MZ‐1500の次に購入したのがMZ−2500だ。
8ビット機とは言え「SuperMZ」の愛称がぴったりの、強力なマシンだ。
MZ−1500のQDは最新鋭の3吋半FDに昇格し、
高速CPUと洗練された強力なBASICを標準装備していた。
外観上の特徴としては、先ず最初に前面のカセット(ボイスレコーダ)が目に付くだろう。
FDとの併用は気になるかと思うが、このカセットはプログラム用ではない。
あくまでも音楽用であり、BASIC上でコントロール出来るようになっている。
アイデア次第で使い道は拡大するのであるが、他にこのようなマシンは存在しなかった。
したがってソフトメーカーがこの特長を生かしたソフトを開発したとしても、
他のマシンへの移植は不可能であり、MZ−2500だけのソフトに終わってしまうことになる。
アプリケーション・ソフトの開発は、販売台数が多く、他機種への移植を容易にするためにも、
極ありふれた中級機をベースとせざるを得ないのである。
わしのマシンはFDDを2基搭載した製品だが、図のように1基搭載のモデルもあった。
2ドライブなければ動かないと言うソフトは少ないので、3万円の価格差は馬鹿にならない。
FDは640KBの2DDタイプで、それまでの5吋FDに比べて扱いやすかった。
メインRAM(128+128KB)グラフィックRAM(64+64KB)の容量は、
8ビット機としては図抜けた値であった。更にクリーンコンピュータの特性を生かして
グラフィックRAMをメインRAM化し、最大で384KBの容量を確保できたのだ。
現在のように最初からMB・GB単位の容量のパソコンを使っている者には分かるまいが、
当時としては16ビット機に匹敵する容量だったのである。
FM音源8オクターブ3重和音の搭載も、同時期発売の機種の中ではトップクラスであった。
8ビット機は16ビット機に比べてゲーム用と言うイメージが強かったためか、
音楽機能に関しては8ビット機の方が強力な機種が多かった。
ソフト面でもハードに劣らず充実したものがあった。当時はプログラム自作派も多く、
BASIC(機種によって内容は若干異なる)が標準で付いてくるのが普通であった。
本機では従来からのMZユーザー用S25と、マイクロソフト系ユーザー用としてM25、
2種のBASICが用意されていた。クリーンコンピュータなので、何れもFDで供給されている。
S25・M25共に処理速度・グラフィック能力は他の8ビット機を凌駕していた。
漢字用のROMも256KBと大容量で、JIS第2水準の漢字までサポートしていた。
更に9万語登録の辞書ボード(256KB)を装備すれば、ワープロ並みに文節変換も可能であり、
BASICでもこの機能がカバーされていた。
なおバージョンアップしたV2では、メインRAM、G・RAMと共に標準装備されている。
本機を語る上で、テレホンソフトの存在を無視することは出来ない。
テレホンソフトは標準装備されており、MZの特色を生かした数種のソフトが収められていた。
図に示すのはメニュー画面で、現在のアイコンのように、機能がグラフィック表示されていた。
機能の一つはデータベースで、アドレス帳を作成してモデムホンを使えば、
オートダイヤルが可能であった。もちろんBBS等へのオートログインも可能であった。
内臓カセットを使っての留守番電話機能もあったのだが、果たしてどれくらいの人が利用しただろうか。
まだ留守番電話と言うものが、社会一般には知られていない時代だったのだから。
テレホンソフトにはパソコン通信の機能もあり、モデムか音響カプラがあれば即通信可能であった。
通信ソフトが標準装備された機種は他には無く、MZは最初から通信を考慮したパソコンだったのである。
わしだってこのMZがあったからこそ、まだ未知の物であったパソコン通信に手を染めたのだ。
中には自作ソフトで通信しているつわものもいたが、わしもそこまでは詳しくなかったものでな。
テレホンソフトがあるとは言え、実際に接続するには今よりも大変な作業があった。
パラメータが統一されていないので、アクセス先に合わせて設定する必要があるのだ。
通信速度も始めた頃が300bps、しばらくして1200bpsにまで上がったが、
今にして思えばまるで亀である。
機種によっては漢字(全角文字)が使えず、ANKだけで通信しているユーザーもいた。
ADSLから光ケーブルの現在から見れば、亀どころかカタツムリであったかもしれない。
それでも楽しいものだったが、ノード局が少ないので電話代が悩みの種だった。
当時のパソコンは横置きが常識であったが、MZは縦横どちらも可能であった。
何でもない機能のようだが、置き場所を選ばないので意外と便利な機能であった。
現在では縦置きが常識とも言えるが、MZはその草分けとも言える存在だったのだ。
パソコンはソフトの売れ行きと密接な関係にあるが、MZは後発機故にその前途は厳しかったようだ。
数々の優れた性能を持ったMZ−2500だが、その性能を生かす機会にはめぐまれなかったようだ。
しかしわしにとっては思い出深いパソコンであり、当然今でも作動する。