歩きつづけるシーフとアコ。
目的地のキャラメル山に到着し、狩りを始めている。
セラフィ:「兄さん、しっかり!」
アル :「おう!」
ヒュン ガス ザシュッ!
アル :「ふぅ・・・やっぱりまだちょっとキツイかもな・・・」
セラフィ:「そのために私が居るんじゃないんですか?」
アル :「ん?まぁ、そうなんだが。」
セラフィ:「はい、ヒール。」
アル :「サンキュ」
セラフィ:「いえいえw」
アル :「はぁ、いつのまにやら山頂だなぁ・・・」
セラフィ:「そうですね〜・・・見晴らしがよくて気持ちいいです。」
アル :「そういえばあの橋の向こうは・・・」
アルの視線のには、掛け橋があった。
それほど長いわけでもなく、向こう側に立っている人の顔が判別できる。
と、不意にセラフィは声を上げる。
セラフィ:「あ〜〜!!あれは!!」
突如走り出し、橋を渡っていくセラフィ。
アル :「おいセラフィ、待て! その向こうは・・・」
アルの制止も聞かず、どんどん先に行ってしまう。
あわてて後を追うアル。
変わって、こちらは橋の向こう側。
アルたちとは反対側に当たる場所。
蜘蛛を狩っていた一人の男・・・
ふと橋の方に目をやると、一人の女アコが走ってくる。
セラフィ:「お〜い、兄さ〜ん!!」
セラフィである。
男 :「・・・セラフィ・・・?ま、待て!こっちは・・・ッ!」
そう言うや否や、セラフィの背後に突如湧いた食人植物「フローラ」。
男 :「セラフィッ、離れろ〜〜!!」
セラフィ:「えっ? き、きゃぁぁ!!」
セラフィは驚いて腰を抜かしてしまい、その場に尻もちをついてしまっている。
ここぞとばかりに、その大きな口を開き、セラフィを食べようとしているフローラ。
男 :「くっ・・・間に合うか・・・」
フローラを倒し、セラフィを助けるためにそれに向かって走る男。
だが、その前に倒すには遠すぎた。
フローラのその口が、セラフィに眼前に迫ったそのとき・・・
ヒュ・・・ ドス! ゴオォ・・・
何処からともなく火矢が飛んできてフローラに命中、火達磨にした。
火に弱いフローラは燃えて消し炭になってしまった。
セラフィ:「あ・・・ああ・・・」
セラフィの足はガクガクと震え、声を出すこともままならない様子。
アル :「全く・・・無用心だぞ、セラフィ!」
アルが怒鳴る。
セラフィ:「ぁぅ・・・ご、ごめんなさい・・・アル兄さんが見えたもので・・・つい・・・」
アル :「いくら『アル兄さん』が見えたからって・・・って、アル兄さん?」
セラフィ:「はい。だって、アル兄・・・え・・・?」
男 :「俺がどうかしたのか・・・って・・・」
アル・セラフィ・男は、何かに気が付いた。
セラフィ:「アル兄さんが・・・ふた・・り?」
アル :「・・・アル兄・・・こんなところで狩ってたのか・・・」
男 :「そういうアルは、またやったんだな・・・?」
セラフィ:「えっ? えぇ?」
セラフィは事情が飲み込めず、オロオロしている。
それもそのはず、シーフになってしまって一緒に狩っていたはずのアルが、
アサシンの姿で目の前に居るのだ。
当然、シーフのほうのアルもいる。
アル(アサ):「・・・説明するよ・・・実はな・・・」
セラフィ:「はい?」
アル(アサ):「そこのシーフは・・・俺の弟で、ファルとセラフィの兄に当たる。」
アル(シフ):「そゆことw」
セラフィ:「・・・あの・・・意味が・・・よく・・・」
アル(アサ):「そっちのシフも『アル』なんだよ。」
アル(シフ):「アル兄がシフだった時代、よく入れ替わってたんだぜ?」
アル(アサ):「まぁ何から何までソックリだし、気付かなくてもムリはない。」
アル(シフ):「アル兄がアサになるちょっと前あたりには俺は旅に出てたからな。」
アル(アサ):「で、よりによって俺が狩りでいない日に帰ってきた・・・と。」
セラフィ:「えと・・・あの・・・どちらもアル兄さん・・・?」
アル(アサ):「ん、そうなるな。 な?アル。」
アル(シフ):「ん?違うぞ。『アル兄さん』はもう一人だけだ。」
アル(アサ):「・・・はぁ?お前、何言って・・・」
アル(アサ)の言葉を遮るように、アル(シフ)が言葉を続ける。
アル(シフ):「俺は・・・もうすぐ消えるからな。」
セラフィ:「え・・・?消えるって・・・兄さん・・・?」
アル(シフ):「ま、仕方ないさ。 アルが二人居ちゃ呼びづらいだろ?。」
アル(アサ):「アル・・・なにもそれだけの理由で消えなくても・・・」
アル(シフ):「それだけなわけないさ・・・だけど・・・これは決められたことなんだ。」
セラフィ:「何とか・・・できないんですか?」
アル(シフ):「ムリだな。 そろそろ、お別れだ。」
アル(アサ):「アル!!」
アル(シフ):「アル兄、セラフィ、達者でな。 生まれ変わったらまたヨロシクw」
セラフィ:「アルにいさ〜〜〜ん!!」
アル(シフ)の体が次第に透けていき、やがて装備品だけを残して消えてしまった。
セラフィ:「アル・・・兄・・さ・ん・・・」
その場に膝をつき今にも泣きそうなセラフィ、それを抱え、家路につくアル。
重苦しい雰囲気の中、双方ともに会話を切り出せずに居た。
アル :「ただいま・・・」
ファル :「おぅ、お帰り。 お、アル兄!戻ったのか!!」
アル :「あぁ、戻ったというか・・・なんというか・・・」
元気に迎えてくれるファルだが、重苦しさは消えず、いまだセラフィは口を閉じたままだ。
ファル :「にしてもアル兄よぉ・・・なんで黙ってたんだ?」
アル :「ん?何のことだ?」
ファル :「弟だよ、弟。 俺、ぜんぜん知らなかったぞ。 セラフィは知ってたか?」
セラフィ:「いえ・・・私も・・・」
「弟」というのをアル(シフ)のことであると思い、言葉も少ない。
家の中を見回すアル。 ふと、見慣れないものが目に入る。
アルと同じような髪型をしたシーフが居たのだ。
アル :「ファル・・・そのシフ・・・お前の知り合いか?」
ファル :「は?何ボケてんだよ、アル兄。 俺たちの弟じゃないのか?」
アル :「はぁ? 弟!? 俺は弟などお前しか・・・まさか・・・」
席についていたシフが話し掛けてくる。
シーフ :「おぉ、兄者達、遅かったじゃないか!」
二人 :「・・・・・・」
アルとセラフィは数秒沈黙した後
アル :「アル!?」
セラフィ:「アル兄さん!?」
同時に声を上げる。
ジュノ :「違うなぁ〜、俺はオルジュノ。 メイアード家の三男だ。 とはいえ、もとはアルだけどなw」
アル :「アル・・・貴様・・・」
ジュノ :「だから違うってば。 今は『オルジュ・・・』」
アル :「んなこたどーでもいい!!」
ジュノ :「ひぁ!?」
怒鳴られて跳ね上がるジュノ
アル :「心配させやがって・・・セラフィもどれだけ悲しんだか・・・」
ジュノ :「まぁまぁ、気を静めなされ・・・」
セラフィ:「静まりません!!」
ジュノ :「はぅ!?」
再び跳ね上がる。
セラフィ:「兄さん・・・今度こそ、よろしくお願いしますよ?」
ジュノ :「セラフィ・・・いや、セラ姉ぇ。 今は俺が末子だぜ?」
セラフィ:「あ、そうでしたw」
アル :「まぁ、アレだ・・・今晩は・・・」
ジュノ :「ウンウンw」
自分の歓迎会でも開くのかと思い、目が輝くジュノ
アル :「ジュノの晩飯は抜きで。」
ジュノ :「えぇ〜〜〜!?」
さすがに驚愕を隠せない。
アル :「俺を心配させたのと、セラフィを悲しませた罰・・・だ。」
ジュノ :「そんなぁ・・・」
ファル :「ん? なんかあったのか? アルってダレだ??」
ファルだけが真相を知らず、不思議そうな顔をしている。
SSTOP