【はじめに & 免責条項】
 
 およそ25年前ですが、仕事でウェールズを訪れた時に何気なく寄った古物市で手に入れたレシピの小冊子です。今回これを翻訳してご紹介してみたいと思い立ちました。
 孤児たちを支援するための資金集めに Glan Aber という北ウェールズの町で開かれたバザーでの販売用に、主婦たちが持ち寄ったレシピを中心に編集したもののようです。発行は1907年8月ですから、およそ100年前になります。

 不覚にも翻訳を始めてみてから気づいたのですが、レシピというのは短いのに問題が満載されています。同じ名称の食材でも国によって違うものを指していることもあります。さらに相手は100年前の本ですから、食材の他にもキッチン環境、調理用具、料理人としての常識などが著しく異なるため、検索につぐ検索が必要です。それでも誤解して訳した部分も多いと思います。究極の調査は実際に作って食べてみることなんですけどね。そんな危険なことはお勧めいたしません(^^; はい、免責条項でした。


 計量単位換算表へのリンク

 英国式計量単位例:ポンド=454g、クォート=1.14g、パイント=1/2クォート=568cc、ジル=142cc、
          オンス(液量)=28.4cc、ティーカップ=138cc、大さじ=18.5cc、 小さじ=4.62cc


スープ
《家庭風スープ》−ハーマン・ブラウンさん、コヴェントリー在

 美味しいものなら何でもいいですが1パイント半のスープストックを用意します。そこへ2時間ボイルした、ティーカップ一杯のオートミールを裏ごしして入れ、2オンスのバターを加えます。供する前に、スープ壺に卵を一個(もしよければ多くても結構です)を割りいれ、塩・コショウし、冷水を少し加えてからよくかき混ぜておき、熱くしたスープをゆっくりとよく混ぜながら注いでいきます。頂く直前に、もしお好きならパセリの粗みじんかスイバのみじん切りを浮かべても結構です。
 このスープはオートミールの代わりにサゴや丸麦でも作れます。


《くりのスープ》−メリディスさん、ペンサーン在

 栗の実1ポンド、バター1オンス、玉ねぎ1個、ホワイトスープストック1クォート(あるいはレイドル1杯の一番だし)あとで牛乳かクリーム、砂糖一つまみで味を整えます。
 栗の実を割り、煮立った湯で15分から20分ボイルします。湯から取り出し裏ごしにかけます。鍋にバターを溶かし、スライスした玉ねぎ、栗、スープストックを入れます。沸騰するまで煮て、煮立ったところでアクを取ります。30分ほど煮たら裏ごしをして、砂糖、塩、胡椒で味を整えます。もう一度これを沸騰するまで熱くしてクリームをかき回しながら加えます。そのまま火の上でスープをかき混ぜ、スプーンにからみつくようになれば出来上がりです。


《マリガトーニ・スープ》−ダンカン・ミラー夫人

 1オンスのドリッピングを溶かした中に玉ねぎ、リンゴを各1個、香草一束、セロリ少々をみじん切りにして入れ、茶色になるまでよく炒める。カレーパウダー、小麦粉各大さじ1を加えてかき混ぜ、10分間炒めてから1クォートのスープストックを加える。野菜が柔らかくなるまで煮込んだら、裏ごしにかけ、炊いたライスと一緒に供する。


《パレスチナ・スープ》−ダンカン・ミラー夫人

 ホワイト・スープストックを2クォート準備します。あるいは、鶏、新鮮なポーク、うさぎやマトンをゆでた煮汁でもおそらく十分だと思います。この中に皮をむいたエルサレム・アーティチョーク(訳注:菊芋です。アーティチョークではありません。)2ポンド、大き目の玉ねぎ4個、小さいセロリの軸、角砂糖2個を入れて煮込みます。野菜が完全にやわらかくなったら裏ごしして、さらにスープを煮立たせ、半パイントのミルクかクリームと良質のバター1オンスをかき回しながら注ぎいれます。もしスープに十分とろみがついていないようなら、上新粉をミルクに溶いてスープに混ぜます。薄切りにして、きつね色に揚げたパンを添えてください。


《トマト・スープ》−F・ジョーンズさん

 沸騰した湯で2握り程のヴァーミセリを茹で、塩と胡椒を加える。別の鍋で缶詰のトマト1缶を少量のバター、パセリ1枝、玉ねぎ1個とともに炒め、これを全部ストレーナーで濾し、小麦粉でとろみをつけてからヴァーミセリに混ぜる。


《トマト・スープ》−M.E.W.さん

 缶詰のトマト一缶を内側が陶器のライナーのついた深鍋で加熱します。煮立ってきたら重曹を一つまみ入れてください。(こうすることでトマトの酸味を中和し、牛乳の凝固を防ぎます。)一度吹き上がり、静まったところで、すかさず濃化剤(大さじ1杯半の小麦粉)を混ぜたおよそ1パイントの牛乳を加えます。こうしてからバターを多目に入れ、塩・胡椒で味を整えます。出来上がりにはこのスープは濃厚なクリームと同じようになっているはずです。左下の写真です。これは簡単すぎですね(^^;



《仔牛肉のブロス》

 半ポンドの大麦(精白したスープ用の丸麦)を3パイントの良質の仔牛肉のスープストックで2時間じっくり煮ます。やわらかく煮えてとけたようになったら、1/3を別の鍋にとり冷めないようにしておき、残りを目の細かいコシ器で裏ごしにかける。ピュレー状にしたものを先ほどの大麦の鍋に戻し、クリーム半パイントを加え、味を整えてから暖めなおして供します。大麦を煮る前に、スープ・ストックにあらかじめメース、玉ねぎ、クローブなどを入れておくとより香りがよくなります。


《野菜スープ》−モーガン夫人

 大ぶりのニンジン、かぶ、玉ねぎを用意します。
 野菜を細かく切り、バターで炒めます。半パイントのえんどう豆を3パイントの水で煮て、馬毛の裏ごし器にかけます。これを全部いっしょにして、あくをよく取りながら30分煮込みます。塩、こしょう、少量のウォールナッツ・ケチャップ(Recipe Cottage: http://www.recipecottage.com/ を参照してみてください)、砂糖少々で味を整えます。大さじ2杯のクリームを最後に加えます。
 
 
《レンズ豆のホワイト・スープ》−コーツ夫人、ウイックロー郡、タンカースリー荘

 よく洗ったレンズ豆半ポンド、スライスした玉ねぎ2個分、セロリ一切れを3パイントの水の入った鍋に入れ、沸騰までもっていってからじっくり1時間煮込み、裏ごしにかけます。
 別の鍋にバター1オンスを溶かした中に小麦粉1オンスを振り入れ、半パイントのミルクを少しづつそそぎこみ、とろみがつくまでよくかき混ぜます。ここへ先ほどの裏ごししてどろどろになったレンズ豆を加え、塩・胡椒で味を整えてから更に煮込み、熱いうちに供します。