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Conoscere il Vino (ワインについて学ぶ)



   Conoscere il Vino
  ”ワインについて学ぶ”


 ただでさえ”豊富な種類”と、星の数ほども数多い生産者数などの理由により、その”理解と把握”に多少の困難が見られるイタリア・ワインですが、それについてしっかりと学習するには、”ワイン”そのものへの基本知識が欠かせぬものです。”ワイン”のテストする際に、最終的に大事な事は”美味しい”か”美味しくない”の個人的満足度ですが、それをより先に進めてみたい人には、”数多い試飲”も予備知識無しでは、雲を掴むようなもの。ここでは、そんな貴方に、シンプルなテーマを中心にした”ワイン雑学”を、約1ヶ月間隔で掲載していきます。




   第一回: ワインの理想賞味時期

 「赤ワインはよく寝かせてから・・・・。」

 というフレーズのごとく、”ワインというものは寝かせば寝かすほど味が良くなる”とお考えの方も未だに多いのではないでしょうか。

 確かに、ワイン界の頂点”ボルドー、ブルゴーニュ”辺りの偉大なワインにはそういった傾向があったかもしれません。でも、世界有数の美しき文化的遺産である”ワイン”とて当然、時代の流れと共に少なからぬ変化を受けてゆくものです。かつて、当たり前であった肉体的重労働の激減や、知的な職業の倍増による生活体系の向上に連れて、食体系も重厚なものから”軽い”流れへと傾き、それに従うように”大事なお供”であるワインも”エレガントでデリケート”且つ”柔らかい”味わいのものが主流になってきています。それに加えて、世界市場へ多大な影響を促す”ワイン・スペクター誌”などの有力ワイン専門誌の台頭などにもより、ただでさえ”ワイン”事自体がアメリカ人的嗜好のものへと傾いている傾向が噂されていることも忘れてはならない事実かもしれません。

 イタリア・ワインにおいては、ピエモンテ州の”バローロ”や、トスカーナ州の”ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ”、又はカンパーニャ州の”タウラージ”などがいわゆる”長熟ワイン”として有名なところでしょう。ですが、従来”強烈過ぎるタンニン”を和らげる為に”長期の熟成”を必要としていたこれらのワインですらも、この現代における甚大な品質改革の狭間にその質を変えています。高級品質小樽(バリック)の完全導入や、新しいクローンの開発、そして何よりも近多大な代テクロノジーの発達などにより、”イタリア・ワイン・ルネッサンス”なるものが口語られる中、ワインの存在意義”すらも、”20年前”とは大幅にその容貌に変化遂げているのです。

 先ほど、有力ワイン専門誌の話をしましたが、ここイタリアでもその手の専門誌がもたらす影響は”社会現象”とさえも言えてしまうほど莫大で、その結果が”売れ行き”や”価格の向上”に繋がる為に当然、多くの生産者の目標も、それらが掲げる「称号」へとなりつつあり、もはや”ワイン”というものは”生活に欠かせぬ飲料”というよりも”テイスティングを愉しむための娯楽商品”、つまり、”封を切った瞬間にエレガントな香りが沸き立ち、幾十にも重なる様々な味の要素が鮮烈に舌を撫でる艶やか”なものながら、”2杯目からはついつい疲れを感じてしまう”ものになってしまったといっても過言ではありません。ただ断わっておきますが、ここでその”賛否”を説く気はありませんし、それどころか”異常なまでの価格高騰”はともかく、”エレガントなワイン自体”には賛成であると言っておきましょう。なぜならば”確実にワインの質が上がっている”ことに異存はないですし、そもそもワインを”酔うための飲料”とは考えていないからです。

 とにかく、多くの一般消費者が抱いている、”ワインは購入してから何十年も家の片隅で寝かせてから頂くもの”という考え方は正しくないということは事実でしょう。よく”このワインはまだ若い”というセリフも耳にしますが、その場合も多くは”味が凝縮しすぎて強烈だからもう少し待ったほうが良い、つまり、美味過ぎるからあと数年待って、味が薄くなったときに試したほうが賢明”というケースが十中八九なので、やはり”寝かせたら味が良くなる”という誤解に当てはまるものではありません。基本的にイタリアでは、生産者が”ベストの状態”でワインを市場に流す仕組みになっているし、その目的も早期賞味用のワインを対象にしている為に、まず発売時にテストして良いと考えることが出来ます。

 ただ当然、幾つかの偉大なるワインには”5年位”の時を超えたほうが味が深まるものもありますし、中には「サッシカイア‘94」やソライア‘94」のように、発売時には不評でありながら、今試すと他の当たり年ワインより”美味しい”という不思議な現象も時々起こります。とにかく、”長熟タイプのワイン”でも最大で15年まで、一流IGTワインで10年、そして”キャンティ”を例に挙げるならば”キャンティ・クラッシコ・リセルヴァ”で6ー7年、”キャンティ・クラッシコ”で5年、通常の”キャンティ”で2−3年までが、一般的に熟成の限度とも言えるでしょうし、それも良い環境で熟成された場合のみの話です。ですから、「キャンティ・クラッシコ1978」みたいな代物は、コレクター向けの商品であるという認識をもって頂いて構いませんし、それをテイスティング用に売りつけられた場合には堂々と講義してください。


 白ワインは北イタリアのある種のものを除いて、基本的にフレッシュ・タイプが多く、5年の熟成に耐えるものは数限られています。いずれにせよ、”ワイン”というものには、まだまだ未知の事柄も多い生産物で、生産者によっては幾つかの”例外”もあることを忘れないで下さい。

                                                       2月13日   土居 昇用