Quarterfinals Hayashi Takatomo vs. Ishimura Shintarou

By Naoaki Umesaki


よく大会前に「実力・実績的に今日は○○さんが勝ち上がってきそうだよね」といった雑談を耳にするが、現実はそうならない場合が多い。土地が事故ってしまったり、相性が悪いデッキに多く当たってしまい負けたりと、必ずしも実力・予想の通りにいかないのが勝負であり、マジックというものだからである。

しかし、スイスドロー7回戦を戦い抜いて『埼玉県選手権2007』の決勝ラウンドに進出した8人の顔ぶれは、いわゆる『出来レース』と呼ばれるものを想像させる程に、勝ち上がってくることが予想されていたプレイヤー達で埋め尽くされる結果となった!

『プロツアーチャールストン』『グランプリ北九州』優勝などの、輝かしい戦績を持つ『世界のKJ』こと鍛冶。 『The Finals』Top8入賞経験を持つ富澤・石村。 『高校選手権2005』優勝の持木。 埼玉県内では強豪として知られる四本など…。

Top8が発表された瞬間、ギャラリーからは 「出来レースだったな…」という溜め息と同時に、これから始まる強豪達による熱戦を期待する空気に覆われた。今年の『埼玉県選手権』決勝ラウンドは、例年にも増して良い勝負が期待できそうである。

それでは、林vs.石村による準々決勝をお届けしよう。



『高校選手権2004』準優勝
『The Finals2004』Top8、石村
■石村信太郎
『日本選手権』『プロツアー』といったプレミアイベントにも多数の参加経験があり、『高校選手権2004』準優勝・『Finals2004』Top8といった戦績を持っている強豪プレイヤーだ。

今回は《原初の命令/Primal Command》による1枚挿しのクリーチャーサーチ+《ヴェズーヴァの多相の戦士/Vesuvan Shapeshifter》のエンジンを中心に据えた『青緑アグロコントロール』を使用して、5勝1敗1分・8位という成績での決勝ラウンド進出である。



■林隆智
ローウィンの注目カードを聞かれ、「1000円ぐらいの値が付くぐらいの強さを持ったカードなのに、世間一般では全然評価されていない!」とカードショップ勤務の林が語るのは、《誘惑蒔き/Sower of Temptation》。
そんな《誘惑蒔き》をメインから4枚投入した『青白氷雪パーミッションコントロール』を使用して、6勝1敗という成績での決勝ラウンド進出である。
『埼玉県選手権』を制して、《誘惑蒔き》の強さを世間に知らしめることができるか!?



Game1
ジャッジによって試合前に行われたデッキチェックの結果、石村が提出していたデッキ登録用紙と実際のデッキ内容に異なる点が見つかった。

デッキ登録用紙には《森/Forest》は6枚と書かれていたのだが、実際のデッキ内容は《森/Forest》5枚+《ペンデルヘイヴン/Pendelhaven》1枚であったのだ。
悪意が無いのは明らかであるが、ミスはミスである。
「不正なデッキリスト」のペナルティ項目が適用され、石村に「ゲームの敗北」の裁定が出された。

余談であるが、こういった簡単な登録ミスによるペナルティは普段のトーナメントでも非常に多かったりする。
皆さんがトーナメントに参加する際には、こういった部分でのミスが無いよう気をつけていただきたい。


林 1-0 石村
Game2
1本目のゲームでジャッジにより石村に「ゲームの敗北」の裁定が出ているが、ゲーム自体を行っていないのでGame2を始めるにあたってサイドボーディングをすることはできない。お互いメインボードでの戦いとなる。

先攻の石村は1マリガンスタートで、《肥沃な大地/Fertile Ground》によるマナブーストから3ターン目に《野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker》を繰り出すが、これを林が《遅延/Delay》で対処するといったゲームの立ち上がり。

林が《ファイレクシアの鉄足/Phyrexian Ironfoot》をプレイした隙に、石村は《変異》→《変異》2号と攻め手を緩めずアクションを起こすが、林の《謎めいた命令/Cryptic Command》により正体が《塩水の精霊/Brine Elemental》である《変異》2号はカウンターされ、《変異》1号(《ヴェズーヴァの多相の戦士/Vesuvan Shapeshifter》)は手札に戻されてしまう。

石村としては、林に序盤の攻めを捌かれてしまい、マリガンが効いていて手札の状況も良くなく、芳しくない状況だ。

そして続くターン、アップキープに先ほど《遅延》されていた《野生語りのガラク》が待機を明けてプレイされるが、林はこれを《謎めいた命令》でカウンター+1ドローと対処。
しかし、林がこの《野生語りのガラク》をカウンターして隙をみせたことにより、メインで石村の《デッドウッドのツリーフォーク/Deadwood Treefolk》が通ってしまう。
石村は《デッドウッドのツリーフォーク》の能力により、先ほどカウンターされた《塩水の精霊》を回収し、次のターンには《変異》をプレイして仕掛ける。

林は小考するが、石村の手札内で《塩水の精霊》+《ヴェズーヴァの多相の戦士》による「ピクルス」ロックコンボが決まっていることを把握しているので、この《変異》を通せるわけがなく《霊魂放逐/Remove Soul》でカウンター。 この《変異》の正体は、《塩水の精霊》であった。

『青白コン』、林

色拘束のキツさに見合った
カードパワー!
お互いにマナが伸びた状態の終盤戦になれば、デッキ相性は確定カウンターを多く搭載している林が有利であろう。石村は、林が望んでいるであろうゆったりとした展開にはさせまいと、次のターンには《ヴェズーヴァの多相の戦士》→《原初の命令/Primal Command》と攻め手を連打するが、林はこれを両方とも《遅延/Delay》!

手札の攻め手を使いきりアクションを起こせない石村を尻目に、林は《占術の岩床/Scrying Sheets》《熟慮/Think Twice》などによってアドバンテージを稼ぎ始める。

石村は賞味期限が切れ墓地に落ちる《デッドウッドのツリーフォーク》の能力により、墓地から《塩水の精霊》を回収し、《変異》として場に出すも、林は容赦ない《誘惑蒔き/Sower of Temptation》によってその攻め手すら奪い取り、フルアタック! 石村のライフは5へと追い込まれる。

そして返す石村のターン、さきほど《遅延》された《ヴェズーヴァの多相の戦士》と《原初の命令》がようやく待機を明けてプレイされる。
まず、石村は《ヴェズーヴァの多相の戦士》から解決。コピー能力によって《誘惑蒔き》として場に出ることによって、林から正体が《塩水の精霊》である《変異》のコントロールを奪い返す。


そして、続いて《原初の命令/Primal Command》を解決。
石村は「7点ライフ回復」+「林の場に出ている《ウルザの工廠》をライブラリートップに乗せる」を選択。


石村のライフは12となり、ひとまずの危機は脱した。そして、石村はコントロールを奪い返した《変異》の変異を解除。正体はもちろん《塩水の精霊》で、変異を解除した時に誘発する能力によって、林の次のアンタップステップがスキップされる。
現在の石村の場には《ヴェズーヴァの多相の戦士》と《塩水の精霊》が揃っており、「ピクルス」コンボが決まっている。林に何も対応策がなければ、石村の逆転である。
だが、先ほどから《熟慮》《占術の岩床》などによってアドバンテージを稼いでいる豊富な林の手札に対応策が無い訳がなく、返しのターンで《塩水の精霊》を《忘却の輪/Oblivion Ring》で除去して「ピクルス」コンボを決めさせない。

石村としてはまだ厳しいところだが、林としても決まれば即負けである「ピクルス」コンボを意識して迂闊に動けない状況となり、状況としては石村が盛り返してきたかといったところであろうか。

そんな膠着状況に入ったところで、石村は《調和/Harmonize》を引きこんできて、これをプレイ。 続いて、引き込んだ《熟考漂い/Mulldrifter》でさらにドローを進める。 マリガンスタートで、ここまで苦しい戦いを強いられてきた石村がようやく活気を取り戻す。

ここまで順調に石村の呪文をカウンターしてきた林だが、ここに来てカウンター切れの様だ。手札に有効な手段が無い林は、ドローで弾を補充した石村に対しておとなしくしていては負けだと、《熟慮》表・裏→《永劫の年代史家/Aeon Chronicler》X=2待機と豊富なマナを使い切るアクションを起こすが、結果的にフルタップで石村にターンを返してしまったのが仇となる。

石村の手札には《原初の命令》があり、この《原初の命令》により先ほど《塩水の精霊》を奪われた《忘却の輪》を場から除去することによって、石村の場に《ヴェズーヴァの多相の戦士》と《塩水の精霊》が揃い、「ピクルス」コンボを完成してしまったのである!


林の土地はフルタップで、石村の「ピクルス」コンボによって二度とアンタップすることはない…。

この「ピクルス」コンボ完成に続いて、石村が《苔汁の橋/Mosswort Bridge》に刻印されていた《原初の命令》のプレイを宣言すると、林は静かに投了を宣言した。

林 1-1 石村

完全除去ではない悲しさが露呈

林のサイドボーディング
【In】 【Out】
1《神の怒り/Wrath of God》 1《ファイレクシアの鉄足/Phyrexian Ironfoot》

石村のサイドボーディング
【In】 【Out】
4《ルーンのほつれ/Rune Snag》
3《誘惑蒔き/Sower of Temptation》
2《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》
4《肥沃な大地/Fertile Ground》
2《原初の命令/Primal Command》
1《セロン教の隠遁者/Thelonite Hermit》
1《野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker》
1《永劫の年代史家/Aeon Chronicler》



林vs.石村
Game3
石村が逆境の中で細い攻めを繋いで林を息切れさせ、最後に「ピクルス」コンボで逆転という息詰まる攻防が繰りひろげられた2ゲーム目とは対照的に、3ゲーム目はあっけない幕切れとなった。

石原は1ターン目から《ラノワールのエルフ》→《根の壁》×2→《野生語りのガラク》と順調に展開する立ち上がり。

《野生語りのガラク》を通すわけにいかない林は《取り消し/Cancel》でカウンターしようとするも、石村は《ルーンのほつれ/Rune Snag》でこれをカウンターして《野生語りのガラク》を通す。

『埼玉県選手権2007』Top8のうち5人がデッキに使っているという、その数字が全てを物語るキチガイカードである《野生語りのガラク》が石村の場に繰り出され、無慈悲な【3/3】トークン製造が始まる。

林は2ターン後にようやく《忘却の輪/Oblivion Ring》で《野生語りのガラク》を除去することに成功するが、石原はその間に《野生語りのガラク》によるトークン製造や、《熟考漂い/Mulldrifter》でドローを進めながらダメージクロックを築いていたりと既に手遅れムード。

最後の抵抗だと繰り出した《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》も、石村の《誘惑蒔き》によって寝返ってしまい、あっけないゲームセットとなった。


林 1-2 石村

Result:石村信太郎 win! 準決勝進出!!