はじめに このページは、主に中学生・高校生が理解しやすいように、 出来るだけやさしい言葉を使って、 マンガ「天は赤い河のほとり」を例に パロディと著作権の法律関係を説明したものです。 |
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解説 「パロディと著作権の法律関係」 中・高校生向け 目 次 クリックすると該当部分にジャンプします。 |
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1 パロディをウェブサイトに掲載すると・・・ | 6 逮捕される危険性 |
2 著作権法(著作者人格権)の目的 | 7 ポケモンのパロディで逮捕 |
3 現状 | 8 民事裁判の危険性 |
4 サイト開設や投稿の心構え | 9 まとめ |
5 同人誌活動との違い | 10 Q&A |
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1 パロディをウェブサイトに掲載すると・・・ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
マンガ「天は赤い河のほとり」のファンであるあなたが、初めてパロディサイトを巡ったときのことを覚えていますか? 「このサイトは個人作成のものであり、原作者・出版社とは一切関係がありません」などという記載を見たことがあるでしょう。 しかし、「パロディは著作権法に違反したものです」と書かれたものは一度も見たことがないのではありませんか? しかし、これは事実です。残念ながら日本の法律では、原作者の許可を貰っていない以上は、パロディは著作権法に違反しているのです。 パロディをウェブサイトに掲載すると、告訴された場合には、5年以下の懲役(最も長い場合で5年間刑務所に入って囚人として働くこと)または500万円以下の罰金を支払わなければならない可能性があります。 |
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2 著作権法(著作者人格権)の目的 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
このように法律で定められた理由ですが、それは原作者の創作意欲を守ることによって、文化の発展を促すためです(他にも理由はありますが省きます)。 もし、あなたが一生懸命に書いたお話を誰かが読んで、勝手にそれをふみにじるような内容に書き換えて友達に回覧したら、きっとイヤな気がするでしょう? 例えば、あなたが 「黒髪の少女が、白馬に乗った王子と出会って、苦難を乗り越えて幸せな結婚をしました」 というお話を書いたのに、その話が 「黒髪の少女が、白馬に乗った王子と出会って、娼婦に売り飛ばされました」 と書き換えられたら、どんな気持ちがしますか? それが真剣に書いたものであればあるほど、ショックは大きいでしょう。 今度何か書いても、またふみにじられたりしたらイヤだなという気持ちから、もう書くのはやめてしまおうと思うかも知れません。 このように「他人の作品を勝手に書き換えて公表しても処罰されない」世の中であれば、創作する人がいなくなってしまう危険があるのです。 つまり、本であれ、音楽であれ、絵画であれ、その作品を創作した人を保護しなければ(保護には精神的な保護と財産的な保護があります)、文化は衰退してしまうから、それを避けるために定められたのが著作権法(著作者人格権の規定)なのです。 |
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3 現状 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ところが、あなたも知っているように、パロディのサイトというものは、インターネット上にたくさんあります。「天は赤い河のほとり」だけでも、大変な数です。開設して間がないものから、老舗と言われるほど古いものまで、実に様々です。 パロディを読んでいるだけではもの足りなくなり、あなたも何か書いて投稿したくなるかも知れません。あるいは、書くことが好きな人なら、自分でサイトを作ってしまうかも知れません。 個人的には、そういう気持ちは尊重したいと私自身は考えています。 パロディであっても優れた作品には新たに感動させられたり、いっそう原作を味わい深くさせてくれたりするからです。パロディが文化を発展させる側面もありますから、これをひとまとめに否定するのは誤りだと思います。 |
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4 サイト開設や投稿の心構え | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
だから、もし、あなたがパロディを投稿したり、サイトを開設したいと思った場合には、全面的に賛成したいと思います。 ただし、その場合には、どうか原作者に対する配慮を、絶対に忘れないで頂きたいのです。 原作者の気持ちを傷つけたり、「これからも頑張って描いて行こう」という気持ちを失わせてしまうような作品は、例え書いたとしても自分だけで留めるか、あるいは家族またはごく少数(2〜3人)の友人間でやりとりする範囲にして、決してウェブサイトで公表しないでください(厳密には、この場合にも著作権法違反になりますが、現実には原作者が覚知するのが難しい、ということです)。 |
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5 同人誌活動との違い | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
また、インターネットは全世界の不特定多数につながる窓口ですから,昔からめんめんと続いている局地的な同人誌活動とは全く異なることを忘れてはいけません。コミケの会場に集まる人数とは比較できないほど、膨大な数の人間が目にする機会を提供することになるのです。 もし、あなたがそれほど悪気なく、ちょっとした悪い冗談のつもりで、原作者の気持ちを傷つけるような作品をウェブサイトに掲載したとします。その後「やっぱり良くないからやめよう」と思って削除したとしても、それはすでに多数の閲覧者が自分のパソコンに保存しているかもしれません。 そして、そのうちの誰かが、また「ちょっとした悪ふざけ」のつもりで、自分のサイトで、その作品を公表してしまうかも知れないのです。そんな人が多くなれば、原作者の被害はいつまでも回復されないことになるでしょう。したがって、単なる同人誌活動と比べて被害は甚大であり、その分、責任も大きいのです。 |
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6 逮捕される危険性 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
また、あなた自身にも大きな不利益があります。 もし、あなたが「ちょっとした悪い冗談のつもり」で書いた作品を誰かが読んで、ショックを覚え、強い憤りを感じたとします。その人は出版社に電話するかも知れません。 そして、出版社や原作者が行動を起こしたとしたら、もう、あなたは逃げることはできません。最悪の場合、5年間刑務所に入ったり、500万円以下の罰金を支払わなければならないのです(少年事件としての裁判を受けた場合はまた少し違います)。 IPアドレスだけでは、住所氏名はわからないだろうと、あなたは高をくくっているかもしれません。ですが、刑事事件(罪を犯した人を国家が裁判所に対し処罰を求める事件)になれば令状が出るのが普通ですから、あなたの身元などは簡単に知られてしまうのです。 ある朝、突然、警察官が家にやってきて逮捕される(=両手に手錠を掛けられるということ)かも知れないのです。実際、インターネット犯罪では、未成年者が逮捕されることが多いようです。 |
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7 ポケモンのパロディで逮捕 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1999年1月に「ポケモン同人誌事件」というのが起こったことは、ご存知ですか? これはポケモンのパロディ同人誌を300部発行した女性が、著作権法違反(複製権の侵害)で逮捕されたのです。新聞紙上では実名報道されました。かなりワイセツな内容のパロディ化で、これを目にしたある人物が告発し、著作権者サイドが行動を起こしたのです。 思うに、逮捕された女性は、それほど悪気はなかったと思います。同人誌を発行するということは、通常、ポケモンのファンだからです。そして、ファン活動が昂じ、つい脱線してしまったという気がするのです。 そもそも、ポケモンが好きでなければ、多大な労力を費やして同人誌を作ったりはしないでしょう。 この事件は、わずか300部の同人誌で起きた事件です。それに比較して、全世界につながる窓口であるインターネット上の掲載というのが、どれほどの責任を伴うのか、私たちはよく自覚しなければならないのです。 |
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8 民事裁判の危険性 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
また、逮捕されなくても、民事事件(私人と私人との紛争)の被告として訴えられる可能性は多いにあります。 パロディは著作権法に違反していますから、通常、あなたは不法行為責任を負い(違法なことをやった責任)、出版社や原作者に損害を賠償しなければなりません。損害を賠償するというのは、お金を支払うということです。 中学生・高校生であれば、お金がないのが普通ですから、結局、親が支払いをすることになります。親にお金がなければ、住んでいる家や土地を売らなければならない場合もあります。 |
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9 まとめ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ここまで読んできたあなたは、立派な中・高校生です。 少し、怖くなったかも知れませんが、そういう気持ちを抱くことは大切なことです。 もし、パロディが違法であることを全く知らなければ、あなたは「自分の書きたいように書いて何が悪い!?」と開き直るかも知れません。原作者・出版社から「ファイル削除・サイト閉鎖」を要求するメールが来たとしても、それに従う気になれないかも知れません。 しかし、従わなくてもそれで済む訳ではないのです。世の中は厳しいし、法律の適用は常にシビアです。 逆に、自分が違法行為をしていることをよく知っているのであれば、そういう場合、すみやかに誠実な対処をする気になるでしょう。そうすれば、大ごとにならずに問題が解決することが多いのです。 |
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10 Q&A | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
以下は、パロディの違法性について、あなたが抱くであろう素朴な質問を、Q&A形式でまとめてみました。
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