Semifinals Tomizawa Yohei vs. Mochiki Kazuto

By Naoaki Umesaki 

スイスラウンドの途中から、上位卓は右を向いても《ガラク》、左を向いても《ガラク》。時々、何か違う物を見かけるといった感じだった。 例えるなら、「権藤・権藤・雨・権藤」。 それは、異常な状況に見えた。
とりあえず、権藤…じゃなくて《ガラク》出しておけばいいんじゃねーか的な空気を参加者は感じ始めていた…。
Top8の結果を見ても、8人中5人が《ガラク》を中心とした『アグロコン』と、今年の『埼玉選手権』はまさに《ガラク》一色に染まったといえるだろう。

参加者A「やっぱりというか、《ガラク》ゲーか…」
参加者B「《ガラク》、値段が高すぎで集まらないよー」
参加者C「《ガラク》は俺の嫁」
参加者D「《ガラク》強すぎでしょ!」


会場の会話・雰囲気が「ガラク」ムード一色に染まる中、『世界のKJ』こと鍛冶が先ほどの準々決勝で敗れた赤井のデッキ(青黒フェアリー)について語り始めた。

現在、準々決勝まで終了しており、準決勝へと駒を進めたのは、持木(緑赤ガラク)・富澤(緑赤ガラク)・石村(緑青ガラク)・赤井(青黒フェアリー)の4人。Top4のうち3人が《野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker》を軸としたアグロコントロールを使用する中、一人『青黒フェアリー』と異彩を放つ赤井。 『高校選手権』優勝の持木、『The Finals』Top8入賞経験などを持つ富澤・石村に比べると世間的には無名であるが、準々決勝にて赤井に敗れた鍛冶は赤井を高く評価している。 気になって理由を聞いてみた。

鍛冶「《ガラク》を使ったデッキって、どうしても少し重ための構成になるでしょ?」

編集「そうですね。」

鍛冶「《ガラク》を中心としたデッキが流行しているとメタゲームを読んで、そういった中速のデッキを相性的に喰える『青黒フェアリー・クロックパーミッション』というデッキをしっかりと調整して持ってきた。そういった彼の読みが今日のメタにドンピシャだった。勝つのには理由がある。ここまでは彼の狙った通りの展開だろうし、現状を見ても、今日は彼が優勝するんじゃないかな?」


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編集「鍛冶さんの予想だと、『青黒フェアリー』の赤井さんが優勝と。」

鍛冶「Top8のうち5人が《ガラク》系コントロールっていうお客さんだらけの決勝ラウンドに残った時点で、優勝の確立は相当に高いよね。彼はサイドボードに《瞬間凍結/Flashfreeze》まで入ってるし、《ガラク》系に対してサイド後はもっと相性もよくなる。メインに積んでた《心霊破/Psionic Blast》も、プレインズウォーカーばかりだったこの大会だと劇的に強かっただろうし、完璧に読みききったメタゲームの勝利だね。」


編集「なるほど」

『埼玉選手権2007』は良くも悪くも《ガラク》に尽きる大会となったが、まだメタがまだ固まっていない時期において周囲が《ガラク》を使った強いデッキを模索する中、一足早く《ガラク》を使わずに《ガラク》をメタったデッキを製作・調整して結果を残してきた燻し銀である赤井の快進撃に期待したい!

…と、冒頭からここまで散々『青黒フェアリー』の話をしてきたので、このラウンドのカバレッジは『青黒フェアリー』の赤井さんの試合と思いきや、赤井さんの準決勝はビデオカバレッジだそうです。
罠です。やられました。単純に書く担当の試合を間違えたという説もあり。まぁ、先入観で「Top4にフェアリーとか残ってるけど、ギャグでしょ!」とかいう人が減ってくれればいいやということで、「フェアリーはアリなんだよ」っていう文章を残してみました。



本大会では富澤を尊敬するプレイヤー
達が様々なコスプレをして参加した。




本大会では真面目、富澤

さて、ようやく本題。
準決勝のカバレッジは、『緑赤アグロコン』同士の対決となる富澤vs.持木の試合をお届けします。

両者のデッキは、大きな括りでは『緑赤アグロコン』という同じデックタイプになる訳ですが、デッキの形や工夫には大きく違いがあります。
メタが固まっていないこの時期ですから、相手のデッキから何が飛んでくるか分からない為に動きづらかったり、ネタバレしていない丸秘コンボで相手の意表をついて勝つといったことがここまでの戦いではあったのですが、準決勝からは事情が変わります。

「先に試合を終えたプレイヤーが、次の試合で当たるプレイヤーを偵察する」といったような行為によって情報面での利益・不利益が生まれないよう、準決勝・決勝の対戦は試合前に3分間の時間を設けてお互いのデッキリストを確認した上での戦いとなるのです。
完全に相手のデッキを把握した上での戦い。より緻密な攻防が繰り広げられる熱戦が期待できそうです!


■富澤洋平
富澤は、昨年末に開催された『Finals2006』にて、初日のスタンダードラウンドを全勝で駆け抜け、Top8入賞を果たした新鋭だ。 その時、富澤はスティッチのコスプレをして参加しており、成績面だけではなくビジュアル面でも大会を盛り上げるという、今まで居なかったタイプのデュエリストとしてマジック界に大きな衝撃を与えた。
関東圏の若手グループ『第3世代』の仲間達からは"委員長"というニックネームで呼ばれており、大きな大会では趣味のコスプレを披露することも多い。

本大会は『緑赤アグロコントロール』を使用して、スイスラウンドは5勝1敗1分(ID)での決勝ラウンド進出。 準々決勝では『緑赤アグロコン』の四本を撃破しての準決勝進出だ。


■持木和人
持木は『高校選手権2005』でリーダーとしてチームを引っ張り、見事に優勝を成し遂げたことで知られる若手プレイヤーだ。
本大会のTop8には、持木が拠点とする「マジックのお店(若葉)」の常連プレイヤーが持木を含めて3人も進出しており、持木はもちろん「マジックのお店」を中心としたコミュニティーにも注目が集まっている。

本大会は、友人である薮田純一(東京)からシェアされた『緑赤アグロコントロール』を使用して、5勝1敗1分(ID)での決勝ラウンド進出。準々決勝では『白緑キスキンウィニー』の市川を撃破しての準決勝進出だ。
普段は「マジックのお店(若葉)」で共にマジックを楽しんでいる市川の犠牲を無駄にしないためにも、頑張りたいところだ。
お互いのデッキリストを公開した上での戦いということで、試合開始前に相手のデッキリストを見た上での印象を両者に聞いてみた。

富澤「持木君のメインボードは『緑赤アグロコン』同系対決を意識した作りとなっていて、メインボード戦はこちらが不利でしょう。 リスト公開によって、サイドボードに搭載していた《野生のつがい/Wild Pair》コンボシステムが完全にネタバレしてしまいましたし、サイド後も劇的に相性が良くなる訳でもないので厳しいです。」

持木「こちらのメインボードが『緑赤アグロコン』同系対決を意識した作りとなっているので、メインボード戦は若干有利だと思います。サイドボーディング後は富澤さんの《野生のつがい》コンボをいかに阻止できるかが勝負を分けると思われますが、ランデスしたり・されたりといったグチャった展開から中盤に入るケースが多い勝負だと思うので、相性は謎です。全てはゲームの展開次第といったところでしょうか」

ふむ。どうやらメイン戦は持木のほうが相性がよく、サイド後は富澤がサイドインする《野生のつがい》コンボシステムが決まるか・決まらないかという勝負になるようだ。


Game1
富澤は自身の頬を全力の平手で張るという斉藤友晴を彷彿とさせるアクションで気合を入れると、「宜しくお願いします!」と威勢よく挨拶をして戦闘モードへと突入。
対する持木は、あくまでマイペースと冷静に「宜しくお願いします」と返す。Magicは対人ゲームである。当たり前だが、相手に飲み込まれてはいけない。もう既に戦いは始まっていた。

富澤が先攻スタートで《肥沃な大地/Fertile Ground》《根の壁/Wall of Roots》、持木も《北方行/Into the North》《根の壁》と、お互いにマナブーストする序盤の立ち上がりでゲームスタート。

富澤は《獣群の呼び声/Call of the Herd》プレイ→次のターンに【3/3】トークンでアタックと、持木が《根の壁/Wall of Roots》でブロックするか様子を窺うが、持木はブロックを選択。 富澤は戦闘ダメージ解決後に《火葬/Incinerate》を打ち込み《根の壁》を除去するが、持木は返しのターンで《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》をプレイし、場を制圧しにかかる。

『高校選手権2005』優勝、持木

同系対決においては強烈な1枚!
圧倒的な制圧力を持つ《包囲攻撃の司令官》を放置できる訳はなく、富澤はこれも《火葬/Incinerate》で除去。

持木が《調和/Harmonize》でドローを進めた返しで、今度は富澤が《包囲攻撃の司令官》を場に繰り出すが、持木が《火葬》で富澤の《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》を除去

持木が《野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker》をプレイすれば、返しのターンで富澤も《野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker》。

ここまでお互いに鏡打ちのような展開となっているが、持木のプレイしたカードによって状況は一変する。


《活力/Vigor》である!

持木の場にはゴブリントークンが残っているので、《溶鉄の災難/Molten Disaster》では駄目。 …と、いうことは富澤のデッキには《活力/Vigor》をどうにかできるカードは入っていない。

《活力》を無視して殴りきろうにも、殴る生物が居ないし、持木のライフは二桁と安全域。
対戦前に語られていた通り、同系対決を意識したデッキ構成となっている持木のデッキの有利性が大きく出たゲーム展開となった。

富澤は次のドローを見ると、素早く場のカードを片付けた。


富澤 0-1 持木

持木のサイドボーディング
【In】 【Out】
2《クローサの掌握/Krosan Grip》
2《ムウォンヴーリーの酸苔/Mwonvuli Acid-Moss》
2《爆裂+破綻/Boom/Bust》
4《獣群の呼び声/Call of the Herd》
2《雲打ち/Cloudthresher》

富澤のサイドボーディング
【In】 【Out】
3《野生のつがい/Wild Pair》
4《なだれ乗り/Avalanche Riders》
1《にやにや笑いのイグナス/Grinning Ignus》
1《原初の腕力魔道士/Primal Forcemage》
4《火葬/Incinerate》
2《獣群の呼び声/Call of the Herd》
1《タルモゴイフ/Tarmogoyf》
1《溶鉄の災難/Molten Disaster》
1《荊景学院の戦闘魔道士/Thornscape Battlemage》

Game2
富澤は《根の壁/Wall of Roots》×2、持木は《北方行/Into the North》×2と、1ゲーム目と同様にお互いにマナブーストする序盤の立ち上がりとなる。

富澤は4ターン目に、サイドインした《野生のつがい/Wild Pair》を貼ってターンを返すが、持木は《調和/Harmonize》でドローを進めて、《クローサの掌握/Krosan Grip》でこれを破壊。

しかし、返しのターンで富澤は2枚目の《野生のつがい/Wild Pair》を場に繰り出す!

持木の手札にもうエンチャント破壊は無いようで、《野生語りのガラク》→「土地2個アンタップ」というアクションで《ロノムの口/Mouth of Ronom》を起動できるようにして、「コンボは決めさせないぞ」という姿勢を示すのみでターンを返すという窮屈な格好になってしまう。


ターンが返ってきた富澤は、待ってましたとばかりにまずは《原初の腕力魔道士/Primal Forcemage》をプレイ。
持木は《ロノムの口》で《原初の腕力魔道士》を除去するも、誘発した《野生のつがい》の能力により《なだれ乗り/Avalanche Riders》がライブラリーから富澤の場に繰り出され、持木の《樹上の村/Treetop Village》が破壊される。
富澤はさらに、無防備となった持木へと追い討ちをかける。《にやにや笑いのイグナス/Grinning Ignus》を召還し、《野生のつがい》とのコンボによりライブラリーから《なだれ乗り》2号と《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》を場に繰り出したのである。

2枚の《なだれ乗り》が場に出た時の能力で持木のマナをボロボロし、アタックによって《野生語りのガラク》を墓地へと葬り去る。 1戦目のお返しとばかりに、富澤がやりたい放題である。

富澤は次のターンにも《にやにや笑いのイグナス》+《野生のつがい》のコンボにより、《なだれ乗り》2枚を場に繰り出し持木のマナを攻めながらライフを削ってゆく。
持木も《北方行》《根の壁》などを展開して、マナを確保して戦える体制を整えようとするが、いかんせん富澤の場に出ている《野生のつがい》が仕事をし過ぎていて話になっていない。

ドラゴンストームが決まります!

富澤vs.持木
持木は《溶鉄の災難》(X=2)でひとまず場を一掃するが、富澤の手札には《にやにや笑いのイグナス》がいるので、《野生のつがい》が場に出ている限りは富澤の攻めが途切れることは無い。

数ターン後、持木はようやく《クローサの掌握》を引いて《野生のつがい》を破壊しながら《活力/Vigor》を展開することに成功するが、とき既に遅し。

これまでの攻撃と、《獣群の呼び声》による【3/3】象トークン2体によるアタックで持木のライフは7まで追い込まれ、富澤の《溶鉄の災難/Molten Disaster》(X=7)が持木のライフを削りきった。

富澤 1-1 持木


2ゲーム目を終え、サイドボーディングをしている最中に、ジャッジから残り試合時間が約3分ほどと残り少ないことが告げられる。 ラウンド開始時に対戦者の2人には説明がされているが、試合時間が終了し、延長の5ターンを終えても決着がつかない場合はライフ差の勝負となる。
3ゲーム目は、お互いに第1ターン目から相手のライフを全力で削りに行くぶつかり合いとなりそうだ。
Game3
お互い、2ターン目《根の壁/Wall of Roots》スタートという立ち上がり。

先攻の持木は3ターン目に《野生語りのガラク》プレイ→能力起動で【3/3】ビーストトークンを場に追加して富澤にターンを返す。

富澤は《肥沃な大地》→《火葬》で持木の《野生語りのガラク》を除去するが、ここで試合時間終了のアナウンスがなされる。

【延長1ターン目】
持木、《包囲攻撃の司令官》をプレイ!
《包囲攻撃の司令官》が3体の【1/1】ゴブリンを従えて場に登場する。ライフ差勝負において、数が並ぶというのは強みである。 富澤に強いプレッシャーをかけた!

この《包囲攻撃の司令官》をプレイする際に、《燃え柳の木立ち/Grove of the Burnwillows》を使用しており、富澤のライフが21へ。
このゲインライフが後々効いてくるか?

【延長2ターン目】
富澤、《火葬》で《包囲攻撃の司令官》本体を除去し、《獣群の呼び声》で場に【3/3】象トークンを場に追加。

【延長3ターン目】
持木、《火葬/Incinerate》で富澤の【3/3】象トークンを除去し、【3/3】ガラクトークン・ゴブリン3体によるフルアタック!

ここで、ライフレースに勝てないことを悟った富澤は投了を宣言した。


富澤 1-2 持木

Result:持木和人 Wins! 決勝戦進出!!


決勝戦へと駒を進めるのはどちらなのか…