ファル :「なぁ、アル兄ぃ?」
 アル :「ん? どうした、ファル」
 ファル :「ちょっと・・・聞きたい事があるんだけど・・・さ」

ファルは、どこか照れくさそうにアルに話しかける。

  アル :「聞きたい事とは?」
 ファル :「もし・・・もしもだぜ?この天使連盟のメンバーが、他の誰かを好きになって・・・
      その相手が、一般人だった場合って・・・付き合ったりしたら問題か?」
 アル :「・・・問題がないとは言い切れん。」
 ファル :「煮え切らないなぁ・・・」
 アル :「俺も、そこまで詳しいことは判らないんだ。今まで、そういった経験もないしな・・・」
 ファル :「・・・そっか。やっぱ止めといたほうがいいのかなぁ・・・」
 アル :「何か、心当たりでもあるのか?」
 ファル :「い、いや別にっ! そんなことは・・・」
 ジュノ :「あーやしーいな〜」
 ファル :「じゅ、ジュノ!? いつからソコに?」
 ジュノ :「最近、ファル兄ぃがヤケにソワソワしてっからさ。
      なんでかな〜と思ったけど、そーいコトかw」
      で、お相手はドコの誰? 
 ファル :「だ、だから・・・俺じゃねぇって言って・・・!」
 ジュノ :「どちらにせよ、そりゃ問題だぜ?」
 アル :「ジュノ・・・知ってるのか?」
 ジュノ :「あぁ。俺ぁ何でも知っている。なんてなw」
 アル :「誤魔化すんじゃない。」
 ジュノ :「悪ぃ悪ぃw で、その問題だけどな・・・
      俺らの持ってる、特殊な力って・・・どうやら、遺伝するみてぇなんだ。」
 ファル :「そうなのか・・・?」
 ジュノ :「あぁ。なんか、難しい話になんだけど、最優性遺伝だとか何とか・・・
      つまり、特殊体質の人がドンドン増えていっちまうんだな。」
 ファル :「そっか・・・」

ファルは、力なくうなだれた。
それを見て取ったジュノが、ニヤけながら改めて聞きなおす。

 ジュノ :「で・・・念のためにもう一度聞くけど・・・本当にファル兄ぃのコトじゃねぇんだな?」
 ファル :「・・・俺のことだったら、どうだって言うんだ?」
 ジュノ :「ファル兄ぃ自身のことなら、もひとつ話しておかなきゃなんねぇことがあんだよ。
      な、兄者?」
 アル :「・・・あぁ、そうだな。」
 ジュノ :「でもな・・・これ、ホントに重要な話だから・・・よほどのコトじゃなきゃ、話せねぇんだ。」
 ファル :「俺に・・・関係することなんだな?」
 アル :「・・・あぁ。」
 ファル :「・・・判った。 実は俺、ある人から告白されたんだ。
      本当なら、スグにでもOKしたかったんだけど・・・一度相談したほうがいいと思って。」
 アル :「そうか・・・」
 ファル :「で、俺に関する大事な話ってのは?」

 アル :「それはだな・・・」

アルは、柄にも無く渋い顔をする。


 ジュノ :「兄者・・・ツラいかもしれねぇが、ちゃんと話さねぇと・・・」
 アル :「わかってる。」
 ファル :「・・・そんな深刻な話なのか?」
 アル :「ファル・・・これから話すことは、今までずっとお前に秘密にしてきたことだ。
      というよりも、俺とジュノしか知らない事実・・・」
 ファル :「秘密・・・?俺に関することで・・・?」
 アル :「そうだ。 今まで隠してきたことは、本当にすまないと思ってる。
      今更、謝ってどうにかなるようなものでもないが・・・」
 ファル :「そんなことはいから、早く教えてくれよ。」
 アル :「実は・・・ファル、お前は、特殊な力なんて何も無い、普通の人間なんだ。」
 ファル :「俺が・・・普通の?」
 アル :「あぁ、そうだ。 ある事情で、記憶喪失の孤児を俺が預かって、そのままココで養ってきた。」
 ファル :「どうりで・・・どう頑張っても力が出ないワケだよ・・・
      アル兄ぃ達みたいな、異常な力は、もともと無かったんだな。」
 アル :「あぁ、そうだ。 だから、その首飾りにしても、通行証として渡してあるが、
      力の封印などは一切していない。記憶に関しても、俺が保護した時点で失われていたんだ。」
 ファル :「確かに、目を覚ましたとき、何も覚えてなくて・・・
      俺はアル兄ぃの弟だって言われて、名前も教えてもらったけど・・・
      孤児だったってことは・・・俺の名前も、アル兄ぃが適当に?」
 アル :「それは・・・」
 ジュノ :「それが、ある事情ってヤツなんだよ。」
 ファル :「その事情って・・・?」
 ジュノ :「兄者がアサシンだってのは・・・よく判ってるよな。」
 アル :「ジュノ!」

真相を明かしたくないアルは、あわててジュノを制止する。

 ファル :「・・・聞かせてくれよ、続き。
      大丈夫、どんな現実を突きつけられても、俺は天使連盟のメンバーだ。
      みんなを信じてる。」
 アル :「判った。」
 ジュノ :「じゃ、続きを・・・」
 アル :「ジュノ、ここからは俺が話す。お前にも、詳しくは話していないからな。」
 ジュノ :「わぁった。」
 アル :「少し長くなるが・・・構わないか?」
 ファル :「あぁ、構わない。」
 アル :「知っての通り、俺はアサシンだ。以前は、アサシンギルドに頻繁に出入りしていた。
      そんなとき、ギルドに俺を指名したうえでの依頼が届いた。
      ある人物を殺して欲しいと。」
 ファル :「ま、アサシンだからなぁ・・・」
 アル :「手ごわい相手だったが、なんとか任務をなし終えた直後、
      その場に駆けつけたギルドメンバーから驚くべき事実を告げられた。
      俺が手にかけた人物がアサシンギルドの元マスターだと・・・
      それがお前の、実の祖父だった。」
 ファル :「俺の・・・じいちゃん・・・?」
 アル :「そうだ。アサシンギルドの重鎮を手にかけた驚きで、しばらく立ち尽くしていると、
      あろうことか出かけていたお前が戻ってきて、現場を見られてしまった。
      そうとう驚いたのだろう。それを見たお前は慌てふためいて、近くの崖から転げ落ち、何日も目を覚まさなかった。」
 ファル :「そう・・・だったのか・・・俺には、じいちゃんが・・・」
 アル :「お前の祖父が事切れる寸前、お前の名前をつぶやいた。
      ・・・それで、名前は判った。」
 ファル :「そっか・・・アル兄ぃが、じいちゃんを・・・」
 アル :「すまない・・・今更、どれだけ謝っても許されることではないが・・・」
 ファル :「別に・・・気にしてねぇよ。」
 アル :「ファル?」
 ファル :「それが事実だたっとしても・・・俺、覚えてねぇし。
      許すも許さないも、俺には事実かどうか確認することが出来ないし・・・
      それに・・・俺の家族は、ここにいるみんなだぜ。」
 アル :「・・・ありがとう、ファル・・・」

アルは、柄にもなく目に涙を湛えていた。

 ファル :「それよりも・・・さ。俺、一般人と付き合っても、何の問題もねぇんだな?」
 アル :「あぁ、そういうことだ。」
 ファル :「記憶に無いとはいえ、じいちゃんの死が悲しくないワケじゃねぇけどさ・・・
      俺としては、これでエンリョなくアイツと付き合えることが、嬉しくてたまんねぇんだ。
      アル兄ぃ、それから、ジュノも。教えてくれてアリガトなw」
 アル :「そう言ってもらえると、俺も救われる。」
 ファル :「・・・早速、アイツに返事しに行ってくるわ。
      その前に、プロンテラで買い物だなw」
 アル :「あぁ、心置きなく行って来い」
 ジュノ :「がんばれよ〜!!」
 ファル :「おう、アリガトな〜!」

ファルは、意気揚々と出かけていった。
それを見送るアルも、晴れやかな表情だった。