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 ボードウォーゲーム

 最近ではウォーゲームと言えば、 パソコンやゲーム機のソフトのことであると言っても良いだろう。 しかしパソコンの能力がまだ低かった頃、 即ちスピードも遅く、メモリー容量も小さく、 グラフィックもカラー表示が出来なかった頃には、 ボードウォーゲーム(以下BWGと略す)が主流であったと言って良いだろう。
 ウォーゲームの元祖はと言えば、 実際に軍隊で行われていた図上演習と言うことになる。 一般に市販されている製品は図上演習の簡略版、 あるいはそれを模倣して作成したオリジナル版であるが、 基本的な考え方は図上演習と同様であると思って差し支えない。
 
 私が最初に出会った製品はアバロンヒル社の「TACTICS・U」であるが、 恐らく日本で最初に販売された製品ではないだろうか。 現在のコンピュータ利用のウォーゲーム(以下CWGと略す)は勿論、 BWGの場合でも殆どの製品がHEX方式、 即ち六角形の桝目を使った盤面を採用しているが、 本製品では矩形の盤面を採用している。 その理由は本製品が入門用として作られたもので、 初心者でも容易に馴染めるよう考慮されたためであろう。
 このゲームは名前の通り戦術レベルのもので、盤面の大きさは横53X縦42、 その周囲1桝は海になっており、海上輸送に影響する場合もあった。 現在ゲーム盤だけは手許にあるのだが、駒と説明書は紛失してしまったようである。 従って詳細なルールについては不明なのだが、 基本的なものに関しては一通り含まれていたと記憶している。
 駒は機甲と歩兵(山岳兵を含む)だけの簡素なものであり、 架空のゲームなので兵力は両軍均等である。 しかし簡素な割りには色々な地形があり、砂浜には上陸も可能であった。 ただし途中の海の桝目に敵のZOCが及んでいる場合には、 部隊を輸送することが出来ないということか、 上陸は不可能だったと記憶している。
 
 次に購入したのはやはりアバロンヒル社の「BLITZKRIEG」で、 「TACTICS・U」同様架空のゲームであるが、 HEX盤面の採用に加えて兵種も砲兵や空挺部隊が加わり、 かなり本格化したものとなっている。
 ゲームの進行は両軍の移動・攻撃の繰り返しであるが、 これはBWGであれCWGであれ、最も基本的な流れであると言える。 地形による移動量の変化、防御力の変化も考慮されており、 戦闘の結果は両軍の戦力比によって定められた表に従って、 攻撃側が振ったさいころの目によって決定される。
 CWGとの大きな違いとしては、 CWGのように個々の駒が移動・攻撃を行うのではなく、 移動フェイズでは全ての駒が同時に移動を行い、 移動が終了した後に攻撃フェイズとなることが挙げられる。 従ってCWGのように邪魔な敵駒を排除し、 開いた空間を一挙に進撃するようなことは出来ない。 ただし敵駒が退却した場合にはその桝に駒を進めることが出来るので、 別の敵駒の退路を絶つことは可能である。 移動の方法、攻撃目標の選定、攻撃の順序はCWG以上に慎重に行う必要がある。
 「BLITZKRIEG」では同じ桝目に複数の駒を置くこと(スタック)も可能となり、 スタックはCWGでも一部の製品においては可能となっているが、 「BLITZKRIEG」では更に複数の桝目にある駒での同時攻撃も可能となっている。 スタックされた駒は攻撃時にはそれぞれ別の目標を攻撃可能となっているが、 防御の場合には個別に攻撃されることは無い。
 戦闘の結果は予め用意されている表を用いて判定するようになっている。 先ずは両軍の戦力比を比較し、整数比になるよう調整するのだが、 端数は防御側に有利になるよう処理されるので、 複数の駒で攻撃する場合には組合せに注意する必要がある。 戦闘結果の種類には攻撃側又は防御側の駒の除去・相互除去・駒の後退があり、 CWGのように徐々に部隊編成が減少して行くことは無い。 ただしオプションルールでは補助の駒を用い、 戦力が(1/2)、(1/4)と徐々に減少して行くようになっている。
 オプションルールでは航空機やレンジャーも登場し、 艦船の駒こそ無いものの、海上輸送も考慮されている。 気象状況をサイコロによって決定するルールもあるし、 補給の欠乏により部隊の能力に制限を設けるルールも存在する。 しかし私が最も興味を持ったのは「戦略移動」で、 定められた条件を満たせば迅速に増援部隊を前線に送ることが出来る。 CWGでも採用したら面白いと思うのだが、 まだそのようなソフトには出会っていない。
 説明書(Copyright 1965)は英文の物だけだが、 その中のイラストに「高雄」級巡洋艦が描かれているのは興味深い。 他にもUボートやB24、スピットファイア等も描かれており、 第二次大戦当時をテーマとしていることが窺える。
 1人プレイや同じ顔ぶれでのプレイに飽きた場合には、 郵便将棋ならぬ郵便BWGが出来るようになっているのも、 時代背景を映していて面白い。
 
 商品として売れる見込みが付けば類似品を作るのは日本人の得意とする所で、 早速様々なBWGが製作・販売されるようになった。 しかし「BLITZKRIEG」のように架空のものは殆どなかったと記憶しているが、 これは実在した戦闘をテーマとした方が地図や部隊編成等の設定が容易であり、 製品として作り易かったためかと思われる。
 こう言ったテーマの定番とも言えるロンメルの戦車戦やバルジ大作戦、 そして独ソ戦車戦等は早い時期に登場している。 日本関係では日露戦争を扱った物があったが、 出来栄えは今一と言う印象であった。
 この種のゲームは何度もプレイを繰り返し、 少しずつ修正しながらゲームバランスを調整していく必要があるのだが、 多くの製品が検討不足であると言う印象が強かった。 特に現代戦を扱った架空の作品ではその傾向が強く、 数回プレイしただけでうんざりするような製品もあった。 何しろ実際にプレイしてみなければゲーム内容は分からないので、 買って損をしたと思う作品も結構多かった。
 ちょっと毛色の変ったものでは「宇宙戦艦ヤマト」があったが、 戦場が宇宙空間なので地形の変化と言うものが全く無く、 勝敗の行方は駒の強弱がそのまま反映されてしまうようで、 ゲーム本来の面白みと言うものは無かった。 このことは海戦ゲームにも言えることであり、 BWGの場合には戦術レベルの陸戦主体のゲームが最適であると思われる。
 
 CWGはBWGを手本として作られたことと思うが、 その性格はかなり異なっていると言って良いだろう。 BWGの場合には軍隊の図上演習を簡略化したものと考えられるので、 競技時間も比較的短く、戦術を変えての再検討が容易である。 これは図上演習の目的が単なる勝ち負けではなく、 最適の戦術を求めるために行われることに起因していると思われる。 サイコロの目によって勝敗が左右されることもあるが、 何度も繰り返していれば優れた作戦なら勝率は高くなり、 不適当な作戦であれば負けが混んでくるものである。
 CWGでは競技時間が長時間にわたるものが多く、 ただひたすらにコンピュータに勝つことだけが目的となってしまう場合が多い。 更に言えば現在の市販ソフトの思考力は貧弱であり、 将棋やチェス等の思考型ゲームソフトに比べると雲泥の差がある。 ゲームバランスは戦闘結果をコンピュータ側に有利とすることで保っているようだが、 これでは図上演習の代用とすることは出来ない。 実際の戦争をテーマにしたものであっても、 それをシミュレートしているとは到底言いがたいのが実情であろう。 尤も戦闘以外の要素が多く盛り込まれているゲームは、 ウォーゲームとは別のジャンルに分類した方が適当であるのかもしれないが。
 「BLITZKRIEG」は架空のゲームなので、厚紙を利用して自分で増援用の駒を作り、 また戦術を変えてプレイしたこともあった。 これもBWGの融通の利く点であり、CWGではそうも行かない。 ただし新しい戦場地図の作成が容易な点についは、 CWGの大きな長所であると言うことが出来よう。
 CWGでも途中経過を記録できるようにしておき、 容易に再現出来るようにしておいたらどうだろうか。 あるいはBWGを忠実に移植し、 パソコン画面でプレイできるようにしても面白いと思うのだが、 これも需要が有るかどうかが問題となるのかもしれない。 恐らくこの先BWGが広まって行くとは考えられないので、 BWGをプレイしたことのあるの経験者にとっては、 少しばかり魅力ある話だと思うのだが・・・

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