めずらしく一人で狩りに出かけていたケルビナ。
だが、それが災いして、窮地に追い込まれていた。

ケルビナ:「はぁ、はぁ・・・」

ケルビナが対峙しているのはエンシェントマミー。
自分の実力を試すために、ピラミッドダンジョンの4Fにまで来ていたのだ。

ケルビナ:「まさか・・・こんなモンスターがいたなんて・・・
      マズイ、ですわね。」

"ミミックはどうなのか?"という疑問は、ここでは置いておくことにする。

ケルビナ:「・・くっ!」

エンシェントマミーの攻撃をなんとが剣でガードするが、
あまりの力に弾かれて、無防備な状態をさらけ出してしまう。
そのスキを逃すまいと繰り出される、エンシェントマミーの腕・・・

ケルビナ:「きゃぁぁぁぁ!」

エンシェントマミーの腕がケルビナに向かって振り下ろされようとしたその時、
どこからか1本の矢が飛んできてその腕に刺さり、エンシェントマミーが一瞬ひるむ。

 ジュノ :「大丈夫か!?」
ケルビナ:「・・・ジュノお兄様!!」

ジュノが駆け寄る間にも、すでにケルビナに向かって腕を振りかぶるエンシェントマミー。

 ジュノ :「く・・・そぉ!!」

バキィッ!!

間一髪、手にした弓でモンスターの腕を殴り、その軌道を変えることができた。

 ジュノ :「ギリギリ・・・だな。」

そう言うジュノの持っている弓は、上半分がなかった。

ケルビナ:「ジュノお兄様!? ゆ・・・弓が!」
 ジュノ :「弓はいいって。それより、ケルビナは大丈夫か?」
ケルビナ:「は・・・はい! 私は見ての通り、大丈夫ですわ。」

ケルビナとエンシェントマミーの間に割って入り、敵と対峙するジュノ。

−ケルビナ、これを。−
−なんですの?−
−早く!−
−こ、これは・・・−

ジュノが後ろ手に渡した物・・・"蝶の羽"であった。

−ジュノお兄様はどうするんですの!?−
−もう一枚あるから心配すんな。−

 ジュノ :「飛べぇ! ケルビナぁ!!」
ケルビナ:「は、はいっ!」

蝶の羽を使ってその場を離れるケルビナ。

 ジュノ :「・・・俺も行きますかねぇ。 じゃぁな!」

ジュノも蝶の羽で撤退し、事なきを得た。

 ジュノ :「ふぃ〜・・・あぶなかったなぁ・・・
      ホント、だいじょうぶか?」

ケルビナはその場に座り込んで俯き、顔をあげようとしない。

ケルビナ:「私の、せいで・・・」
 ジュノ :「ん?」
ケルビナ:「私のせいで・・・ジュノお兄様の大事な弓が・・・」

見ると、ケルビナの目には涙が滲んでいた。

 ジュノ :「お、おい・・・ケルビナ・・・?」
ケルビナ:「ぅっぐ・・・ごめんな・・・さいっ!
      私の・・・私なんかのせいでっ!!」
 ジュノ :「だから、弓のことはいいって。」
ケルビナ:「でもっ! あんな高価な弓をっ!!・・・えぐっ」
 ジュノ :「・・・いいっつってんだろ!!」
ケルビナ:「ひぃっ!?」

突然大声を上げるジュノ。
ケルビナは驚いて目を丸くしている。

 ジュノ :「ったく、いつまでもウダウダ言ってんじゃねぇよ・・・」
ケルビナ:「す、すみません・・・」
 ジュノ :「どれだけ高くても、弓はまた買いなおせる。」
ケルビナ:「ジュノ・・・お兄様・・・」
 ジュノ :「それよりも、ケルビナが無事でなによりだよ。
      命は金じゃ買えねぇんだぜ?」
ケルビナ:「お兄・・・様ぁ・・・っぐ・・・うわぁぁぁぁぁん!!」
 ジュノ :「けっ、ケルビナ!?」

突如、大声で泣き出し、ジュノに正面からしがみつくケルビナ。

ケルビナ:「ごめんなさい・・・ぐすっ 本当、にっ・・ごめんなさいいぃぃ!!」

ジュノはそっと、ケルビナの頭を撫でてやった。