ディム・ナイツの呟き
俺がなぜお前を食らったのか、それはお前を愛していたからだ。
失われていくお前を手放すことなどできなかったのだ。
お前がどんなに汚されようと、お前がどんなに変わっていようと、
俺にはどうしても手放せなかった、愛するお前を手放したくはなかったのだ。
できることなら知りたくなかった。見たくなかった。
お前が義父に犯されているところになど、出くわさねば良かった。
あの時俺が帰らねば、いや、俺がもっと帰りつけていたならば…。
あの瞬間に狂えていたらよかった。
そうだ、心の底から狂えていたなら。
俺がお前を愛する気持ちは嘘偽りのないものだ。
だからイレイア、俺はお前を責めたくはないのだ、なぜ、などとは。
「ひどい裏切りだとは思わないのか?」
違う、裏切ったのは俺だ。イレイアを愛しているのに。
愛しているのに。愛しているのに。
愛しているのになぜこの気持ちを疑うのだろう、俺は。
お前が見えない。お前がいない。
お前がそこにいないなら、俺のこの思いはどこへやったらよいのだ。
何度も何度も愛していると言ったな。
お前は俺を、俺はお前を、確かに愛していたはずだ。
なのに言葉だけでは足りないと言うのか。
足りていないのは俺か。俺がお前を信じていないのか。
なぜこんなことになってしまった?
なぜだ、なぜ俺は…
俺は狂ったか? 狂っているか? こんな俺でも狂えるのか。
俺はお前を愛しているのだ、失うことなど考えられなかった、だから!
お前には、俺と共に永遠に、俺の中で永遠に笑っていてほしいのだ。
許せとは言わない。これが俺の愛だ。
お前にだけはずっと笑っていて欲しい。頼むから。
俺の中でずっと。俺の中でずっと見ていてくれ。そして笑っていて。
俺がお前を哀しませる全てのものを排除してやる。
お前を失うくらいなら、俺が世界を滅ぼしてやる。
お前とずっと共にあるための、その代償として。
結局大切なものを手放せないのが、生物のサガなのだから。
お前だけを愛すると誓おう。否、愛している、お前だけを。
俺はお前と共に生きてゆこう。
この手を濡らす、あふれる血の海にただよいながら。
fin.