ジュノ :「で、兄者・・・」
  アル  :「ん?」
 ジュノ :「なんであんなことになってるんだ?」

ジュノが指差した方を見ると、セラフィにべったりくっついているケルビナの姿があった。

  アル  :「なんで・・・と言われてもな・・・」
 ファル :「あの剣士ってセラフィに襲い掛かってきたヤツだろ?」
  アル  :「あぁ。」
 ファル :「なんであんなにセラフィに懐いてるんだよ・・・」
  アル  :「それはさっき説明したとおりだって。」
 ジュノ :「・・・納得いかねぇ・・・」
  アル  :「しかし、事実なんだからしょうがないじゃないか・・・」
 ジュノ :「憎んでた奴に叩きのめされて懐くってのはオカシイだろ!」
  アル  :「そんなに言うなら本人に聞いてみろよ・・・」

アルは、これ以上説明しても納得してもらえないと思い、直接聞くように促す。

 ジュノ :「ケルビナさん・・・だっけ? ちょっといいかな?」
ケルビナ:「はい? なんでしょうか。」
 ジュノ :「え〜と・・・キミはセラ姉ぇに叩きのめされたんだよね・・・?」
ケルビナ:「はい。 あのときのセラ姉様のアコとは思えぬ表情・・・
      脳裏に焼き付いて離れませんわ。」
 ジュノ :「・・・で、惚れ込んだ・・・と?」
ケルビナ:「はい。 と〜ってもお素敵でしたw」

遠い目をして恍惚とした表情で答えるケルビナを見て、ジュノはそれ以上言葉が出なかった。

 ジュノ :「・・・どうやらマジみたいだな・・・」
  アル  :「だから言ったじゃないか。」
 ジュノ :「あぁ・・・スマナイ、兄者。」
ケルビナ:「でも〜・・・」

ケルビナは言葉を続ける。

ケルビナ:「いくらセラ姉様でも、アル兄様に関してはライバルですわよ。」
 ジュノ :「なんか頭痛くなってきた・・・」
セラフィ:「いや、だから何でアル兄さんのことで私が・・・」
ケルビナ:「そういえば・・・セラ姉様とアル兄様は兄妹でしたわね・・・」
  アル  :「ま、確かに。」
ケルビナ:「という事は・・・アル兄様は私のものですのねw」
  アル  :「兄妹っつっても、血は繋がってないが。」
ケルビナ:「ぇ? 血は繋がっていない・・・?」
セラフィ:「えぇ、繋がってませんよ。」
  アル  :「今この場にいる中で血の繋がった兄弟はいないな。」
 ジュノ :「転生前の俺が唯一・・・だな。」
ケルビナ:「どういうこと・・・ですの?」
  アル  :「簡単に言うと・・・俺たちはちょっとワケありなヤツらを保護してるんだ。
      で、俺たちが新しい家族だという意味で『兄弟』という言葉を使ってる。」
ケルビナ:「そ・・・そんな・・・」
  アル  :「驚くのも無理はないだろう。 俺が保護して回ってるのは
     『一般社会において普通に生活していくことの困難な者』だしな。」
ケルビナ:「ま・・・まさかアル兄様がナンパ師だったなんてぇぇぇぇ!」
  アル  :「・・・なんでナンパ師なんだよ・・・」
ケルビナ:「違うんですの?」
 ファル :「俺も一応、保護されたんだが・・・」
ケルビナ:「そ・・・ソッチの気まで・・・?」
  アル  :「だから違うと言うに!」
ケルビナ:「あ・・・ごめんなさい。」
 アル :「ここにいるのは、とある理由で軟禁されてたり、虐待を受けてたりした奴らだ。
      ま、例外もいるがな・・・」
ケルビナ:「私・・・ですわね。」
 ジュノ :「俺もだな。」
ケルビナ:「え?」
 ジュノ :「俺は兄者とは血の繋がった兄弟・・・と言うか、双子だったんだ。
      ワケあって転生して、ここに居着いてるだけだ。」
ケルビナ:「みなさんが軟禁されてたり、虐待を受けてた理由・・・というのはなんですの?」
セラフィ:「それは・・・ちょっと話すわけには・・・」
ケルビナ:「何故ですの? 私ももう『天使連盟』の一員なんですのよ!」
セラフィ:「何故、と言われても・・・えっと・・・」
 アル :「教えてやるよ。」
セラフィ:「え? アル兄さん、いいんですか?」
 アル :「ケルビナはすでに天使連盟の一員だ。 それに、セラフィの紅眼を見てるだろ。」
ケルビナ:「それも気になっていましたの。 『片眼まで・・・』とか何とか・・・」
 アル :「俺たちは生まれつき『特殊な力』があってな。 それはケルビナが見た通りだ。
      力を引き出した時、その度合いによって『片眼変色』『両眼変色』『頭髪変異』
      といった外見上の変化が見られる。 これが『片目まで・・・』という表現になるわけだ。
      で、ギルメンの証のこの首飾り・・・これが抑制装置の役割を果たしている。
      これがある限り、自分の意志では『片眼まで』しか引き出せない。
      片眼でもえらいことになるがな・・・」
ケルビナ:「えと、つまりは・・・生まれ持った特殊な力のせいで回りに馴染めない人がここに保護されてる・・・
      ということですの?」
 アル :「ま、カンタンに言うとそういうことだ。」
ケルビナ:「私の首飾りにもそのような効果が?」
 アル :「いや、ケルビナのはただの飾りに過ぎない。」
ケルビナ:「そうですの・・・」

少しホッとしたような顔でケルビナが首飾りを見つめる

 アル :「しかし・・・ケルビナの防御力はスゴイな・・・」
ケルビナ:「かすかに聞こえたのですが・・・『普通、死んでる』と。」
 アル :「あぁ。 片眼でも普通の人なら跡形もなく消し飛ぶくらいの力が出るからな。」
ケルビナ:「アル兄様に出会ったころから、防御力だけには自信がありましたものw」
 アル :「・・・自身がある、の限度を越えてる気がするんだが・・・」
ケルビナ:「気にしたら負けですわよw」

ニコっと微笑み、親指を突き立てるケルビナ。
アルは何か言いたそうな顔をしていたが、口にすることはなかった。