ファル :「うっし、今日もチャキチャキ売りますか。」

戦利品を売るため、露店の準備をするファル。

 ファル :「今回はコレと、コレと・・・ぉ、こんなモンまであるのか。
      じゃぁコレも・・と。」

慣れた手つきでカートの中を品定め。
手際よく露店を開き、あとは売れるのを待つだけだ。

 ファル :「売れるといいなぁ・・・そうすれば、少しは家計に余裕が・・・」
 ??? :「また、こちらにいらしたのですね。」
 ファル :「まぁ、ここは俺の定位置だからなw 空いてなかったらズレるけど・・・」
 ??? :「はい。以前もお伺いしました。 お隣、よろしいでしょうか?」
 ファル :「あぁ、ど〜ぞど〜ぞw」

ファルの隣で露店の準備をする女商人。

 ファル :「だいぶ慣れてきたみたいだねぇ。」
 女商人 :「はい。これも全て、ファルスト様のおかげでございます。」
 ファル :「いや、俺は別に・・・」
 女商人 :「無知なわたくしに色々とお教え戴いた事・・・とても感謝しております。」
 ファル :「あれはまぁ・・・見てて放っておけなかったしな・・・」
 女商人 :「クスクスクスw ファルスト様はお優しいのですね。」

ファルと親しげに話す女商人。そのきっかけは、数週間前・・・


女商人 :「確か、コレをこのようにして・・・よいしょ。       次はこちらを・・・ん、しょ・と・・・あ・・・きゃぁ!!」 がらがしゃ〜ん!! すごい音を響かせて、カートの中身をぶち撒ける女商人。 組みかけた露店も、少し崩れてしまった。 女商人 :「一言に露店開設と言っても、なかなかと大変なのですね・・・」 ふぅ・・・と溜め息をつき、散らかった荷物を片付ける。 ??? :「え〜と・・・そこの商人さん?」 女商人 :「はい?」 見るに見かねて・・・といった様子で女商人に声を掛ける男BS。 首都の路地裏・・・人通りの少ないこの場所では商人がいることも少なく、 周りを見ても今は男BSと女商人しかいなかった。 男BS :「こんなトコで露店しても売れねぇぜ? 大通りに出なきゃ。」 女商人 :「それは存じているのですが・・・たくさんの人の前に出るのが恥ずかしいもので・・・       それに、他の露天商さん達の迷惑になってしまいますので・・・」 男BS :「その様子じゃ、確かになぁ・・・」 露店の度にコレをやられたのでは、たしかに周りはたまらないだろう。 男BS :「ん〜・・・そうだな、ちょっと見てて。」 そう言って、露店の準備をする男BS。 見る見るうちに組みあがり、商品が並ぶ。 女商人 :「は・・・早いのですね・・・」 男BS :「コツがあるのさ。カンタンなコツがね。」 女商人 :「コツ・・・ですか・・・」 男BS :「そう、コツ。」 自分の組んだ露店を畳み、女商人の露店に手を掛ける。 男BS :「たとえばコレ。こいつを組む前にこっちをこうする。」 女商人 :「ふむふむ・・・」 男BS :「その次のコイツは、先にこうしておくとやりやすい。」 女商人 :「なるほど・・・それなら、組むときに安定するということですね。」 男BS :「そーゆーこと。あとはコレだけど・・・」 懸命に説明する男BSと、必死にメモを取る女商人。 そうこうしているうちに、女商人の露店が組みあがる。 男BS :「まぁ、ざっとこんなもんかな。 理解できた?」 女商人 :「はい、おかげさまで。 このやり方なら、力の弱いわたくしにもできそうです。」 男BS :「あとは慣れるだけ。そうそう、品物の相場にも気をつけなよ。それじゃっ!」 女商人 :「あ、あのっ!!」 場を離れようとした男BSを呼び止める。 女商人 :「よろしければ・・・その、お名前を・・・」 男BS :「俺? 俺はファル・・・」 女商人 :「も、申し訳ありません!!」 いざ名乗ろうとした時に、謝罪の言葉で中断される。 女商人 :「わ、わたくしとしたことが・・・名乗らずにお名前を尋ねてしまうなど・・・       失礼致しました。」 深々と頭を下げ、改めて謝罪する女商人。 女商人 :「わたくしは"あぷり=こっとん"と申します。どうぞ"あぷり"とお呼びくださいませ。       失礼ですが、あなたのお名前をお伺いしてもよろしいですか?」 男BS :「俺はファルスト。"ファルスト=メイアード"だ。"ファル"でいい。」 あぷり :「かしこまりました。ファルスト様ですね。この度は本当にありがとうございました。」 ファル :「な〜に、構わないって。それじゃ!」 あぷり :「あのっ!!」 またも、去り際に呼び止められる。 あぷり :「あの・・・また、お会いできますでしょうか・・・」 ファル :「あぁ。またどこかで会えるさ。」 あぷり :「次にお会いできる時を、楽しみにしております。」 ファル :「そうだな。それじゃ、またな!」 あぷり :「はい、また・・・」 数日後・・・ あぷり :「こちらに・・・いらしたのですね。」 ファル :「ん? あぁ。 ここは俺の定位置だからなw 空いてなかったらズレるけど・・・」 あぷり :「そうだったのですか・・・では、ここに来たら会える可能性は高い・・・ということですね。」 ファル :「まぁ、そうなるな。」 あぷり :「お隣、よろしいでしょうか?」 ファル :「あぁ、ど〜ぞど〜ぞw 一人で露店ってのもなかなか寂しくてなw」
・・・・・・ 今日もファルの隣に露店を構え、話をするあぷり。 あぷり :「ファルスト様は、本日もご兄弟の戦利品なのですか?」 ファル :「いや、今回は俺自身の戦利品だな。家計の足しになるのは同じだけどw」 あぷり :「お強いのですね・・・」 ファルが並べているものは、あぷりでは到底狩れない敵が落とすものばかりだった。 あぷり :「優しくて、強くて・・・ファルスト様はすごいお人なのですね。」 ファル :「俺以上に優しくて、もっと強いヤツは知ってるけどな・・・」 あぷり :「そのような人が居ても、わたくしはファルスト様が・・・」 ファル :「俺が・・・?」 あぷり :「い、いえ! なんでもございません・・・」 言いかけてやめるあぷり。 ファル :「それにしても、いつも俺の隣なんだな。話し相手になってくれて嬉しいけどw」 あぷり :「ファルスト様の隣が、わたくしの定位置でございますから。       定位置と言うよりは、"特等席"と表現するべきでしょうか・・・」 ファル :「それは、どういう・・・?」 あぷり :「深い意味はございません。どうか、聞き流してくださいませ。」 ファル :「あ、あぁ・・・」 そう言われても、"特等席"という言葉の意味が気がかりでしょうがないファルであった。