白い物恐怖症。
雪やこんこ、霰やこんこ、降っても降ってもまだ降り止まぬ。
「っていう歌があったよねー。」
年の瀬が迫った、寒い日。
3人で下校中、ニナが言った。
「はぁ?なんだよその歌?」
魔法界にこんな歌はなかったらしい。
「あ・・・知らないんだっけコレ・・・」
ニナは少し凹んだ。
すると。
「あ!!」
ちらほら、雪が降ってきた。
「すごーい!ホントに降ってきちゃった!」
ニナ、興奮。
「おぉーっ!すっげぇ!」
ゼロも興奮。
そして、イチイは。
「・・・」
何故かイチイだけは無言だった。
「・・・え?イチイ?どうしたの?」
ニナがイチイの顔をのぞき込んで言った。
「あ、いや、何でもないよ・・・あぁ、ちょっと・・・
僕だけ・・・先に早く帰っていい?」
「え・・・?な、何で?」
「ゼロとニナちゃんはゆっくり帰って良いから。それじゃ」
イチイは足早に去っていった。
「・・・何・・・?」
ゼロとニナは降りたての雪の感触を感じながら、
ゆっくり家に帰っていった。
「イチイ・・・どうしたのかな・・・」
「さぁ・・・?」
2人が帰ると、イチイは何故か部屋に立てこもっていた。
扉をたたいても返事もせず。
もちろん扉は開かず。
おかげでゼロは部屋に入れず。
ニナの部屋にお邪魔していた
おかげでニナは良い迷惑。
一方のゼロはそうでもなさそうだったが。
すると。
「ピリリリリリリリッ」
部屋に電子音が響いた。
「え?何?あたしのケータイじゃないよ?」
「あ、オレのケータイだ」
「え!?ゼロケータイもってたの!?」
「いや、魔法界のケータイだけど。」
「へぇ〜、魔法界にもケータイが・・・って、と言うことは魔法界から掛かってきてるの?」
とりあえずゼロは電話に出た。
「はいっ、もしもし」
「あ、もしもし?ゼロくん?私です」
「あ、こんにちはっ」
「え・・・?誰?」
ニナの問いに、ゼロがケータイから少し離れて答えた。
「あの、サラサだよ。イチイの姉さん」
「あぁ!あの話の人!」
「ゼロくん・・・今日、そっち雪降ったんだって?」
「あっ、うん、そう」
「じゃぁイチイは・・・?」
「なんか引きこもってますが・・・」
「あぁ、やっぱり」
何故かサラサはあっさり言った。
「え・・・っ?どういう事・・・?」
サラサによると。
昔、イチイはある事件によってコンプレックスが出来たらしい。
それは、サラサとイチイが出会った頃のことだった。
久しぶりに、魔法界に雪が降ったクリスマスの日。
その頃は、イチイはまだ素直で、子供っぽさが残る頃だった。
「わわ!見てよサラサ!雪が積もってるよ!」
前日の降雪で雪は10cmくらい積もっていた。
「あら、珍しいわね、最近にしては・・・」
イチイはコートとマフラーを着用して、外へ駆けだしていった。
サラサは家の中で、クリスマスケーキの準備をしていた。
「すげー、足跡が出来てる・・・!」
よほど雪が珍しいのか、イチイは庭を駆け回った。
一方のサラサは、手際よくクリームをかき混ぜていた。
「あはは、イチイ可愛い・・・。」
窓を通してイチイを見るサラサ。
そして、その日は風が強い日でもあった。
風の音がもの凄かったが、イチイは構わず遊んでいた。
その時。
一段と強い風が吹いた。
ベランダに干してあった白いタオルが1枚、風に飛ばされた。
「あっ!」
それに気づいたイチイ。
タオルは、木の枝の高いところに引っかかってしまった。
「あぁ、取らなきゃ・・・」
イチイはその木に登ろうとした。
「あ、危ないよ、イチイ!」
サラサが窓を開けて声を掛けた。
「大丈夫だって!すぐ終わるよ!」
イチイは木に登っていった。
しかし。
サラサの心配は現実となる。
タオルを何とかつかみ、降りようとして、
飛び降りられるところまで降りた時。
どさぁぁぁぁぁぁっっ
イチイが足を滑らせて落ちてしまった。
「ああっっ!!イチイ!」
幸い、その木の下は雪が他よりも積もっていて、
たいしたショックはなかったのだが。
イチイは雪に埋もれた。
「イチイ!!」
サラサはクリームが入った器を抱えたまま外に飛び出した。
「イチイ!!大丈夫!?」
サラサはイチイに近寄った。
「・・・うっ・・・」
イチイはサラサの方に手を伸ばして、
そして足をつかんで、立ち上がろうとした。
すると。
「きゃぁっっ!」
サラサもバランスを崩した。
そして。
クリームが入った器をひっくり返した。
「あぁっ!!」
そして、その中身は思いっきりイチイの顔面に。
「うわぁっっ!!」
イチイの顔はあっという間にクリームだらけとなった。
ちなみに、そのクリームは真っ白な普通のクリームだった。
「きゃぁっ!イチイ御免なさい!」
「う・・・っっ」
イチイは前が見えないまま自力でなんとか立ち上がった。
そして、そのまま歩き出した。
「あぁっ!イチイ!そっちは・・・」
サラサは遅かった。
イチイはよろよろと家の方に向かって歩いていった。
そして。
ごぉぉぉぉん。
家の壁に激突。
「いたぁぁぁぁっ!!」
そして、その壁もまた白かった。
その衝撃で、屋根の上に積もっていた雪が落下。
その雪もまたイチイに襲いかかったのだった。
「そんなことあったの!?」
「あの日からねぇ・・・イチイは白い物が大嫌いになって・・・」
「え、じゃぁクリーム嫌いなのも・・・それから・・・」
ゼロが有り得ないとは思いながらもそう言った。
サラサは、それに対して否定しなかった。
「一応、2人が困るといけないから電話したんだけど・・・
イチイがどう思うか分からないから、イチイには秘密にしておいてくれない・・・?」
「あ、あぁ・・・うん・・・」
そして、サラサは電話を切ろうと・・・した時。
「え・・・?」
サラサの背後から。
何やら足音が。
どたぁぁぁっっ
「な、何!?」
ゼロとニナは、何が起こったか理解できず。
が、すぐに理解できた。
「ゼロー!!ゼロ大丈夫か!?ケガとかしてないか!?
お金は足りてるか!?本当にだいj」
そして電話は切れた。
「・・・ジェフ・・・」
ゼロはあきれて通話を切った。
「って、イチイにそんな過去があったなんて・・・知ってた?」
「いや、全然・・・」
2人は少し考え込んだ。
そして、1つのアイディアを思いついたのだった。
「って!!何時になったら此処出てってくれるの!」
「イチイが出てきたらに決まってるじゃねーか」
もうしばらく、ニナは堪え忍ばなければいけないらしい。
数日後。
クリスマス当日。
外にはまだ雪が積もっていた。
イチイは、ここ最近雪が積もるごとに窓のカーテンを閉めて、部屋に閉じこもっていた。
そして、雪が降ったこの日も例外ではなかった。
夕方頃、ニナがイチイが閉じこもってる部屋の前でこういった。
「イチイー?クリスマスパーティーの準備できたよ?出てきてくれない?」
そして、更に。
「・・・あのさ、イチイが辛くならないように設定したから。ね?お願い・・・」
そう言ってニナは、たたたっと階段を降りていった。
「・・・オレが辛くならないように・・・って・・・?」
イチイは、一瞬パーティーに出ようか迷った。
今年はいつもと違う人と祝えるが。
でもクリスマスには嫌な思い出が。
とりあえず、様子だけでも覗いてみようと、イチイはドアを開けた。
が。
イチイはすでにパーティー会場に入っていた。
「あっ!?」
説明しよう。
イチイとゼロの住んでいる部屋は、ニナのクローゼットからつながっている。
そして、パーティー会場に出来る部屋はイチイとゼロの部屋の他には、ニナの部屋しかない。
その部屋にはゼロが待ちかまえていた。
イチイ、強制参加。
しかし。
1つ普通と違うところが。
クリスマスだというのに。
その部屋は、黒で染まっていた。
そして、電気が消されていた。
明かりは、1つの電球だけ。
「は・・・っ!?」
イチイ、驚愕。
「座れよ、イチイ、何処にでも。」
ゼロが言った。
イチイは一瞬とまどった。
クリスマスなんて、嫌い。
そうあの日から決めたのだが。
ニナが階段を駆け上がってきた。
皿をいくつかもって。
その皿もまた黒かった訳で。
「あ、イチイ、出てきてくれたんだ?」
部屋には狭いながらもそこそこ料理は並んでいた。
その料理も白系の食材はなるべく使わないようにして。
「ねさ、イチイ?クリスマス、しよう?」
ニナがイチイの目を見て、そう言った。
「あ・・・うん、分かった・・・」
イチイは一瞬迷ったが、承諾した。
「・・・やったぁぁぁぁ!」
ニナとゼロは、とにかく喜んだ。
そして、3人で、クリスマスについて話した。
下手なはずの(byゼロ)ニナの料理も、今日は別に何とも感じなかった。
楽しかった。
イチイにしてみては、こんなに楽しいクリスマスは初めてだった。
ホワイトクリスマスならぬ、ブラッククリスマス・・・か。
イチイは思った。
しばらくして、ニナがまた下へ降りていった。
そしてニナがケーキを持ってきた。
「あ。」
そのケーキもまた、白ではなかった。
「チョコケーキ・・・?」
どうやら、イチイのために白をさけようとして、
ニナが仕方が無くチョコケーキに譲歩したらしい。
「あー、フツーのケーキが食べたかった・・・。」
と嘆くニナ。
と、その時。
コンコンと、窓をたたく音がした。
「え、何?」
ニナはケーキを机に置いて、窓を開けた。
すると。
「ニナちゃーん♪メリークリスマース♪」
サン、侵入。
「わ、サンちゃん!?何で!?」
遅れてフォーも登場。
「さ、サン・・・まさか、本気でまだケーキ食べるつもりじゃないだろうな・・・ぜぇぜぇ」
サンはケーキを食べにやってきたらしい。
「け、ケーキ・・・?まぁ5人分でも十分足りるけど・・・」
「ちょっと待ったー!!」
またまた侵入者・ロッカ登場。
「イチイ様とケーキを食べるのはこのロッカよ!!」
ロッカは即座にイチイに抱きついた。
遅れてゴウ登場。
「ロッカ様・・・マフラーをお付けにならないと寒いですよ・・・」
「マフラーなんて邪魔なのよ!長くて!!」
「な、7等分・・・!?どうやって切るの・・・!?」
「オレを忘れんなりゅ――――――!!」
さらに、パール登場。
「あ、存在忘れてたな」
作者が・・・いや、ゼロが言った。
「ひどいりゅ――――――っ!!オレもケーキ食べたいりゅ――――――っ!!」
「って事は・・・8等分・・・?」
「そうだね・・・。」
ニナは、見てるとちょっと怖くなるような手つきでケーキを切り分けた。
その間、無理矢理ゼロに追加分の皿を持ってこさせて。
そして、ケーキがみんなに行き渡った。
「「「「いっただっきまーす♪」」」」
そして、みんなほぼ同時にケーキをほおばった。
イチイも、今日くらいは、と思って口にした。
もっと早く気づくべきであった。
「・・・ケーキ豆腐・・・!?」
そうだった。
このメンバーが集まって普通のケーキが食べられるはずがなかった。
それでも、イチイは満足だった。
何故か・・・は本人でも分からなかったが。
そして、イチイはこう思った。
来年こそは、ホワイトクリスマスをやってみたい、と。
そして、イチイは昔サラサがよく歌っていた歌のフレーズを思い出していた。
"May your days be merry and bright―!
And may all your christmas is be white―!"
***
・・・終わらせた。(ぇ
うん。まぁ、終わっただけ・・・マシだよ・・・(自分に言い聞かせる(マテ
とりあえず白い物恐怖症の話と、
サラサの電話と、
ジェフの乱入と、(マテ
ケーキ豆腐と、
最後の無理矢理画像だけ入れたかっただけだから良し(殴
最後の英語の歌詞は「White Christmas」と言う歌から来てます。
意味は・・・分かりませんが(マテ
一番好きなところです。この歌で。
ちなみに、パールは出すチャンスを逃してただけです(ぇ
【加筆修正済み】