・・・僕、なんか変なこと言ったっけ。






――よもぎ――






単に、サンと一緒に散歩してて。

たまーに違う道を通ってみようと思って、

そしたらちょっと広い野原に出て。

そこでサンがちょっと遊びたい、て言ったから、

僕は此処で待ってようと思ってただけなのだけど。



それなのに



「フォーちゃーん♪ みてみてー♪」






どうしたらこんな泥だらけになって帰ってくるんだろう。





いつもの、可愛いゴスロリ風のスカートが、

まぁ素敵なほど泥だらけになっていて。



「サン・・・いったいどうしたらそんなに泥だらけになるの・・・?」

「ほら見てみてー。これ!」



聞いちゃいないなこれは。



あぁそうか。

僕が一生懸命お金貯めて買った(買わされた?)洋服でさえも、

この野原に生えてるそんじょそこらにあるような草の方が価値があるんだ。

そうなんだねサン。



そして、フォルテはサンの手にある草を見て更に凹む。






――――――蓬じゃないか。






何かと思えば・・・。

ほら、蓬ってあれじゃないか。

日陰とかによく生えている植物。

こんな野原じゃなくても、街中でも十分見つけられるような気が。



「ねーフォーちゃーん、こんなにいっぱいあったよー」

一方のサンは服のことを全然気にしていない。



「サン・・・どうしたらそんな汚れるんだ・・・?」

「えー、ほら、いっぱいとったからー」



いや、説明になってないいから。

・・・ほんとに、帰ったらどうやって洗濯しようか。



「でね、フォーちゃん!

これって持って帰ればお餅に出来るんでしょ?

だからさー、フォーちゃんに作って欲しいのー」

「そりゃそうだけど・・・でもね、こんなにいっぱい取ったら可哀想だと思わない?」



「え・・・どゆこと?」

「そんな、考えも無しに根こそぎ取っちゃって。

ちゃんと蓬だって生きてるんだから、むやみに取っちゃダメだよ。

ほら、可哀想だと思わない?」






「・・・え・・・あ、そうなんだ・・・ダメ・・・かぁ」

そう、寂しそうにサンが言った。



サンの表情が曇った。






その時、ようやく気づいた。

僕は何言ってるんだ。



サンの心を考えも無しに根こそぎとったのは僕じゃないか。



服を汚したのだって、

蓬をいっぱい摘んでいたのだって、

立派なサンの「葉っぱ」の一部だったのに。



それを僕は何も考えずにしかりつけて、

サンの心・・・根っこごと掘り返してしまった。



それは違うんじゃないか?



僕は決して、

サンに「お嬢様らしいお嬢様」になって貰おうとは思っていないから。

いつものようにバーゲンセールに異常に執着したり、

お菓子が大好きで沢山食べたり。



あ、女装を押しつけられるのは困るけど。






そう、僕はサンに、

心の何処かで「そのままで居て欲しい」と思い続けていた。

サンが笑っている限り、ずっと平和でいられる気がしたから。



「・・・分かったよ、帰ったら作るから。」

「え、ほんと?許してくれるの?」

「でも量多いよ?2人で食べるには・・・」

「人呼べば良いんだよー。

えーと、ニナちゃんとかー、ゼロくんとかー」

「えぇええええ!?本気!?」






そんなサンで居て欲しいから。






蓬 ――よもぎ――

本州、四国、九州の山野に多く自生する野草。

春の若葉は食用になり、餅につきまぜて草餅として多く利用される他、

切り傷や下痢止めの薬、また艾(もぐさ)の原料として有名。

花言葉:幸福、平和

2月29日の誕生花。



***


花言葉、サンに当てはめようとすれば無理矢理にでも当てはまるかなぁと思いまして。
そしたらこうなりました。
そして何故かフォー視点。(ぁ。

最初の方はもの凄く思い通りだったのですが。
終わりよければすべてよし・・・とも言いますが。
最後どう・・・?決まってる?(何