トルチェッロ島
ブラーノ島のすぐ近くにあるトルチェッロ島は、ラグーナに最初に人が住んだところです。10世紀頃まで繁栄を続けたこの島にはヴェネツィアの原風景があると言われています。
しかし、15世紀にマラリアの蔓延で衰退し、今ではすっかり過去の島となっています。
現在、住んでいる人は数十人。伸び放題の草が島全体を被い、水上バスの駅と古い聖堂、それを結ぶ道沿いにリストランテが1軒あるだけのようです。
水上バスが到着する30分に一度、島は聖堂を見に訪れる観光客でほんの少しだけ賑わいますが、その他は、葦の風になびく音がするだけの寂しい島です。
サンタ・マリア・アッスンタ聖堂
駅のそばから島の奥に向かって、1本の水路と小径が伸びています。その道を10分程歩くと、サンタ・マリア・アッスンタ聖堂が見えてきます。ここは639年に建てられたラベンナ様式の聖堂で、ファザードは地味な感じですが、内部はなかなか豪華です。
サンタ・マリア・アッスンタ聖堂
聖堂の中は小さなサンマルコ寺院のようです。壁や天井は黄金のモザイクで埋め尽くされ、床は様々な色の大理石の文様で飾られています。
祭壇の壁には12世紀に作られた『最後の審判』が5層に分けて描かれ、後陣のドーム天井には13世紀初頭の『聖母子像と12使徒』があります。
『聖母子像と12使徒』は3つの場面で構成されています。下の部分には12人の聖人が一列に並び、画面の中央には幼いキリストを抱いたマリアが立っています。そして上の部分には2人の人物(天使か神?)が配置されています。金色の背景に浮かび上がるマリアは、表情豊かとはいえないものの、素朴で神々しく、とても印象に残りました。
大理石で作られた床のモザイク模様は、サンマルコ寺院のそれに比べて明るい色調が目につき、また、単純な模様が多いようです。床の一部には金箔も残されており、この島の当時の面影を見ることができます。
聖堂は小さいので肉眼でも鑑賞できますが、モザイクの細部を見たいのならオペラグラスは必需品です。
私は、売店で床のモザイク柄の絵はがきを買いました。0.5ユーロ(約60円)と格安のうえに、とてもきれいです。鐘楼もありましたが、少々傾いていたので登りませんでした。
トルチェッロ島の絵はがき
床の模様が非常に美しいです。