スタンダード デック ブレイクダウン! 〜ビートダウン編〜

Written by 高橋 純也
Edit by 梅咲 直瑛

関東地域では『日本選手権予選』ラッシュを目前に控えた今日この頃。
みなさん、使用するデッキなどはもう既に決まっているでしょうか?

今回のこのコラムでは、いよいよ開催が迫ってきた『日本選手権予選』に向けて、現在のメタ上において有効だと思われるスタンダードのビートダウン系デッキのいくつかを僕なりに解説・紹介をさせて頂きたいと思います。
まだデッキが決まってない方はもちろん、『日本選手権予選』に出る方の参考に少しでもなればと思います。

それでは、紹介スタート!

■ノーマルステロイド

「ノーマルステロイド」
Main Deck Side Board
6《山/Mountain》
6《森/Forest》
4《踏み鳴らされる地/Stomping Ground(GP)》
4《カープルーザンの森/Karplusan Forest(9E)》
1《怒りの穴蔵、スカルグ/Skarrg, the Rage Pits(GP)》
1《ペンデルヘイヴン/Pendelhaven(TS)》

4《密林の猿人/Kird Ape(9E)》
4《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves(9E)》
4《ブリキ通りの悪党/Tin Street Hooligan(GP)》
4《タルモゴイフ》
4《喧騒の貧霊/Rumbling Slum(GP)》

4《炎の印章/Seal of Fire(DI)》
4《黒焦げ/Char(RA)》
4《裂け目の稲妻/Rift Bolt(TS)》
4《獣群の呼び声/Call of the Herd(TS)》
2《悪魔火/Demonfire(DI)》
1《森/Forest》
4《炎樹族のシャーマン/Burning-Tree Shaman(GP)》
1《ロクソドンの戦槌/Loxodon Warhammer(9E)》
4《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge(GP)》
4《幽体の魔力/Spectral Force(TS)》
1《悪魔火/Demonfire(DI)》

『ステロイド』は遥か昔から存在するデッキタイプなので、動きを紹介するのも野暮というものですが、一応。
このデッキは、序盤から中盤にかけて、効率よく強く動くゲーム展開を意識している構成のデッキです。 このレシピは、コントロールを意識して作られているタイプのレシピで、「1枚のカードで対処されづらい」ということを重点においてクリーチャーの選択をしています。 これの他に見られるタイプとしては、《焼け焦げたルサルカ》によって苦手な発掘に耐性を持ったり、クリーチャー戦を主に視野に入れて《幽体の魔力》をメインボードから採用しているものがあります。それぞれのタイプの優劣は付け難いので、使用する地域のメタゲームに合わせてデッキタイプ・カードを選択するのが良いでしょう。

サイドボードですが、「スロットとスロットの交換」を原則にシンプルに作ってあります。 「ラスコンパル印鑑」系には追加の《悪魔火》と《巨大ヒヨケムシ》を《炎の印章》などと交換して、「クリーチャーデッキ」に対しては《幽体の魔力》《炎樹族のシャーマン》《ロクソドンの戦槌》《森》を投入します。 森に関しては疑問に思う方もいるとは思いますが、サイド後のデッキのマナカーブの歪みや、相手のサイドボーディングにより《ラノワールのエルフ》が殺されやすくなっている事を考えるとマナベースの補強は必要だと思い、選択してあります。 計算上もう1枚土地を入れるべきなのですが、「貴重なサイドボードのスペースを更に圧迫するくらいならば、メインから増やせよ」とのツッコミが入ったので断念しました。

せっかく作ったデッキをデッキ相性で無碍にするのは好きではないのですが、デッキの構造がシンプルなので『発掘デッキ』と『ドラゴンストーム』には相性が悪いです。 一応軽量除去を多く選択しているため、共鳴者に頼っている『発掘デッキ』には割りと戦えるのですが、どうやってもライブラリからわらわら出てくるドラゴンには敵いません。 でも、その分コンボ系以外には五分そこそこの戦いが期待できるので、メタゲームによっては期待の持てるパートナーになりえるのはないでしょうか?

最近になって評価が上がった1枚!

■ヘビィステロイド

「ヘビィステロイド」
Main Deck Side Board
4《踏み鳴らされる地/Stomping Ground(GPT)》
4《カープルーザンの森/Karplusan Forest(9ED)》
9《森/Forest(TSP)》
4《山/Mountain(TSP)》

4《極楽鳥/Birds of Paradise(RAV)》
4《根の壁/Wall of Roots(TSB)》
4《ヤヴィマヤのドライアド/Yavimaya Dryad(TSP)》
3《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger(TSP)》
4《幽体の魔力/Spectral Force(TSP)》
3《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite(TSP)》
3《憤怒の天使アクローマ/Akroma, Angel of Fury(PLC)》

4《楽園の拡散/Utopia Sprawl(DIS)》
2《ウェザーシードのトーテム像/Weatherseed Totem(TSP)》
3《溶鉄の災難/Molten Disaster(FUT)》
2《悪魔火/Demonfire(DIS)》
3《調和/Harmonize(PLC)》
4《炎の鞭/Fire Whip(TSB》
3《砕岩を食うもの/Detritivore(PLC)》
3《古えの遺恨/Ancient Grudge(TSP)》
3《爆裂+破綻/Boom+Bust》
2《ロクソドンの戦槌/Loxodon Warhammer(9ED)》

関東は埼玉発の奇抜なタイプの『ステロイド』である。 中盤から終盤における展開の強さをコンセプトとしており、序盤はセッセとマナを溜めて中盤以降は爆弾カードを連打するという豪快なコンセプトのデッキだ。 基本的には《幽体の魔力》を3ターン目にプレイする『スクリヴ&フォース』の系譜に沿ったデッキで、《溶鉄の災難/Molten Disaster(FUT)》というコントロール抹殺カードを手に入れて強化されたので、これから見る機会も増えるかもしれないですね。
(編注:最近、このデッキタイプが関東の名のある大会において上位入賞しているのを時々見るから、既に増えてると思う。)

サイドボードは少し特殊です。見慣れないカードから解説していくと、《炎の鞭/Fire Whip(TSB》は「プロジェクトX」「発掘」に対する最終兵器。 また、カードの特性上ビートダウンにも悪くない働きもします。 《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger(TSP)》とのコンビネーションも見逃せないポイントです。
《砕岩を食うもの》《古えの遺恨》《爆裂+破綻》はコントロール対策。特に《爆裂・破綻》は《スクリブのレインジャー/Scryb Ranger(TSP)》とも噛み合い、「アーマゲドン」ならぬ「フォースゲドン」も狙えるという優れもの。
《ロクソドンの戦槌/Loxodon Warhammer(9ED)》? ゲーム簡単でしょ?

デッキの相性の話ではなく構築理論の話になりますが、「マナ基盤を整えてから重いものをプレイする」というデッキタイプは古くだと『secret force』、最近だと『修繕/Tinker deck』がありますが、どれも「《修繕/Tinker》系のスペルが無いと成立しないデッキ」という研究結果がでています。
(編注:《修繕/Tinker》系のスペルとは、低コストで高コストを場に出したりする系のカードのこと。 つまり、マナ基盤が整わない展開でも《修繕/Tinker》系のカードによってしっかりと展開できるデッキじゃないと、デッキとして弱いという話。)
その研究結果から考えると、マナ基盤を整えないと展開できない(《修繕/Tinker》系のカードがない)このデッキは「まだデッキと呼べるものではない」ということになりますが、それでもメタゲーム上に姿を現していることからその潜在能力は計り知れないものがあります。
このデッキをtier 1に導く鍵はここにあるのかもしれません。 デッキ相性の話はこのデッキの完成系が目に見えたときにでも改めてしたいものです。

カウンターできないX火力+全体除去

Red Deck Win 2007

「Red Deck Win 2007」
Main Deck Side Board
14《山/Mountain》
4《ケルドの巨石/Keldon Megaliths》

4《炎の儀式/Rite of Flame》
4《猿人の指導霊/Simian Spirit Guide》

4《焼け焦げたルサルカ/Scorched Rusalka》
4《嵐の精体/Storm Entity》
4《ケルドの匪賊/Keldon Marauders》
4《エンバーワイルドの占い師/Emberwilde Augur》
4《ギャサンの略奪者/Gathan Raiders》

4《ショック/Shock》
4《炎の印章/Seal of Fire》
4《裂け目の稲妻/Rift Bolt》
2《粗暴な力/Brute Force》
4《氷結地獄/Cryoclasm》
4《血染めの月/Blood Moon》
4《灰の殉教者/Martyr of Ashes》
3《ラースのドラゴン/Rathi Dragon》

単純明快、痛快強烈。 デッキコンセプトは「ライフを20点削る」。
コンセプトと同様に構造も実に単純で、軽い火力とリチュアルスペルと軽いクリーチャーのみで構成されています。 アクセントとして「軽くストームを稼いだ上での《嵐の精体/Storm Entity》によるビート」という戦略も組み込まれていますが、あくまでも調味料。 それでなくてもしっかり20点削れるデッキ構成です。
更に、自然と「暴勇」するデッキ構成となっているため、このデッキでの《ギャサンの略奪者》と《ケルドの巨石》は序盤から活躍を期待できるでしょう。

サイドボードも単純です。 上で紹介した『ステロイド』以上に「スロット」を意識した作りになっているので、対コントロールは《氷結地獄》《血染めの月》、対ビートダウンは《灰の殉教者》《ラースのドラゴン》を投入するだけ。 なんの捻りも工夫も無いのですが、「simple is da best」という名を体で表しています。

一見弱そうに見えるデッキですが、デッキパワーはもちろん、メタゲーム上においても十分に戦えるデッキとなっています。
ビートダウンデッキの基本サイズである【3/3】を越える生物が存在するためビートダウンとも戦えて、《炎の儀式》《猿人の指導霊》のバックアップによる高速展開についてこれるコントロールは少ないからです。
『発掘デッキ』には軽量火力・《焼け焦げたルサルカ》《灰の殉教者》が非常に効くので相性が良く、ストーム系のコンボデッキにも速さで勝負ができます。

入っているカードで判断されて敬遠されがちなデッキですが、「安い、早い、強い」の3拍子が揃っている優秀なデッキなので使ってみては如何でしょうか?

3マナ【5/5】である!!   

ラクドス ビートダウン

「ラクドス ビートダウン」
Main Deck Side Board
3《山/Mountain》
4《沼/Swamp》
1《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/ Urborg, Tomb of Yawgmoth》
2《ケルドの巨石/ Keldon Megaliths》
4《血の墓所/ Blood Crypt》
4《硫黄泉/Sulfurous Springs》
3《偶像の石塚/ Graven Cairns》
2《ラクドスの肉儀場/Rakdos Carnarium》

4《祭影師ギルドの魔道士/Shadow Guildmage》
4《ラクドスのギルド魔道士/Rakdos Guildmage》
4《闇の腹心/Dark Confidant》
4《菅草スリヴァー/Sedge Sliver》
3《血の魔女リゾルダ/Lyzolda, the Blood Witch》
4《巨大ヒヨケムシ/Giant Solifuge》

4《炎の印章/Seal of Fire》
4《裂け目の稲妻/Rift Bolt》
4《黒焦げ/Char》
2《悪魔火/Demonfire》
4《氷結地獄/Cryoclasm》
4《疑念の影/Shadow of Doubt》
3《殺戮の契約/Slaughter Pact》
2《ロクソドンの戦槌/Loxodon Warhammer》
2《根絶/Extirpate》

このデッキも先ほどの『Red Deck Win 2007』と同じコンセプトで作られていて、得意なデッキや苦手なデッキも酷似しています。
そんな両者の大きな違いは《闇の腹心/Dark Confidant》の存在。 このカードが採用されているか否やでデッキの性質は大きく分かれます。採用されていると、「枚数で勝つ」という概念が生まれてくるため多少スピードが落ちてもカードパワーを中心にカードを選択していきます。 しかし、採用されていないと使える手札が少ないため序盤に命を懸けなければいけなくなり、必然と「手札をすべて使える」事を中心に選択されるため、カードパワーよりも軽さを求めることになるのです。

そうなると、「ならば、『Red Deck Win』にも《闇の腹心》を投入すればいいじゃないか」という意見が生まれると思います。 もちろん、それは可能であり、その形も強力であろう事も予想できます。 しかし、それには「2色のデッキにすることによるデメリット(マナスクリュ〜とペインランド)」や「《闇の腹心》によるライフの圧迫」という問題も付きまといます。
つまり、要約するとコントロールに対しては強力になるが、ビートダウンに対しては脆弱になるということです。 今回はサンプルレシピなため、メタゲーム上に存在するどちらにも戦えるように作ったので《闇の腹心》を採用しているレシピはありませんが、あなたの地域のメタゲームがコントロールよりであれば採用することをオススメします。

サイドボードは色が増えたことによる、よりピンポイントなカード選択をしてみました。
対ビートダウンに《ロクソドンの戦槌》と《殺戮の契約/Slaughter Pact》。 対ドラゴンストームに《疑念の影》。 対戦相手のデッキに平地と島が入っていたら《氷結地獄》。 発掘には《根絶》です。
『Red Deck Win』よりもカードパワーが上がった事により、長期的なプランを望める(負けにくくなっている)のが長所ですね。
『Red Deck Win』と共にオススメのデッキです。一度はお試しあれ。

ザ・カードアドバンテージ!  

ZOO

「ZOO」
Main Deck Side Board
1《森/Forest》
2《宝石鉱山/Gemstone Mine》
4《寺院の庭/Temple Garden》
4《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》
4《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
4《地平線の梢/Horizon Canopy》
2《カープルーザンの森/Karplusan Forest》

4《密林の猿人/Kird Ape》
4《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》
2《焼け焦げたルサルカ/Scorched Rusalka》
4《番狼/Watchwolf》
4《タルモゴイフ/Tarmogoyf》
3《瘡蓋族のやっかい者/Scab-Clan Mauler》
2《サッフィー・エリクスドッター/Saffi Eriksdotter》

4《炎の印章/Seal of Fire》
4《裂け目の稲妻/Rift Bolt》
4《稲妻のらせん/Lightning Helix》
4《黒焦げ/Char》
4《名誉の道行き/Honorable Passage》
4《グリフィンの導き/Griffin Guide》
3《ロノムの一角獣/Ronom Unicorn》
3《ヨツンの兵卒/Jotun Grunt》
1《サッフィー・エリクスドッター/Saffi Eriksdotter》

3色の恩恵を最大限に生かして、各色の優良クリーチャーと優秀火力を集めてみたらできちゃったパワーデッキです。
マジックの歴史上でもっとも優秀なクリーチャーを採用しているスタンダードデッキで、その優秀さといったらレガシーのフォーマットに場所を移しても構成がほとんど変わらないという破格なパワーを持った存在です!

デッキの回し方も簡単で、クリーチャー並べて殴って、火力を打つとシンプル。

サイドボードは、少し凝ってあります。
《名誉の道行き/Honorable Passage》は、『ドラゴンストーム』と赤いデッキに。
《ロノムの一角獣》は念のための保険。 たまに、出て困るエンチャント張られるのでその時に。 このスペースは《原基の印象》でもOK。 僕はデッキ名のイメージ(ZOO=動物園)を優先して《ロノムの一角獣》(動物)にしましたが、相手の《ロクソドンの戦槌》に対抗できる《原基の印象》のほうが万能ではあります。
《ヨツンの兵卒》は『発掘デッキ』対策。 《トーモッドの墓所/Tormod's Crypt》でもいいのですが、相手を少し遅らせたら殴りきれちゃうことが多かったので《ヨツンの兵卒》になっています。 メタ上に存在する『発掘デッキ』が《怒りの天使アクローマ》を吊り上げるようなタイプであれば《トーモッドの墓所》のほうが安全ではあります。
《グリフィンの導き》は、対クリーチャーデッキ戦において抜群の働きをします。 正に、付いてしまえばこっちのもん。上からひたすら殴って勝てます。

メタゲームの話ですが、ただ単に優秀なカードを詰め込んだGOOD STAFF系のデッキなため、どのメタだと有利だとか、不利だとかは基本的にありません。ただ、3色のデッキなので、周りのデッキによって形を変えることが容易です。地域のメタに合わせて柔軟にお使いください。

強すぎ説濃厚        

最後に

現状ではコントロール系デッキや『発掘デッキ』に押され気味な印象のあるビートダウン系デッキですが、これはコントロール系デッキなどに比べてビートダウン系のデッキが今まであまり進化を遂げれていなかったという側面があると思われます。 コントロール系・『発掘デッキ』などに比べて研究があまり進んでいなかったビートダウン系デッキの真価が問われるのは、これからだと言えるでしょう。

最近注目されはじめた《タルモゴイフ/Tarmogoyf》などの新たなパワーカードを上手く運用したり、メタに合わせて上手く進化できたビートダウン系デッキができたならば、それは予選を勝ち抜く為の非常に有力な選択肢(ソリューション)となるはずです。 今回のコラムで紹介したデッキはその可能性の一例です。
この記事がきっかけとなって、読者の皆さんビートダウン系デッキの色々な可能性を模索もらえたら幸いです。