2006年度 東京大学公共政策大学院 冬学期 事例研究(現代行政T)
                                2006年8月20日

●テーマ:行政における決定と責任

●高度の科学技術的要素に関わる決定──医薬品その他化学物質の安全性──や、大規模な投資事業の決定は、多数の人命/健康に対する危険性や多額の予算支出を伴うにもかかわらず、将来の状況について不確実な状態で行われる。

 その結果、エイズ、水俣病、アスベストのように、決定が行われてから長時間が経過した後に、それが原因となって多数の人々の人命や健康を損なう事件が生じたり、年金の積立財源を元にしたグリーンピア等への投資ケースのように、結果的に多額の損失を生じさせ社会問題化することがみられる。

 これらの事件については、政策的対応の遅れが指摘され、国の担当行政機関の決定責任が問われ、国の不法行為に基づく補償が争点となることも少なくない。現行制度の下では、被害者を救済するために、国の責任を問い、補償するには、国の決定における故意過失が必要である。そのために、意思決定に関わった担当者の決定当時の責任が問われることになるが、それは結果論的な評価となりかねず、また必ずしも根本的なシステムの改善に結びつくとはいえない。

 また、行政における決定は、白紙に自由に絵を描けるわけではなく、政策決定時点の社会・政治・経済状況はもとより価値観や利害が対立する中で、“微妙な”判断が求められることが多い。そのため、中途半端な問題先送り型の決定となる、ひとつの決定が後の決定を拘束し軌道修正が困難になる、どちらか一方に軍配を上げればもう一方から行政訴訟が起こされる、ということも少なくない。さらに、行政の決定が一連のプロセスの中で「積み重ね」として行われる場合や政治的関与が加わる場合、どの決定行為について責任が発生し、政治と行政の責任を峻別し、その責任の所在を問えるかが曖昧になるという問題もある。

こうした事例における
@担当行政機関における決定のあり方、
A決定が誤っていたときの方向転換の方法、
B決定が誤っていたことが明確になったときの責任の考え方、
C事後的な救済(例:被害者の救済)や是正の方法について、
複数のケースを素材として考察する。

特に、
@不確実性の下での情報評価の方法、
A決定の手続、について
Bリスク・マネジメントの観点から考察する。

授業は、はじめの数回、具体的な事例について、従事された講師の方から説明を受け、各自が1事例を担当して、後半の授業においてそれを分析する。

取り上げる事例および外部講師、シラバスは、後日発表する。

履修希望者は、予め担当教員まで申し出て指示を受けることが望ましい。なお、履修希望者が適正規模を上回ったときは、受講者を制限し、面接等によって選抜することがありうる。

以上


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