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今、白ワインが面白い!
Grande Cucina e Vino(偉大なる料理と白ワイン)


 
TRIGLIETTE CON PAPPA AL POMODORO
(トリッリェッテ・コン・パッパ・アル・ポモドーロ)
-ヒメジのトマト粥仕立て-



 Sauvignon Blanc(ソーヴィニョン・ブラン)

Photo/Created by chika
注:勤め先の「リストランテ・ガンベロ・ロッソ」の一品ではありません


 地中海を代表する赤魚”ヒメジ”によるトマト風味の煮込み「トリッリェ・アル・リヴォルネーゼ(リヴォルノ風ヒメジの煮込み)」という海沿いの料理、そしてトスカーナ料理ファンにはお馴染みでしょう「パッパ・アル・ポモドーロ(トマト粥)」という山岳部特有の融合料理と言えるでしょうが、決して安易な発想から生まれる”その場凌ぎ”の組合せ料理ではありません。

 さて、「トリッリェ・アル・リヴォルネーゼ(リヴォルノ風ヒメジの煮込み)」から始めましょうか。地中海はティレニア湾に面し、「カッチュッコ(魚介のリヴォルノ風磯煮込み)でも有名な港町”リヴォルノ県”の伝統料理です。フライパンに大目のヴァージン・オイルを温め、一粒のニンニクで香りを出したらトマトを加え、沸いた瞬間にヒメジ、バジリコを加え塩、胡椒をし、蓋をして1分間弱火で調理・・・コレだけです。トマトを最小限に調理し、魚に火が通った時点で完成。こんな究極の”Semplicita(容易さ)”が完璧なハーモニーを見せてくれる一品ですが、本場のイタリア料理を代表する基本中の基本的テクニックが必要とされる名作だと言える一品です。イタリアでは一般的に山岳部に行けば行くほどトマトという素材が長い時間調理される傾向があり、それが故に「山ではペンネ、海ではスパゲッティ」という伝統がついてまわるものですが、基本的に”山岳部”ではトマトに組み合わされる素材は獣肉が主になるので、メイン素材を引き立てるためにトマトの風味は隠れねばならぬという理屈の元生まれる正しい調理方なのです。トマトという素材を単独のものとして捉えるならば、素材の持つ心地良い酸味を飛ばさぬためにも”さっと沸かして終わり”の”海沿いの調理方”のほうが適切だと言えます。確かに、「カッチュッコ(魚介のリヴォルノ風磯煮込み)のように長い調理時間を必要とする煮込み料理も存在しますが、それはタコやスミイカなどの存在からなるプロセスの一つであるだけで、トマト自体の調理時間はやはり最小限が好ましいものです。さて、そんな素材”トマト”と魚素材の調理法ですが、まず最初に魚の選択に注意が必要です。魚は何でもトマトで煮込めばよいと思ったら大間違い。鯛、スズキ、ヒラメなどの一流素材は絶対にトマトで煮込まない。せっかくの気品に溢れる素材の特性を誤魔化してしまうし、脂分と水分の均整の取れたこれらの素材は煮込まれる必要を持っていないからです。逆に、カサゴ、ホウボウなどの赤魚は基本的にトマトで煮込む。なぜなら、これら赤魚はグリルにすると実が硬くなってしまい易い、脂分に欠けた特性を持っているからです。この”ヒメジ”という柔らかくも滋味に溢れる肉質を持つ小魚は少し特殊な性質を持っていますが(基本的にトマト煮込み、ただ単純にグリル、又はフライにしても最高!)が、この場合は深く考えずにトマトとの相性の良さを尊重して料理しましょう。ここでは一般に”癖”ともいえる調理法(魚素材は白ワインで調理する)という規則に従わないようにしましょう。ただでさえ短い調理時間のため理論上必要無いこともありますが、煮込んだ汁が魚臭くなるという煩わしい欠点を招きやすいので。

 さて、「パッパ・アル・ポモドーロ(トマト粥)」ですが、「Ribollita(リボッリータ)」同様にトスカーナ地方特有の「Zuppa(ズッパ)」と呼ばれるプリモ・ピアットのカテゴリーを代表する名作で、近年のトスカ―ナ料理の世界的な成功により、一大ズーム・アップされたシンプルな一品です。とは言え、多くの「Zuppa(ズッパ)」がミネストローネ(比較的濃度の濃い野菜の煮込みスープ)・スタイルであるのに対して、トマトとパンによる簡易なお粥スタイルであることでも少し個性に溢れるものですが、これも前者の「トリッリェ・・・」同様に、トマト、パン・オリーヴ・オイルというシンプルな組合せが生み出す地中海式料理の究極的な存在でもあります。しかしながら、「お粥」というやはり「貧しい」性質からも、毎日替わり替わる食堂スタイルのメニューとして、”週に一度”食するならともかく、高級素材などを売りにするリストランテ・スタイルの料理としてイマイチ不人気。やはり、「魚介類のスパゲッティ」や「イノシシ肉ソースのパッパルデッレ」などの派手な料理が目白押しのメニューからコレを選ぶのもなかなか難しい選択なのではないかと思います。ですが、キチンと作られたこの「お粥」ほどシンプルながらも偉大な”旨味”に溢れる料理はそう多くなく、それを軽率に忘れてしまうにはいささか勿体ない。
 そこで、そんな”旨味”をメイン素材を生かす”副役”回してしまうことで、どちらの長所を盛りたてることが出来る素材は何か、ということになると、それはデリケートな滋味を含むこの「トリッリェ」になる訳です。

 調理法を簡単に示します。まず、酸味もしっかりとしながら完熟しているフレッシュ・トマトを用意します。それを湯剥きして、半分に切り分け種を抜きましょう。この際に剥かれた皮と除かれた種の部分も後に利用しますので捨てないようにしてください。半分に切り分けたトマトが綺麗に並ぶ大きさの小鍋を用意し、大目のヴァージン・オイル、極々少量の若タマネギのスライス、一粒のニンニクを塊ごと加え、香り高いバジリコ、トマトを加え中火で加熱します。トマトが適度に水分を蒸発させ始めたら裏返し、同様の状態に再び辿り着いた時点で、3枚卸し小骨を抜きとったヒメジを皮目からトマトに載せるように加えます。塩、胡椒を振り(ヒメジ、トマトのどちらも調味するように)、ヒメジをすぐさま裏返します(魚の大きさにもよりますが、余熱でも充分火が通ります)。ヒメジをとりわけ(ニンニクも取り除く)、先ほど残しておいたトマトの種部分に浸しておいたトスカーナ・パンの白身を軽く絞ったものと合わせ、極少量の砂糖、ヴァージン・オイルと共にミキサーで処理します。出来上がったクリーム上の「お粥」をスプーンでクネルする形で盛り付け、ヒメジの身を崩さぬように星型に盛り付けます。写真ではヒメジの下に隠れていますが、3回茹でこぼしたニンニクのムースを添えてあげると適度なインパクトを与えてもくれます。先ほど調理に使用した若タマネギの千切り、トマトの皮、バジリコの葉をフライにし、料理の中央部に山形に飾り付けて完成です。

 さて、そんな繊細ながらも軽く、そして同時に見事な旨味と酸味に溢れる料理に合わせるテーマに用いた白ワインは、白ワインの王様的品種シャルドネイ種と世界的に人気を2分割するフランス原産品種”ソーヴィニョン・ブラン種”。独特の”青さ”が心地良い爽やかさを生み、フルーティな酸味と、個性的な切れ味がの多くのファンを虜にして止まない品種ですが、一般にはそう”トマト”との相性は説かれていません。しかしながら、その品質の選抜、それを生かす最小限の調理、そして豊かなコクと共に、香り豊かに仕上げられている今回の料理との相性は抜群で、ワインの持つ豊かな表現力を生かしてもくれるものです。イタリアでは主に北部(トレンティーノ、アルト・アディジェ、フリウリ・ヴェネツイア・ジューリア州)にて見られ、イタリア全土に”ソーヴィニョン・ブラン種”一辺倒のファンを多く誇るほどに親しまれています。

 最後に、イタリアを代表する偉大なる”ソーヴィニョン・ブラン”種のワインを紹介します。過去に掲載された品種同様に、コレも全てではありませんが徐々に各々のワインの詳細も追加されてゆくでしょう。

 Sauvignon Blanc(ソーヴィニョン・ブラン)

 Trentino Sauvignon di Faedo`00 (Graziano Fontana)
 Sauvignon Atesino`00 (Pojer & Sandri)
 Trentino Sauvignon`00 (Nilo Bolognani)
 Trentino Sauvignon`00 (Cesconi)
 Trentino Sauvignon`00 (Maso Furli)
 Trentino Sauvignon`00 (Istituto Agraio San Michele all`Adige)
 Trentino Sauvignon Villa San Niccolo`00 (Lunelli)
 A,A,Sauvignon`00 (Josef Brigl)
 A,A,Sauvignon San Valentin`00 (Cantina Produttori San Michele Appiano)
 A,A,Sauvignon Lahn`00 (Cantina Produttori San Michele Appiano)
 A,A,Sauvignon Lafoa`00 (Cantina Produttori Colterenzio)
 A,A,Sauvignon Prail`00 (Cantina Produttori Colterenzio)
 A,A,Sauvignon Select Art Flora`00 (Cantina Produttori Cornaiano)
 A,A,Sauvignon Premstalenhof`00 (Viticoltori Caldaro)
 A,A, Terlano Sauvignon`00 (Ignaz Niedrist)
 A,A, Terlano Sauvignon`00 (Viticoltori Alto Adige)
 A,A,Sauvignon`00 (Cantina Laimbrug)
 A,A,Sauvignon`00 (Josef Solva)
 A,A,Sauvignon Quarz`00 (Cantina Terlano)
 A,A,Sauvignon`00 (Cantina Produttori Termeno)
 Collio Sauvignon de La Tour`00 (Villa Russiz)
 Collio Sauvignon`00 (Villa Russiz)
 Collio Sauvignon`00 (Paolo Rodaro)
 Collio Sauvignon Segre`00 (Castello di Spessa)
 Collio Sauvignon P`00 (Puiatti)
 Collio Sauvignon`00 (Roncus)
 Collio Sauvignon`00 (Franco Toros)
 Collio Sauvignon Poncanera Collezione Privata`00 (Eugenio Collavini)
 Collio Sauvignon`00 (Isidoro Polencic)
 Collio Sauvignon`00 (Alessanro Princic)
 Collio Sauvignon Tarsia`00 (Schiopetto)
 Collio Sauvignon de La Tour`00 (Russiz Superiore)
 Collio Sauvignon de Ronco delle Mele`00 (Venica & Venica)
 Collio Sauvignon Ascevi`00 (Ascevi)
 COF Sauvignon Riserva`98 (Roncho del Gnemz)
 COF Sauvignon Ronc di Juri Vigneto Montesclapade`99 (Girolamo Dorigo)
 COF Sauvignon`00 (Davino Meroi)
 COF Sauvignon Podere di Ipplis`00 (Ca`Ronesca)
 COF Sauvignon`00 (Mauro Drius)
 COF Sauvignon Podere dei Blumeri`00 (Schiopetto)
 COF Sauvignon00 (Miani)
 Carso Sauvignon`99 (Kante)
 Friuli Isonzo Sauvignon Picol`00 (Lis Neris-Pecorari)
 Friuli Isonzo Sauvignon Vieris`99 (Vie di Romans)
 Friuli Isonzo Sauvignon Piere`99 (Vie di Romans)
 Friuli Isonzo Sauvignon`00 (Ronco del Gelso)
 Sauvignon Kolaus`99 (Pieropaolo Pecorari)

                                      5月23日 土居 昇用