ジュノ :「おーい、ケルビナ〜?」
ケルビナ:「ぁ・・・」

ジュノを見るや否や、ケルビナはジュノに背を向けて離れる。

 ジュノ :「ケルビナってば、おい!」

呼び止めても振り向く気配はない。

 ジュノ :「どうしたんだ・・・アイツ」

最近ケルビナは、ジュノとマトモに顔を合わせようとはしない。
そう、あの日からずっとである。

 ジュノ :「兄者〜?」
 アル :「ん? どうした・・・そんな怪訝な顔をして。」
 ジュノ :「最近ケルビナの様子がおかしくないか?」
 アル :「いや、いつもと変わらないが?」
 ジュノ :「俺、嫌われてんのかなぁ・・・ マトモに顔合わせてくれねぇんだよ。」
 アル :「お前が何かしたんじゃないのか?」
 ジュノ :「特別、何かした覚えはねぇんだけど・・・あっ!」
 アル :「何か思い当たるフシでも見つかったか?」
 ジュノ :「ひょっとして、あのコトが原因か・・・?」
 アル :「あのコト?」
 ジュノ :「ほら、俺の弓が折れたヤツだよ。」
 アル :「あぁ、ケルビナを助けて折れたんだったな。
      だが、そのことを気にしてるにしても、避ける事はないと思うが・・・」
 ジュノ :「あれも結局、ファル兄ぃの"武器修理"でカンタンに直ったしな・・・」
 アル :「ケルビナに少し聞いてみるか。このまま放っておくわけにもいかんしな。」
 ジュノ :「あぁ、よろしく頼むわ。」

そう言ってジュノは席を外す。
アルはケルビナに耳打ちをした。

‐ケルビナ?‐
‐ぁ、アルお兄様。 何かご用ですか?‐
‐まぁ、ちょっとな。今少し時間いいか?‐
‐大丈夫ですわw‐
‐イキナリ本題に入るぞ。実は・・・‐
‐はい・・・?‐
‐ジュノのことなんだが。‐
‐・・・ジュノお兄様の・・・?‐
‐あぁ。ジュノを避けてるみたいだが、何かされたのか?‐
‐ジュノお兄様には、とても良くしてもらってますわ。避ける理由なんて・・・‐
‐ジュノが気にしていたぞ? 最近ケルビナがマトモに顔を合わせない・・・と。‐
‐そう、ですか・・・‐

しばらく、互いに沈黙する。

‐・・・わたくし、ジュノお兄様にどんな顔をしていいか・・・‐
‐まさか、ジュノの弓のことをまだ気にして・・・?‐
‐いいえ、そんなことはありませんわ。あの弓も、スグに直ったようですし。‐
‐じゃぁ、どうして・・・‐
‐それは・・・‐
‐あぁ、言いにくいならいいんだ。ムリに問い詰めてすまない。‐
‐いえ、ジュノお兄様の顔をマトモに見ていないのは事実ですし・・・‐
‐何かあったら言ってくれ。相談に乗る。‐
‐はい、ありがとうございます。‐

セラフィ:「アル兄さん・・・?」
 アル :「ん? あぁ、セラフィか。どうした?」
セラフィ:「どうかしたんですか? ずいぶん思いつめた顔してましたけど。」
 アル :「ケルビナのことで・・・ちょっとな。」
セラフィ:「ケルビナちゃんの・・・?」
 アル :「最近、ジュノとマトモに顔を合わせれないらしいんだ。
      弓のことは気にしてないと言っていたが・・・」
セラフィ:「ひょっとして、ジュノ君のことを好きになったのでは・・・?」
 アル :「ケルビナが・・・ジュノを?」
セラフィ:「漫画とかでありがちな話じゃないですか。 大事なものを犠牲にしてまで
      自分を守ってくれた人に想いを寄せる・・・というのは。」
 アル :「そんなものか・・・?」
セラフィ:「そんなものですよw ジュノ君の場合、いつもフザケてるイメージがありますし、
      余計に良く映ったんじゃないですか?それで、戸惑ってるんだと思います。」
 アル :「だが、確証もないしな・・・ あまり問い詰めてもケルビナが苦に思うだろう。」
セラフィ:「そうですね・・・しばらく様子を見ましょうか。
      もしそうだとしたら、いずれ動きがありますよw」
 アル :「ジュノに詰め寄るか、ココから離れるか・・・というところか。
      どちらにせよ・・・」
セラフィ:「とりあえずっ!」

めずらしく、アルの言葉を遮るセラフィ。

セラフィ:「恋する少女は、強いですよっw」

親指を突き立てて、ケルビナのマネをする。

 アル :「ケルビナのマネかよw」
セラフィ:「はい、なんとなくw」

セラフィの冗談で、強張っていたアルの表情と気持ちも晴れた。