露店を開くため、いつもの場所に赴くファル。
しかし、今日は先客が居た。

 ファル :「お、あぷりじゃないか。」
 あぷり :「あ、ファルスト様w」
 ファル :「はは、ついにあぷりに場所とられたか〜」
 あぷり :「いえ、本日はファルスト様に折り入ってお話がありまして。
      待っている間に、この場所で露店を開かせていただいておりました。」
 ファル :「俺に話?」
 あぷり :「はい。ですが、こちらではちょっと・・・
      少し裏手でお話してもよろしいでしょうか?」
 ファル :「あぁ、かまわないけど・・・」

そう言って露店をたたみ、路地の方へ入ってくあぷり。
ファルも後を追う。

 あぷり :「このあたりなら大丈夫そうですね・・・」
 ファル :「周りにに人の気配はないけど・・・誰かに聞かれたらマズいのか?」
 あぷり :「誰かに聞かれたら恥ずかしい、じゃないですか・・・」

少し俯き、顔を赤らめるあぷり。

 ファル :「で、話って・・・?」
 あぷり :「実は・・・ですね。」
 ファル :「ん?」
 あぷり :「わたくし、ファルスト様のことが・・・"好き"になってしまったようです・・・」
 ファル :「いや、まぁ・・・この時点でだいたい想像してたけど、
      イキナリそう言われても・・・」
 あぷり :「ファルスト様・・・わたくしでは、いけませんか・・・?」
 ファル :「いや・・・ダメ、じゃない・・・ケド・・・」
 あぷり :「けど・・・なんでしょうか? わたくしは本気でございます。」
 ファル :「本気なのも十分わかる・・・だけど・・・」
 あぷり :「だけど・・・?」
 ファル :「わ、悪いっ! ちょ、考えさせてくれ!!」

そう言って、その場から走って逃げてしまうファル。

 あぷり :「な・・・ちょっ! ファルスト様ぁ〜〜?」

みるみる遠ざかっていくファルの後姿を、あぷりはただ立ち尽くして見ているしかなかった。
その日を境に、ファルは「いつもの場所」に姿を見せなくなった。
代わりに毎日、日が沈むまでずっと露店を開き続ける女商人が一人。

 あぷり :「ファルスト様・・・今日もいらっしゃいませんね・・・」

あぷりは毎日、ファルの定位置で露店を開きながら想い人待つ。
走り去られたこと、ここに来ないこと・・・
想いが実らないことを覚悟しながら・・・

一方、走り去った張本人はというと・・・

 ファル :「はぁ・・・どうすっかなぁ・・・」

かなり困っている様子。

 ファル :「たしかにイヤじゃないし、他に好きなヤツもいない・・・
      けどなぁ・・・」
セラフィ:「ファル兄さん?」
 ファル :「!? セ・・・セラフィ?」
セラフィ:「はい?」
 ファル :「今の・・・聞こえてたか?」
セラフィ:「今の・・・?」
 ファル :「あぁ、聞こえてないならいいんだ。」
セラフィ:「なにか悩んでる様子でしたけど・・・
      私でよければ、相談に乗りましょうか?」
 ファル :「あ、いや・・・こればっかりは自分で解決しなきゃだしな。」
セラフィ:「そうですか・・・あまり根を詰めすぎないようにしてくださいね?」
 ファル :「ん、わかってるって。」
セラフィ:「では、そろそろ晩御飯ですから、早めに来てくださいねw」
 ファル :「あぁ・・わかった。」

セラフィが遠ざかったのを確認し、またつぶやき始める。

 ファル :「まさか・・・アイツがなぁ・・・」

こういったことに興味も経験もないファル。
戸惑いながらも、答えはまとまりかけていた。