バレンタインの風景――ピンチ到来――
「ご、ゴメン・・・花鈴ちゃん・・・今日私・・・一緒にチョコ作れそうにない」
な、な、な、
なんですと――――――――!?
花園花鈴。
生まれてこの方十数年、チョコレートなぞ作ったことはない。
去年は時間がなかったので、急いでお店で買ってきて間に合わせたのだが。
今年こそは、と決意して、
姫香と一緒に、初めてチョコ作りに挑戦する。
はずだった。
が、しかし、この通り最近姫香の調子が悪く。
無理を避けるために、今日は静養することに。
さぁ、花鈴、どうする。
姫香からの伝言。
『板チョコと一緒に説明書おいておいたから、それ見て良いチョコ作ってね』
とな。
もちろん、花鈴もその説明書を読んでみた。
初心者向けの、簡単な説明書だった。
はずなのだが。
まもなく花鈴は固まる。
説明書が読めない女、花園花鈴。
一分間で脱落。
「姫香ちゃぁぁぁぁぁぁん!!助けてぇぇぇぇ!!」
まぁ、無理な話なのだけど。
とりあえず、理解できたぶんだけ、作ってみる。
けど。
何で――!?何で上手くいかないの!?
花鈴は叫び、暴れ回った。
心の中で、だけど。
いくらか料理は作ったことあるはずなのに・・・。
何故か上手くいかない。
あぁ、いつもの料理はほとんど姫香ちゃんに教えて貰ったからか。
チョコ作りなんてしたことないしなー。
花鈴は色々考えながらチョコを作っていた。
半分言い訳に近かったが。
そうしているうちに、1時間経過。
1時間も何故悩むことがあったのだろうか。
とりあえず1時間経過。
花鈴、疲れ果てて台所で眠る。
えぇ、早いですが何か。(by花鈴/後ほどこう語る。
たった1時間だけど、台所には、大量の失敗作が積み上がった。
コレを見込んで、最初から大量に材料を用意していた姫香は凄いと思う。
それから何分、何時間たったか分からないけれど。
誰かに起こされることもなく、花鈴は目を覚ました。
「ん・・・?」
すると。
「ん・・・え・・・あぁぁ!?」
何と、テーブルには完成したチョコが。
ちゃんとハート形で、文字も入っている。
「す、凄い・・・!」
唖然とする花鈴。
いいいい、いったい誰が・・・?
わ、私夢遊病だったりして。
それで何時の間にか作ってたりして。
無いか。
「花鈴ちゃん・・・?出来た?チョコ」
姫香が歩いてやってきた。
「あ・・・姫香ちゃん・・・」
あ、もしかして?
密かに姫香ちゃんが作ってくれた?
「姫香ちゃん・・・は、今起きてきたの?調子は?」
「うん・・・何とかさっき起きてきたの。まだ体重いけど」
「あ、うん・・・気を付けてね、明日学校行けるように」
ちなみにこの日は日曜日。
姫香でも、無いか・・・
結局、誰?
和音くんでもないし。キューちゃんでもないし。
「・・・しーちゃんじゃないよね?」
「し、ししし―――!?ニャケが作れる訳無いですし――!」
「・・・それもそうか。届かないしねー」
通りかかったニャケ。
んで、微妙に傷ついて帰っていった。
見かけは良いし、ちゃんと和音くんの名前も入ってるし、
誰のかは分からないけど、このまま渡しても大丈夫だよね?
花鈴の邪な考えが。
実行に移されてしまった。
「和音くん!これ・・・私が作ったの!受け取ってくれる?」
「あ、あぁ・・・良いけど。」
さぁ、どうなる!?
「・・・ん、おめーにしては旨いじゃん?」
和音はそのチョコを一口かじってそう言った。
「本当!やったぁ!」
本当にその言葉通りに。
今年のバレンタインは、成功かな。
そう思って、花鈴は満足して和音を見ていた。
さてさて。
結局、そのチョコは誰が作ったのか?
花鈴はもうどうでもいいと思っていたが。
真実は、その翌日知らされることになる。
花鈴が疲れて寝てしまった頃。
九条家に来客があった。
錦織みちる。
彼・・・ミッチーは偶然その頃台所の前を通りかかった。
そして、寝てる花鈴を発見してしまった。
「花園さん・・・?なんだろ、チョコ作ってるのかな?」
ミッチーの目は失敗作のチョコに向く。
そして、まだ使われていないチョコと鍋に。
最初はちょっとやってみるだけだった。
でもやっていくうちに面白くなってきて。
説明書見ながら手順通りに。
んでデコペンで文字書いて。
完成させてしまった。
和音くんは美味しそうに食べてたよね?
***
あえて加筆修正なしで出してみます。