのように、スケートのために総てを振り捨ててきた時とは違う。
スケートの中に、愛しい恋人や、スケートへの思いや、とにかく良い面も醜い面も含めて自分自身というものが総て入り込んでくるのだ。
そんな彼に最終日、クルーゼコーチは意外な提案をしてきた。
ショートプログラムの曲名:ショパン「革命」
フリープログラムの曲名:ドビュッシー「喜びの島」
激しい「革命」がイザーク向きであることは分かる。しかし、ドビュッシーは恋に我を忘れた彼が恋人と逃避行した「島」を描きあげた甘い作品だ。
まったく正反対の楽曲の組み合わせにイザークは少し戸惑った。
「今の君なら、こなせると思うがね。」
「・・・わかりました。この曲で結構です!」
今期はこれで最後の大会になる。アスランの不在で1位を取りつづけているとはいえ、その演技自体には観客も、そして何よりイザーク自身が満足していなかった。
「自分への革命」そして「やっと見つけた何よりも大切なものへの思い」それを自分の中でのテーマにしよう。
もしかして、自分の演技の変化は審査員にも観客にも受け入れられないかもしれない。だが「自分自身」を出さないスケーティングではもはや納得できない。
午後、に合わせて一緒に滑った。ペアではないが、しばらく会えなくなる寂しさを少しでも埋めておきたかった。大会までは極限まで自分を追い詰めるために
彼女に会うつもりはなかった。
イザークはをスケート場の入り口まで送った。
「今日は何時に帰るの?」
「一般開放の後、2時間ほど滑ったら、すぐクラブに戻って、また練習だ。もう荷物はまとめてある。」
「そう・・・、じゃあ、今日はここでお別れね。」
「そうだな。元気で。」
「イザークも大会まで体調と怪我に気をつけてね。必ず見に行くわ。」
「待ってる。」
背を向けたが手を挙げてから歩き出した時、不意にひどく強い風が吹いてイザークの目に砂が入った。あわててハンカチで拭ったが、もうの姿は消えていた。
大会の日、控え室で緊張に包まれるイザークがいた。同じクラブの友人ディアッカは「彼女が見に来るんだろ、気合入れて頑張れよー。俺もミリィに
絶対かっこよく明日の新聞の写真決めてもらうからなー。」と軽口を叩いて彼の緊張を解きほぐそうとしてくれたが、その彼も前半組に入ったためにもう
練習の為にリンクに出ている。
大勢の観衆のざわめき、自分に対する期待、果たして前と変わった自分は皆に受け入れられるのだろうか、そして、アスランに勝ったと思えるような出来の
演技が出来るのだろうか。
以前の自分なら、気にもかけなかった他人の存在がやけに今のイザークには大きく感じられた。そして、最も自分を見て欲しい女性がきっとどこかで、
演技を見ている。
「。」
思わずその名を呟いていた。
「一緒に滑ってくれ、心の中で。そうすれば、きっと俺は・・・。」
ショートプログラムの前半組の演技が始まった。イザークは控え室を出て選手が見える場所へと移動した。
こいつも・・・、こいつも・・・、ふっ、こいつは前の俺のようだな。
わかる。どんな気持ちで滑っているのか、その不安も、情熱も、恍惚も。前半が終わって、ディアッカは2位だった。ジャンプのミスが響いてしまった。
1位はめきめきと力をつけてきた若手のシン・アスカだ。
・・・だが、勝ちは譲らん。舐めるなよ小僧。
後半組の練習が始まる。イザークは滑りながらの姿を客席に探した。だが、広すぎる観客席から彼女を見つけ出すことは出来なかった。
それでも、イザークは会場に彼女がいると信じている。
イザークの順番が来た。
−さあ、見せ付けてやろう。氷の皇帝がどんな滑りをするのかを。
叩きつけるような激しいピアノの旋律に乗ったイザークは、スピード感のあるジャンプを繰り返す。演技も細身のイザークが大男の王であるかのように
大きく、鋭い。
そして、4回転トウループと3回転トウループの最高レベルの連続ジャンプが決まったとき会場は水を打ったように静まり、次の瞬間割れんばかりの歓声が響き渡った。
それは、イザーク・ジュールが男子シングルショートプログラムの皇帝の座に間違いなく鎮座しているという証明でもあった。
続くフリープログラムでも、イザークは観客をあっといわせた。ショートの時とは真逆の優美で甘いメロディの中で、イザークの視線はゆったりと恋人と戯れ、
恋の喜びのように、ジャンプとスピンは爆発する感情を表した。彼の顔には初めて笑顔が浮かんでいた。
決して笑わぬ氷上の皇帝の笑顔に観客は新鮮な驚きを感じ、その演技が終わった時、会場はスタンディング・オベーションに満ちていた。
他者を圧倒しての優勝だった。
次々と花束を渡そうとする者達がリンクサイトに駆け寄る。その中にの姿があった。
は大きなピンクのスイートピーの花束を抱えていた。イザークがそれを受け取ると中にカードが入っていた。
「おめでとう、そしてありがとう。」
ありがとう?
意味が分からずに、イザークは視線をカードからに戻した。だが、その時にはもうの姿はもうなかった。
「、おい、っ!!! 待て、どこへ行った?!」
「イザーク!!」
呼ばれてイザークがそちらを向くと、ではなく、真っ青な顔をしたカガリが立っていた。傍らのアスランを見て、ああ、アスランのペアの、と
思い出したほどで、カガリには面識がなかった。
「悪いが急いでる、人を探してるんだ。挨拶なら後にしてくれ。」
「違う!!! イザーク、お前にそのスイートピーを渡した女の子の名前はなんていうんだ? お願いだ、教えてくれ!!!」
あまりにも真剣なカガリの剣幕にイザークはしぶしぶ答えた。
「・・・、・だが・・・。お前の知り合いなのか。」
「が・・・まさか、そんな・・・。」
「おい、がいなくなってしまったんだ。お前の知り合いなら探してくれないか?」
「・・・は私のクラブの友達だった。・・・3年前、事故で死ぬまでは、とても仲が良かった。」
カガリが顔を覆う。
事故?!
死んだ?!
何を冗談を言っているんだ、この女は?
イザークの世界が暗転した。
1時間後、空ろな気持ちのまま表彰式を終えたイザークは、控え室でアスランとカガリ、ディアッカとその恋人で新聞のスポーツカメラマンであるミリアリアに
囲まれて、絶望的な話を聞かされていた。
3年前、イザークが練習をしたリンクで、カガリの所属するクラブの合宿が行われた。皆はマイクロバスで来てバスで帰ったが、は両親が迎えに着たので、
一足先に合宿終了日の夜に車で帰った。
その乗用車に、海沿いのカーブで居眠り運転のタンクローリーが車線をはみ出して衝突した。乗用車はガードレールを突き破って海に転落、と両親は
数日後に遺体となって車と海から引き上げられた。
の遺体はあの公園の展望台の下の崖に打ち上げられていたそうだ。
「・・・嘘だ。そんな話は信じない。だって、現には大会を見に来てくれた。この花とカードは何だ? 俺は何度も彼女と練習をし、食事をし、彼女の
アパートにも行っている。きっと別人だ。」
カガリは定期入れからクラブのメンバー数人で撮った写真をイザークに見せた。
カガリと肩を組んでカメラに向かってVサインを送っているのは、あのだった。
「親友だったんだ。見間違えるはずなんてない。葬式にも出てる。観客席でを見たとき一瞬背筋が凍った。でも、あれは間違いなくだ。」
「そんな・・・。」
信じられないが、そういえばには不審な点が多かった。貸し切ったはずのリンクで姿を見た。いつもイザークが目を放した隙に消えるようにいなくなった。
会社に勤めているといっていたが、有名選手でもない彼女に午後、スケートのための休憩を与え、アパートまで貸し与えるような会社があるだろうか。
ふとミリアリアが花束に目を向けた。
「・・・ピンクのスイートピー。花言葉は『優しい思い出』。私も信じられないけど・・・。」
思い出・・・。
「ありがとう」
「うん、応援してる、いつでも、どこにいても。」
「私の夢をあなたが叶えてくれたから、・・・だからあなたの夢も、叶えてあげたいの。」
「お前の夢?」
「うん、いつか・・・ね、素敵な彼氏が出来て、こんな風に一緒にいられたらなあ、って。」
「帰ってもまた時々二人で滑ろう。お前もここでの仕事は一時的なものなんだろ?」
「うん、もうすぐ終わり・・・。」
あの場所でのの仕事とは・・・俺の夢を叶えることだったのか?
「すまない・・・。一人にしてくれ。」
イザークは長い時間、控え室で一人背を丸めて座り込んでいた。
どうしても、納得がいかなくて、次の日にイザークは車であの町を訪れた。
そして、のアパートの前に立った時、彼は絶句した。
そこにあったのは廃屋だった。何度も道を確かめ、廃屋の裏の海も見てみた。
・・・確かにイザークがを送り、彼女と愛し合った場所はここだった。
イザークは公園にも行ってみた。
展望台から、崖下を覗き込む。
「・・・海は好きか?」
「ううん、あんまり好きじゃない。海は塩っぱいし、水が冷たいし。溺れると苦しい。」
、さぞや冷たかっただろう、苦しかっただろう。夢も希望も総て奪われてどんなに無念だったか・・・。
「・・・。それでも俺は、お前を愛してる。ずっと愛してる。」
イザークの頬にいつの間にか涙が一筋流れていた。
イザークはその後、オリンピックで金を取り、名実ともに皇帝の名をほしいままにした。その次のオリンピックでも成長著しい若手の中で善戦し、
銀メダルを取って引退した。
引退後は、コーチとして後続の育成に忙しい日々を送っている。そんな彼に秋波を送る女子の生徒も絶えないが、彼がそれに応えることはなく、
その方面でも「氷」と呼ばれていた。
そんなイザークが毎年、と出合った日に必ず二つの赤い薔薇の花束を持ってあの町を訪れ、一つは公園の展望台下の崖に投げ、もう一つは廃屋の前にそっと
おいてくることを知る者は少ない。
ある年、いつものようにイザークはあの町を訪れ、展望台から海に花束を放り、そして廃屋へと向かった。
「あ・・・。」
去年廃屋だった場所に、小奇麗な喫茶店が立っていた。まだ営業はしていないらしく、玄関にダンボールが重ねてあった。
そこから出てきた女性を見たとき、イザークは驚きのあまり心臓が止まりそうになった。
その女性はと瓜二つだった。いや、あの時のよりも若干年上に見える。まるでが生きていて、年月を重ねたように。
女性が立ちすくむイザークを見て、微笑んだ。
「ごめんなさい、まだ開店してないんです。」
「いや・・・、ここは去年まで確か廃屋だったなと思って・・・。」
「たまたま安く売りに出ていたので私が買ったんです。夢だった海の見える喫茶店をやりたくて。・・・営業はまだ先なんですが、
せっかくいらして下さったので、紅茶を飲んでいきませんか?」
「・・・いいんですか?」
「ええ。ちょうどお茶にしようと思っていたところです。」
彼女は持参した保温ポットからティーポットにお湯を注いで紅茶を入れた。
「すみません、本当はもっと沸騰させないといけないし、今日はマグカップですけど。でも来月開店したら、もっとおいしい紅茶を入れてゆっくり寛げるように
しますから、是非いらしてください。」
イザークは一口飲んでそれから彼女に言った。
「おいしい。・・・失礼ですが、お名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「ええ、私は−」
だが、彼女が名乗る前から、彼女の名をイザークは知っていた。
「そうだ、これを。開店前ですが、開店祝いに。」
イザークは用意していた赤い薔薇の花束を彼女に手渡した。
「え、いいんですか? だって、これはどなたか女性に差し上げるものじゃないんですか?」
「いいんです。・・・これはもう必要ない、いや、あなたに貰って欲しい。」
「・・・ありがとうございます。」
困惑しながらも、彼女は花束を受け取った。
1年後、イザークはこの町に移り住み、自分の小さなスケートクラブを作った。
結婚もした。彼女はスケートについてまるで知らなかったが、いつもにこにこと嬉しそうに、店で作ったサンドイッチを持ってイザークが子供たちに
スケートを教えるところを見に来る。
不思議な出会いと運命だと、イザークは感じることがある。あの1週間が総てを変えてしまった。海から来た少女の最高のプレゼント。
朝日が昇るたびに、スケートを本当に愛する気持ちを教えてくれた彼女を、そして、彼女であり、彼女でない優しい伴侶と過ごす人生を感謝せずにはいられない。
彼女を奪い、そしてイザークに彼女を与えた海は、今日は凪いで心地よい潮風を送りながら、煌いていた。
イザークは目を細めてそれを見やると、静かに自分の生活に戻って行った。
Fin
あとがき:鴨志田様のアスカガ作品に感想を差し上げた時、イザークが「氷の皇帝」として出てきまして鴨志田様から「イザークの話を書いてー」
というリクがありましたので、こりは書くっきゃない!!とがむばってお応えして見ました。
スポーツものは選手の生活が良く分からないので(しかもフィギュアは好きなんですがジャンプの見分けも付かない;;)なかなか書くのが大変でした。
鴨志田様の作品に比べて技の説明が少ないのはそのせいです(笑)
ちょい悲恋死ネタですが、最後に救いを持たせたいと思ってハッピーエンドにしました。
鴨志田様に捧げます! こんなんですが、貰ってくださいませv
>いつもお世話になっております、『シリウスの瞳』のうずら様より、こんな素敵な小説を頂いてしまいました〜〜〜っ!!
出典はいわずもがな、こちらのサイトで書きました『銀板に踊る恋』なのですが、その中で『氷の帝王』イザーク様を書いたところ、鴨志田「イザ様のプラチナブロンドの髪と、アイスブルーの瞳は、まさしく銀板向きじゃないか!!イザ様が滑るところをみたいわ〜〜!」と思い立ったところ、「イザ様を素敵に書けるのは、イザ様フリークのうずら様しかいない!」と勝手に思い込み、うずら様に打診ました。
そうしたら、お忙しい中にも関わらず、このような素晴らしい大作を書き上げて、しかも「サイトUP」の許可まで頂きました!!
読んで頂ければ一目瞭然、鴨志田がとても書ききれなかった透明な世界観と、イザ様の心境や成長が目に浮かぶように書かれていて、「素晴らしすぎです!」の一言です!!
沸き立つ恋心と切ない想いを書いて余りある表現力で、グイグイ引き込まれたのではないでしょうか?
うずら様、このような素敵なお話を、本当にありがとうございました!!<(_ _)>
>鴨志田菜都瑠