事例研究(現代行政T)

                                                         05年9月25日

● テーマ: 自治体政策の形成

●狙い

 現代日本における政策決定の事例を取り上げ、議論を中心として授業を進めてゆく。

 今年度は、特定の地方自治体を素材として定点観測を行い、自治体の現場における行政課題、それへの対応、行政管理の方法等を、制度とのその運用実態とに着目しながら考察する。その過程で、現在進められている地方分権改革の影響も学ぶ。

 観察する自治体は千葉県佐原市を予定しており、授業においては、同市の概要を学んだ後、一定の政策課題について、佐原市の関係者、地元の組織、県、国の関係省等から聞き取りを行って、課題の全体像を把握する。

 最終的に、政策提言を含めレポート作成し、佐原市に提出する予定。

●政策課題(予定)

1.公有水面の利用調整について

 現在佐原市では、東関東自動車道佐原・香取インター付近で国道356号に隣接し、一級河川利根川と小野川の結節点近くの本宿耕地地区に「佐原広域交流拠点」として、国・県・市が一体的に水辺空間を活かした川の駅等の施設整備を推進している。

 特に拠点整備事業として水辺の活用が想定されており、オープンミュージアム構想として、当時の佐原ドックを懐古し、浚渫船が配置されるなど利根川河川整備の変遷を体感できるような空間整備を心がけている。

 またこの地域は禁猟区でもあり、多くの野鳥の宝庫でもあり、葦原の群生など自然環境が充分楽しめる地域でもある。

 この環境での水辺活用にあたり、ボードウオーク、ビオトープの整備、桟橋整備、マリーナなど係留施設整備、カヌーやボートの発着所が整備されることになる。また観光船の広域的運営が検討されている。

 ついては公有水面がいろいろな形で活用されるに当たり、関係法令の調整を行い、利活用に関するルールづくりを行う必要がある。

(1)公有水面利活用にかかるルールづくりについて

(2)関係法制度の整理について

2地域にとって有効な効率性を生み出すPFIとは

本地域整備については、国と市が共同でのPFIを想定している。通常公共団体が建設事業を行う場合は補助金や起債を活用して建設を行うことが資金調達上も有効というのが一般的であった。

今回本建設にPFIの手法を検討することについては建設のみでなく、運営と一体的PFIであることが要因であるが以下について課題となっている。

(1)建設・運営の両面から考えて、PFIの手法は有益な手段なのか。

(2)国と市が共同でPFIを行うにあたり法的な問題はないか。

(3)PFIを選択したとして、効率性を求めての選択であるが、地域にとって有効な効率性をどのように考えるか。

(4)PFIを選択しても補助金や起債の活用は可能なのか。もし可能ならば活用の考え方を整理する必要がある。

(5)SPCの公募にあたり、本地域が佐原のまちづくりで持つ意味をどのように仕様書に明記していったらよいか。多くの課題を明記することがSPCの参入を狭めることならないか。

(6)最近のPFIの公募説明会はHP等で公表するものとまったく変わりなく公表されペーパーをただ読み上げるかたちが一般的になっている。しかし一回の説明会による公募の場合、企業への負荷が多く(資料作成に費用がかかる)、金額によってはSPCを確保することが困難になる場合も見うけられる。事業主の意図が伝達でき、SPSにも負荷がかからない説明会の工夫は可能か。

●授業計画

── 全部で13〜15回を予定。合宿も予定。

1)地方行財政制度についての理解──三位一体改革

2)法制度の学習

3)佐原市の現状と課題の分析 <現地調査>

4)制度改革の方向と障害の分析 <現地調査>

5)政策選択肢の検討とシミュレーション <現地調査>

6)政策提案(条例案)の提示

●履修を希望する者へ

  事前に 西尾勝「自治」 西尾勝『行政学の基礎概念』(東京大学出版会、1990) を読んでおくこと。

−以上−

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