住専問題            目次へ

1996年3月20日。私は都内の図書館で勉強して、帰りに新橋駅前のマクドナルドに寄った。そうしたら若い学生が二人、住専問題を話していた。一人が、
「いくら菊池桃子を使っても東海銀行もダメだよ」
と会話の流れの中で言っていた。
住専(住宅金融専門会社)はバブル景気の時に土地を担保にして銀行から資金を借り入れて貸し出していたが、バブル経済が崩壊し地価は下落し、それは不良債権となり政府は6850億円を1996年度予算の一般会計から支出することになってしまった。
だがまてよ。東海銀行は5年以上前から、彼女をイメージガールとしてつかっていたぞ。何となれば、私は5年前、東海銀行の前の彼女のポスターが、どうしてもほしくなったので、銀行の人に菊池桃子のポスターを下さいとたのんだ。そしたら快くくれた。住専問題が、おこったのであわてて、イメージ回復のため、とってつけたのではない。彼女は現代に生きる女キリスト者だ。彼女は金融の実体をしらなかったから安易に東海銀行のイメージガールをひきうけたのであろうか。
いや、ちがう。彼女は東海銀行を信じてイメージガールをひきうけたのだ。
これはミニコミの女生週刊誌にのっていたのだが、彼女は今、心をいためており、食事ものどを通らないらしい。夜も眠れない、ということだ。彼女のマネージャーが、そのことを東海銀行の社長に電話した。そしたら社長は緊急役員会議をひらくことにし、彼女にそれに出席してほしい、とたのんだ。彼女はそれを承諾した。そして東海銀行の本社へ行って、役員達に、
「モモコ、ゆるしません」
と言ったらしい。出されたケーキも紅茶も手をつけなかった、ということだ。役員達はうちひしがれてしまい、
「どうしたらいいのでしょうか」
と訓辞をあおいだ。彼女は、
「私、経済の勉強をします。今はまだ、お金のしくみのこと、わかりません。それまでは自分の良心にもとづいて、よいと思うことをして下さい」
と言った。役員の一人がポソッと、
「でも、これは政治もからんでいるんです」
と言ってしまった。そしたら彼女は、
「私、政治のことも勉強します。誰がかかわっているんですか」
ときいた。彼女の口調には、かくしだてを出来なくしてしまうものがあった。一人がつい、ポソッと、
「自民、社民、さきがけ、の与党三党、新進党、それに内閣総理の橋本首相・・・」
と言ってしまった。彼女は、あすにでも首相官邸に行きます、といってかえったらしい。彼らはこういう小さなミニコミを知らないであろう。
私は彼女があんまり政治に探入りしない方がいいと思っているのだが・・・。だが、一方で、彼女の一言で日本はガラリとかわることも事実だろう。彼女の澄んだ瞳ににらまれると、みな、しおれてしまい、罵詈雑言を言うことなどできなくなるのだから。


1996年3月20日擱筆