『夜のメンテナンス』


「ただいま帰りましたよ、刹那」
訓練中、結界内にすべりこんできたウォンを見て、刹那は眉をひそめた。
「なんだ、なにしにきた、ウォン」
「何をしに、とはひどいですねえ。あなたたちばかり働かせているわけにもいきませんからね、私もふたたび、実戦に参加しようと思って、こうして来たのですよ」
「軍サイキッカー部隊は、俺がいればじゅうぶんだ」
「おやおや。私は必要ありませんか?」
「司令官らしく、高みの見物でもしてたらどうなんだ」
「そうですねえ。それも悪くはありませんが」
刹那の背後に回ると、耳元で低く囁く。
「私は、あなたから離れるわけにはいきませんからねえ」
「なぜだ」
「あなたの闇の能力、そのメンテナンスができるのは、この私だけだからですよ」
「調整なんかしてもらわなくとも、この力は最高だ」
「そうですか。あなたがその程度で満足しているなら、かまいませんがねえ。もったいないことですよ」
「なんだと?」
「まあ、なんにせよ、留守の間のデータをとらせてもらいますよ。今夜はあけておいてください、刹那」
「ふん」

その夜、ベッドの中で、刹那は小さく「おかえり」と呟いた。それは続く甘い声とともに、闇の中に消えて――。

(2010.8脱稿 -- ワールド新宿南口店「リチャード・ウォン」タイムリリース復活記念 --)

《サイキックフォース》パロディのページへ戻る

Written by Narihara Akira
http://www5f.biglobe.ne.jp/~Narisama/