2002年 ヴェネツィア (9)

私がはじめてヴェネツィアに行ったのは、1992年のクリスマス。サンマルコ寺院の中ではミサが行われており、入ることができませんでした。昨年は午後に出向いたので、人の多さに辟易して早々に退散しました。そして今回、私たちは3度目にしてはじめて、サンマルコ寺院の内部をじっくり見ることができました。

ヴェネツィア4日目の朝、張り切って出かけた私たちは、8:30過ぎにサンマルコ寺院に到着したものの、まだ、門は開けられていませんでした。
バールでカプチーノを飲んで9:00頃広場に戻ると、もう行列ができはじめていました。

サンマルコ寺院の入り口
サンマルコ寺院の入り口。
半円型の絵はモザイクで作られています。
入り口に置いてある橋桁のような台は
アクアアルタの時に通路として用いるものです。



   サンマルコ寺院   地図…サンマルコ寺院

サンマルコ寺院は、街の守護聖人であるサンマルコを祭るため9世紀につくられたビザンチン様式の建物です。11〜15世紀の改修でルネッサンス、ゴシックなど様々な様式の装飾が加えられています。 

サンマルコと翼のある獅子
寺院の屋根のアップ。
サンマルコと翼のある獅子。



ファザードの上部に立つサンマルコなどの彫刻群、5つのアーチ門を支える大理石(オリエントから運ばれたそうです。)の円柱、正面マーチのモザイクなどの凝った外観は、フィレンツェのドゥオモにも決してひけをとらない豪華さです。
でも、やはり圧巻は黄金で覆われた内部です。

サンマルコ寺院・正面アーチのモザイク
正面マーチのモザイク(部分)



寺院の入り口は2カ所あり、向かって右側が個人旅行者用、左側が団体客用となっています。
内部を見ることができるのは9:30からで、数分おきに10〜20人ずつ入場させます。でも次から次へと観光客が訪れるので、1日中入り口の列が絶えることはありません。
(どちらかといえば、午前中がすいているようです。)

* * * * *

寺院内部の天井と壁全体には、金箔をはさんだ小さなガラスのモザイクピースによる黄金の世界が広がっています。このモザイクピースは表面がゆがんでおり、一つ一つ微妙にずらして敷き詰めることで、光が乱反射する効果を狙っているそうです。

この黄金の衣の上には、『イブの創造』や『キリストの昇天』などの聖書の世界、サンマルコの物語などが、色ガラスや大理石の緻密なモザイクで表現されています。聖人たちの顔立ちは、ビザンチン様式がベースなので、無個性で平板的なものが多いようです。

昼の12時に内部をライトアップするという情報を聞いたので、(どの建物でも同じですが、照明は窓から入る日差しだけなので、撮影用に思い切り光をあてているテレビや写真のようには絢爛豪華に見えません。)しばらく待ってみました。でもその瞬間は遂に訪れませんでした。

* * * * *

豪華な天井に目を奪われがちですが、床のモザイクも素晴らしいの一言です。地盤沈下の影響で床は多少波打っているものの、動物の絵柄、幾何学模様などが色彩豊かなモザイクで床一面に広がっています。

文様があまりにきれいだったので、日本円で約6千円もする『ヴェネツィアの床』という本を買ってしまいました。この本にはサンマルコ寺院はもちろん、ヴェネツィアにある教会や邸宅の床のモザイクの写真が満載されています。説明は英語とイタリア語で書かれており、未だに読めていませんが、見るだけでも充分楽しめる本です。

床のモザイク模様
床のモザイク(絵はがきの一部)


寺院自体は無料で見学できますが、次の3カ所は有料となっています。

右側の入り口を入り、1.5ユーロ払って右横の狭い階段を登っていくと、バルコニーに通じる踊り場のようなスペース出ます。ここでは天井の装飾を間近に見ることができます。

オペラグラスでさらに良く観察すると、階下で見た衣服の濃淡や皺も微細なモザイクで表現されていることがわかります。スーラやシニャックの点描画と同じ技法だなあと感心しました。
バルコニーに出るとサンマルコ広場の賑わいを見下ろすことができます。 

屋根とバルコニー
屋根とバルコニー



パラ・ドーロは主祭壇の裏にあります。(ここも1.5ユーロ)
コンスタンチノープルから運んできた3000個の宝石と80枚の七宝を金地にちりばめた衝立(ついたて)で、シエナの金細工師が11世紀から300年もの歳月をかけてつくったものと言われています。
幅は3.48メートル、高さは1.4メートルで、直立不動のキリストや聖人が描かれています。

右側の奥にあるのはテゾーロと呼ばれる宝物庫です。(2.0ユーロ) 
銀器や聖杯など(これもコンスタンチノーブルから運んできたものだそうです。)を総ガラス張りのケースに陳列しています。かなり狭い空間に次々と人が入って来るので、ゆっくり見ることはできませんでした。

個人的には、バルコニーとバラ・ドーロをおすすめします。 
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バルコニーから見たサンマルコ広場
バルコニーから見たサンマルコ広場。
午前中なので、まだ人は少ないようです。
中央には鳩がたくさん集まっています。



ところで先程、「ライトアップは遂になかった」と書きましたが、正確には、その瞬間を待ちきれなかったと言うべきです。ホテルの朝食は軽めなので、腹時計の正確な私は、旅行中は12時頃になると決まって耐え難い空腹感におそわれるのです。 

絵はがき
サンマルコ寺院では床のモザイク模様の
きれいな絵はがきがたくさん売られています。