注文の多い料理店               もどる

ある一人の少年がいました。
少年の、趣味は、ロードバイクで、遠くへ行くことでした。
少年の、ロードバイクは、6.8kgと、軽量で、走り心地は快適でした。
少年が、ロードバイクが、好きなので、父親が、少年の誕生日のプレゼントとして買ってやったのです。
少年は、大喜びしました。
少年は、ロードバイクで、色々な所に、かなりの距離を走るようになりました。
ロードバイクも、ランナーズ・ハイと、同じように、長時間、走っていると、気分がハイになってくるのです。
ある時、少年の、ロードバイクの前輪がパンクしてしまいました。
人気のない林の中の道です。
(困ったなあ)
と、少年は、呟きました。
少年は、ここは、どこかなのか、と、思って、ポケットの中を探りました。
(お母さんに連絡して来てもらおう)
と少年は、思いました。
しかし、ポケットにスマートフォンは、ありませんでした。
(しまった。スマートフォンを、持ってくるのを忘れた)
と、少年は、呟きました。
少年は、仕方なく、ロードバイクを押しながら、林の中の道を歩いていきました。
かなり、歩いたので、少年は、お腹が減ってきました。
(ああ。お腹が減ったなあ。何か食べたいな)
と、少年は、思いました。
すると、道の先に、小さな飲食店が見えてきました。
ハンバーガーショップのようです。
(ああ。助かった。あそごで、ハンバーガーを食べよう。そして、スマートフォンもあるだろうから、借りて、家に連絡しよう)
と、少年は思いました。
しかし、こんな人気のない所で、ポツンと、一軒だけ、ハンバーガーショップがあるのも、不自然なように、思われました。
(本当に、ちゃんとした、ハンバーガーショップなのだろうか?)
と、少年は、疑いました。
それで、少年は、店に着くと、すぐには、入らず、店の中に、見つからないように、壁際に座り込み、店の中の、様子に、聞き耳を立てました。
すると、店の中から、人の会話が、聞こえてきました。
なにか、店の店長と、客の、会話のようです。
少年は、店の外から、その会話を聞いてみることに、しました。
すると、こんな、会話が、聞こえてきました。
店長は、ひどく、横柄な態度なので、少年は、不思議に思いました。
普通、どんな、料理店でも、客が、金を払って、店の経営が成り立つのですから、店長は、愛想のいいものです。
それは、何も、料理店に限ったことではなく、全ての、商品や、サービスを売る店で、いえることです。
客があってこそ、店の経営は、成り立つのです。
少年は、不思議に思って、聞き耳をたてました。
すると、店の中から、こんな会話が聞こえてきました。
「いらっしゃいっ! なんにする」
店長の声です。
「えーっと、なん…なんにしようかな」
お客さんの声です。
「早よ決めや」
店長の声のようです。
やけに、横柄な態度です。
「えっ。はい、じゃあ、 あの・・・チーズバーガー」
「チーズバーガーだけで ええんかいっ」
「あっ、 はい」
「普通おまえチーズバーガー 頼んだらコーラかなんかも注文するやろ」
「はい じゃあコーラ」
「ポテトは?」
「えっ?」
「セットで安くなっとんのや。おまえ、注文せにゃ損やどっ」
「じゃ…ポテトも」
「新発売のテリヤキバーガーはどうや?」
「あの…だけど、そ、そんなに食べ…食べられないし・・・」
「俺がすすめたもんが 食えんちゅうのかい?」
「はい。じゃあ、じゃあ、それも」
「ここで食うんか 持って帰って食うのんか どっちや」
「あ、あの。持ち帰ります」
「ここで食えっ」
「えっ?」
「そのほうがこっちは 楽やねん、ここで食えっ」
「はい。じゃ、じゃあ、ここで食べます」
「金払え」
「あの…おいくらでしょうか?」
「690円や、 安いやろ? おっ1000円かい 釣りはいらんな?」
「いえあの、お釣り・・・」
「ケチケチすな、ボケッ」
「ほら出来上がりやさあ食えっ」
「どや うまいか? うまいか?」
「はっ・・・はい」
「そやろ、 早よ食えっ」
「うしろがつかえとんのや」
「おまえ、とろとろしとったらいってまうどっ」
「はいっ・・・ご、ご、ごちそうさまでした」
「よっしゃっ、明日も来いよ。絶対来いよ」
「・・・・」
「来なんだらこっちから 訪ねて行くからなっ。顔は覚えてるぞーっ」

少年は、びっくりしました。
「うわー。ここは、注文の多い、ハンバーガーショップだー。うかうかしてたら、何をされるか、わからない」
そう叫んで、少年は、一目散に、走り出しました。

店の外で、大声がしたので、店長が、出て来ました。
そして、店の外に出ました。
ロードバイクを押しながら走っている少年の後ろ姿が、見えました。
「おーい。どうしたんだー。どうして、逃げるんだー?」
と、叫びました。
しかし、少年は、逃げるように、走って、ついに、見えなくなりました。
「あの。少年は、どうして、逃げたんだろう?」
店長は、首を傾げながら、店の中に、もどりました。
店内では、BGMで、FM横浜、が、流れていました。
「・・・はい。埼玉県に、お住いの、Aさん、の、リクエスト、による、嘉門達夫の、ハンバーガーショップを、お送り致しました。では、次の、リクエストは、長崎県に、お住まいの、Bさんの、リクエストによる、シャーリーンの、愛はかげろうのように、です。それでは、どうぞ」
そして、店の中に、シャーリーンの、愛はかげろうのように、が、流れ出しました。



平成28年8月25日(木)擱筆