サルと人間の違い

平成16年1月1日(元旦)



 新年明けましておめでとうございます。 今年は申年ですね、僕はサルの話がとても好きなんです。 だいたいわれわれ人間は200~500万年前にサルから分かれ てヒトになったのは皆さんご存知の事と思います。地球 の生物の中でヒトは分類学上どうなっているかと言うと。

 動物・界―脊索動物・門―脊椎動物・亜門―哺乳・網 ―霊長・目―真猿・亜門―旧世界・下目―ヒト・科―ホ モ・属―サピエンス・種―サピエンス・亜種=現代人

となっています。最後の方の「ホモサピエンス」という 言葉は良く聞くことと思います。人間やサルは霊長類 (正式には霊長目)に属していて生物学上は同属とさ れています。
 「サルと人間が同属」と聞いてびっくりする人は現 代の日本人にはあまり居ないと思いますが、キリスト 教が絶対的な支配権を持っていた中世ヨーロッパでは 全く受け入れられない思想であって「サルと人間が同 属」と唱えた学者が多数罰せられました。
 「サルと人間が同属」であると受け入れられている 現代人の間で「サルは人間の祖先です」という会話を 時々耳します。これは正確に言うならば間違えで「サ ルと人間は祖先を共にしていました」が正式な表現で す。チンパンジーと人間は祖先を共にしていますが、 チンパンジーが人間の祖先であった訳ではないのです。  さてさて、人間とチンパンジーは数百年前に同じ祖 先から分かれたのですが、最近の生化学の研究では遺 伝子DNAの配列はお互い2%以下しか異なっていません。 つまり、DNAの複製にちょっと間違えていれば人間に なるところがチンパンジーになってしまった自分がい ることになります。
 サルと人間の生化学的な差異は別としてサルと人間 の社会行動学上の違いは何でしょうか?サル社会と人 間社会の違いは社会行動の最小単位に大きな差異があ ります。サル社会の最小単位は「群れ」でこれはオス のボスザルを中心としたものです、これ対して人間社 会の最小単位は「家族」です。人間は父親、母親と子 供を基本構成とした家族をつくりますがサルは家族で は行動しません。人間は「家族」を構成するようにな ってサルから分離したという学者もいます。
 では、家族とはなんでしょうか?
 家族の構成維持に大切なものは

 1. 一人の父親、一人の母親と子供が基本的構成となっている
 2. 供与関係が成立している
 3. インセストタブーがある(近親相姦の禁止)
 4. 家族内での殺傷が無い

などですね。でも最近は新聞やニュースの報道によると 「(4)の家族内で殺傷が無い」はどうも怪しいものと なってきました。要するに家族の崩壊が起こりつつある ということですかね。  さてさて、「2.の供与関係が成立している」とは食 べ物にしても、お金にしても家族の皆で分けることにな ります。狩猟で生活をしている人々が猟で得た獲物を皆 で分け合うのも供与関係です、正月に子供がお父さんか らお年玉をもらうのもある意味で供与関係になります。  供与関係とは物やお金を分け与えるだけではなくて、 「喜びも悲しみも」(ちょっと表現が古くさいけれど) 分け与えることになります。楽しいこともは皆で喜び、 苦しいことも皆で分け合ってはじめて家族となりますが、 ここいらへんの意識が薄れて来たのが今の社会で、苦し いことが有ったら喧嘩が始まる家族が多いようで、挙句 のはてには家族内での殺傷事件に発展し家族の崩壊とな るのが現代社会のようです。このまま、家族内での殺傷 事件が増加して行くと人間社会はその最小単位である家 族からどんどん崩壊していき、やがてはサル以下の社会 となってしまうでしょう。

 ドイツの哲学者の言葉に「二人で楽しめば2倍の喜び、 二人で悩めば半分の苦しみ」という言葉があります。人 間が結婚して新しい家族を作ることは、食べ物も、お金 も、喜びも、悲しみも供与しあえる社会の最小単位を作 ることなのでしょうか。
 サル社会と人間社会を比べていると、沢山の人間社会 の有るべき形や、してはいけない事が理解されてきます、 だから僕はサルの話が好きなんです。
 上述の家族の話は、僕が結婚式に呼ばれた時に挨拶で よく使う内容です、結構受けます。結婚式の招待状にピ ンクの紙が入っていて、話すことにお困りの方どうぞ適 当にアレンジをしてお使い下さい。