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Vino Da Dessert(デザート・ワイン特集)

                         "GRANDE PASSITO -Sud Italia-"
                      ”偉大なるパッシート・ワイン -南イタリア編-”



 父に葡萄狩りに連れて行かれていた幼年時分の頃、”葡萄”というものは高い所に実をなすものばかりだと思っていました。時と共に様々な経験や技術、知識、経験の習得を繰り返すと共に、”良い品質のワインは低く保たれた葡萄からなる”ことを学び、挙句の果てにシチリア辺りでは、”ジビッボ”との名称で呼ばれるモスカート種は地に生えるようにその実をならすことを知るに至りました。今思えば不思議なもので、コカ・コーラやファンタなどの飲料を好んで口にしていなかったこの頃の僕にとって、コレこそが”水以外”に唯一、僕を虜にしたワインという飲料との出逢いであったのでしょう。当時梯子を使ってまでもまだまだ見上げざるを得なかったものが、腰を屈めての収穫を目にするまでに至る今日までの”経緯”がある種の運命めいた時の流れを感じさせてくれたりもするものです。

 とにかく、そんな”淡い記憶”を想い起こさせてくれるワインが、今回中心にご紹介させて頂く、南イタリアはシチリア諸島のパンテッレリア小島に産する「Moscato Passito di Pantelleria(モスカート・パッシート・ディ・パンテッレリア)」なのです。

 ”パッシート”というのは、収穫後の葡萄を自然状態で乾燥させることにより”糖度”を高めて発酵させる甘口ワインの基本的な製法のことで、この南イタリアだけでなく、イタリア各地でみられるワインです。一般的には、比較的要素に乏しい格下の葡萄品種の個性を高める為に用いられる手法と考えても問題は無いでしょうが、それがこの”世界に名高いデザート・ワイン用品種モスカート(マスカット)種”となると、ただでさえ豊かな個性が更に膨らんでいる様子が容易に伺え、一度馴染めば病み付きにさえなってしまう”複雑”な味わいを披露してくれるものです。あの有名な甘口酒精強化ワイン”マルサラ”にてもお馴染みのシチリア諸島だけに、当然このもスカート種を使用した”(ヴィーノ・リクオローゾ)”などの安価なタイプや、”(ヴィーノ・フリッザンテ)”などのアスティ・タイプも数多く見られますが、やはりその醍醐味は、この究極タイプ「Moscato Passito di Pantelleria(モスカート・パッシート・ディ・パンテッレリア)」(”パッシート”でないタイプもあるので注意)を是非愉しんで頂きたいところです。

 さて、そんな至高のデザート・ワインの愉しみ方ですが、基本的にはアーモンドなどのナッツ類を香ばしく焼き上げた”乾燥菓子のお供”が主に挙げられるでしょうが、当然それだけでは面白くないし、ワイン自体の豊かな個性からも、他に様々な応用が利きます。例えば、いわゆる定番のクリーム・ベースのデザートでしたら、カラメル、蜂蜜、マーマレード、ナッツや乾燥フルーツ類などの癖のある素材を足してあげると、ワインの持つ”複雑さ”の存在が生きてきますし、使い方次第ではチョコレートなども面白いでしょう。他に、フレッシュ・タイプ、燻製タイプを問わず、”リコッタ”などのフォルマッジョ(チーズ)をベースに使用出来る事も忘れてはいけないでしょう。具体的にはいずれ、「今、白ワインが面白い、偉大な料理と白ワイン」のコーナーにて実例を挙げていきたいと思います。更に付け加えさせて貰えますと、何も「デザート」だけに限定する必要もありません。重要な肉料理に引き継ぐ食事のファイナルとしてのもう一つの選択肢「フォルマッジョ」との相性も抜群で、”サルディーニャ産の熟成タイプの山羊チーズ”を筆頭に、様々なタイプのフォルマッジョを蜂蜜、マーマレード、モスタルダ(野菜、果物のピクルス)などと合わせたおつまみ的な食事にも最適。どういう風に調理されたかが問題となってきますが、あえて言うならば、ジビエなどの肉料理にさえもあわせることが出来るくらいです。ただ、ちょっとした”才能”が必要な組み合わせ方ですけどね。

 下記に、最も代表的な「Moscato Passito di Pantelleria(モスカート・パッシート・ディ・パンテッレリア)」を3本、そしてサルディーニャ・ワイン界をリードするIGTワイン、そして、その存在も個性的なDOCワイン「マルヴァジア・デル・リーパリ」を紹介してあります。赤字で記載されている評価は個人的なテイスティング結果ですので、下記参照した各有名ガイド・ブックの評価欄と共にご参考ください。いずれも、それなりのレベルを自負するイタリア料理店、又はワイン・ショップには少なくとも1本は置いて頂きたい偉大なワインたちです。それと今回は、偉大な甘口酒精強化ワイン”マルサラ”は除外させて頂きましたが、いずれご紹介しようとは思っているところです。

 次回は約2ヵ月後ぐらいかかるかもしれませんが、”イタリアの代表的なスーパー・デザート・ワイン”をご紹介いたします。



 -SICILIA(シチリア島)-

名称 Martingana`1998(マルティンガーナ)
生産者 サルヴァトーレ・ムラーナ(SALVATORE MURANA)
カテゴリー DOC-MOSCATO PASSITO DI PANTELLERIA-
品種 ジビッボ(モスカート)種
コメント テリトリーのもたらす偉大な力を見事に表現している一本で、その独特に溢れる存在感においては明らかに唯一且つ最高レベルのスーパー・ワイン。若干”個性的”な集中力の強さと、”野性的”なボディの厚さが慣れない人には難しいものかもしれないが、その哲学的に複雑な要素の充実度と完成度はお見事。セカンド・ワインの”Khamma(カンマ)”も偉大。
評価 92/100
各有名ガイド・
ブックの評価
ガンベロ・ロッソ誌 ヴェロネッリ誌 エスプレッソ誌
★★ -/20

名称 Ben Rye`2000(ベン・リェ)
生産者 ドンナフガータ(DONNAFUGATA)
カテゴリー DOC-MOSCATO PASSITO DI PANTELLERIA-
品種 ジビッボ(モスカート)種
コメント 若い世代による精力的なワイン生産と、斬新な広報活動により、瞬く間に地域を代表する一流ワイナリーに成長した彼らの誇る一本。洗練されたテイストとフレッシュ感、そして高い香りと柔らかな口当たりがみせるパフォーマンスが見事で、多くの女性を含むデザート・ワイン愛好家誰しにも好まれるだろうワイン。価格もお手頃だから嬉しい。
評価 92/100
各有名ガイド・
ブックの評価
ガンベロ・ロッソ誌 ヴェロネッリ誌 エスプレッソ誌
★★(90/100) 16/20

名称 Bukkrum`1998(ブックラム)
生産者 マルコ・デ・バルトリ(MARCO DE BARTOLI)
カテゴリー DOC-MOSCATO PASSITO DI PANTELLERIA-
品種 ジビッボ(モスカート)種
コメント あの有名な伝説的デザート・ワイン”Vecchio Samperi(ヴェッキオ・サンペリ)”やマルサラなどでも知られる個性的な一流生産者「マルコ・デ・バルトリ」の一本。充実した色合いからも伺える奥行きの深さには圧巻で、印象的な後味の存在感も見事。
評価 89/100
各有名ガイド・
ブックの評価
ガンベロ・ロッソ誌 ヴェロネッリ誌 エスプレッソ誌
★★ ★★(88/100) 14,5/20


 -SARDEGNA(サルディーニャ島)-

名称 Latinia`1998(ラティニア)
生産者 サンターディ(SANTADI)
カテゴリー IGT
品種 ナスコ種
コメント あのスーパー・赤ワイン”Terre Brune(テッレ・ブルーネ)”にて知られる一流ワイナリー「サンターディ」の手による、ナスコという地元白ワイン用品種を”Vendemmia Tardiva(ヴェンデンミア・タルディーヴァ)”により糖度を凝縮させて仕上げられた一本。エレガントに仕上がり、充実しきったふくよかなボディと高き香りは一級ワインの証。特にこの「1998」は絶品。価格も今回ご紹介した中で最もお手軽。
評価 91/100
各有名ガイド・
ブックの評価
ガンベロ・ロッソ誌 ヴェロネッリ誌 エスプレッソ誌
★★★ ★★(89/100) 15,5/20

名称 ANGIALIS`1998(アンジャリス)
生産者 アルジオラス(ARGIOLAS)
カテゴリー IGT
品種 ナスコ、マルヴァジア種
コメント イタリアを代表する10本に入るであろう偉大な赤ワイン”Turriga(トゥッリーガ)”にてお馴染みの名門ワイナリー”アルジオーラス”が贈る有名デザート・ワイン。軒先に並べることが”風格”を表してくれる数少ないワインのうちの一本。若干、後味に不完全な印象が漂うとは言え、気品さと荒々しさの入り混じる充実した内容の濃さには圧巻。
評価 87/100
各有名ガイド・
ブックの評価
ガンベロ・ロッソ誌 ヴェロネッリ誌 エスプレッソ誌
★★ ★★ 15,5/20


名称 Anghelu Ruju Riserva`1994(アンゲル・リュー)
生産者 セッラ&モスカ(SELLA&MOSCA)
カテゴリー IGT
品種 カンノナウ種
コメント 特別なヴィンテージのみに完全なるセレクションによりなるカンノナウ種によるデザート用赤ワイン。リクオローゾ・タイプながらに、薄い甘さがしっかりと漂うタンニンをくすぐる印象が心地良く、一般にはポート・ワインのような愉しみ方が勧められているとは言え、充分に食事との組合せにも持ち出せる自然な味わいを生かすことも出来るワイン。
評価 84/100
各有名ガイド・
ブックの評価
ガンベロ・ロッソ誌 ヴェロネッリ誌 エスプレッソ誌
★★ - 13,5/20


 -ISOLA DI SALINA(サリーナ島)-

名称 Malvasia del Lipari Passito`1998
(マルヴァジア・デル・リーパリ・パッシート)
生産者 ハウネル(HAUNER)
カテゴリー DOC
品種 マルヴァジア種
コメント ”通”の方なら御存知でしょう。古典的伝統品種”マルヴァジア”によるイタリア最高レベルの偉大なデザート・ワインであり、幅広く食事と合わせられる個性的な味わいにおいても他に抜き出る一流パッシート・ワイン「マルヴァジア・デル・リーパリ」。唯一残念なことは、”大幅に欠ける香り成分の乏しさ”であろうが、コレは品種の個性を考えると理屈的に当然かもしれない。
評価 86/100
各有名ガイド・
ブックの評価
ガンベロ・ロッソ誌 ヴェロネッリ誌 エスプレッソ誌
- ★★ 13,5/20


                                       3月19日    土居 昇用