『SDC十周年に寄せて』  民宿のおにいさん 名誉OB会員 民宿三佳  白井賢一



 創立十周年おめでとうございます。


 十年の月日の流れるのも早いものですね。

最初のSDCとの出会いは、阿部、田沼、中村、三人の三佳宿泊に始まります。

忘れもしない、あれは正月の十五日でした。

雨が大分降っている日でした。

近所の白井君が元町から連れて来てくれたのです。

その当時、元町の魚屋へつとめていた私が、家へ帰るとおばあさんが

「今日は日大の学生さんが泊ってくれたよ」といってうれしそうにいそいそと働いていました。

今でこそこうして大勢でお客様が来てくれるようになりましたが、その頃は家も商売を始めてまだ日も浅かったので、

三人のお客様が4、5日も居てくれるなんていうと、家族中で喜んだものでした。

四人でこたつを囲みながら、その時ちょうど「海の世界」という番組をやっていて、彼らに海のすばらしさを色々と教えてもらいました。

今、三佳の玄関にかけてある、あの写真、いやパネルというのかな、あれがその時の三人が海で写したものなんですよ。

その年からですね、日大の仲間が毎年夏になると「お兄さん又今年もやってきたよ」と言って日に焼けた笑顔を見せてくれるようになったのは・・・・・。


 合宿の時の1日1日が過ぎていく時間の早い事。

私なんかいっぺんに若返ってしまいますよ。

なにしろ30人もの若者達の仲へ入って、自分も部員の1人になったような気持ちで1週間を過ごすのですから。

家族の者たちもそんな気持ちらしいですよ。

おばあさん、おじいさんは遠くへ行っていた息子や、娘が帰ってきたような気持ちらしいですよ。

いつだったか、おばあさんが夜中の3時頃むっくり起き上がり外へ出ていくのです。

どうした事かと思い、そっと後をついていくと海の方へ歩いていきます。

片手には、しっかりとお数珠が握られていました。

海が一望に見わたせる高台でしばらく拝んでいました。

声をかけて問うて見ると「日大の皆さんが合宿中に海で事故など起こらないように海にようくお願いしておいたよ」と言いました。

あの時のおふくろの真剣な顔は今でも忘れられません。


又夜になって、あのせまい台所での幹部会議。

毎年、上級生にその年の新入生の名前を教えてもらうのが最大の楽しみです。

また、十年たった今でも昔の部員さん達の名前を覚えているというのが私の自慢なのです。


それとね、コンパの時のガーデンパーティは日大の発想なのですよ。

あれから毎年、夏の夕食はたいていのお客様が外で食べたがり、おかげ様で大盛況です。

中村恭二君の『セッチャン音頭』、石井さんの『リンダ踊り』、金子君の『花火成城学園万歳』、

吉川君の『電線音頭』など数えきれない程数々の思い出がありますね。


 長男良和に「のんのちょうだい。とってちょうだい。」とせがまれてこまってしまっただれかさんもいましたね。

長男に次男とわんぱく坊主が二人もいるのにうるさがりもしないで、入れ代わり立ち代り子守をしてくれる連中もいて非常に助かりました。


 ユーモラスな仲間がたくさんいますね。

お勝手で仕事をしながらこっそり盗み聞きして、思わず吹き出して笑った事などがありましたね。

毎日ジョークで明け暮れているような君たちでしたが、いつだったかヤングビーチでの練習の時、お昼の弁当を持っていくと、

みんな真剣な面持ちで先輩の指導を受けていました。

あの真剣さこそ、社会へ巣立って行ってからの君達を2倍も3倍も味のある人間に仕立てあげるのだと思いました。


 どうぞこれからもSDCがますます発展しますように、そしてこれからも末長いおつき合いが出来ますように祈って、

御祝いの言葉に代えさせていただきます。



          


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