予防注射は誰のため?

平成15年1月13日



 先週の新聞では今年のインフルエンザは昨年の数倍の勢いで流行している そうです。
 インフルエンザの本格的な流行は毎年1月下旬からで約10週間続き、3月の 始めには流行が終わります。そんな話を聞くと「インフルエンザの予防注射 をしておけば良かった」と思う人がいると思います。
 インフルエンザの予防注射は注射後に免疫ができるまで1週間ほどかかりま すから、今週ぐらいが注射をするラストチャンスとなります。
 よく、「インフルエンザと”かぜ”はどう違うのか」と聞かれますが、こ のホームページでリンクしている「インフルエンザ情報サービス」から抜粋 した説明では次のごとくで詳し説明は上記のホームページをご覧下さい。
 「インフルエンザと”かぜ”とは、原因となるウイルスの種類が異なり、 通常の”かぜ”(普通感冒)はのどや鼻に症状が現れるのに対し、インフル エンザは急に38〜40度の高熱がでるのが特徴です。
 さらに、倦怠感、筋肉痛、関節痛などの全身症状も強く、これらの激しい 症状は通常5日間ほど続きます。また、気管支炎や肺炎を併発しやすく、重症 化すると脳炎や心不全を起こすこともあり、体力のない高齢者や乳幼児など は命にかかわることもあります。」
 インフルエンザの対策で大切なのは予防ですが、予防注射が有効なのはご 存知の事と思います。
 ほとんどの人は「自分がインフルエンザにになりたくないから」と予防接 種を受けに来た理由をいいます。確かに予防接種を受けた本人はインフルエ ンザにかかる可能性はほぼ無くなりますが、予防接種の効果はこれだけなの でしょうか? 

 連休中暇な時間にこの問題を考えてみました。そこで、最初1人がインフ ルエンザにかかってだんだん回りの人にうつしていく過程を、予防接種を全 くしなかった場合と人口の5%が予防接種を受けた場合の2通りで簡単なシミ ュレーション実験をしてみました。
 仮に「E市の人口が10万人で全員がインフルエンザに全く無抵抗で誰もイン フルエンザの予防接種を受けていない」とします、ある日一人がインフルエ ンザにかかります。
 この人は1週間の間に100人の人とインフルエンザ感染可能な距離で接触し てその内3人がインフルエンザを発症するとします。これらの3人がまた1週間 の間に各々100人と接触して100人あたり3人の確率でインフルエンザを発 症するとします。
 この時インフルエンザに新たにかかる人は3x3=9人となりそうですが、実 は第1週目に感染した最初の患者1名と、同時期にインフルエンザにかかった 3人の内自分以外の2人と合計3人が接触する100人の中に含まれている可能性 が3/10万有りますから実際にインフルエンザ第2週にインフルエンザを発症す る患者さんは9人ではなくて8.99973人となります。
 この計算を皆さんご存知の表ソフトのエクセルを使って計算していくと、 インフルエンザ10週後には海老名市の人口の10万の内延べ63871人(ざっと 6万4千人)がインフルエンザにかかったことになります。
 さて、またしても仮に「インフルエンザの流行する前にE市の住民10万人 の内5千人がインフルエンザの予防注射をしていた」と仮定して計算しなお します。
 前と同じ条件でインフルエンザが流行するとするならば最初の1人がイン フルエンザを発症してから10週間後には50209人がインフルエンザにかかっ たことになります。
 ざっと5万人で、インフルエンザの予防接種を全くしなかった6万4千と比 べて1万4千人も少なくなります。

 つまり、10万人あたり5%にあたる5千人が予防注射をすればインフルエ ンザの発症を1万4千人も少なくすることなり、予防注射をしなかった9千人 がインフルエンザにかからずにすむ計算になります。
 この9千人は予防注射をした5千人に感謝しなくてはいけないのですが、 病気にならなかった人にとっては実感は沸かないものです。
 インフルエンザの予防注射をするとき「自分がインフルエンザにかかり たくない」が主な理由でしたが、予防注射をすることで自分がインフルエン ザにかからないばかりかE市全体のインフルエンザの発症率を低下させ、他 人のために貢献していることになります。
 インフルエンザの予防接種を受けた方は、胸を張って「自分は他人のため になっている」と自慢をして良いというのが今回のシュミレーションの結果 でした。