アル :「ルーシィ」 ルーシィ:「ぅ?」 アルに呼ばれ、てとてと・・・と小走りに近寄リ、アルの横にちょこんと座る。。 アル :「突然なんだが・・・ルーシィはどの職に就きたい?」 ルーシィ:「・・・んぅ〜・・・」 しばらく考えた後に ルーシィ:「ますた〜・・・にぃ・・・」 アル :「・・・俺みたいになりたいって言うのか・・・?」 ルーシィ:「ん。」 コクコクと頷く。 アル :「俺と同じ職になるには、シーフになって技術を磨かなきゃいかんのだが・・・」 ルーシィ:「それ。」 自分に向けられた決意の眼差しを見て、アルは腰を上げた。 アル :「そこまで言うなら、俺が指導しよう。」 ルーシィを連れて歩き始める。 アル :「皆、ちょっと出かけてくる。」 セラフィ:「ドコに行くんですか?」 アル :「あぁ、コイツの転職に・・・な。」 ファル :「それなら俺たちも・・・」 と言ったところでファルは口を止めた。 まだルーシィに避けられているということを思い出したのだろう。 アル :「いや、今回は俺一人で行く。 皆は・・・そうだな、転職祝いの準備でもしておいてくれ。」 ジュノ :「了解。 早く帰って来いよ? 兄者。」 アル :「わかってるよ。 できるだけ手早く済ませるつもりだ。 幸い、コイツはなりたい職は決まっているみたいだしな。」 セラフィ:「ポタ、出しましょうか? ドコに行くのか知りませんけど・・・」 アル :「いや、歩いていく。 道中でコイツに戦い方をいろいろ教えてやるつもりだ。」 セラフィ:「わかりました。 気をつけて行ってきてくださいね?」 アル :「あぁ。 それじゃ、行くぞ? ルーシィ」 ルーシィ:「ぅ。」 コクっとひとつ頷き、アルの後を追う。 ―さてと・・・あそこまでは結構距離があるな・・・敵の種類も結構いる。― アル :「ルーシィ、まずそこにいるチョンチョンを倒してみろ。」 ホイっと、ファルから預かってきたナイフを渡す。 どんなに素早い敵にも必ず当たる短剣だ。 ルーシィ:「ぅ!」 力強く返事をし、チョンチョンに向かっていく。 ザッ ガシュ! ビシィ! ルーシィ:「あぅっ!」 チョンチョンの反撃を受け、少しよろめく。 ルーシィ:「むぅ〜・・・」 ドシュ! 苛立ったルーシィの一撃が決まると、チョンチョンは地に落ちて動かなくなった。 ルーシィ:「はぅ〜・・・」 アル :「ルーシィ。」 ルーシィ:「ぅ?」 アル :「まずは素早さを鍛えろ。 敵の攻撃を避けなくてはどうしようもないからな。」 ルーシィ:「ん。」 アル :「ある程度避けれるようになったら次は力だ。 技術は様子をみて少しずつ上げていけばいい。」 ルーシィ:「ぅ。」 道中、アルに叱咤激励されつつ自分を鍛え、時にアルの助けを借りてルーシィはある程度自分だけで戦えるようになった。 そして辿り着いたモロク・・・のピラミッド前。 ルーシィ:「はぇ〜・・・」 口をあんぐりと開けてピラミッドを見上げるルーシィ。 アル :「ここの地下に転職できる場所がある。 一人で行ってみろ。」 ルーシィ:「えぅ!?」 アルの発言に驚きを隠せないルーシィ。 アル :「これから先、一人で狩りに行く事も多くなる。 今のうちに体験しておけ。」 ルーシィ:「ぅ〜・・・」 しぶしぶ、一人でピラミッドに入っていくルーシィ。 ―まだアイツには勝てないかも知れんが・・・勝てない敵に遭った場合の対処法の実践訓練だな。― 一方、ピラミッド内。 薄暗い場所に一人でいる恐怖感からか、ルーシィの足取りは重い。 恐らく今、早くアルの元に戻りたい一心で恐怖を押さえつけているのだろう。 と、そこに沸いて出たコウモリのモンスター、ファミリア。 今のルーシィでは勝てないかも知れない・・・とアルが案じていた敵だ。 それに気付き、ルーシィは一目散に逃げ出す。 勝てないと悟ったのではなく、恐怖心を掻き立てられたのだろう。 だが、ファミリアはどこまでもしつこく追ってくる。 ルーシィ:「あうぅ〜〜!!」 目の前に階段を見つけ、ルーシィは転がるように駆け下りた。 ファミリアが追ってこないことを確認すると、ふぅ・・・と一息つき、また歩き出した。 アル :「・・・・・・」 ピラミッド前になにやらおかしな顔をしたアサシンが一人。 ルーシィの身を案じているアルだった。 と、ピラミッドから見知った顔が、半分泣きながら現れた。 アル :「・・・シーフギルドで話は聞いてきたか?」 ルーシィ:「ん・・・」 アル :「よし、じゃぁ行ってこい。 俺はあそこには入れてもらえないからここで待ってる。」 ルーシィ:「ん。」 一言二言会話して、ルーシィはすぐにキノコ農場へと向かった。 そして待つこと数刻・・・ルーシィは意外に早く帰ってきた。 アルの予想よりも・・・早く。 アルは、声をかけるのをためらった。 ルーシィの表情が今までとは比べ物にならないほど凛々しくなっていたからだ。 ―まるで別人・・・だな。― アルに視線を送ると、ルーシィは言葉も交わさずにピラミッド内へと入っていった。 結果は・・・聞かずともあの表情でわかった。 あの速さで、指定どおりにキノコを集めたのだ。 夕刻・・・太陽が沈み始めた時、一人のシーフがピラミッドから出てきた。 ルーシィ:「ますた〜」 アル :「お帰り。 意外と早かったじゃないか。」 ルーシィ:「シーフに・・・なってきたよ。」 アル :「それは見ればわか・・・」 アルは異変に気付き、言葉を止めた。 アル :「ルーシィ・・・お前、今・・・」 ルーシィ:「あはは、なんでだろ? 普通に喋ってるね、私。」 アル :「何か・・・あったのか?」 ルーシィ:「えっと、それは多分・・・」 ―今回の事で、今までのツライことを吹っ切れたからだと思うよ?― アルの耳元にささやき、また二人で歩き出す。 家では3人が祝いの準備を整えて帰りを心待ちにしているだろう。 あのルーシィがシーフになったこと・・・そして、普通に喋れるようになった事・・・ 3人の驚く顔が目に浮かび、思わず笑みがこぼれる二人だった。