アル :「さぁて・・・」

そう言いながら席に座るアル。
周りには、他の天使連盟のメンバーが座っていた。
今日は家族会議の日。

 アル :「新しいメンバーも増えてきたし、そろそろやろうと思うんだが・・・どうかな?」
 ファル :「前にやったの、いつだ?」
セラフィ:「覚えてないですね・・・」
 ジュノ :「でも、かなり長いことやってねぇ気がする。」

どうやら、何かを開催する会議のようだ。

 ジュノ :「新メンバーの分の装備は?」
 ファル :「メンバーが増えるたびに作ってるよ。
      全員分、俺のカートに入ってる。」
 アル :「そうか・・・なら、スグにでも開催できるな。」
ルーシィ:「あの・・・」
 アル :「どうした? ルーシィ。」
ルーシィ:「さっきから、何のことだかわからないんだけど・・・」
ケルビナ:「私もですわ。一体、何ですの?」
 アル :「あぁ、すまない・・・ルーシィとケルビナは初めてだったな。」

首を縦に振る二人。

 ジュノ :「俺が説明するよ。
      ウチでは時々、戦闘訓練をしてるんだ。
      各個の得手不得手を見極めたり、戦闘技術を向上させたり・・・目的は色々。
      訓練の方法・期間も、毎回違うんだ。」
 ファル :「で、俺はその訓練用の模造武器を作ってたってワケ。
      俺の手は作るより壊すほうが向いてるんだけどなぁ・・・」
セラフィ:「今回はどうします?」
 アル :「そうだな・・・廃墟都市は設定できるか?」
セラフィ:「ちょっと調べてみますね・・・」

そう言ってセラフィは、床に置いてあった箱状のモノを重そうに持ち上げて机に置き、
いじりはじめた。

セラフィ:「廃墟都市・・・っと。あ、ありました。」
 アル :「安定時間は?」
セラフィ:「ここは初めから閉鎖的な空間だったようですね・・・2〜3日は平気なようです。
      生体反応もありません。」
 アル :「そうか。 じゃぁみんな、スグ行くぞ。」
ケルビナ:「行くぞ・・・って、どこへですの?」
セラフィ:「隣が転送部屋になってますので、そこに。
      荷物は何もいりませんよw」
 ファル :「なぁ、アル兄?」
 アル :「ん?」
 ファル :「毎度思うんだけどさ、これってどうやって・・・」
 アル :「あぁ、これはだな・・・"指定空間隔離機構"といって・・・」
ルーシィ:「なぁに、それ・・・」
 アル :「要はだな、ポタの原理を応用して、指定した空間を・・・」
 ジュノ :「難しいコトはいいじゃね〜か。 さっさと行こうぜ? 閉じちまうって。」
 ファル :「ま・・・いっか。」


次々と転送部屋に入っていく天使連盟メンバー。

 アル :「ここが・・・?」
セラフィ:「はい。一説によれば、はるか昔に想像を絶する技術力を持って栄え、
      その技術力が故に滅びた都市だとか・・・」
 ジュノ :「はるか昔・・・ねぇ。」
 アル :「ファル、武器は持ってきてるな?」
 ファル :「もちw」

各々に得物を渡していくファル。

ケルビナ:「これ・・・わたくしの愛用している剣そのものですわ・・・
      握り心地から重さまで・・・」
ルーシィ:「これが・・・私の武器? ますたーのお下がりとは違う感じ・・・
      なんか、こっちのほうが手に馴染む。」
 ファル :「まぁ、殺傷力は限りなくゼロに近いけどな。
      せいぜいが殴打による気絶くらいだと思うぜ?
      ・・・セラフィはどうかわかんないけど。」
セラフィ:「反射的に動いてしまわない限りは、加減しますよ。」
 アル :「とりあえず・・・今回のルールだが・・・個別行動にしようと思う。
      いつ・どこで・誰に戦闘を仕掛けてもいい。」
 ジュノ :「バトルロワイヤルか・・・?」
 アル :「まぁ、そうとも言う。」
ケルビナ:「各々の判断で、誰かと組んで行動するのもアリですの?」
 アル :「まぁ、許可しよう。 チーム時の行動も把握できるしな。」
 ジュノ :「ってことは・・・」

ジュノは何かを思いついたようだ。

 アル :「さぁ、そろそろ始めようか。 皆、武器は持ったな?」

周囲から肯定の声が揃う。

 アル :「では、この領域で次に会ったら敵だと思え。 散開!!」

アルの号令と同時に、全員が一斉にその場を離れる。
直後、ジュノは思いついたことを実行に移す。

‐ファル兄、聞こえるか?‐
‐ん? ジュノか、どうした?−
‐ちょっと俺に考えがあるんだけど・・・‐
‐考え?‐
‐あぁ。 今回の戦闘訓練、このままじゃ兄者の一人勝ちだと思わないか?‐
‐たしかに、個人の力としてアル兄との差は歴然だしなぁ・・・‐
‐そこで・・・みんなでまず兄者を倒そうと思うんだ。‐
‐突出してるアル兄を先にツブして、あとは均衡してるみんなで力比べか・・・悪くないけど・・・‐
‐なんか問題あるか?‐
‐あのアル兄だぜ? そうカンタンに・・・ ぐっ!?‐
‐どうした!?‐
‐・・・何か来た。 ちょっと話切るぜ。‐
‐あ、あぁ。‐

 ファル :「なんだ、さっきの・・・ 見たとこダレもいないけど・・・」

ガガッ

 ファル :「っ!・・・これは・・・グリム!? ってことは・・・」

 ファル は最悪の事態を想定した。 そう、アルとの戦闘である。

 ファル :「地中からの攻撃・・・だけど、これは読める。とすると・・・ここだっ!」

発生源のおおよその場所を見つけ、ハンマーフォールを繰り出すファル。
強い衝撃を受けて驚き、地中から出てきたのは・・・ルーシィであった。

ルーシィ:「ぁぅ・・・頭がクラクラするぅ・・・」
 ファル :「やっぱ、ルーシィのほうだったか。 アル兄にしては無計画と思ったんだ。」
ルーシィ:「でも、びっくりしたでしょ?」
 ファル :「まぁ、最初だけな。 で・・・」
ルーシィ:「?」
 ファル :「俺と戦うのか?」
ルーシィ:「それも面白いかもと思ったけど、まず最初に攻めたほうがいい人がいるんじゃないかなぁ・・・」
 ファル :「ルーシィもその考えなのか・・・実はさっきジュノから・・・」

ファルは、ジュノからの耳打ちの内容を伝えた。

ルーシィ:「そっか。じゃぁ、まずは3人集まったね。 あとは、おね〜ちゃんとルビちゃん・・・」
 ファル :「そこなんだよ・・・公正を好むセラフィは、まず賛同しないだろうし・・・」
ルーシィ:「ルビちゃんは、ますた〜に惚れ込んじゃってるし・・・」
 ファル :「ダメ元で声かけてみるか・・・? まずはセラフィから・・・」
セラフィ:「私がどうかしましたか?」
 ファル :「ぅぉあぁ!?」
セラフィ:「何をそんなに驚いてるんですか・・・」
 ファル :「いや、まぁちょっとな・・・」
(マズイ・・・今ここでセラフィと戦闘になったら・・・負ける・・・)
ルーシィ:「ぁ、おね〜ちゃん。 いいところにw あのね、今ね〜・・・」
 ファル :「る、ルーシィ!?」
セラフィ:「なんですか? 聞かせてもらいますよ?」
ルーシィ:「あのね、この訓練で、まずみんなでますた〜を倒して、残ったみんなで力比べしようって話に・・・」
セラフィ:「なるほど・・・そういうことですか・・・」

聞いたとたんにセラフィの顔が険しくなり、ファルは動揺をい隠し切れない。

セラフィ:「・・・ソレは面白そうですねw アル兄さんが私達相手にどのように戦うかも見てみたいですし。」
ルーシィ:「やった〜w じゃぁ、あとはルビちゃんだけだねっ」
セラフィ:「ケルビナには私からうまく話しておきます。」
ルーシィ:「さすがおね〜ちゃんw」

しばらくすると、ケルビナが駆け寄ってきた。

ケルビナ:「お待たせしました〜」
ルーシィ:「ますた〜に見つからなかった?」
ケルビナ:「えぇ、見つからずに済んだと思いますが・・・」
ルーシィ:「でも、おね〜ちゃん・・・ルビちゃんにどうやって言ったの?」
セラフィ:「それはですね・・・」
ケルビナ:「アルお兄様の凛々しいお姿をまた見れると思えば・・・」

ケルビナは遠い目でウットリしている。

ルーシィ:「・・・そういうこと・・・?」
セラフィ:「・・・です。」
 アル :「なるほどな・・・結託してまず俺を倒そうと?」
 5人 :「!?」
 ジュノ :「あ・・・兄者・・・いつから・・・?」
 アル :「・・・はしゃぎながら走るケルビナを見かけてな・・・
      怪しいと思って後をついてきた。」
ケルビナ:「・・・見つかっていたんですの・・・?」
 アル :「ハイドやクローキングを駆使するのは常套手段だろう?」
ルーシィ:「たしかに、そうだね・・・」
 アル :「まぁいい。 俺のいないところで戦闘が起きても、あまり目的が達成できないしな・・・
      まとめて実力を見よう。 丁度俺も腕試しがしたかったところだ。」

一同に緊張が走る。

 アル :「どうした? そんなふうに一箇所に集まってるだけじゃ・・・ ん?」

見ると、ルーシィの姿が見当たらない。
次の瞬間・・・

ガガガッ

 アル :「・・・グリムか・・・なるほど。 だがルーシィ、まだ甘いな・・・
      グリムの本来の使い方は・・・こうだっ!」

アルが姿を消し、グリムトゥースを放つ。
攻撃してきたルーシィではなく・・・メンバーが集合している場所に向かって。

 ジュノ :「うぉ!?」
セラフィ:「きゃぁ!」

突然のことに驚く一同。

 アル :「グリムトゥースは範囲攻撃・・・相手が一箇所に固まっているなら、使わない手はない。
      ルーシィ、憶えておくといい。」
ルーシィ:「は〜い」
 ファル :「こう集まってちゃ一網打尽にされるな・・・バラけたほうが安全だ。」

年長者のファルが指示を出す。

‐一斉に飛び掛れば、さすがに対応できねぇだろ・・・‐
‐ファル兄、甘いな・・・−
‐モノは試しだ・・・みんな、いくぞ!−

ファルの号令に合わせ、アルに向かって飛び掛る5人。

 アル :「・・・そうきたか・・・」

しかし、アルは余裕の表情を崩さない。
各々が攻撃の構えをとった瞬間、アルの姿が消える。

 ファル :「しまった、クローキング!?」
 ジュノ :「だから甘いって・・・」

カカッ

 ファル :「ッ!?」
ルーシィ:「グリム・・・」
 ファル :「そうか・・・一点集中したから、みんな集まっちまって・・・」
セラフィ:「ですね・・・」
 アル :「・・・少しは学習しろよ・・・」
 ファル :「ミスったな・・・もっかい散開! 今度は順番にいこーぜ。」
ルーシィ:「まず私ぃ〜!」

我先にとアルに向かって突撃するルーシィ。

ルーシィ:「えぃ、やっ、と〜ぅ、あったれぇ〜!」

アサシンならではの素早い攻撃を繰り出すルーシィ。
だが、アルは難なくかわしていく。

 アル :「手数は文句なし。 しかし、もう少し相手を良く見て狙うべきだな・・・」

攻撃の合間を見て、ルーシィの額をコンと小突く。

ルーシィ:「ぁぅ・・・」

 アル :「それに、一人で飛び出てくるとは・・・団体行動のタブーだ・・・」
ルーシィ:「ごめんなさい・・・」
 アル :「さて、これでルーシィは終わりだが・・・次はどう来るのかな?」
ケルビナ:「てやぁぁぁぁっぁあ!」

アルの背後から剣を構えるケルビナ。
だが、掛け声によって気づかれてしまう。

 アル :「背後を取るのはいいことだ。が、それでは誰にでも気づかれてしまうだろう。」
ケルビナ:「わかりまし・・・たっ!」

返事もそこそこに、次の攻撃を繰り出す。

 アル :「いい狙いだ・・・が、攻撃が大振りすぎる。手数の少なさにつけ入られるぞ?」

ケルビナの攻撃をかわし、背後に回ったアル。
ルーシィと同じように小突こうとするが・・・

セラフィ:「はぁっ!」
 アル :「むっ!」

さらにアルの背後を取るように、セラフィが攻撃を繰り出す。
速度増加・ブレッシングもかかっているのか、攻撃速度・狙いともにいいレベルでまとまっている。

 アル :「さすが・・・セラフィだな。」
セラフィ:「私とケルビナ相手に・・・どう来るか見せてもらいますっ!」

言う間も、攻撃の手を休めないセラフィ。
が、いつも以上に攻撃の手が速い。

 アル :「・・・そうか、アドレナリンラッシュも・・・」

物陰にひそむファルに、チラっと視線を送った。

ケルビナ:「余所見・・・余裕ですわねっ!」

ケルビナも参戦し、さすがのアルも追い込まれたかに見えた。
が、アルの顔にはまだ余裕が残っている。

 アル :「・・・ベナムダストッ!」

アサシン特有の、毒の布陣。
威勢よく攻撃を繰り出していた二人も、さすがに一瞬怯む。
アルはそのスキを逃がさず。ケルビナの額を小突く。

ケルビナ:「あぁっ!」
 アル :「いいコンビネーションだ。少し驚いたぞ。」
ケルビナ:「恐れ入りますわ。」
セラフィ:「まだ・・・私は残ってますっ!」

さすがとも言うべきか、すでに体勢を立て直し、アルに攻撃を繰り出すセラフィ。

 アル :「・・・っと、あぶない。 セラフィの一撃は重いからな・・・」
セラフィ:「アドレナリンラッシュのかかった私は・・・手ごわいですよ!」
 アル :「確かにな・・・」

そのとき、何かを引きずるような聞きなれない音が聞こえた。
セラフィと対峙していて反応が遅れ、ふと目をやった先には一人のBSがいた。

 アル :「ファ・・・ル?」

ファルはニヤリと笑い、無言でカートをふり回す。

 アル :「カートレボリューションか・・・っ!」

対応しきれずに、その場から飛びのくアル。

 ファル :「くそっ ハズした・・・」

残念そうに舌打ちをするファル。
それを横目に、アルは空中で体勢を立て直す。
だが、その瞬間を狙っていた人物が・・・

 ジュノ :「空中なら・・・マトモに避けれないだろ・・・よ〜く狙って・・・今だっ!」

アルの着地際、二筋の矢が飛んでくる。
しかも、正確にアルのウサミミを狙って・・・

 アル :「くっ・・・」

さすがのアルも、表情が険しくなる。
ダブルストレイフィング・・・このタイミングでは避けきれない。

 アル :「ソニック・・・!」

咄嗟に足を動かせるタイミングではなかったが、なんとか攻撃はできる体勢であった。
間一髪、ソニックブローで矢を叩き落すアル。
直後、アルは得体の知れない異質な音に気づく。

 ジュノ :「・・・アレでダメなのかよ・・・」
 ファル :「アル兄・・・強すぎだろ・・・」
セラフィ:「まだ行けます!」
 アル :「いや、待て・・・」

攻撃態勢のセラフィを抑え、めずらしく待ったをかけるアル。

 アル :「何か・・・いる。」
セラフィ:「え? でも、メンバーは全員ココに・・・」
 アル :「俺達じゃない何かが・・・」
セラフィ:「来る前に調べたときには、生体反応はありませんでしたけど・・・
      それに、地中深くに埋もれたこの廃墟都市・・・他に人が来るとも・・・」
 アル :「少し静かに・・・」

ウィィ・・・ガシャ・・・

 アル :「機械音・・・?」
 ファル :「機械って・・・」
 アル :「・・・来るぞ!」

ガシャ・・・ガシャ・・・

機械音の主が、姿を見せる。

 ジュノ :「なんだ、コイツ・・・」
セラフィ:「わかりません・・・」

ウィィィィ・・・ウィ・・・ピピピッ
ガシャ・・・

 ジュノ :「うぉ!?」

見慣れぬ機械は、アル達に攻撃を仕掛けてきた。

 ファル :「なんだコイツ! 攻撃してきやがった!!」
セラフィ:「このっ!」

ガンッ

ピピピピピピ・・・ボンッ

セラフィが一撃加えると、謎の機械は動きを止めて爆発した。

 アル :「・・・防衛設備・・・なのか?」
セラフィ:「自動的に敵を見つけて攻撃するようですね・・・・」
ケルビナ:「さしずめ機械兵・・・といったところですわね。」

ビーーー ビーーー ビーーー

ルーシィ:「何?この音〜・・・」
セラフィ:「警報・・・?」

ガシャガシャガシャ・・・

言うが早いか、どこからともなく大量の”機械兵”が現れる。
アルは、ただ呆然とそれを見ている。

 ジュノ :「兄者・・・?」
 アル :「ジュピ・・・ロス」
 ジュノ :「??」

意味のわからない単語を口にする。
次の瞬間、まるで目が覚めたかのように突然号令を出す。

 アル :「各自、戦闘訓練は中断! 急ぎ住処に戻れ!!」
セラフィ:「はっ はい!」
ルーシィ:「にっげろぉ〜」

全員が転送円に飛び込んだのを確認し、アルも入る。

 アル :「セラフィ、急いで扉を閉じてくれ!」
セラフィ:「わかってますっ!」

住処に戻るなり、例の四角い箱をカタカタといじり始めたセラフィ。

セラフィ:「・・・これで大丈夫です。」
ルーシィ:「でも、なんだったの?アレ・・・」
 ジュノ :「さぁ・・・?」
 ファル :「ところでアル兄? ジュピロスって・・・」
 アル :「ジュピロス? なんだそれは・・・?」
 ファル :「いや、さっきアル兄が・・・」
 アル :「俺がそう言ったのか・・・?」
 ファル :「あ、いや・・・記憶にないならいいんだ。俺の空耳かも知れねぇし。」
 アル :「ふむ・・・」

こうして、天使連盟の戦闘訓練は謎の機械によって中断された。
いくつかの疑問を残して・・・