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今、白ワインが面白い!
Grande Cucina e Vino(偉大なる料理と白ワイン)


 
CALAMARETTI CON PATATE E PISELLI
(カラマレッティ・コン・パターテ・エ・ピゼッリ)
-小ヤリイカのジャガイモとエンドウ豆仕立て-



 Pinot Grigio(ピノ・グリジョ)

Photo/Created by chika
注:勤め先の「リストランテ・ガンベロ・ロッソ」の一品ではありません


 ”イカとジャガイモ、そしてエンドウ豆”の組合せというものは、おそらく最も”クラシック”であり”黄金”である素材同士の組合せのうちのひとつなのではないでしょうか。ホクホクとした”ジャガイモ”のコクと心地良く甘く円やかな”エンドウ豆”の旨味、そして淡白ながらも人を魅惑して止まない魅力に包まれた素材”イカ”。夏をまじかに控えた5月頃に”旬”を迎える3つの素材が奏でる豊かなハーモニーでもあります。

 そんな”定番”である有名料理ですが、一般的には、大き目のイカが使用され、大目のタマネギと共にエンドウ豆、そして白ワインで煮込まれ過ぎてしまうような”ゴテゴテ”の大衆料理として知られています。当然、それでもある意味では”確実に美味しい”料理なのですが、やはり”重たく”も、”しつこい”味のものに終わってしまっているケースが多々あるようです。

 そんな”伝統的料理”の良し悪しを説く気はありません。お腹の減りまくったとある日のランチには、一生夢に見続けそうなほどに”美味しい”想いをするかもしれませんし、洗練された料理では満足出来ない嗜好の方にはたまらない料理であるはずで、要は”スタイル”の持ち方次第とも言えるでしょう。ですが、やはり”ニンニク”や煮込まれすぎて引き出された”臭み”などが翌日の夜中まで胃の中で消化しきれないこともあるかもしれませんし、合わせるワインとなると”ガチガチに冷え切っていないと飲めない”ような低俗な白ワインが無難になるでしょう。少なくとも、「ヴィンテージ・トゥニ―ナ」や「ガイア&レイ」とような偉大な白ワインたちを引き立てるような演出役には不十分どころか、偉大なワインの持つ”完成度”みたいなものを破壊すらしてしまうかもしれません。

 そこで、ここでご紹介する”小ヤリイカのジャガイモとエンドウ豆仕立て”では、それら伝統的料理方の良い点(素朴さ)を生かしながらも、調理され過ぎることの欠点を取り除いた形の料理に仕上げてあります。

 まず小ヤリイカは、写真ではわからないかもしれませんが、”リピエーニ(詰め物)”に仕上げてあります。通常”詰め物”料理の中身は、卵黄、又は卵白などの繋ぎにより硬く(切り分けた時に崩れないように)なるように用意されるものですが、ここでは付け合せに”ジャガイモ”というコクのある素材が使用されているために好ましくありません(単独で食される場合にはジャガイモを詰めるのも名案)。それに、今回は小さなヤリイカをし様している為に”切り分ける必要性”もないので、詰め物も多少緩いくらいの方が好ましい口当たりになります。そこで、軽く茹で上げたエンドウ豆の水気を切ったものを裏ごしして、バターでクリーム状に仕立てたものを、冷蔵庫で冷やしてから詰め込みます。”小さなヤリイカ”独特の若く柔らかい食感と、とろける濃度の詰め物が口の中で弾けるような演出を見せてくれるからです。詰め物をしたら、爪楊枝で詰め口をしっかりと閉じたら冷蔵庫で再び寝かしておきましょう。次に”ジャガイモ”を皮付きで茹で上げ皮を剥きます。浅平鍋にて軽く”ニンニクと赤唐辛子”風味をつけた大目のヴァージン・オイルの中に角切りにしたジャガイモを敷き詰め、用意しておいたヤリイカを詰め口を上に向けた状態(詰め物が流れ出ないように)で、”野生のオレガノ”、もしくはタイムなどの香草を添えて、ジャガイモの上に載せます。良質の水、極々少量のトマトの角切りを加え、蓋をして弱火(もしくはオーブンで)でイカに火が通るまで蒸し上げます。海老などの甲穀類を加えてみるのもひとつの案ですが、ここではヤリイカがメインなのであっさりと行きましょう。当然、このままの状態でも美味しいのですが、出来上がったジャガイモをピューレ状にしてあげると、尚更エンドウ豆の詰め物のクリーム感が生きてきます。味のアクセントに”カッペリ”の塩付け(”酢付け”ではない、”塩付け”です。塩を洗い流し塩味を和らげる作業を忘れないで下さい)の刻んだものを付け加えることも重要な秘訣です。別に分けておいた湯で上げのエンドウ豆、そしてそのソースで回りを彩り、アクセントと彩りを兼ねたルッコラを添えて出来上がりです。トスカーナ産のヴァージン・オイルを振り掛けることも忘れないで下さい。

 さて、そんな繊細ながらも豊かなコクに溢れる料理に合わせるとのテーマに用いた白ワインは、フランス原産の”ピノ種一族”の血縁にあたる”ピノ・グリジョ種”。ピノ・ネロ種の遺伝学的な突然変異によるもので、親類であるピノ・ビアンコよりも、あのハンガリー、又はドイツ、アルザス地区で有名な「トカイ」に比類、又は同類されるこの偉大な品種。その構造上の豊かさやポテンシャル、上品でフルーティな香りと熟成を可能にする細かいタンニンの故に、アメリカで「ポスト・シャルドネイ(シャルドネイの次を担うもの)」と騒がれている品種ですが、イタリアでは主に北部(トレンティーノ、アルト・アディジェ、フリウリ・ヴェネツイア・ジューリア州)にて親しまれ、白ワイン品種の王様格”シャルドネイ”種のポテンシャルと切れ味、そして”ピノ・ビアンコ”種のフルーティさと、”トカイ・フリウラーノ”や、”リボッラ・ジャッラ”種の持つ幾何学的な上品さを兼ね備えた風格を誇示している一流品種として定着しつつあります。当然”シャルドネイ”種でも、この料理とは抜群の相性を見せてくれるのですが、シャルドネイ種の持つ”熟したフルーツ実”よりも、この”ピノ・グリジョ”種独特のポテンシャルの高いフレッシュ感のほうがしっくりとくるものです。香り要素の高すぎる品種(トラミネルなど)とですとバランスが取れませんが、ソーヴィニョン・ブラン種のあまり香りが高すぎないものとは、まずまずの組合せでしょう。

 最後に、イタリアを代表する偉大なる”ピノ・グリジョ”種のワイン、そして”近からぬも遠くない”品種”トカイ・フリウラーノ”種のワインを紹介します。イタリアではほぼ限定されて、トレンティーノ、アルト・アディジェ、フリウリ・ヴェネツイア・ジューリア州に見られます。前々回の”ゲウルツトラミネル”、前回の”ピノ・ビアンコ”種に引き続き、コレも全てではありませんが、徐々に各々のワインの詳細も追加されてゆくでしょう。

 Pinot Grigio(ピノ・グリジョ)

 Trentino Pinot Grigio`2000 (Cesconi)
 Trentino Pinot Grigio Ritratti`2000 (La Vis)
 A.A. Pinot Grigio Sanct Valentin`1999 (Cantina Produtori San Michele Appiano)
 A.A. Pinot Grigio Puiten`2000 (Cantina Produttori Colterenzio)
 A.A. Pinot Grigio Soll`2000 (Viticoltori Caldaro)
 A.A. Pinot Grigio`2000 (Peter Zemmer)
 A.A. Pinot Grigio Punggi`2000 (Cantina Produttori Nalles Niclara Magre)
 A.A. Pinot Grigio Unterbnerhof`2000 (Cantina Produttori Termeno)
 A.A. Pinot Grigio`2000 (Castel Ringberg & Kasteraz Elena Walch)
 Pinot Grigio`2000 (Vinnaioli Jermann)
 Pinot Grigio Olivers`1999 (Pierpaolo Pecolari)
 Collio Pinot Grigio`2000 (Castello di Spessa)
 Collio Pinot Grigio`2000 (Mario Schiopetto)
 Collio Pinot Grigio Braide Grande`2000 (Livon)
 Collio Pinot Grigio`2000 (Villa Russiz)
 Collio Pinot Grigio`2000 (Isidoro Polencic)
 Collio Pinot Grigio`2000 (Franco Toros)
 COF Pinot Grigio`2000 (Rodano)
 COF Pinot Grigio`2000 (Ermacora)
 COF Pinot Grigio`2000 (Rocca Bernarda)
 COF Pinot Grigio`2000 (Ronchi di Manzano)
 Friuli Isonzo Pinot Grigio`2000 (Lis Neris-Pecorari)
 Friuli Isonzo Pinot Grigio Gris`1999 (LisNeris-Pecorari)
 Friuli Isonzo Pinot Grigio`2000 (Borgo San Daniele)
 Friuli Isonzo Pinot Grigio`2000 (Mauro Drius)
 Friuli Isonzo Pinot Grigio`2000 (Masto Da Rive)
 Friuli Isonzo Pinot Grigio Sot Lis Rivis`2000 (Ronco del Gelso)
 Friuli Isonzo Pinot Grigio Dessimis`1999 (Vie di Romans)

  Tocai Friulano(トカイ・フリウラーノ)

 COF Tocai Friulano`2000 (Miani)
 COF Tocai Friulano Vigne Cinquant`anni`2000 (Le Vigne di Zamo)
 COF Tocai Friulano Vigneto Montsclapade`2000 (Girolamo Dorigo)
 COF Tocai Friulano`2000 (Davino Meroi)
 COF Tocai Friulano`2000 (Adriano Gigante)
 Collio Tocai Friulano`2000 (Castello di Spessa)
 Collio Tocai Friulano`2000 (Schiopetto)
 Collio Tocai Friulano`2000 (Mauro Doris)
 Collio Tocai Friulano`2000 (Russiz Superiore)
 Collio Tocai Friulano`2000 (Ed Keber)
 Collio Tocai Friulano`2000 (Fernando e Aldo Polencic)
 Collio Tocai Friulano`2000 (Isidoro Polencic)
 Collio Tocai Friulano`2000 (Alessandro Princic)
 Collio Tocai Friulano`2000 (Dario Raccaro)
 Collio Tocai Friulano`2000 (Roberto Picech)
 Collio Tocai Friulano`2000 (Franco Toros)
 Collio Tocai Friulano Ronc di Zorz`2000 (Livon)
 Friuli Isonzo Tocai Friulano`2000 (Borgo San Daniele)
 Friuli Isonzo Tocai Friulano`2000 (Ronco del Gelso)


                                      4月19日 土居 昇用