時間が経つのは早いもの

平成14年12月30日



 12月28日(土)に今年最後の診療を終えて、バタバタと日本を出発して 今はアメリカのセントルイスに居ます。
 今年は15年ぶりぐらいにアメリカで年末年始を迎えることになりま した。
 名目は1月3日に有効期限が切れてしまうアメリカの運転免許書の更新 に来たんですが、要するにただ単に日本を離れてアメリカに旅行がした かったというだけなんです。
 シカゴ行きの飛行機には何処かで見た変な外人が乗っていましたがよ く見るとテレビに出ているデーブスペクターでした。エコノミークラス できましたが空席が沢山あって僕も女房も窓際の座席を3つづつ占領して 、別居しながらの12時間のフライトでした。僕は久しぶりに腰を落ち着 けて本を読むいい機会だったので思わずほぼ12時間連続で活字中毒にな りそうになりながら日本から用意してきた本を読み、シカゴに着いた時 は時差ぼけでメロメロになっていた次第です。

 さてさて、「時間が経つのは本当に早いものです」、最後に雑記帳に 書き込んだのが8月であっという間に4ヶ月以上が経って新しい年を迎え る事になってしまいました。
 外来で診療中に患者さんから「先生は最近は雑記帳に書き込んでいな いですよね?」と言われます。そんな時はいつも「今は時間が無くてね」 とお決まりの言い訳をしながらも、何か書こうと思っているうち4ヶ月が 経ちました。

 もう一度繰り返して、「時間が経つのは本当に早いもの」ですね。

 ところで、「早く来い来いお正月」と歌っていた子供のころは正月は なかなか来なくて待ちどうしかったように記憶していますが。50歳近 くなった最近は「早く来なくてもいいのにすぐ来るお正月」と感じるの は僕だけでしょうか。同じ時間のはずなのに子供の頃の一年と、年をと った時の一年は長さの間隔がまるで違うようです。
 昨年まで25年ほど研究者のはしくれとして不整脈の仕事をしてきました が、僕の研究課題は心臓の電気的興奮がいかにして伝播するかを解析す るものでした。
 その興奮伝播過程はアイソクロノス地図として表現されますが、日本 語に訳すと等時地図となります。アイソクロノスのクロノスは語源はギ リシャ語で「時間」と言う意味です。このクロノスは物理学的に「絶対 的時間」ということで誰が測っても一時間は一時間となります。ところ が、ギリシャ語にはもう一つ時間をあらわす言葉のカイノスがあるそう で、カイノスはクロノスとは異なり個人個人が持ってる「質的時間」で 同じ一時間でも人によっての長さが異なってきます。
 「質的時間」のカイノスは人間が年をとるに従ってどんどん短くなっ てくるのが特徴で、子供の頃のカイノス時間一年と50歳のカイノス時 間一年を比べると50歳のカイノス時間一年ははるかに短い物となりま す。
 その結果で「早く来なくてもいいのにすぐ来るお正月」ということに なるのでしょうか。そういえば、昔シカゴまでの飛行時間約12時間は 本当に長く感じられましたが、今はアットいう間に着いてしまうような 感じがしますこれも僕の体内時計カイノスが年と共に早くなってきたた めのようです。そんな事を考えながら、ぐたぐたと書いていたらもう朝 にになりましたいやいや「時間が経つのは本当に早いもの」ですね。

 皆さん「新年明けましておめでとうございます」、おそらく一日のフラ イイングですが、今年50歳の僕のカイノス時間でちょっと早めに新年の ご挨拶といたします。

 平成14年12月30日 午前6時43分 セントルイスにて