昔の農具 左の写真はどちらも養蚕で使用した道具ですが、 何をする道具なのか分かる人は少ないと思います。 養蚕を始めとして、他の農作業もやらなくなってから久しくなりますが、 昔はお世話になった道具も物置の隅に眠ったままとなり、 使用出来ないほどに痛んでしまいました。 何れも二度と使うことの無いものですが、 不要になったからとポイ捨てしてしまっては余りにも哀れであり、 ある程度でも形の残っているものを写真で残しておこうと思い立ちました。 上の道具は桑の枝から葉を摘み取るもので、 両端で枝を挟むようにして下から上へ滑らせて行きます。 この際枝に小枝が出ていると上手く滑らせることが出来ませんが、 桑は株から直接伸びてくる枝には小枝は着きません。 勿論伸び放題にすれば小枝が張ってくるので、 桑畑の十分な管理が必要となります。 下の道具は太い針金を曲げたようなもので、 両端が90度の角度を持つように曲げてあり、 長さは22p程のものです。 主な用途は次に紹介する籠を吊るすことで、 何個かつないで高さを調整して使います。 上に乗っているのは竹製の籠で、 この上に丈夫な紙を敷いて蚕を飼育します。 折畳み式の台も大分痛んでいますが、 この状態で色々な作業を行います。 主な作業は蚕に桑の葉を与えることですが、 蚕の成長は非常に早いので直ぐに手狭になってしまいます。 大きくなった蚕は適度な密度になるように別の籠に繰返し分散させるのですが、 その場合にはこの台を2組使うと効率よく作業を進めることが出来ます。 作業を終えた籠は蚕棚に並べられ、 次の給餌の時間になると抜き出して同じ作業を行います。 蚕棚は床の直上から天井裏まで並んでいましたが、 蚕棚が足りなくなると上の写真の鉄鉤を利用し、 天井から吊り下げて籠を並べていました。 ただしこの場合には任意の籠を抜き出すことが出来ないので、 蚕棚に比べると作業性は悪くなります。 これは『ふりまんが』と言う農具で、 鋤で起こした大きな土の塊を小さく砕くのに使います。 ふりまんがは左右に立った人がロープの着いた取っ手を持ち、 ブランコのように大きく振って勢いをつけ、 下部の鉄の爪を土の塊にぶつけて砕いていきます。 写真でも左端の角材が円弧を描いているのが分かると思いますが、 これによって振り子運動をした鉄の爪が均等に塊に当たるよう工夫されています。 ふりまんがは両人がのけぞるようにして引っ張り合うのがコツで、 慣れてくると余計な力を必要としなくなるので、 見掛けほど疲れないものです。 欠点は2人いなければ作業できないことで、 もっと小型で木製の取っ手の着いた一人用ふりまんがもありましたが、 こちらは疲れるばかりで能率の悪いものでした。 これは正式な名称は知りませんが、 この辺りでは「田の草取り」と呼んでいたと思います。 用途は名前の通り水田に生えた雑草を除去するもので、 稲株の間の水中を転がして羽根車で柔らかい泥を掻き回し、 小さな雑草を浮き上がらせて枯らします。 羽根車を横に並べて2列同時に作業出来るようにしたものもありましたが、 水中のぬかるみの中を押していくのはかなりの重労働でした。 本来は同じ所を数回転がしながら進んでいくのですが、 疲れてくるとただ真っ直ぐ転がしていくだけになってしまいます。 勿論その場合には取り損ねの雑草が残ってしまうことになりますが・・・ 元祖無農薬栽培は疲れるものです。