このページの背景は桜の花です。

2005年4月


 4月30日(土) 今頃、大掃除?
 6連休第1日目は、ずっと部屋の片付けと掃除で過ぎてしまった。
 実は明後日月曜日から友達が2泊で遊びにくることになって。
 それはとても楽しみなんだけど、なにせ散らかしやさんな私だから、こういうときは大々的に片付けないとたいへん。
 PCの点字エディタを立ち上げて、図書のデータを読み上げさせながら、読書と掃除を同時進行でやっちゃおうという、すばらしい(?)やり方だ。
 が、ちょうど掃除機をかけようとしてるときに、本のほうが面白い場面に差し掛かってたりすると、つい「ちょっとここまで聴いてから」なんてことになってしまう。
 午後から実家に行くと母に約束してたので、そろそろ出かけるかなと思っていたら、いきなり雨が降り出した。
 母のほうから電話してくれて、雨ではたいへんだから今度おいでよ、と言う。
 「それじゃ、明日天気が良ければ午後から行くね」
 と言って電話をおいた。
 こうしてみると、最近ロンリーに浸っている私も、この連休は、まずまず寂しい思いをせずにすむかも知れない。

   4月29日(金) 休日出勤
 世の中緑の日でお休みだが、私たちは今日まで仕事をした。
 宮崎の盲学校は県内に1校しかないので、生徒の中には非常に遠方から来ている人がいるのだ。
 彼らにとって、連休の合間に1日だけ登校するというのは、かなりたいへんだ。
 そこで今日を参観日にし、5月2日を代休として、6連休を産み出したというわけ。
 PTAの総会やら、保護者との学級懇談やら、あわただしく1日が過ぎていった。
 さすがに中学生はお母さんが学校にきてもそっけない風を装っているが、どうも内心では嬉しくてしかたがないらしい。
 なんだか見ていて微笑ましい。

 4月28日(木) 歓迎会
 中学部職員10人で歓迎会をやった。
 とはいうものの、本当の意味での新入りさんはいなくて、学校の中での配置換えで他学部から中学部に来た人が二人いるだけだ。
 しかしなかなか盛り上がった。
 幹事さんのアイディアで、会の間だけはお互い愛称で呼ばないといけないというルールになっていたのだ。
 みんな思い思いのニックネームを言い、その名前で呼び合った。
 友達ならあたりまえなんだけど、同僚から「AMIちゃん」って呼ばれるの、すごく変な感じだった。
 食べ放題のお店でみんな喜んだんだけど、実は条件がついていた。
 注文したものを80分以内に全て食べきること、というのだ。
 もし残り物があったなら、一人につき500円とられるらしい。
 しかしこれは良い考えかも知れない。
 みんな良く考えて慎重に注文するし、せっせと食べるから無駄になるものもほとんどない。
 それにしても、食べすぎました!
 明日も仕事なのでほとんどの人は帰ってしまい、残った4人だけでしばらく2次会をやった。
 やはり休み前のように話題がはじけることはなく、仕事の話ばかりしていた。

 4月26日(火) 落し物
 資源ごみ回収の日。巨大なダンボールを畳んで、やっとのことで右手に抱え、左手にハーネスを握って、階段を使って外へ出た。
 ずり落ちてくるダンボールを何度か抱えなおすうち、ジャケットの浅いポケットから、バスに乗るときに使うカードを入れた定期入れが飛び出してしまったらしい。
 そういえばエントランスのあたりで、何かがパサッて落ちたような気がしてたんだ。
 だいたいの場所は見当がつくので、ノエルに探してもらおうと思って引き返してみた。
 でもそんなにもたもたしてはいられない。もうバスに間に合わなくなる。
 どうせ残り料金はわずかだから諦めるしかないかと、しぶしぶバス停へ向かった。
 1時間目終了後、事務室の人が、Mさんという人から、私の定期入れを預かっていると電話があったことを伝えてきた。
 バスカードに名前なんか書いてないのに、よく私のことや勤務先まで分かったものだと不思議に思ったけど、とにかくカードが戻ってくる嬉しさでいっぱいになり、夕方帰宅後さっそく聞いていた部屋へうかがった。
 部屋の前に立った瞬間に思い出した。それは3年ほど前、私が盲導犬の話に訪れた小学校で、当時3年生だった男の子の家だったのだ。
 しかも、定期入れには、既にただの紙切れでしかないんだけど、昔の盲導犬使用者証が入っていて、しっかり私の名前が書かれてあったのだ。
 引越し前の住所や、今や存在しない昔の障害者手帳のナンバーなどが記してある。
 こんなデータでは悪さのしようもないけど、拾ってくれた彼女がおっしゃるには
 「誰かが先に拾って管理人室(朝は無人)の出窓においてあったんだけど、今は悪い人なんかいますからねぇ。心配だから、おせっかいとは思ったけどお預かりしてたんです。」
 本当に、見つけてくれたのが彼女のような方で良かった。
 心からお礼を言って2階の自分の家に戻ろうとしたが、ノエルはエレベータで上がってきたことを忘れたのか、その階の、私たちの家と同じ位置にあるお宅の前へ言って動かない。
 「違うよ。エレベータで下りるんだよ。」
 と呼んだらついてきたけど、未練がましく、間違えた部屋のほうばかり見ていた。
 どうやらこのマンションには、エントランスの1階と、自分ちのある2階だけしか存在しないとでも思っているらしい。
 エレベータのドアが開くと、中から女性が降りてきたが、いきなり予期せぬところから現れた大きな犬に驚いて叫びのような声をあげた。
 その驚きに刺激されたのか、ノエルのほうも「ワン!」と一声。
 ノエルの「ワン!」を聞いたのはいったいどれくらいぶりか?
 昔は、この子は吼えても迫力ないなぁと思ったものだけど、歳によるかんろくとでもいうのか、深みのある太い声になっていてちょっとびっくりした。
 奥様、驚かしせてすみませんでした。


 4月24日(日) 百円ショップのお姉さん
 変な夢を見て朝早く目覚めた。
 何かとても怖い夢だったようだが、目覚めてしばらく、さて今日は何曜日だったかしらと真剣に悩んだ。
 本気で今日は月曜日のような気がしてたのだ。大丈夫か私?
 テレビをつけて日曜であることを確信した私は、のんびりと支度をして、結局5分遅れで教会へ行った。
 
 午後、例によってNちゃんとバス停まで歩いていくつもりが、ノエルに任せて歩いていたら、とっくにバス停を過ぎて、家の近くの5差路まで来ている。
 この5差路、何度も書いているがとにかく複雑なので、私などは盲導犬いなければ、きっと身動きとれないだろう。
 とにかくノエルがいるから大丈夫。Nちゃんを私のマンションの前のバス停からバスに乗せてあげようと思って5差路を渡り始めたのだけど、なぜかノエルがもたもたしている。
 まっすぐ方向の我が家への道ではなく、左へ入ろうとしているみたい。
 百円ショップのほうだけど、今日は用事ないんだよなぁ、と思っている間に信号が変わってしまった。
 Nちゃんに、百円ショップ行ってみる?と聞いたら、行ってみてもいいよと言うので急遽「お店、ゴー」とノエルに命令を出すことに。
 ノエルときたら、待ってましたとばかりに、ぐんぐんお店のドアへ私たち二人を誘導する(書き忘れてたけどNちゃんも視覚障害者です)。
 よく考えたら二人とも買うものを思い出したので、店員さんに案内してもらってゲット。
 店員のお姉さんはとても犬好きみたいで、ノエルを見てしきりに可愛い可愛いと連発していた。
 名前を聞かれ思わずノエルですと答えると、
 「え?もしかしてそこの○○マンションの?」と言う。
 実は彼女も同じマンションの住人だった。
 「ノエルちゃん、痩せた?同じ犬ってわかんなかった」
 それくらい痩せたんだったら嬉しいけど、きっと夏毛に替わったせいだな。
 その後Nちゃんを今度こそバスに乗せ、自分は少し先のコンビニまで行って戻ってくると、またまたさっきのお姉さんにエレベータの前でばったり。
 なかなか近所づきあいもない生活の中、彼女と少し親しくなれたことが、なんだか貴重な拾い物をしたみたいに嬉しい。

 4月22日(金) 動物園
 ノエルの足跡のページで、動物園でノエルが広場以外へ行くのを止められて、ステイをしながらパニックしてしまった話を書いた(第15話)。
 あれはかれこれ7年も前のことになるけど、少なくとも2年前までは動物園の対応はほとんど変わっていなかった。
 だから、4月の遠足が動物園と決まると、いつも最悪な気分になっていたのだ。
 でも、最悪って思ってるのはどうやら私くらいなもので、生徒にも職員にも、動物園は人気の遠足場所になっている。
 そして今年、2年ぶりに「動物園へ行きましょう」ということになってしまった。
 学校から3.5キロの道を歩きながら、だんだん心が重くなる。
 入場ゲートを入ると、係りの人がさっそくやってきた。
 私にではなく、まったく関係のない先生をつかまえて、盲導犬はどうのこうのと言っている。どうやらまた私生徒と間違えられたらしい。
 とりあえずその先生に聞いていただいて、後から、何だったんですか?と尋ねると、
 「キリンは驚きやすいから、キリンのところだけは、皆が餌をあげられる下の道じゃなくて、キリン舎の上の道を通ってもらいたいんだって」
 「それだけ?他は制限言われなかったんですか?」
 これはすごい。経営が民間から宮崎市に移ってからも対応を変えなかったのに、いったいこの2年でどういう動きがあったものか?
 法律の力?あるいは補助犬団体からの働きかけ?
 いずれにしても、ものすごく嬉しいことだ。
 ノエルをつれて、動物エリア、遊具エリア、レストハウスなど、自由に歩いた。
 孔雀が100羽ほどもせいぞろいして、皆でノエルに向かって叫びまくる。
 それでもノエルはちょっと耳を膨らませ、花をピクピクさせただけ。あとは「関係ないわ」ってな感じで平然と歩いていた。
 もう少しはそわそわしたり興奮したりするかと思ったけど、ノエちゃん見直したよ!
 もっとも、猛獣のコーナーへは時間もなかったし行っていないんだけど。
 問題のキリンは、ノエルに気付いているのか、いないのか、上野道から見るかぎり落ち着いていた。
 ノエルのほうがちょっとびびっていたかな?
 あんな不思議な生き物は生まれて初めて見たんだろうからね。
 怖い人の視線を避けるときのように、まるで気付いてない振りを決め込んで足早にキリンコーナーをすり抜けた。
 あきらかに、意識的に避けていることが、ハーネスから伝わってきてすごく可笑しかった。
 生徒たちは遊具コーナーで乗り物に乗りまくり、大いに楽しんだようだ。
 暑さと長い道のり、ノエルも私も体力が心配だったけど、ぜんぜん平気。
 念のため、帰りはスクールバスに乗せてもらうことにしてたけど、これなら歩き通すこともできたかも。2年前は片道の3分の2あたりでへたり込みそうになってた私だから、やはり確実に体力はついてきているみたい。
 私が元気だから、毎日あちこちつき合わされてるノエちゃんも快調なのだ。
 まるで疲れを見せず、動物園に到着したときも、先に着いてたみんなに尻尾振る余裕ぶりだった。


 4月17日(日) パソコン使いすぎ
 このごろはパソコンが普及しまくっているから、目を酷使して傷める人が増えているらしく、職場にも、OA機器使用に伴う目のトラブルをチェックしてくれる「アイドック」の申し込みを募集していたりする。
 私の場合、パソコン画面の色くらいは見ることがあるけど、文字は所詮読めないので、目がおかしくなる心配はないが、そのかわり音声ソフトがしゃべりまくるので、耳がかなり危ない。
 このところ、教材作ったり読書したり、HPリニューアルしたりで少々耳を使い過ぎたようだ。
 昨夜からブンブン耳鳴りがして止まらない。
 もともと腎臓と耳とは深いつながりがあるようで、透析に入って間もないころ、まるで頭の中をヘリコプターが飛んでるみたいなすごい耳鳴りに襲われたことがあった。
 1週間薬を飲んでだいぶ収まったが、それ以来少し体調が悪かったり無理をしたりすると、左耳がブンブン言い出す。
 週末ゆっくりしてだいぶ良くはなったが、明日からまたハードな仕事に戻ると思うと恐ろしい。

 午後、ノエルを久々に洗ってやった。
 これはそんなにやかましい作業ではないから大丈夫。
 今回はお店へは行かず、自宅のお風呂でじゃぶじゃぶと洗った。
 シャンプーされる気配を感じると、ノエルは部屋の隅にひっそりと身を潜める。
 見つけ出してお風呂まで連行すると、「ご勘弁くだされ〜!」とばかり、お腹を出してひっくり返った。
 しかしあきらめてしまうと意外と良い子にしている。
 全て終わってから、ついでにお風呂場の隅々まで掃除をしてすっきり。
 それから昼ね中のノエルの傍に座って本を読んだ。
 耳鳴りさんのおかげで、私には珍しい静かな時間を過ごした。
 

 4月16日(土) 調子はずれな1日
 このところの忙しさで、水曜日ごろから、もう週末を待ちわびている。
 今朝はおもいっきり朝寝坊。朝だか昼だか分からない食事をして、獣医さんへノエルの薬をいただきに行く。
 薬メーカーのS社から、県内で活動している盲導犬に毎年フィラリア予防の補助をしてくださる。
 私のほうは、かかりつけの獣医さんで薬を無料で受け取ればいいのだ。
 これ、本当に助かる。
 東京の気候に合わせてあるのか、8ヶ月分届いているようだが、宮崎ではどう見ても9ヶ月与えたほうが良い。何しろ12月でも蚊が飛んでたりするんだから。
 「体重からすると多めに入ってるから、これを9ヶ月にして与えればいいでしょう」
 と、与えやすい別な形のものと交換してくださった。
 はたしてこれを全部あげてしまうまで、私たちは一緒に暮らしていられるのかしら?
 ふとそんな思いがこみ上げてせつなくなった。
 狂犬病予防の注射もしてほしかったけど、重病のワンちゃんが診察室にいたのでそのまま「また来ます」と言って帰った。
 その後、前からの約束だったので実家へ行くと、いきなり父が、今日は外で夕食をしようと言う。
 夕食というんだから5時か6時の話と思っていたのに、4時頃
 「そろそろ行こうや」
と言い出した。
 家から歩いていける焼肉やさんで、なんだか皆もくもくと食事をしている。
 さっさと食事をすませると、これまたさっさと父がタクシーを呼び、
 「また来いよ」
と帰されてしまった。
 いったい何をしに実家に帰ったんだか?
 気がつけば、ろくろく親と話もしていない。
 自分の心に瞬間的浮かんだ思いのまま、どんどん行動してしまう父のペースに乗せられただけみたい。
 なんだかもやもやして、ノエルと当てもなく街を歩き回った。
 たくさんの人tすれ違うのに、皆自分とは何の関わりもない人たちだ。
 その事実に、ときどき恐ろしいほどの孤独を感じることがある。
 こういうの、どうかしてるかな?


 4月13日(水) 意味不明な腹立たしい話
 出勤するバス停で、いつものように立っていたら、通りがかりの女性が
 「ちょっと犬を触らせてください」
と言う。許可をとるのではなく、声を発したときにはもうべたべた触り始めているのだ。
 出かけるところだし、いきなりそんな触り方をされたのでは、はっきり言って迷惑。
 「仕事してるんですみません。」
と言ったが聞き入れず、
 「ちょっとだけ触らせて」と言う。
 ちょっとだけというなら、もう充分「ちょっとだけ」触った後なのである。
 ノエルもそわそわしだしてきてたから、
 「困りますので」
 と言いながらノエルを自分の傍に引き寄せると、いきなり女性が激怒したのである。
 「あんた、そうやって犬をだいなしにしなさんなよ!」
 彼女はそう言い捨てて逃げ去った。
 後を追おうにも、走っていく相手に追いつくのは不可能というもの。これは卑怯ではないか!
 とにかく言いたいことだけは言わないと気がすまない。
 「何がだいなしですか!人の犬勝手に触っておいて。普段の私たちのことなんか見たこともないでしょ?だいなしって何よ!」
 憤りと悔しさで爆発しそう。このごろ低血圧気味でふにゃふにゃしてるのに、一気に体中の血が頭に集まりそうな気分だった。
 私は何をすべきだろうか?
 実際にこんな認識の人に会ってしまうということは、潜在的にそういう意識を持った人はいったいどれくらいいるだろう?
 小中学生相手に「盲導犬の話」をしているだけではいけないのではないか?
 少し真剣に考えていかなくては!

 4月11日(月) 変な感じ
 卒業式、始業式、入学式。肝心なときには雨が降る。どういうわけだ?
 新入生を迎えたけれど、数は卒業生の半分。いよいよ盲学校も寂しくなってしまった(客観的に見れば良いことなのかも知れないけれど)。

 入学式だというのに、朝からものすごく調子が悪かった。
 一度目は覚めたけど、起き上がれない。
 結局遅刻して出勤。どうにか入学式には間に合ったけど、学級のことではいきなり迷惑と心配をおかけしてしまった。
 式に座っていても、その後の学級活動をやっていても、なんだかふわふわと気分が悪い。
 保健室で調べてもらったら、異様な低血圧だった。
 遅刻したうえに早退もして、2時に学校を出た。
 夜には回復していて、透析のトラブルもなかったので良かったけど、こんなことがもし何度も起きたらたいへんだ。
 せっかく元気に自信が出てきて、クラスのこともやりこなせると思っているのに。

 
 4月9日(土) お花見
 HP読者の二人の方とお花見に出かけた。
 昨年の夏に海へ写真撮影に連れていってくださったのと同じ人たちだ。
 宮崎市の北西にある西都市というところで、桜と菜の花が一緒に咲き乱れていた。
 花に囲まれてお弁当を食べ、それから菜の花畑と桜並木を通って、花祭り会場の出店などを見て歩いた。
 やたらと犬連れの人が多かった。
 ノエルがときどき尻尾を立てて興奮しながらも、何とか歩いてくれたのでほっとした。
 昨日までの怒涛の忙しさを離れて、のんびりとできた良い1日だった。


 4月7日(木) 新学期スタート
 それなりに覚悟はしていたものの、生徒が登校してくると、想像を超える忙しさに見舞われてしまった。
 息をつく間もないとは、こういうのを云うんだろう。
 始業式の後新学級担任の発表が行われてから、教室のレイアウトやら教科書を運ぶやら、学級活動に入学式の準備。
 私もへとへとに疲れたけど、生徒もかなりまいってる雰囲気。なにせ昨日までは春休みで、自宅でだらだらしてたんだからね。
 午後4時半。ようやく生徒が帰り、学級の仕事をとりあえずストップして、ほっと一息、職員室の自分の席に座ることができた。
 しかし考えてみると、これが本来の私なのだ。
 くだらない、ちまちました雑用で忙しくしているよりは、生徒とみっちり関わって走り回っているほうが充実感が断然いい。
 プレッシャーを感じつつも、仲間たちに支えられながら再びこんな仕事ができるようになれたことに、すごく喜びと感謝を覚えている。


 4月5日(火) 運動場で花見
 今年は桜が咲くのが遅れているが、そろそろ花見をしてもまずまず良いかなという感じになってきた。
 こ3年くらい、春休み中の1日か2日、運動場で花見をしながらお弁当を食べるのが我が校の恒例になっている。
 生徒がいない間は給食がないので、近くのお弁当やさんにお昼を注文する人が多いのだ。
 普段はあまり注文せず外に食事をしにいってる人も、この日だけは注文をして、職員室のほぼ全員が、桜の下にブルーシートを広げて座る。
 いつもの食べ慣れたお弁当なんだけど、なんとなく新鮮に感じてしまうから不思議。
 先生の集団が運動場で花見しながら昼休みを過ごしている光景って、フェンス越に道路から見ている人たちには、ちょっとい様に見えるかな?
 お弁当を食べてるみんなの間で、ノエルはぽかぽかの日光とあったかい春の風を浴びて昼ねを楽しんでいた。


 4月3日(日) 相手の努力に報いるべし
 朝、そろそろ出かけるかと思っていたら、教会に先に着いていた人から
 「ニュージーランドの人が来てみんなパニックだから早く来て」
 と電話がかかってきた。
 確かに教会にはそれほど英語が話せる人はいないようなので、私にしてはかなりの素早さで(それでも1分遅刻だったんだけど)かけつけた。
 が、様子をうかがっていると、彼は交換留学生で、ニュージーランドではこれこれの教会に所属していて…と、既にかなりの情報が伝わっている。
 本人がそう言ったのだろうから、それなりのコミュニケーションはできるんじゃないか?
 そう思いながらも、とりあえず英語で話しかけてみた。
 だが、すぐに彼が周りで交わされる会話のほとんどを日本語のまま理解していることが分かったので、私は英語で話すのを止めてしまった。

 昔、アメリカのとあるお店で悲しい思いをしたことがある。
 店員が私の注文をまるで聞いてくれなかったのだ。
 私は英語で言っていたし、一緒にいたアメリカ人の友達も、あのときの私の言葉はおかしなものではなかったと言っている。
 なのに店員は私の言葉にまるで耳を傾けず、友達に
 「彼女は何がほしいって言ってる?」
と聞いた。
 彼女は怒って店員に
 「あなたがちゃんと聞かないからいけないよ。この人はあなたに分かる言葉で注文してあげてるのに。」
と言ってくれたのだった。
 このとき友達が店員の言うがままに私の注文を代りに伝えるのでなく、店員の態度を注意してくれたことに、私は今でもすごく感謝している。
 よく、相手が日本語でせっせと話してくれるのに、相手が外国の人だからという理由で英語で返事をしたりする人がいる。
 私には、それが親切なことだとは思えないのだ。
 たぶんあのときの経験がそういう確信を私に持たせているのだろう。
 本日の彼にしても、日本語を学ぶのが目的でここにいるのだし、その習得のために少なからず努力しているはずだ。
 どんな場合でも(たとえば障害者へのサポートなどにも通じるかも知れないが)、過剰な手を出して手助けの押し売りをするのは、相手の努力に対して失礼だと思うのである。<BR>
 
 4月2日(土) おばあさんと身の上話
 いろんな用事があって、さんざん歩き回り、疲れたので、某ファーストフードのお店で一休みすることにした。
 二人がけのテーブルの壁側に座り、ぼ〜っとしているつもりが、いきなり隣のテーブルから声をかけられた。
 隣のテーブルもやっぱり二人がけで、壁側におばあさんが、これまた一人ぼっちで座っている。
 本人がおっしゃるには、大正生まれだそうだが、このお店にはときどきみえるとか。
 「いい犬やねぇ」
 多くの人がするように、彼女もまずノエルを誉めてくれた。
 しばらく犬の話をしていたが、だんだんと私の話に踏み込んでくる。
 誰と住んでいるのか?
 仕事はしているのか?
 結婚しないのか?
 次から次へとまるで事情聴取だ。
 しまいには、好きな男性のタイプなんて話まで飛び出したので、
 「私はさっぱりした人が好きかな?」
 と言うと
 「あたしもよ。なよなよ、べたべたした男はすかんの」
 と言って高らかに笑う。
 そのまま私の恋愛体験談を聞き出しにかかったので、あることないことしゃべって、笑い飛ばして大いに楽しんでしまったが、いやもう!おかげでちっとも「一休み」にはならないのであった。
 帰り際、おばあさんは<BR>  「いろいろ聞いてごめんね。でもいいやろ?名前も知らん。もう二度と会うこともないかも知れんとやからね。あははははは」
 と、最後までご機嫌だった。


   4月1日(金) 新年度スタート
 毎年のことだけど、3月31日が4月1日になるのは、ものすごい変化だと思う。
 転勤した人は当然だけど、そうでなく、同じ職場にいて、同じ持ち場で仕事をしているというのに、とても昨日までと同じ場所にいるという気がしない。
 新しい人が入ってくるのに加えて、いろんなマイナーチェンジが重なって、とても新鮮。
 会議を開けば必ず「まずは自己紹介」ってなことになる。
 
 たくさんの先生がやってきたが、一人を除いてみな女性。
 誰が誰だかさっぱり分からない。
 さっそくノエルが注目をあびてご機嫌だ。
 仕事の割り振りやクラス担任の発表が行われ、私は中学部2年の学級担任。
 正担任になるのはいったい何年ぶりかな?
 かれこれ6年かそこらにはなるだろう。
 とにかく、透析生活に入ってから初めてであることは確かだ。
 体力も、仕事の能力も、とても他の人には追いつかない。追いつかないどころか、足を引っ張ってしまうのだけど、こんな私でも使ってくださって、すごく嬉しい。
 せいいっぱいやらせていただこう。

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