それは突然の出来事だった。 女の声 :「そこのアコ、覚悟〜!!」 見ると、女剣士がこちらに向かって走ってくる。 「そこのアコ」とは、どうやらセラフィのことらしい。 剣士 :「てやぁぁ!!」 ぶんっ 手に持った剣を振り回し、セラフィに襲い掛かる女剣士。 セラフィ:「ちょ・・・なんですか! イキナリ・・・」 と、口調ではかなり焦っているものの、余裕で捌くセラフィ。 時に身を翻し、時に杖で受け止め、かすり傷ひとつ負わないのはさすがアサシン仕込みと言った所か・・・ 剣士 :「てぃ! せぁ! うりゃぁぁ!!」 ガキィッ ヒュッ ブォン アル :「コレは・・・止めた方がいいんだ・・・よな?」 ジュノ :「とっとと止めるべきなんじゃないか? あの剣士のためにも。」 アル :「そ・・・そうだな。」 ジュノ :「って言うか、よく杖斬れないよなぁ・・・」 アル :「そこは突っ込んではいけないところだと思う・・・」 反撃の余地を与えまいと、立て続けに剣を振り回す剣士に声をかける。 アル :「そこの剣士!」 剣士 :「!?」 剣士の動きが止まり、じっとこちらを見る。 セラフィは、やれやれといった感じで一息ついている。 アル :「どんな事情があるか知らないが、イキナリ襲い掛かるってのはどうかと思うぞ・・・?」 剣士 :「え、う・・・ぁ」 アル :「俺のいも・・・」 剣士 :「アル様!!」 「俺の妹に・・・」と言おうとしたアルの言葉を遮って剣士が叫ぶ。 アル :「アル・・・様ぁ?」 剣士 :「あ、私としたことがアル様の前で・・・失礼しました!」 ジュノ :「兄者・・・知り合いか?」 アル :「ん〜・・・女剣士ねぇ・・・」 ファル :「壁してあげたとか?」 剣士 :「は、はい! アル様にはお世話になりまして・・・」 アル :「ん〜・・・ゴメン、名前聞かせてもらっていいかな?」 剣士 :「す、スミマセン・・・申し遅れましたが、私は『ケルビナ』と申します。 あのときのアル様の凛々しいお姿、忘れもしません!」 「ケルビナ」と名乗った剣士はアルを見て目を輝かせている。 アル :「ぁ〜、ケルビナだったのか。 結局、剣士になったんだ。」 ケルビナ:「はい。 どの職に就こうか迷いましたが・・・ アル様が『アサは敵に囲まれるとツライ』とおっしゃったので・・・」 アル :「て〜ことは・・・俺と一緒に狩りに行くために・・・?」 ケルビナ:「はい!」 ジュノ :「で、なんでセラ姉に襲い掛かったんだ・・・?」 ケルビナ:「アル様はあのアコにたぶらかされてるんです!!」 一同 :「ハァ・・・?」 ケルビナ:「私が剣士になって以来、アル様の凛々しいお姿を見ること叶わず・・・ やっと見つけたと思ったらアコとヘラヘラ・・・」 アル :「・・・イヤ、それは・・・」 ケルビナ:「とにかく! あのアコを倒してアル様を元に戻します!」 ジュノ :「イヤ・・・ムリだと思うけどな・・・」 アル :「俺、これが『地』だしな・・・」 と、一通り会話した所でふと、あることに気が付く。 ファル :「どーでもいいが、場所変えないか? 人目が気になって・・・」 そう、ここは街中。 周囲の人がなにやら妙な目でアルたちを見ていたのは言うまでもない。 アル :「そーだな・・・とりあえずウチ行くか。」 ジュノ :「いいのか? 部外者案内しても・・・」 アル :「いいさ。 どうせ案内するのは『あの場所』なんだ。」 セラフィ:「あぁ、あそこですか・・・。」 アル :「ケルビナ、ちょっとついて来てくれるか?」 ケルビナ:「わかりました。 アル様がそうおっしゃるなら・・・」 ケルビナの承諾を得、移動を開始する一同。 アル :「着いたぞ。」 そこは、一帯が柵でおおわれており、特別管理地域の看板が立てられてあった。