立浪草  ――たつなみそう――







「ん、なんだ、花鈴だけか」

「だけって・・・酷いよ和音くん」

「姫香は?」

「あぁっと、今日来れないって。体調悪くなってきたからって・・・」



新学期。

放課後。

学校の図書室。



花鈴と和音と姫香は、担任の先生より、

『教室に飾る花を選んで欲しい』と依頼された。



そこで、図書室の本を片っ端から調べて、

花を選ぶはずだったのだけれど。



「ふうん・・・じゃぁ2人か」

「そうだね」



ということで。



(ひゃぁー・・・流石に放課後は誰も居ないなぁ・・・

和音くんと二人っきりだなぁ・・・)



「あい」

「え?」

「これ」



和音が差し出したのは、大量の本の山。

しかも一冊がかなり分厚い。



「こ・・・これ全部!?」

「何だよその反応。探すの大変だったんだからな」

「うぇー・・・いったい何処を探せばいいの・・・?」

「大丈夫だって。時間はたっぷりあるから」



いや、時間があるとか無いとかそういう問題ではなくて。

集中力が続くかという問題だと思うんですが。



とりあえず、花鈴は適当に本を手にとって、

ぱらぱらとページをめくっていった。



「ねー和音くん、この花とかどう?可愛いよー」

「は?何いってんだよ、これ秋咲く花だぞ」

「え、ダメ?」



「そりゃなぁ・・・今から用意できる花が良いだろ。

大体・・・梅雨当たりに咲く花とか」



「梅雨当たり・・・紫陽花?」

花鈴は特に何も考えずにそう言った。

「いや、そりゃなぁ・・・安易すぎだろ。何かもっとあるだろ?」

「えー・・・めんどくさい・・・」



「自分からやりたいって言ったのは誰だ」

「・・・花園花鈴さんです」

花鈴、敗北。



「じゃぁ文句言わない」

「・・・えーい・・・」

やる気のない返事を返して、

再び花鈴は本をめくりはじめた。



「・・・!」

花鈴があるページを開いてちらっと見た瞬間、

がたんと音を立てていきなり立ち上がった。



「な、どうした・・・?」

「ね、和音くん!この花とか良いんじゃない!?」



そういって、花鈴が指さしたのは、

たつなみそう とかいう花で。



「・・・は?何それ?聞いたことねぇな」

「あ、ほら5月から6月にかけて咲くって!

梅雨には早いけどこんなのどうだろ?」



たつなみそう。

それは、青紫色の不思議な形の花。

花の形が浮世絵に描かれる波のようなので、その名が付いたという。



「花鈴・・・よく見ろ」

「え?」



「これ・・・野草だぞ?林とかに自生してるんだってさ」

「え!?教室じゃダメなの!?ケチだなー」

「いや、そういう問題じゃないだろ、な。

んで、何でこんな花が良いんだよ?花鈴は」



「んー、だってさー・・・花言葉が素敵なんだもん」

「花言葉ぁ?」






私の命を 捧げます。






「ね、なんか素敵じゃない?」

「・・・だから?」

「だ、だから!?酷いよ、これ素敵じゃん!

てか和音くんセンス無いんじゃない?」

「うるせーな!今花選ぶのに必要なのはそういうセンスじゃないだろ!

きょうしちゅ・・・教室に飾るのにふさわしい花を・・・」

「あ、今和音くん噛んだでしょ!」

「ううううるせーな!とにかくもっと他の花選ぶぞ!」

「え、却下!?酷いよ!何でー!?」



「じゃぁ、何でこの花にこだわるんだよ?」

「だって可愛いし!それに・・・花言葉が素敵だもん!」

「はぁ!?何いってんだよ!

そんな花言葉なんてお前になんかすっごく縁遠いじゃねぇかよ!」



「な・・・っ」

そのまま花鈴は黙り込んでしまった。



「じゃぁもっと教室に飾るにふさわしい花見つけろよなー」

「・・・あ、うん・・・」



花鈴は悔しかった。

「お前には縁遠い」と言われたことが。



そんなこと、ないもん。

違うもん。



私だって。

和音くんが神化して倒れた時、

私は決まってこう願う。



あぁ神様、

私なんかはどうなっても良いから、和音くんを助けて下さい、と。



だから、この本をめくって、

この文字にたどり着いた時、

何か「縁」のようなものを感じた。



これは、私の花だ。



面と向かっては言えなかったけれど。

私はいつも、和音くんに何かあったら、

命をも差し出す覚悟で居るから。



あなたは気づいてないかも知れないけど、

私は覚悟決めてるから。



だって 和音くんは  ・  ・  ・     ね。






立浪草 ――たつなみそう――

挿し木、株分けで増やし、

本州〜九州の丘陵地や野原、林のふちに自生する野草。

草丈は30〜40cmで、5〜6月に開花する。

7月3日の誕生花。







***



はい!そこで「何で7/3?」とか思ってる貴方!ダメですよ!
即「わぁ、花鈴の誕生日の花なんだぁ」と反応しなきゃ!

分かるよね?
分かってくれるよね?(ぁ



はい。
偶然にも雪沢が7/3の誕生花「たつなみそう」の
存在を知ってしまったがために、
突発的に書かれた小説なのです。
フリー小説を突発的に書いちゃだめだろってツッコミは無し☆(マテ。
でも最後のほう詰まったけどね・・・(ぁ

何ならこの企画すべて誕生花シリーズにするか。
それでも良いなぁ。
でもナルヒナだけは元々書きたいネタあるのでそっち書きますが。(何

それよりもこの小説はレイアウトに悩んだという思い出があるよ。(ぁ



和音が噛んだのは単に私が打ち間違えただけです。
わぁナイスだ自分の指!(を。

本館の10000HIT企画フリー小説でした。