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Il Produzione di Vernaccia di San Gimignano(ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノとその生産)
* :栽培と収穫、そして醸造と熟成
ヴェルナッチャ種は、ポッジボンシ、コッレ・ヴァルデルザ、チェルタルドなどの小都市に囲まれたサン・ジミニャ―ノのテリトリー内の丘陵地帯にて栽培が行われ、海抜値平均280メートル、栽培面積は780ヘクタール。地質は粘土質、凝灰石質の入り混じる砂質により成り、ハンレイ石や火山岩も時折見られる。気候的には、典型的な地中海気候であるために、葡萄苗の活動期である夏期の降雨量が極めて少なく、エルザ峡谷にて折り返す南西風に心地良く煽られるために、葡萄に最適の熟成状態を与える。栽培方式は伝統的な"Guyot"方式が一般に普及していて、1ヘクタールにおける苗数は、古くからあるものについては、伝統的に2,500本くらいが主だが、最近の調査では更に密度を上げても葡萄の質は変わらないとのことから、生産量を増やす為にも、3,000−4,000本が目安で、最大5,000本までが見受けられる。剪定は冬季の発芽前の1回が基本で、より良い生産者になると、夏期の"青い収穫"と呼ばれる房芽剪定が行われる。収穫は、気候の違いや生産者によって左右されるとは言え、毎年大体、9月の中旬から始まる2週間の間に遂行されるのが基本。収穫の時期が早すぎると、熟しきっていない実の持つ酸味が浮き立ってしまう場合が非常に多いので、地区全体に可能な限り収穫を遅らす傾向があるが、その場合、軽い雨季に差し掛かかってしまうことからも、過度の熟成と湿気による葡萄の腐敗や葡萄実の凝縮率が薄れてしまう危険性もあるために、大変な注意が必要とされる。
収穫された実は、大抵の場合、直接台車(写真1)、又は小ケース(写真2)に詰まれてすぐさまカンティーナ(醸造蔵)へ運ばれ、直接、又はベルト・コンベアー(写真3)上の清掃を受けた後、除梗、粉砕作業(写真4)が行われ、圧搾機にかけられる。
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台車(写真1) |
小ケース(写真2) |
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ベルト・コンベアー(写真3) |
除梗、粉砕作業(写真4) |
圧搾の方法は"弱圧搾方式(Spremitura Soffice)"と呼ばれ、圧搾機には主にスクリュー方式(写真5)か空気圧方式(写真6)が多く見られ、ここで圧搾され搾り取られた搾汁(モスト・写真7)が発酵に用いられる。但し、ヴェルナッチャ種の場合は他の白ワイン用品種と比べて果皮が薄くて潰れてしまいやすく、それによる酸化の速度も非常に早い品種なのであることと、伝統的なリセルヴァ・タイプなどの一部では、圧搾前に果皮浸透作業(写真8)を受ける場合もあるので、粉砕前の果実、粉砕後、もしくは圧搾中、圧搾後のいずれか(又は全ての工程)に冷却作業(写真9)を施すことが不可欠である。冷却にいずれの時期を選択するかは、葡萄の量、機械類、又は樽、タンクの容量、作業要因の数、コンピューター化によるオートマティック化のレベルなどの様々な要因により変わってくるものであるが、最も一般的なものは、圧搾により得られたモストを冷却し、不必要成分が沈殿により除かれたものに必要な酵母、酵素が加えられ、そして温度管理化されたタンクで12―18日の低温発酵を受けるスタイルである。通常のタイプとリセルヴァ・タイプの規定上の最低基準は基本的に熟成期間であるために、どのように得られたモストでも使用可能である。
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スクリュー方式(写真5) |
空気圧方式(写真6) |
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搾汁(モスト・写真7) |
果皮浸透作業(写真8) |
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冷却作業(写真9) |
収穫からモスト抽出方法の主な行程表
収穫 一般畑の葡萄 特別指定畑の葡萄 ↓ ↓
除梗、粉砕
↓(冷却)
低温果皮浸透作業(リセルヴァ・タイプなど)
↓(冷却)
圧搾 自動圧搾 手動圧搾 自然圧搾
↓(冷却) ↓(発酵へ)
沈殿作業、もしくは成分分離作業
↓(温度管理発酵へ)
ステンレス・タンク セメント樽 バリック
↓(熟成へ)
ステンレス・タンク セメント樽 バリック ガラス樹脂タンク 大樽
圧搾については、上記のように3種類の圧搾方があり、自動は常にオートマティック回転圧搾を行うもの、手動は静止状態でモストを自然に落下させ、後に残りを回転圧搾するもの、一方自然圧搾は自然に落下したモストのみを用いるものです。一般に、圧搾作業において、モストを酸化させる空気との接触を妨げることの出来る設備がある場合には、自然に落ちてくるモストほど、澄み切った葡萄の良いエキスを含み、それに圧搾を加えれば加えるほど、モストが濁る、つまり質が落ちると云われており、最上のものを造るには自然圧搾が最良という結論に至りますが、その葡萄の健康状態や目的によっては、必ずしもそう断言出来るものではないようです。
発酵作業については、近代醸造テクニックが生みだした設備、温度管理の出来るステンレス樽(写真10)が最良と云われており、低温で約週間の樽発酵へとその行程を進めます。バリック発酵(写真11)は特にリセルヴァ・タイプに使用され、そのまま熟成への過程へと引き継がれていくものです。 温度調整と二酸化硫黄添加による発酵作用抑制の後に行われる熟成過程において、多くの生産者がステンレス樽を愛用しているにも係わらず、ヴェルナッチャ種に限ってはセメント樽(写真12)が理想と唱える生産者も数絶えないのが現状です。かつて遠い昔には、ガラス樹脂タンクと大樽が頻繁に使用されていましたが、現在はまず見られません。
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ステンレス樽(写真10) |
バリック発酵(写真11) |
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セメント樽(写真12) |
フィルター濾過作業は、"ワインの旨みを奪い去ってしまう"と云われる赤ワインに反して、白ワイン醸造には不可欠とされております。ですが、ヴェルナッチャ種、特に果皮浸透作業を受けるリセルヴァ・タイプになると、多くの過程が赤ワインのそれと似てくることにもより、最小限のフィルター作業が理想と言えるでしょう。基本的には、発酵後、もしくは熟成後の瓶詰め前に行われますが、これもそのワインの目的や製造過程により大きく異なるために一概に言えてしまうものではありません。
熟成過程が終了し、フィルター濾過作業を通されたワインは、瓶内熟成を受けます。基本タイプのヴェルナッチャの場合、収穫年の翌年春先から瓶詰め作業が始まり、市場への出荷は毎年通例5月あたりがメドとなりますが、リセルヴァ・タイプは最低1年間の熟成が規定されており、通常収穫年翌年の1月から計算されるために、更に翌年の春先が出荷時期となります。
一般に"ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ"は、独特の構造上の豊かさにより、通常の白ワインに比べてやや高めの温度で味わうべきとされており、8−10℃が適温。一方、リセルヴァの場合、10−12℃。
賞味時期に関しては、各々の生産者の持つ畑質、意図、目的、醸造法、保存法などにより異なってきますが、通常フレッシュ・タイプの理想賞味時期は1−2年以内、リセルヴァ・タイプで2−3年以内となりますが、中には5年以上の時に耐え抜く良いものも見られます。
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註:このページはil chiassoのオリジナルに土居昇用さん撮影の写真を挿入(Tomoko@イタろじ
2005年2月)
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